74 / 604
第74話【勝手な約束】
しおりを挟む
俺は病室のベッドに寝転びながら考えていた。
ドラゴンルビーの指輪は欲しいが、本当にドラゴンのグラブルを騙しきれるだろうか?
相手は文化レベルが低い世界の住人だが、5400歳を超えるドラゴン族だ。
彼らドラゴン族は人間を下等と述べるほどの高い知能を持ち合わせている。
舐めて掛かっては、駄目なのではないのだろうか?
グラブルは、恋心と性欲に目が眩んでいるとはいえ、知能の高いドラゴンなのだ。
ドラゴンがどれほど賢いのか?
俺より賢いのか?
むしろ、俺なんかより賢いのではないだろうか?
騙すなんて、もってのほかなのじゃあないのだろうか?
分からん……。
難しいや……。
寝よ……。
そして、朝が来た。
俺はスカル姉さんと朝食を取り終わると、ウェイトレス姿の上にいつものローブを羽織りバトルアックスを背負った。
いつもより軽装だが、別に町の側の洋館までしか行かないのだ、問題なかろう。
俺は、フードを被るとソドムタウンを出た。
そして、洋館を目指す。
俺が洋館に到着すると、洋館の前ではアンが待ち受けていた。
リボン姿のままで仁王立ちしている。
「遅かったな、人間人間人間のアスラン!」
「やあ、アン。異次元牢獄から出して貰ったんだな」
「慈悲深いお兄様が許して許してくれたのだ。しばらく言い寄らなければと、条件を出されたがな!」
「守る気があるのか、お前には?」
「うむ、有る!」
以外だな。どういう心境の変化だろう。
「そうかそうか」
俺がアンの頭を撫でてやると、彼女は気恥ずかしそうに畏まっていた。
「で、お兄様は居るのかい?」
「屋敷の二階に居る。アンが案内案内案内する!」
「ああ、よろしく」
俺はアンに案内されて二階の一室に通される。
そこは昨日の部屋だった。
グラブルがソファーに腰かけながら俺を待っていた。
「やあ、アスランくん。早いね。もう、ウェイトレスの彼女が見付かったのかい?」
アンは部屋の中に入って行ったが、俺は部屋の外に居た。
「それなんだがな、ちょっとこれを見て貰いたい」
「何かね?」
俺は一度壁の陰に隠れると、ローブを脱いでからウェイトレス姿をグラブルに見せる。
「おお、キミは!」
グラブルがウェイトレス姿の俺を見て歓喜していた。
この馬鹿ドラゴンは、やっぱり気付いていないよ。
「グラブル、俺だよ……」
「へぇ?」
グラブルは俺の声を聞いて可笑しな表情を見せていた。
俺は真実を語る。
「あんたが一目惚れしたウェイトレスさんは、俺だよ。このアスランだ」
「へぇ?」
ここまで言っても理解できていない様子だった。
そりゃあそうだろうさ。
一目惚れの相手が実話男だと分かれば混乱もするわな。
「いやいやいや、ちょっと待ってくれ……」
グラブルは眉間を摘まみながら俯いた。
「えーと、まずは話を整理しようじゃあないか」
「どうぞ、ゆっくり整理してくれ」
「僕が一目惚れしたウェイトレスさんは、アスランくんだったと言うのかね?」
「そうだ」
「昨日一昨日と僕が彼女を探しても見付からなかったわけは、僕がキミを異次元牢獄に閉じ込めていたからだと?」
「そうだ」
「結論からして、僕は男であるキミに一目惚れしたのかね?」
「結論はそうだな」
「うむむ~……」
グラブルは深く俯きながら考え込んでいる。
やはり真実を正直に突き付けるのは不味かったかな?
怒っちゃったかな?
「なるほどね」
グラブルはムクリと頭を上げた。
その顔は、不思議と落ち着いた真顔だった。
「キミが一目惚れの相手で男だとは理解できた」
「そうですか」
さて、どう出るドラゴン?
