上 下
118 / 604

第118話【ガーゴイル】

しおりを挟む
俺は現在のところ広い廊下の中央に居た。

幅は25メートルほど有りそうで、少し下っている感じがした。

天井もかなり高い。

道は真っ直ぐに続いていて100メートルほど進んだが、まだ先は見えないぐらいだ。

「まずいな……」

俺は崩れた大岩を背に隠れていた。

マジックトーチが掛けられたショートソードは10メートルほど先に投げてある。

俺は上空を警戒していた。

闇の中を蝙蝠人間が三匹ほど飛んで居やがる。

ネーム判別したら【ガーゴイル】だった。

あの野郎どもは俺が接近するまで石像のふりをして潜んでやがったんだわ。

お陰で不意打ちを食らって、右肩を引っ掻き攻撃で痛めたぜ。

血がドクドクと流れていやがる。

俺は岩陰に隠れながらセルフヒールをかけた。

傷は塞がったが痛みは残っている。

ちっ、三本の傷跡が残ってやがるぜ。

あの野郎たち、絶対にぶっ殺す!

まだ、向こうは俺の位置が分かっていないようだ。

上空を飛び回りながら俺を探していやがる。

それだけがチャンスだな。

今の内に作戦を練ろう。

まずは逃げるか戦うかだ。

「キィーーーー!!」

「ええっ!!」

ガーゴイルの一匹が滑空してきて俺の右側に着地した。

作戦どころでは無いわん!

俺の位置がバレてたわん!?

「キギィ!!」

「のぉわぁ!?」

ガーゴイルの鉤爪が俺の顔面に迫ったが、ロングソードを盾に攻撃を防いだ。

ロングソードの刃を越えて鉤爪が俺の鼻先まで迫っていた。

カキカキと鋭い爪が動いている。

「おらぁ!!」

「キィー!!」

俺がガーゴイルの腹を蹴り飛ばした。

よろめいたガーゴイルに斬りかかるが空中に逃げられる。

追えない!!

畜生が!!

「キィーーーー!!」

「ぬっ!!」

今度は左から別のガーゴイルが滑空して来た。

すれ違いの一撃でガーゴイルの鉤爪が俺の頬をかする。

「ちっ、またかすったぞ!」

今度は背後からガーゴイルが迫る。

俺は振り返るど同時に剣技を放つ。

「そらっ!」

「キキィー!!」

かすった!?

俺の攻撃が当たったぞ!

でも、致命傷じゃあないな。

やっぱりこんな広い場所で三対一ってば不利だわ。

しかも相手は飛んでるんですよ。

もう完全に不利だぜ。

それなのに逃げ込めそうな狭い場所が無い。

この広い廊下に入って来たのは100メートルも前の話だ。

もう戻ってられないぞ。

このままだと、なぶり殺しだわ。

どうにかしないとならんぞ!

ガーゴイル三体は俺の頭上をグルグルと回ってやがるしよ。

なんかイライラするぜ。

しかし、ガーゴイルたちが攻めて来る。

今度はガーゴイル二匹が、2時と10時の方向から同時に飛んで来た。

「これでも食らえ!」

10時の方向から飛んで来るガーゴイルにダガーを投擲した。

しかしガーゴイルは避けない。

当たったダガーが容易く弾かれた。

まさか、マジックアイテムしか効きませんか!?

今投げたのは普通のダガーだ。

それを知っててガーゴイルは避けなかったんだろう。

ならば!

俺は2時の方向から飛んで来るガーゴイルに向かって走った。

二匹同時に攻められるのは不味い。

せめて一体ずつだ。

俺はガーゴイルとぶつかり合う刹那にスライディングで下を潜る。

ロングソードを立てながらガーゴイルの身体を切り裂いた。

「どうだ!?」

切られたガーゴイルが床にぶつかった後に、グラグラと揺れながら上空に舞い上がる。

当たりが浅かったかな。

今度は10時から飛んできていたガーゴイルが俺に襲い掛かった。

俺の目の前に着地すると鉤爪を振るって来る。

俺は鉤爪攻撃をロングソードで弾きながら後退した。

しかし、ガーゴイルは執拗に攻め立てる。

こん畜生が!!

俺が必死に鉤爪を防いでいると、背後に別のガーゴイルが着地した。

「なにっ!?」

すると背後に着地したガーゴイルが俺の両腕を背後から羽交い締めにしたのだ。

俺の動きが羽交い締めに封じられた。

不味いですわーー!!

うーごーけーねー!!

目の前のガーゴイルが、動きを封じられた俺を見てニンマリと微笑む。

いぃゃゃぁぁあああ!!!

ちょーーーーピンチ!!

不味いぐらいの大ピンチですわ!!

前方からゆっくりとガーゴイルが近付いて来る。

俺を羽交い締めにして居るガーゴイルも嫌らしく笑ってやがった。

俺に先ほど切られたガーゴイルも、俺の側に降りて来る。

いゃぁあああ!!

袋叩きにされちゃいますわん!!

俺の眼前まで接近したガーゴイルが微笑みながら手刀を高々と振り上げた。

チョップですか!?

チョップを俺の頭に叩き落とすつもりですのね!!

