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第109話【星型の謎】

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俺とゾディアックさんが二階に上がるとギルマスの部屋に通された。

マッチョなモヒカンオヤジのギルガメッシュがソファーセットで寛いでいる。

今日は普通のサスペンダー姿であった。

いやいや、上半身裸なのだ、普通ではないか。

「やあ、二人してお越しかい」

「ああ、下で偶然にも出会いましてね」

「偶然だ。ただの偶然なんだぞ。決して怪しい関係じゃあないんだからね!」

「アスランくん。あんまり必死に言い訳をしないでくれないか。逆に怪しく思われるからさ……」

「ああ、済まない。わざとだから」

「まあ、いいさ。君たちの挨拶が済んでるなら座りたまえ」

俺とゾディアックさんがギルガメッシュの向かいに腰掛けるとパンダの剥製がお茶を運んで来る。

「じゃあ依頼の内容を聞かせて貰おうか?」

そうギルガメッシュが言った。

どうやらギルマスも依頼内容を知らないらしい。

それで良く俺に振る気になりやがったな。

この糞オヤジが!

「その前に、この仕事をアスランくんに依頼するつもりなのですか、ギルマス殿は?」

「ああ、キミから最初に聞いた戦力ならば、彼一人で十分だと察したが。何か不満かね?」

「いいえ、ややキツイですが、彼ならどうにかしてくれるでしょう……」

なんだ?

ちょっと不満があるっぽいな。

俺では信用できないのかな?

「まあ、細かな話を聞かせて貰おうか。内容次第では別を当てるよ」

「分かりました」

俺の意見は聞かないのね。

まあ、いいけれどさ。

「では、話します」

一旦畏まってからゾディアックさんが話し出した。

「今回の依頼したい内容は、ゴモラタウンのダンジョンを捜索して貰いたい」

捜索イベントか。

それにしてもゴモラタウンのダンジョンってなんだろう?

「ゴモラタウンのダンジョンで、何かあったのかね。普段のあそこは立ち入り禁止のはずだが?」

「ええ、君主殿が代々立ち入り禁止にしています」

へぇー、そうなんだ。

「それなんですが、突然に君主殿が極秘にダンジョン捜索を依頼して来たのですよ」

「それが、例の条件だったのか……」

例の条件ってなんだよ?

「はい、なので、案外にアスランくんなら良いのかも知れませんね」

「で、例の条件ってなんだよ。俺にも聞かせろ」

ゾディアックさんは視線を反らしたが、ギルガメッシュは無情にも答えた。

「出された条件は、無名で口が固くて使えるヤツだ」

「なるほど」

うん、そんなクールなヤツは俺しか居ないな。うんうん。

「ゴモラタウンのダンジョンに挑むのは極秘です。何せ普段は立ち入り禁止のダンジョンですからね」

「でぇ、そこで俺は何を探せばいいんだ?」

「君主ベルセルク殿の過去です」

よし、わけが分からん!

「分かったぜ。過去でも何でも探してやろうじゃあないか」

本当は何も分かってないけれどね。

とりあえず冒険の仕事が出来るなら、なんだってやるさ。

ましてや相手はダンジョンだろ。

大冒険じゃあないかよ。

断る理由が無いわ。

「で、過去って何だよ?」

「それは僕も知らないんだ。これを持っていけば君主ベルセルク殿が直々に話してくれるはずだ」

そう言いながらゾディアックさんは、懐から羊皮紙の手紙を出した。

それを俺に手渡す。

「中を見てくれ」

「どれどれ……」

羊皮紙は口を蝋燭で封印されていた。

俺はそれを外して中身を読む。

「これ、何語?」

しかし俺には読めない文字だった。

俺がゾディアックさんに見せるが彼にも分からなかった。

「な、なんて書かれているんだろう。僕が知っている魔法の文字じゃあないね……」

おいおい、魔法使いのお前さんに読めない文字を俺が読める分けないだろ。

そこにギルガメッシュが覗き込んで答えた。

「あー、これはドラゴンの文字だろ」

ドラゴン?

俺の脳裏に馬鹿ドラゴン兄妹の記憶が蘇った。

あいつら今ごろ何をしているのかな~?

女の子になれたのかな~?

それよりも──。

「なんて書いてあるか、読めますか?」

「どれどれ~」

俺から羊皮紙の手紙を受け取ったギルガメッシュが、考えながら文章を読み上げた。

「愛しき人間。私は地下で待つ。長きに渡って、地下で待つ。心が決まったら、会いに来い。かな」

「ラブレターかな?」

「それっぽいね?」

なんでこんなものを渡したんだろう。

「こりゃあ、とりあえずは君主さんによ、会いに行って話を詳しく聞かんと分からんだろうな」

「そうだね。じゃあ、アスランくんが訊きに行ってくれないか」

「ああ、分かった」

まあ、そうなるよね。

これ以上ここで話しても何も話は進まんだろう。

「ところで依頼料金は、幾らなんだ?」

「それなんだが、無しだ」

「え、無し?」

「ただし、ゴモラタウンのダンジョンで手に入れたすべての物を譲渡するらしい」

なるほどね。

長いこと人が入っていないダンジョンがステージだ。

そこに入れて、手に入れたアイテムが全部自分の物になるならば、かなりの儲け話になりそうだぜ。

これは受けずにいられない仕事だわな。

「分かったぜ。その謎が多い仕事は、俺の物だ!」

興奮した俺が拳を握りながら立ち上がると、ギルガメッシュが何気無い動きでサスペンダーを僅かにずらした。

するとギルガメッシュの乳首が僅かに見える。

乳首は星型だった。

なぜ!?

何故に乳首が星型なんだよ!?

俺の中ですべてが吹っ飛んだ。

「まあ、興奮するな、アスラン」

ギルガメッシュが俺を落ち着かせて座らせるが、俺の頭の中はそれどころではない。

何故に乳首が星型なんだよ!!

「じゃあ、この話はアスランに任せるで良いですな、ゾディアックさん」

「はい、僕は構いません」

構うだろ!

だって乳首が星型だったんだぞ!!

お前は見なかったのか!?

「じゃあ、アスラン。旅の支度が済んだら、直ぐにゴモラタウンに旅立ってくれ」

「あ、ああ。分かった……」

それで話は終わった。

俺とゾディアックさんが部屋から出て行く時だった。

ギルガメッシュに俺が呼び止められる。

「アスラン……」

「なんだよ?」

俺が振り返るとギルガメッシュがイタズラっぽく微笑みながら、両手で両サスペンダーをずらしていた。

両方の乳首が星形だった。

「なっ!!」

そしてギルガメッシュは振り返るとマホガニーの机のほうに歩いて行った。

それっきりである。

俺が遅れて部屋を出ると、ゾディアックさんが待って居た。

そして、ゾディアックさんがボソリと述べる。

「乳首、星型だったよね……」

「あんたも見てたんかい!!」


【つづく】
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