「ちょっとだけいいかな、アスランくん」
「えっ?」
グラブルがソファーから立ち上がり、俺に歩み寄る。
そして、人差し指を立てながら腕を伸ばして来た。
そのまま人差し指の先を俺の額に付ける。
その瞬間であった。
「うわっ!!」
まるで意識だけが凄い勢いで撥ね飛ばされたような感覚だった。
身体だけ残されて魂だけが星の輝く世界を昇って行く。
そして、目の前を幾つかの映像が猛スピードで流れては消えて行った。
なんだ、これは!?
これが噂に聴く走馬灯ですか?
「貴方は間違っているわ!」
あれ、スカル姉さんだ。
それにゾディアックさんとギルガメッシュさんも居る。
他にも何人か、ごっつい人が居るな。
皆が何かを見上げているぞ?
「私は行き着くところまで行くのだよ!」
あれは、アマデウスの野郎じゃあないか?
なんか、すげー高い場所でグランドピアノを弾いていやがるぞ?
周りには竜巻が何本も吹き荒れているな。
もう、天変地異が起きているようだった。
あいつ、何を仕出かしているんだ?
「もう、止めてください、若頭!!」
あれは、クラウドとゴリじゃあないか?
これは、未来か?
俺は未来でも見ているのかな?
「こんなゴミ溜めのような町は、無くなればいいのだよ!」
うわぁ~~、アマデウスの野郎、狂喜乱舞してるね。
目が行っちゃってるよ、マジで!!
あれは破壊神にでもなった乗りですな!!
「うらぁぁぁぁああああ!!」
あれ、俺の声だ?
どこからかな?
上だ!?
皆が見上げているアマデウスの更に上からだ!
すげー勢いで降ってくるぞ、俺が!?
そして、アマデウスが弾いているグランドピアノに突っ込んだ!
グランドピアノが爆発したかのように吹っ飛ぶ。
「なるほどね」
「えっ!?」
そこで映像は途絶えた。
俺は洋館の部屋でグラブルと向かい合いながら立っていた。
「今のはなんだ!?」
「未来かな。確定こそしていないが、起こりうる未来の一つだよ」
「やっぱり、そうだよね……」
「どうやらキミには英雄の気質が有るようだ」
アンが横から口を挟む。
「やっぱり彼は、古い古い古い英雄神に何か関係しているの、お兄様?」
「アスランの名は、我らがドラゴン族の英雄神の名前だからね。そもそも人間が知っている名前ではないはずだ」
うむ、間違いないぞ。
俺をおいてけぼりにして、話が一人歩きしているな。
そして、グラブルがドラゴンルビーの指輪を俺に差し出した。
「約束通り、キミは僕の想い人を連れてきてくれたから、これを譲渡しよう」
「えっ、 マジでくれるのか!?」
なんか凄くラッキーな展開だぜ。
棚から牡丹餅だな!
「ああ、約束だからね。我々ドラゴン族は、約束を違えない」
「サンキュー!」
俺はグラブルから指輪を貰うと早速指にはめた。
俺の頭の中にメッセージが流れる。
【ドラゴンルビーの指輪の譲渡完了。新規登録を致しました。これからは貴方が正当なる所有者です】
やったぜ、四次元宝物庫をゲットしたぜ!
「じゃあ、アスランくん。ドラゴンルビーの指輪の正式な保有者になった証に、この書類にサインをしてくれたまえ」
そう言いながらグラブルが、羊皮紙の書類をテーブルの上に広げる。
そこには何やら読めない字で色々と書かれていた。
どうやらドラゴン族の文字のようだ。
「ささ、ここにサインしてくれ。人間の文字で構わないからさ!」
俺はグラブルに急かされながら羽ペンを手渡された。
「んん、なんか可笑しくね?」
「な、何がだね……」
さっき確かに頭の中に所有者が俺になったとメッセージが流れたはずだが、何故にまた書類にサインせにゃならんのだ?