鋭い爪を有した手刀が振り下ろされると同時に俺は蹴りを繰り出す。

ガーゴイルの股間を蹴り上げた。

「おらっ!!」

「キィイ!?」

股間を蹴り上げられたガーゴイルが目を見開き大口を開いて悲鳴を上げた。

蹴られた股間を押さえて跳び跳ねる。

えっ!?

俺の金的ってマジックアイテムなの??

まあ、いいや、チャンスだ!

更に俺は──。

「オオラァ!!」

背後から羽交い締めにしているガーゴイルを払い腰で投げ捨てた。

なんと中学時代に習った柔道が役にたちましたわ!?

俺は横一閃に剣を振るうと玉を蹴られたガーゴイルの首を切り裂く。

その剣筋を止めずに、倒れているガーゴイルの頭に落とした。

その一撃がガーゴイルの頭をパッカリと割る。

更に!

「マジックアロー!」

「キィー!!」

側で笑って見ていたガーゴイルの翼に魔法で風穴を開けてやった。

それでガーゴイルは飛び上がるのが遅れる。

そこにロングソードで斬り掛かった。

「斬っ!!」

強い踏み込みからの激しい縦斬りが、ガーゴイルの顔面を無惨にも切り裂いた。

縦切りにされた顔面の傷口から真っ赤な鮮血が吹き出る。

俺はその血液を顔面に浴びてしまう。

あん、汚いですわん!?

でも、ピンチをチャンスに変えた超逆転劇だったぜ!!

俺は安堵しながら回りを見回す。

三体のガーゴイルが倒れていた。

首を切られたガーゴイル。

頭を割られたガーゴイル。

そして顔面を切られたガーゴイル。

三匹は微塵にも動かない。

勝ったな──。

ふう、とりあえず何か持ってないか漁ろうかな。

俺はマジックトーチが掛かったショートソードを拾いに行く。

すると魔法の灯りが萎みだした。

あー、魔法が切れる時間だぞ。

これでマジックトーチが切れるのは本日二回目だ。

マジックトーチの継続時間は一回5時間である。

今日はマジックトーチを二回使っている。

俺が閉鎖ダンジョンに入りだして計10時間が過ぎたことになるわけだ。

10時間か~。

うし、腹も減ったし、そろそろ帰ろうかな。

今日の探索は、これで終わりだ。

なんかギャグも無かったから、屁でもここうかな?

いや、まてまて……。

前回の失敗は、そこから始まったのだ。

ここは屁を我慢しよう。

それより疲れたから速く帰ろっと。


【つづく】
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉
ファンタジー
その乙女の名はアルタシャ。 『癒し女神の化身』と称えられる彼女は絶世の美貌の持ち主であると共に、その称号にふさわしい人間を超越した絶大な癒しの力と、大いなる慈愛の心を有していた。 いかなる時も彼女は困っている者を見逃すことはなく、自らの危険も顧みずその偉大な力を振るって躊躇なく人助けを行い、訪れた地に伝説を残していく。 彼女はある時は強大なアンデッドを退けて王国の危機を救い ある国では反逆者から皇帝を助け 他のところでは人々から追われる罪なき者を守り 別の土地では滅亡に瀕する少数民族に安住の地を与えた 相手の出自や地位には一切こだわらず、報酬も望まず、ただひたすら困っている人々を助けて回る彼女は、大陸中にその名を轟かせ、上は王や皇帝どころか神々までが敬意を払い、下は貧しき庶民の崇敬の的となる偉大な女英雄となっていく。 だが人々は知らなかった。 その偉大な女英雄は元はと言えば、別の世界からやってきた男子高校生だったのだ。 そして元の世界のゲームで回復・支援魔法使いばかりをやってきた事から、なぜか魔法が使えた少年は、その身を女に変えられてしまい、その結果として世界を逃亡して回っているお人好しに過ぎないのだった。 これは魔法や神々の満ち溢れた世界の中で、超絶魔力を有する美少女となって駆け巡り、ある時には命がけで人々を助け、またある時は神や皇帝からプロポーズされて逃げ回る元少年の物語である。 なお主人公は男にモテモテですが応じる気は全くありません。

俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。

ヒィッツカラルド
ファンタジー
ハクスラ異世界×ソロ冒険×ハーレム禁止×変態パラダイス×脱線大暴走ストーリー=前代未聞の地味な中毒性。 ⬛前書き⬛ この作品は、以前エブリスタのファンタジーカテゴリーで一年間ベスト10以内をうろちょろしていた完結作品を再投稿した作品です。 当時は一日一話以上を投稿するのが目標だったがために、ストーリーや設定に矛盾点が多かったので、それらを改変や改編して書き直した作品です。 完結した後に読者の方々から編集し直して新しく書き直してくれって声や、続編を希望される声が多かったので、もう一度新たに取り組もうと考えたわけです。 また、修整だけでは一度お読みになられた方々には詰まらないだろうからと思いまして、改変的な追加シナリオも入れています。 前作では完結するまで合計約166万文字で601話ありましたが、今回は切りが良いところで区切り直して、単行本サイズの約10万文字前後で第1章分と区切って編成しております。 そうなりますと、すべてを書き直しまして第17章分の改変改編となりますね。 まあ、それらの関係でだいぶ追筆が増えると考えられます。 おそらく改変改編が終わるころには166万文字を遥かに越える更に長い作品になることでしょう。 あと、前作の完結部も改編を考えておりますし、もしかしたら更にアスランの冒険を続行させるかも知れません。 前回だとアスランのレベルが50で物語が終わりましたが、当初の目標であるレベル100まで私も目指して見たいと思っております。 とりあえず何故急に完結したかと言いますと、ご存知の方々も居ると思いますが、私が目を病んでしまったのが原因だったのです。 とりあえずは両目の手術も終わって、一年ぐらいの治療の末にだいぶ落ち着いたので、今回の企画に取り掛かろうと思った次第です。 まあ、治療している間も、【ゴレてん】とか【箱庭の魔王様】などの作品をスローペースで書いては居たのですがねw なので、まだハクスラ異世界を読まれていない読者から、既に一度お読みになられた読者にも楽しんで頂けるように書き直して行きたいと思っております。 ですので是非にほど、再びハクスラ異世界をよろしくお願いいたします。 by、ヒィッツカラルド。

異世界とチートな農園主

浅野明
ファンタジー
ありがち異世界転移もの。 元引きこもりが異世界に行って、農業する。 チートありだけど、勇者にはなりません。世界の危機もないかも? よくあるテンプレ異世界もの、ご都合主義お好きでないかたはお止めください。 注釈:農業とはいえ畜産や養蜂、養殖なども後々入ってきます。 女主人公です。 7月27 、アルファポリス様より書籍化進行中のため、8月3日、3章までをダイジェスト化させていただきます。 1月25日、アルファポリス様より2巻刊行決定のため、2月3日、「果樹園を作ろう」までをダイジェスト化させていただきます。 7月2日、アルファポリス様より3巻刊行決定のため、7月11日「花畑を作ろう」をダイジェスト化させていただきます。

異世界転生令嬢、出奔する

猫野美羽
ファンタジー
※書籍化しました(2巻発売中です) アリア・エランダル辺境伯令嬢(十才)は家族に疎まれ、使用人以下の暮らしに追いやられていた。 高熱を出して粗末な部屋で寝込んでいた時、唐突に思い出す。 自分が異世界に転生した、元日本人OLであったことを。 魂の管理人から授かったスキルを使い、思い入れも全くない、むしろ憎しみしか覚えない実家を出奔することを固く心に誓った。 この最強の『無限収納EX』スキルを使って、元々は私のものだった財産を根こそぎ奪ってやる! 外見だけは可憐な少女は逞しく異世界をサバイバルする。

愛されていないはずの婚約者に「貴方に愛されることなど望んでいませんわ」と申し上げたら溺愛されました

海咲雪
恋愛
「セレア、もう一度言う。私はセレアを愛している」 「どうやら、私の愛は伝わっていなかったらしい。これからは思う存分セレアを愛でることにしよう」 「他の男を愛することは婚約者の私が一切認めない。君が愛を注いでいいのも愛を注がれていいのも私だけだ」 貴方が愛しているのはあの男爵令嬢でしょう・・・? 何故、私を愛するふりをするのですか? [登場人物] セレア・シャルロット・・・伯爵令嬢。ノア・ヴィアーズの婚約者。ノアのことを建前ではなく本当に愛している。  × ノア・ヴィアーズ・・・王族。セレア・シャルロットの婚約者。 リア・セルナード・・・男爵令嬢。ノア・ヴィアーズと恋仲であると噂が立っている。 アレン・シールベルト・・・伯爵家の一人息子。セレアとは幼い頃から仲が良い友達。実はセレアのことを・・・?

【完結】辺境の魔法使い この世界に翻弄される

秋.水
ファンタジー
記憶を無くした主人公は魔法使い。しかし目立つ事や面倒な事が嫌い。それでも次々増える家族を守るため、必死にトラブルを回避して、目立たないようにあの手この手を使っているうちに、自分がかなりヤバい立場に立たされている事を知ってしまう。しかも異種族ハーレムの主人公なのにDTでEDだったりして大変な生活が続いていく。最後には世界が・・・・。まったり系異種族ハーレムもの?です。

クラス転移したら追い出されたので神の声でモンスターと仲良くします

ねこねこ大好き
ファンタジー
 モンスターと仲良くお話! 戦うなんてできません!  向井零(ムカイゼロ)は修学旅行中に事故にあい、気づくとクラスメイトとともに異世界へ飛ばされた。  勇者なので魔軍と戦ってほしいとのこと。  困惑するゼロは不安ながらもクラスメイトとともに迷宮へ潜り、戦いの特訓をする。  しかしモンスターと戦うのが嫌なゼロは足を引っ張るばかり。 「死ね!」  ついに追い出されてしまう。 「お腹が空いたの?」  追い出されてすぐにゼロは一匹のモンスターを助ける。 「言葉が分かる?」  ゼロはモンスターの言葉が分かる神の声の持ち主だった! 『小説家になろう様に転載します』

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

処理中です...