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第115話【ヒップアタック】

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プリッ、プリッ、プリッ……。

「おはようございま~す」

「やあ、アスランくん。おはよう」

プリッ、プリッ、プリッ……。

俺が目を覚まして一階に降りて行くと、パーカーさんがテーブル席でコーヒーを飲んでいた。

部屋の中にはコーヒーの良い匂いが漂っている。

プリッ、プリッ、プリッ……。

「キミも飲むかい、コーヒーを?」

「ええ、頂きます」

プリッ、プリッ、プリッ……。

俺が眠気眼でコーヒーを啜っていると、厨房からパーカーさんが食器を運んで来た。

皿の上には目玉焼きが置かれている。

プリッ、プリッ、プリッ……。

「やあ、アスランくん。昨日は良く眠れたか~い。ほら、朝御飯だよ~。食べるだろ~?」

「有り難うございます。ピーターさん」

プリッ、プリッ、プリッ……。

俺たち三人は、こうして朝食を頂いた。

目玉焼きとパン。それにコーヒー。

なんともモーニングで簡単な朝食である。

プリッ、プリッ、プリッ……。

「ところで、アスランくん。本当に今日からダンジョンに入るのかね?」

「ええ、入りますとも」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「マジでかい。本当に冒険者ってヤツは怖いもの知らずだね~」

「だなぁ。俺だったら命令でも断るぜ」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「まあ、仕事ですからね。それと俺がダンジョンに入っている間は、鉄扉を閉めないでくださいな。いつでもダッシュで避難できるようにさ」

「ああ、分かっている。どうせモンスターも上がって来ないから問題無いだろう」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「二人とも、良かったら俺とダンジョンに入りませんか?」

「冗談はやめてくれよ」

「そうそう、僕たちは死にたくないからね~」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「…………」

「…………」

「…………」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「ところでさ?」

「なんですか、パーカーさん?」

「この屁は誰がこいているんだ?」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「俺です。アスランの屁です……。俺のお尻が緩みきっています……」

「やっぱりそうか……」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「え、なに。キミは病気なのか?」

「ええっ!? 俺、病気なの!?」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「これだけ屁が止まらないと病気だろ」

「僕もそう思いますよ~」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「ちょっと二人とも! 逃げないでくださいな!!」

「そりゃあ、逃げるだろ。移されたら堪らんからな……」

「あれ?」

「どうした、アスランくん?」

「屁が止まったぞ!」

「本当だ。ガス漏れ音が聞こえなくなったぞ!」

「やったーーー!!」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「「あれ……」」

「アスランくん、また出始めたのか?」

「俺じゃあないですよ?」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「パーカー、アスランくん。僕だよ………」

「「!?」」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「今度は僕のお尻が緩みだしたよ……」

「何故にアスランくんの屁がピーターに移るんだよ!?」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「知らないよ。僕だって初めてさ!!」

「とりあえず俺に近付くな!」

「なんでだよ!?」

「移ったらたまらんだろ!!」

「移るわけないだろ!!」

「ちょっと待て……」

「屁が止まってないか?」

「と、止まっているな?」

「止まっているね……」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「いや、またガス漏れ再開だ!!」

「誰だ、今度は!?」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「アスランくんですか?」

「俺は大丈夫だ。ピーターさんじゃあね?」

「ぼ、僕は大丈夫だよ……」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「俺だわ~。ガス漏れしてるの俺だわ~!」

「「パーカーさん!!」」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「どうするパーカーさん、ピーターさん。とりあえずゆっくり落ち着いて考えよう!」

「そ、そうだな、アスランくん……」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「どうしてこの屁は伝染するんだい!?」

「知るか、ピーター!」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「落ち着けよ、パーカーさん。とりあえず俺はダンジョンに旅立つからさ、それからゆっくりと考えてくれよ。じゃあ、ピーターさん、ダンジョンの鍵を開けてくれないか?」

「ああ、分かったよ。今開けるね」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「いやいやいや、ちょっと待てよ、お前ら!?」

「「なに?」」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「まずは屁をどうにかしないとさ!?」

「「なんで?」」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「いゃ~~、なんでとかじゃあないでしょうが。謎の伝染屁ですよ!」

「ほら、それはパーカーさんの屁だからね」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「そうそう、もうじきスパイダーが来たら僕も交代で帰るからさ。あとはスパイダーと考えてよ」

「ちょっと待てやお前らな!」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「そもそもお前らから移った屁だぞ!」

「だが、今はキミのだ」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「畜生、こうなったら意地でも移してやるぞ!」

「うわ、ちょっと尻をぶつけて来るなよ、キモイ!!」

プリッ、プリッ、プリッ……。

「うーわ、止めてくれ~!!」

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」

「うわ、バッチイ!!」

「これで、どうだ!!」

「ひぃーーー!!!」

「「「あっ……」」」

「止まったな……?」

「止まりましたね?」

「パーカーさん、ピーターさん、本当に止まったの?」

「うん、止まってるよ……」

「おう、止まってるな!」

「「「よっしゃーー!!」」」

プリッ、プリッ、プリッ……。

プリッ、プリッ、プリッ……。

プリッ、プリッ、プリッ……。

「「「あーーーー……」」」

「またかよ……」

「またですな……」

「もしかして、全員が屁をしているのか?」

プリッ、プリッ、プリッ……。

プリッ、プリッ、プリッ……。

プリッ、プリッ、プリッ……。

「そのようだな」

「そうみたいです……」

「畜生……」

その時である。

もう一人の登場人物が現れた。

「ちぃーす、スパイダーの出勤でーす」

三人が尻から一斉に飛び掛かった。

「「「食らえ!!!」」」

「ぬぬぬーーーっ!!!」

出勤して来たばかりのスパイダーに、三人が揃ってヒップアタックを仕掛けたのであった。


【つづく】
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