これは可笑しいぞ。
グラブルのヤツは、何かを企んでいやがるな。
「なあ、アン。この羊皮紙の文字を読めるよな?」
「ああ、読める読める読めるとも!」
「なんて書いてあるんだ?」
「アン、言っちゃ駄目だ!!」
グラブルが凄く慌てているが、アンは無情にも羊皮紙の内容を俺に教えてくれる。
「それはそれは婚姻届だな。お兄様の名前も書いてある!」
「なに!!」
「あー……、言っちゃったよ」
こわ!
何それ!
この野郎、俺と結婚しようとしてたのかよ!
男同士でさ!!
多分この羊皮紙は契約魔法のスクロールだろう。
危うくサインをしていたら契約魔法に魂を縛られるところだったぜ!
そして、慌てたグラブルが言い訳を延べる。
「ほら、僕からの婚約指輪も受け取ってくれたから、結婚してくれるのだと思ってね。あははははー」
ドラゴンルビーの指輪は、婚約指輪かよ!
「笑ってんじゃあねえよ。なんで男同士で結婚せにゃあならんのだ!」
「我々ドラゴン族には性別とか関係ないからさ」
「人間の俺には大ありだ!」
そりゃあ、一部では同性愛者が結婚できる制度は幾らでもあるけれど、俺は普通に女の子と結婚したいのだ!
こんなホストっぽいドラゴンお兄様と結婚なんてしたくないわ!
「そもそも、あんたは世継ぎが欲しくて、嫁さん探しをしてたのじゃあないのかよ!?」
アンの話ではそんな感じだったはずだ。
「まあ、そうなんだが。その辺は、相手に産ませるか、自分が産むかの差でしかないからね」
「はあ? 言っている意味が分かりませんが?」
「我々ドラゴン族は性別を変えられるから、私が産めばいいと言っているのだよ」
「マジで……」
「ああ、性転換に百年ぐらいかかるが、私が産むのには、やぶさかではないぞ」
「ちょっとまて!」
「なんだい、ダーリン?」
「幾つかの問題があるぞ!」
「だから、なんだい、ダーリン?」
「まず、俺はお前と子作りする気がない!」
「それは時間をかけて口説いて行くさ」
「二つ目は、俺は百年も生きれないぞ。お前が性転換をすませたころには、生きていたとしても、干からび欠けたヨボヨボのジジイになっとるわ!」
「なるほど。では、僕が性転換を急ぐか、キミの寿命を伸ばすかの策を取ろう。アドバイスを有り難う、ダーリン」
「三つ目だ。ダーリンって呼ぶのを止めろ、キモイ!!」
「それは何れ慣れるから、問題ないぞ」
「すべて大ありだ!!」
「アン、お前からも何とか言ってやれ。お前はお兄様ラブだっただろ。それが俺と子作りしていいのか!?」
「なに、それは問題問題問題無いぞ。お兄様が性転換を済ませる前に、私がお前の子供を孕めば良いだけだからな!」
「はて? アンさん、言っている意味が微塵も理解出来ないのですが!?」
「何を言っているのだ。お前が異次元牢獄から出れたら、どんな願いでも聞いてやると約束約束約束したではないか!」
「いやいやいや、それとこれとが何故に繋がるのさ!?」
「当然ではないか、ドラゴン族の最大の願いは種族の継続だ。その最大級の願いを聞き入れて当然ではないか!」
「それはお前の願いであって、俺の願いでは無いぞ!」
「馬鹿を馬鹿を馬鹿を言うな。私の願いはお前の願いだろ!」
「馬鹿はお前だ!!」
グラブルが更に状況を複雑にする。
「アスランくん。我々ドラゴン族は個体数が少ないから、近親相姦が許されている。だから、兄妹揃って抱いてもらっても構わないぞ」
「兄妹とか言うな、せめて姉妹になってから言えよ!!」
【つづく】
ドラゴンルビーの指輪は欲しいが、本当にドラゴンのグラブルを騙しきれるだろうか?
相手は文化レベルが低い世界の住人だが、5400歳を超えるドラゴン族だ。
彼らドラゴン族は人間を下等と述べるほどの高い知能を持ち合わせている。
舐めて掛かっては、駄目なのではないのだろうか?
