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第144話【明日へ】

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「じゃあ、アスラン。わたくしは帰りますぞ……」

「ああ、分かった。お疲れさん」

「…………」

名残惜しそうに扉の隙間から室内を覗いていたポラリスが、やっと扉を閉めて帰ってくれた。

俺は自室のベッドに寝込んで、額に濡れタオルを乗せている。

まだ頭が痛い。

セルフヒールで傷は癒したが頭痛は取れないでいた。

窓から外の空を見上げれば、夕日で赤く染まっている。

もう、今日はこのまま寝込んで終わりかな。

明日までに頭痛が治ればいいのだが……。

流石に丸太で頭を強打されて、一回転して頭から落ちたのだ。

そりゃあ堪らんよね。

しかも魂が口から出て神様にも出会ったのだ。

もう、酷い一日だったよね。

でも、あの神様が糞女神をやっつけてくれたら嬉しいのだがな。

もしも神様が頑張ってくれたら、俺も死んだかいがあったってもんだわ。

まあ、何にしろ今日は早く寝よう。

まだ、夕飯を食べてないからお腹は空いている。

今日の夕御飯は何だろう?

一回死んで生き返ったんだから、お祝いにご馳走だといいよね。

んー、甘いかな?

でも、いい匂いがし始めたし期待は薄くなかろう。

あとはピーターさん次第だな。

はぁ~、疲れた……。

眠たい……。

んん?

誰かが階段を上がって来る足音が聴こえて来たぞ。

ピーターさんが食事でも運んで来てくれたかな?

トントンって扉がノックされた。

「はぁ~い、どうぞ~」

扉が開くとお盆に調理を持ったピーターさんが入って来る。

予想通りだぜ。

「アスランくん、御飯が出来たよ」

「有り難うございます、ピーターさん」

お盆で食事を運ぶピーターさんは、未だに裸エプロンの姿だった。

もしかして今日一日、裸エプロンで過ごしていたのかな、この変態は?

それに調理は御馳走とは程遠いいつも通りの感じだった。

ちょっぴり残念だ。

まあ、どうでもいいや。

「じゃあ、食事はテーブルの上に置いて行くからちゃんと食べてね。食器はあとで取りに来るから」

「はい」

俺はピーターさんが部屋を出て行くと、ベッドから身を起こしてテーブルに移動した。

あー、コーンスープだ……。

まだ余ってるよね、昼食の分がさ……。

まあ、贅沢は言えないか。

ちゃんと食べて栄養を取って明日に備えないとな。

明日は閉鎖ダンジョンに再チャレンジだ。

出来れば二人目の英雄クラスのアンデッドを倒したいからな。

それが叶えば近々のうちに仕事が終わるかもしれないし。

そろそろソドムタウンにも帰りたいしな。

あー、スカル姉さん、何してるかな。

ギルガメッシュのおっさんも、ちゃんと仕事に励んでいるかな。

スバルちゃんも頑張ってるかな。

あれ、ん~、これはホームシックってやつなのかな?

俺ってば、寂しがってるの?

寂しん坊なのか?

まあ、いいや。

出来るだけ早く仕事を終わらせるように頑張るだけだ。

あ~、それにしても、このパンは不味いな……。

パンまでピーターさんが焼いているわけでもなかろうし、仕方がないか。

でも、スカル姉さんが焼いた柔らかいパンを食べたいよね。

それに不味いパンなら、冒険者ギルドの硬いパンも懐かしいよな。

まあ、そのうち冒険者ギルドの飯は飽きるほど食えるんだし、今はピーターさんの程々に旨い飯で我慢しよう。

何せ明日からが本番だ。

絶対に英雄クラスのアンデットを倒してやるぞ。

もう、死んだり重症に追い込まれたりなんかしないぞ。

確実に、絶対に、完璧に勝ってやる。

最近はスリルを堪能し過ぎたわ。

俺は冒険者なんだから、それも仕方ないか。

日々冒険とチャレンジが続くもんな。

よし、飯も食い終わったし、持ち物のチェックをしたら寝ようか。

明日の朝からが本番だ。

シャキッとビシッとモッチリと決めてやるぞ!

あー、モッチリは無いか。

それと、黄金剣のセルバンテスだっけ?

ぶっ倒してやるからな!!

よし、持ち物チェックも終了だ。

さぁ~て、寝よ寝よ──。

あ~、ベッドがフカフカだわ。

野宿が懐かしいな……。

もう、つか、れた、わ……。

すやすや……。

……………。

『ア、アスランくん………』

んん?

『アスランくん、居るかい?』

誰だ?

なんか声が聞こえるぞ?

『ぼ、僕だよ、神様だよ』

あれ、どうしたの?

『や、やばいよ……』

え、何が?

『上司に僕らの謀反がバレて、即反撃されているよ。も、もう僕は駄目だ……』

ええ、何があったのさ!?

『もう天界の同胞も、皆が捕まった。残ってるのは僕だけだ』

なに、壊滅かよ!?

『情報をリークしたのが君だってことも知られたぞ』

えっ、マジで!?

『僕が捕まったら次は君の番だ……』

いやいやいや、俺は関係ないだろ!?

『彼女はそうとは考えていないよ。きっと君にも報復を果たすだろうさ……』

マジで!!

『最後にこれだけは言って置くね……』

な、なんだよ!?

『彼女は……、ぐぁ! うわぁぁあああ!!!』

ええっ、何が起きてるの!?

ちょっとマジでヤバくね!?

『ぐぁぁあああ、助けてくれ!!!』

助けたいけど助けられないから、俺への伝言だけはちゃんと全部告げてくれよ!?

『ああ~ん、やめて~。駄目ぇ~ん、もうらぁめ~~……』

おいおい、なんだか気持ち良さそうじゃねえか!?

『ぐぁぁあああ、ぎぃゃぁあああ!!』

やっぱり痛そうだ!!

『はぁ~~ん、らめなの~~、そこはらめ~~』

いやいや、やっぱり気持ちいいことしてないか!?

『ぐっぁぁあああ!! こ、れで、通信、を、終え、る、ぞ……』

ちょっと待てや、最後までちゃんと内容を告げてくれ!!

彼女がどうしたって!?

お前は神様だろ!?

おい、通信を終えるな!!

おいってばさ!!

答えろよ!!

どうした、答えてくれ!?

ち、畜生が……。

これからどうなるんだ、俺は!?

俺も糞女神に仕返しをされるのか!?

完全に巻き沿いじゃあねえかよ!!

『アスランく~~ん♡』

くっ、糞女神!?

『レベル30のお祝いに会いましょうね~。うふふふふふ~~♡』

はっ!?

何それ怖い!!

「はっ!!!」

俺はそこで目が覚めた。

布団から跳ね起きて額の汗を腕で拭った。

全身が汗だく状態じゃあねえか……。

そ、それにしても……。

ここは、俺の部屋だ……。

俺はベットの上に居た……。

い、今のは夢か……。

夢なのか……?


【つづく】
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