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第107話【ボディコン衣装の攻防】

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朝が来る。

窓の隙間から朝日と鳥の五月蝿い鳴き声が届いて来た。

俺はベットから起きると両腕を高く上げながら背を伸ばした。

ああ、眠い……。

眠いが俺には目的があった。

この目的を果たすために今日は寝坊が出来ない。

俺は必ずこの目的を果たすと誓ったのだ。

俺はテーブルの上に置かれた赤い着物を取ると、ゆっくりと着こむ。

何せ初めて着るタイプの洋服だ。勝手が良くわからない。

えっと、こっちが前かな?

よいしょっと……。

何だろう?

結構と胸のところがブカブカだな。

もしかしてスカル姉さんって乳がデカイのか?

んー、そんなはずが無いよな。

多分さ、俺のオッパイが小さ過ぎるんだ。

うん、そうだそうだ。

まあ、これで良いだろう。

俺は朝から爆笑を取るためにスカル姉さんが昨日残して行った赤いボディコン衣装を着こんだのだ。

これで三階まで上がって朝食を食ってやるぞ!

ぐははははは~~。

俺は自信の籠った薄ら笑いを上げた。

スカル姉さんの嫌がる顔が思い浮かぶぜ!!

俺はルンルン気分で三階に上がる。

そして、スカル姉さんといつも飯を食べている部屋に飛び込んだ。

ビックリさせてやるぞ!

「おは~よ~う~、スカル姉さん~!」

俺がルンルン気分で部屋に飛び込むと、二つの返事が戻って来た。

「おはよう、アスラン」

「お、おはよう、アスランくん……」

何故に声が二つなの?

しかも一つは男だったよね?

誰か居るのか?

俺が目を見開き凝視してみると、テーブル席にはスカル姉さんとゾディアックさんが腰かけて居た。

「なぜ!?」

何故にいつも居無い野郎がここに居る……?

しかも、俺がボディコン衣装の時に限ってさ……。

「ア、アスランくん、朝からハイカラな服を来ているね……」

苦笑うゾディアックの向かいでスカル姉さんが必死に笑いを堪えていた。

いや、ほとんど堪えきれていないな……。

畜生、こうなったら開き直ってやる!!

「なんだ~、昨晩は、ゾディアックさんがスカル姉さんのところにお泊まりでしたか!」

「えっ、そんなわけないだろう!」

慌てているのはゾディアックさんだけだった。

スカル姉さんは椅子から転げ落ちそうなぐらいに笑いを堪えている。

キィーー!!

なんか俺が負けた見たいで悔しいじゃあないか!!

「ア、アスラン。朝食を食べるだろ。早くそこに座りなさいよ……。くっくっくっ」

笑いを堪えてやがるぞ、この糞女は!!

俺は悔しがりながらも、ゾディアックさんの隣の椅子に腰かけた。

コーヒーを啜りながらゾディアックさんが訊いて来る。

「と、ところでアスランくんは、なんでそんな格好なんだい?」

「ああ、これね。昨日の夜にさ、スカル姉さんが俺の部屋に忘れて行ったんだよ」

「ぶっーーー!!」

「きぃぁぁぁああああ!!!」

ゾディアックさんが飲んでいたコーヒーを吹いた。

その吹いたコーヒーシャワーがスカル姉さんの顔面に浴びせられて悲鳴を上げていた。

面白いな、このおっさんは。

なかなか、やりおるわい。

「ちょっと汚いわね、ゾディアック!!」

「す、すまない。ドクトル・スカル!!」

二人がワーワーギャーギャー騒ぎ立てるなか俺は準備されていた朝食を食べ始める。

まあ、このぐらいで勘弁してやろう。

俺はゾディアックさんに冗談だと告げる。

俺の戦意が無くなると、そこからは静かな朝食会と変わった。

「なんで今日はゾディアックさんが居るんだ?」

俺の質問に答えたのはスカル姉さんのほうだった。

「今日の朝からゾディアックがゴモラタウンに旅立つから、お使いを頼もうと思ってな。それで朝から寄って貰ったんだよ」

「なるほどね~。で、なんのお使いなんだ?」

「薬草だ。スバルのところには無い薬草が切れてな。それを頼んだんだ」

「へぇ~。で、ゾディアックさんは何でゴモラタウンに?」

「僕は魔法使いギルドの会議でね。ゴモラタウンで近隣ギルドの中堅クラスが揃うんだよ。それに参加しに出向くんだ」

「なるほどね~。社会人って大変だね~」

三人の朝食が終わってスカル姉さんが食器を片付け始める。

俺はコーヒーを飲みながらゾディアックさんに訊いてみた。

「ゾディアックさん。見えない時空の扉って知ってるかい?」

先日、俺やマヌカビーが潜った時空の扉だ。

魔法使いギルドの中堅さんなら何かしら知っているだろう。

「時空の扉、かい?」

「そう、透明なヤツだ。目に見えないが、そこに在って別の離れた場所に繋がって居るヤツだよ」

「あ~、それは多分だが、インビシブルゲートじゃあないかな」

「なんだい、インビシブルゲートってさ?」

「魔法のゲートだよ。ドルイド系の高レベル魔法で、もう使える者も少ないかな」

あのドデカイババァ~はドルイドだったのか。

「それにしても、原理は分からないが便利な魔法だな」

「周囲の自然エネルギーを利用して構成される魔法で、ただ唱えればいいってもんじゃあ無いから、使える者も少ないんだ」

なるほどね。

俺が使うには、ちょっと難しそうだな。

「へぇ~、キミはインビシブルゲートを見たのかい?」

「キルケって言う魔女が使ってたぜ」

「なに、キルケだって!?」

あー、何かな?

すげー、ゾディアックさんの表情が怖いけど?

「キミは魔女キルケに出会ったのかい!?」

「ああ、殺したぞ」

「うそ~~ん……」

なんだろう。

凄くゾディアックさんが脱力しているわ?

もしかして、殺したらアカン人でしたかな?

食器を片付け終わったスカル姉さんが、コーヒーカップを片手にテーブル席へ戻って来る。

「魔女キルケって、魔法使いギルドが賞金首に掛けているヤツよね?」

「へぇ~、スカル姉さんも知ってるんだ」

「確か賞金額が100000G だったわよね?」

俺はムクリと椅子から立ち上がるとボディコン衣装を脱ぎ捨てる。

俺は全裸のまま言った。

「俺、あのババァ~の首を拾って来るわ!!」

スカル姉さんは俺が脱ぎ捨てた衣装を拾いながら言葉を返す。

「行ってらっしゃいな。頑張って稼いでくるのよ~」

全裸の俺は部屋を飛び出すと自室に戻って旅の支度を整える。

直ぐに支度が済んだのでスカル姉さんの下宿を飛び出した。

100000Gだぞ!

あの糞ババァ~の首が100000Gなのだ!

これを拾わずには要られるか!!

建物を出たところでゾディアックさんとまた出会う。

そしてゾディアックさんに言われる。

「アスランくん、急ぐのはいいんだが……」

「なに!?」

もう、うざいな!

俺は急いでるんだぞ!!

そして、やっとゾディアックさんが語った。

「服ぐらい、着ようね……」

「あ、全裸だ。服を忘れてたわ!!」

全裸に慣れたせいか、服を着るのを忘れてしまった。

人の習慣って、怖いよね~。

もう一度俺は下宿に戻った。

服を着直してから出直す。

そして、二日掛けてダンジョンまで到着したが、インビシブルゲートは消えていた。

ゾディアックさん、この魔法が消滅するならするって先に教えて置いて下さいな……。

俺は往復での四日間を無駄にした。


【つづく】
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