グラブルは、恋心と性欲に目が眩んでいるとはいえ、知能の高いドラゴンなのだ。
ドラゴンがどれほど賢いのか?
俺より賢いのか?
むしろ、俺なんかより賢いのではないだろうか?
騙すなんて、もってのほかなのじゃあないのだろうか?
分からん……。
難しいや……。
寝よ……。
そして、朝が来た。
俺はスカル姉さんと朝食を取り終わると、ウェイトレス姿の上にいつものローブを羽織りバトルアックスを背負った。
いつもより軽装だが、別に町の側の洋館までしか行かないのだ、問題なかろう。
俺は、フードを被るとソドムタウンを出た。
そして、洋館を目指す。
俺が洋館に到着すると、洋館の前ではアンが待ち受けていた。
リボン姿のままで仁王立ちしている。
「遅かったな、人間人間人間のアスラン!」
「やあ、アン。異次元牢獄から出して貰ったんだな」
「慈悲深いお兄様が許して許してくれたのだ。しばらく言い寄らなければと、条件を出されたがな!」
「守る気があるのか、お前には?」
「うむ、有る!」
以外だな。どういう心境の変化だろう。
「そうかそうか」
俺がアンの頭を撫でてやると、彼女は気恥ずかしそうに畏まっていた。
「で、お兄様は居るのかい?」
「屋敷の二階に居る。アンが案内案内案内する!」
「ああ、よろしく」
俺はアンに案内されて二階の一室に通される。
そこは昨日の部屋だった。
グラブルがソファーに腰かけながら俺を待っていた。
「やあ、アスランくん。早いね。もう、ウェイトレスの彼女が見付かったのかい?」
アンは部屋の中に入って行ったが、俺は部屋の外に居た。
「それなんだがな、ちょっとこれを見て貰いたい」
「何かね?」
俺は一度壁の陰に隠れると、ローブを脱いでからウェイトレス姿をグラブルに見せる。
「おお、キミは!」
グラブルがウェイトレス姿の俺を見て歓喜していた。
この馬鹿ドラゴンは、やっぱり気付いていないよ。
「グラブル、俺だよ……」
「へぇ?」
グラブルは俺の声を聞いて可笑しな表情を見せていた。
俺は真実を語る。
「あんたが一目惚れしたウェイトレスさんは、俺だよ。このアスランだ」
「へぇ?」
ここまで言っても理解できていない様子だった。
そりゃあそうだろうさ。
一目惚れの相手が実話男だと分かれば混乱もするわな。
「いやいやいや、ちょっと待ってくれ……」
グラブルは眉間を摘まみながら俯いた。
「えーと、まずは話を整理しようじゃあないか」
「どうぞ、ゆっくり整理してくれ」
「僕が一目惚れしたウェイトレスさんは、アスランくんだったと言うのかね?」
「そうだ」
「昨日一昨日と僕が彼女を探しても見付からなかったわけは、僕がキミを異次元牢獄に閉じ込めていたからだと?」
「そうだ」
「結論からして、僕は男であるキミに一目惚れしたのかね?」
「結論はそうだな」
「うむむ~……」
グラブルは深く俯きながら考え込んでいる。
やはり真実を正直に突き付けるのは不味かったかな?
怒っちゃったかな?
「なるほどね」
グラブルはムクリと頭を上げた。
その顔は、不思議と落ち着いた真顔だった。
「キミが一目惚れの相手で男だとは理解できた」
「そうですか」
さて、どう出るドラゴン?
「ちょっとだけいいかな、アスランくん」
「えっ?」
グラブルがソファーから立ち上がり、俺に歩み寄る。
そして、人差し指を立てながら腕を伸ばして来た。
そのまま人差し指の先を俺の額に付ける。
その瞬間であった。
「うわっ!!」
まるで意識だけが凄い勢いで撥ね飛ばされたような感覚だった。
身体だけ残されて魂だけが星の輝く世界を昇って行く。
そして、目の前を幾つかの映像が猛スピードで流れては消えて行った。
なんだ、これは!?
これが噂に聴く走馬灯ですか?
「貴方は間違っているわ!」
あれ、スカル姉さんだ。
それにゾディアックさんとギルガメッシュさんも居る。
他にも何人か、ごっつい人が居るな。
皆が何かを見上げているぞ?
「私は行き着くところまで行くのだよ!」
あれは、アマデウスの野郎じゃあないか?
なんか、すげー高い場所でグランドピアノを弾いていやがるぞ?
周りには竜巻が何本も吹き荒れているな。
もう、天変地異が起きているようだった。
あいつ、何を仕出かしているんだ?
「もう、止めてください、若頭!!」
あれは、クラウドとゴリじゃあないか?
これは、未来か?
俺は未来でも見ているのかな?
「こんなゴミ溜めのような町は、無くなればいいのだよ!」
うわぁ~~、アマデウスの野郎、狂喜乱舞してるね。
目が行っちゃってるよ、マジで!!
あれは破壊神にでもなった乗りですな!!
「うらぁぁぁぁああああ!!」
あれ、俺の声だ?
どこからかな?
上だ!?
皆が見上げているアマデウスの更に上からだ!
すげー勢いで降ってくるぞ、俺が!?
そして、アマデウスが弾いているグランドピアノに突っ込んだ!
グランドピアノが爆発したかのように吹っ飛ぶ。
「なるほどね」
「えっ!?」
そこで映像は途絶えた。
俺は洋館の部屋でグラブルと向かい合いながら立っていた。
「今のはなんだ!?」
「未来かな。確定こそしていないが、起こりうる未来の一つだよ」
「やっぱり、そうだよね……」
「どうやらキミには英雄の気質が有るようだ」
アンが横から口を挟む。
「やっぱり彼は、古い古い古い英雄神に何か関係しているの、お兄様?」
「アスランの名は、我らがドラゴン族の英雄神の名前だからね。そもそも人間が知っている名前ではないはずだ」
うむ、間違いないぞ。
俺をおいてけぼりにして、話が一人歩きしているな。
そして、グラブルがドラゴンルビーの指輪を俺に差し出した。
「約束通り、キミは僕の想い人を連れてきてくれたから、これを譲渡しよう」
「えっ、 マジでくれるのか!?」
なんか凄くラッキーな展開だぜ。
棚から牡丹餅だな!
「ああ、約束だからね。我々ドラゴン族は、約束を違えない」
「サンキュー!」
俺はグラブルから指輪を貰うと早速指にはめた。
俺の頭の中にメッセージが流れる。
【ドラゴンルビーの指輪の譲渡完了。新規登録を致しました。これからは貴方が正当なる所有者です】
やったぜ、四次元宝物庫をゲットしたぜ!
「じゃあ、アスランくん。ドラゴンルビーの指輪の正式な保有者になった証に、この書類にサインをしてくれたまえ」
そう言いながらグラブルが、羊皮紙の書類をテーブルの上に広げる。
そこには何やら読めない字で色々と書かれていた。
どうやらドラゴン族の文字のようだ。
「ささ、ここにサインしてくれ。人間の文字で構わないからさ!」
俺はグラブルに急かされながら羽ペンを手渡された。
「んん、なんか可笑しくね?」
「な、何がだね……」
さっき確かに頭の中に所有者が俺になったとメッセージが流れたはずだが、何故にまた書類にサインせにゃならんのだ?
これは可笑しいぞ。
グラブルのヤツは、何かを企んでいやがるな。
「なあ、アン。この羊皮紙の文字を読めるよな?」
「ああ、読める読める読めるとも!」
「なんて書いてあるんだ?」
「アン、言っちゃ駄目だ!!」
グラブルが凄く慌てているが、アンは無情にも羊皮紙の内容を俺に教えてくれる。
「それはそれは婚姻届だな。お兄様の名前も書いてある!」
「なに!!」
「あー……、言っちゃったよ」
こわ!
何それ!
この野郎、俺と結婚しようとしてたのかよ!
男同士でさ!!
多分この羊皮紙は契約魔法のスクロールだろう。
危うくサインをしていたら契約魔法に魂を縛られるところだったぜ!
そして、慌てたグラブルが言い訳を延べる。
「ほら、僕からの婚約指輪も受け取ってくれたから、結婚してくれるのだと思ってね。あははははー」
ドラゴンルビーの指輪は、婚約指輪かよ!
「笑ってんじゃあねえよ。なんで男同士で結婚せにゃあならんのだ!」
「我々ドラゴン族には性別とか関係ないからさ」
「人間の俺には大ありだ!」
そりゃあ、一部では同性愛者が結婚できる制度は幾らでもあるけれど、俺は普通に女の子と結婚したいのだ!
こんなホストっぽいドラゴンお兄様と結婚なんてしたくないわ!
「そもそも、あんたは世継ぎが欲しくて、嫁さん探しをしてたのじゃあないのかよ!?」
アンの話ではそんな感じだったはずだ。
「まあ、そうなんだが。その辺は、相手に産ませるか、自分が産むかの差でしかないからね」
「はあ? 言っている意味が分かりませんが?」
「我々ドラゴン族は性別を変えられるから、私が産めばいいと言っているのだよ」
「マジで……」
「ああ、性転換に百年ぐらいかかるが、私が産むのには、やぶさかではないぞ」
「ちょっとまて!」
「なんだい、ダーリン?」
「幾つかの問題があるぞ!」
「だから、なんだい、ダーリン?」
「まず、俺はお前と子作りする気がない!」
「それは時間をかけて口説いて行くさ」
「二つ目は、俺は百年も生きれないぞ。お前が性転換をすませたころには、生きていたとしても、干からび欠けたヨボヨボのジジイになっとるわ!」
「なるほど。では、僕が性転換を急ぐか、キミの寿命を伸ばすかの策を取ろう。アドバイスを有り難う、ダーリン」
「三つ目だ。ダーリンって呼ぶのを止めろ、キモイ!!」
「それは何れ慣れるから、問題ないぞ」
「すべて大ありだ!!」
「アン、お前からも何とか言ってやれ。お前はお兄様ラブだっただろ。それが俺と子作りしていいのか!?」
「なに、それは問題問題問題無いぞ。お兄様が性転換を済ませる前に、私がお前の子供を孕めば良いだけだからな!」
「はて? アンさん、言っている意味が微塵も理解出来ないのですが!?」
「何を言っているのだ。お前が異次元牢獄から出れたら、どんな願いでも聞いてやると約束約束約束したではないか!」
「いやいやいや、それとこれとが何故に繋がるのさ!?」
「当然ではないか、ドラゴン族の最大の願いは種族の継続だ。その最大級の願いを聞き入れて当然ではないか!」
「それはお前の願いであって、俺の願いでは無いぞ!」
「馬鹿を馬鹿を馬鹿を言うな。私の願いはお前の願いだろ!」
「馬鹿はお前だ!!」
グラブルが更に状況を複雑にする。
「アスランくん。我々ドラゴン族は個体数が少ないから、近親相姦が許されている。だから、兄妹揃って抱いてもらっても構わないぞ」
「兄妹とか言うな、せめて姉妹になってから言えよ!!」
【つづく】
0
お気に入りに追加
383
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第二章シャーカ王国編
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?
mio
ファンタジー
特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。
神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。
そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。
日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。
神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?
他サイトでも投稿しております。
ゲームっぽい世界に転生したので人間性を捨てて限界まで頑張る ~転生勇者もヒロインズも魔王もまとめてぶちのめす~
無職無能の自由人
ファンタジー
経験値2倍?秘密ルート?スキルビルド?勝手にやってろ
ゲームっぽい世界に転生したので頑張って頑張っていこう!
馬鹿で才能が無く特別な知識も無い、それでも人格持ち越しこそがウルトラチート
おばあちゃん(28)は自由ですヨ
七瀬美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。
その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。
どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。
「おまけのババアは引っ込んでろ」
そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。
その途端、響く悲鳴。
突然、年寄りになった王子らしき人。
そして気付く。
あれ、あたし……おばあちゃんになってない!?
ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!?
魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。
召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。
普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。
自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く)
元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。
外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。
※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。
※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要)
※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。
※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
異世界で賢者になったのだが……
加賀 燈夜
ファンタジー
普通の高校生が通り魔に殺された。
目覚めたところは女神の前!
そこで異世界転生を決意する
感想とアドバイス頂ければ幸いです。
絶対返すのでよろしくお願い致します。
特殊スキル持ちの低ランク冒険者の少年は、勇者パーティーから追い出される際に散々罵しった癖に能力が惜しくなって戻れって…頭は大丈夫か?
アノマロカリス
ファンタジー
少年テイトは特殊スキルの持ち主だった。
どんなスキルかというと…?
本人でも把握出来ない程に多いスキルなのだが、パーティーでは大して役には立たなかった。
パーティーで役立つスキルといえば、【獲得経験値数○倍】という物だった。
だが、このスキルには欠点が有り…テイトに経験値がほとんど入らない代わりに、メンバーには大量に作用するという物だった。
テイトの村で育った子供達で冒険者になり、パーティーを組んで活躍し、更にはリーダーが国王陛下に認められて勇者の称号を得た。
勇者パーティーは、活躍の場を広げて有名になる一方…レベルやランクがいつまでも低いテイトを疎ましく思っていた。
そしてリーダーは、テイトをパーティーから追い出した。
ところが…勇者パーティーはのちに後悔する事になる。
テイトのスキルの【獲得経験値数○倍】の本当の効果を…
8月5日0:30…
HOTランキング3位に浮上しました。
8月5日5:00…
HOTランキング2位になりました!
8月5日13:00…
HOTランキング1位になりました(๑╹ω╹๑ )
皆様の応援のおかげです(つД`)ノ
俺のハクスラ異世界冒険記は、ドタバタなのにスローライフ過ぎてストーリーに脈略が乏しいです。
ヒィッツカラルド
ファンタジー
ハクスラ異世界×ソロ冒険×ハーレム禁止×変態パラダイス×脱線大暴走ストーリー=前代未聞の地味な中毒性。
⬛前書き⬛
この作品は、以前エブリスタのファンタジーカテゴリーで一年間ベスト10以内をうろちょろしていた完結作品を再投稿した作品です。
当時は一日一話以上を投稿するのが目標だったがために、ストーリーや設定に矛盾点が多かったので、それらを改変や改編して書き直した作品です。
完結した後に読者の方々から編集し直して新しく書き直してくれって声や、続編を希望される声が多かったので、もう一度新たに取り組もうと考えたわけです。
また、修整だけでは一度お読みになられた方々には詰まらないだろうからと思いまして、改変的な追加シナリオも入れています。
前作では完結するまで合計約166万文字で601話ありましたが、今回は切りが良いところで区切り直して、単行本サイズの約10万文字前後で第1章分と区切って編成しております。
そうなりますと、すべてを書き直しまして第17章分の改変改編となりますね。
まあ、それらの関係でだいぶ追筆が増えると考えられます。
おそらく改変改編が終わるころには166万文字を遥かに越える更に長い作品になることでしょう。
あと、前作の完結部も改編を考えておりますし、もしかしたら更にアスランの冒険を続行させるかも知れません。
前回だとアスランのレベルが50で物語が終わりましたが、当初の目標であるレベル100まで私も目指して見たいと思っております。
とりあえず何故急に完結したかと言いますと、ご存知の方々も居ると思いますが、私が目を病んでしまったのが原因だったのです。
とりあえずは両目の手術も終わって、一年ぐらいの治療の末にだいぶ落ち着いたので、今回の企画に取り掛かろうと思った次第です。
まあ、治療している間も、【ゴレてん】とか【箱庭の魔王様】などの作品をスローペースで書いては居たのですがねw
なので、まだハクスラ異世界を読まれていない読者から、既に一度お読みになられた読者にも楽しんで頂けるように書き直して行きたいと思っております。
ですので是非にほど、再びハクスラ異世界をよろしくお願いいたします。
by、ヒィッツカラルド。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる