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第65話【ワイズマン】
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ウェイトレスのバイトに専念した次の日にも俺は冒険者ギルドに出向いた。
今日こそギルマスと仕事の話をするためだ。
もう、時刻は昼過ぎである。
俺は念のために冒険者ギルド本部に入る前、酒場の様子を覗き見た。
また、昨日みたいに捕まって、ウエイトレスをやらされたら堪らない。
だから俺は、そろ~りと入り口から顔半分を出して覗き込む。
するとハンスさんの他にもウェイトレスさんが三人ほど働いていた。
どうやら今日はシフトが揃っている様子だ。
俺は安心して建物に入って行った。
まずはカウンター席に腰掛けると、バーテンダーのハンスさんに話しかける。
「今日はウェイトレスさんも揃って居るようですね、ハンスさん」
「ああ、お陰さまで全員インフルエンザが治って職場復帰したよ」
「はやっ! インフルエンザが治るの早くね!?」
どう言うことだろう?
一日でインフルエンザって治るの、普通!?
てか、仮病だったの!?
俺が驚いているとハンスさんが理由を延べる。
「なんでも魔法使いギルドが販売しているインフルエンザの特効薬が有るらしくてね。そのポーションを飲んで一晩寝たら、すっかり治ったらしいんだ」
「魔法のポーションって、凄いな……」
もしかしたらこっちの世界のほうが、医学は兎も角として薬学は上なのかな?
薬だけなら魔法が有るぶんだけ効力は高いのかも知れないぞ……。
俺とハンスさんがインフルエンザの話をしていると、俺の横から誰かがコーヒーの注がれたカップを差し出す。
俺の前のカウンターに湯気が立つコーヒーカップが置かれた。
俺は、それを置いた人物のほうを見る。
「やあ、キミ。こんにちわ」
「だれ?」
男性だった。
モッチリとしたおっさんだ。
中年で太っているが上等な洋服を着ている。
身なり風貌からして、嫌みなぐらい金持ちなのが分かる。
冒険者じゃあないだろう。
だが、知らないおっさんであった。
「キミ、私のことを忘れたかね?」
「いゃ~~、すみません。ぜんぜん覚えていませんわぁ~」
「ならば、これなら思い出すかな?」
そう言うとモッチリとしたおっさんは、何を考えたか服を脱ぎだし始める。
あれよあれよと言う間に全裸になった。
そして、おれの前に差し出したコーヒーカップの中身を一気に飲みほすと、そのコーヒーカップを股間に被せた。
そこまで見て、俺は思い出す。
「あー、あんたは、山賊に追い剥ぎされてた人かぁ~」
「ふぅん、やっと思い出してくれたか。では、隣に座ってもいいかな?」
「いいけど……。いや、あんまり良くないな、変態だもの」
「マスター、私にバーボンを」
「はい」
「嫌だって言ってるだろ、無視すんな」
俺の言葉を無視したモッチリおっさんは、そのまま俺の隣に座った。
まず服を着ろって感じだわ。
「おっさん、隣に座るのはいいから、せめて服を着ろよ」
「ああ、忘れてたよ。普段はそんなに人前で脱がないからね。ついつい服を着直すのを忘れてしまった」
「いやいや、随分と脱ぎ慣れた感じがしたぞ」
「そうかい。まあ、ちょっと待っててくれたまえ。上着だけでも着るから」
「いや、ちゃんと下半身も穿けよ」
「え、気になる?」
「コーヒーカップだけだと、かなり気になるな」
「仕方ないな」
「仕方なくねーよ」
「若いのに細かいことを気にしすぎだな、キミは」
「細かいことと言えば、さっきさ、ち◯こに嵌めたコーヒーカップで、俺にコーヒーを進めなかったか?」
「そのコーヒーカップはキミから貰ったものだから、返そうかと思ってね」
「要らねーよ。くれてやるから家宝にしろよ」
「そう、要らないの。もしもあとから返してくれって言っても返さないぞ?」
「ぜってーに言わんから安心しろ」
上等な洋服をちゃんと着直したモッチリおっさんが、俺の隣の席に座ってバーボンを飲み始める。
「で、話ってなに?」
「やあ、キミにコーヒーカップを貰って随分と助けられたからね」
「あの状況からコーヒーカップ一つで助かったって、どう言うことだよ? 意味わかんねーよ」
「それに、なんでも山賊に奪われた荷物を取り返してくれたのも、キミらしいじゃないか」
「へー、商人ギルドから荷物を返して貰ったんだな。良かったじゃん」
「まあ、すべては帰ってこなかったがね。マジックアイテムのダガーと指輪に、魔法のスクロールが二枚だけ、あいつら山賊どもに持って行かれたようだ」
「そ、そうなんだ……」
俺は左の人差し指に嵌めてる指輪を隠した。
「そうだ、まだ私の名前を名乗ってなかったな。私はゴモラタウンで商いを営んでいるワイズマンって者だ」
「ワイズマン!?」
モッチリおっさんの名乗った名前を反芻して驚いたのはハンスさんだった。
「ハンスさん、このモッチリとしたおっさんのことを知ってるの?」
「モッチリも何も、……違った」
ハンスさんが言い直す。
「知ってるも何も、ゴモラタウンのワイズマンと言ったら慈善家の大富豪で有名ですよ……」
「慈善家?」
俺が知ってる慈善家の単語の意味が違うのかな?
俺にはこのモッチリおっさんが慈善家には見えないけれど。
ただの変態オヤジじゃんか?
「その慈善家さんが、なんで護衛も付けずに旅をして山賊に襲われていたんだよ?」
モッチリワイズマンが理由を答えてくれる。
「慈善家慈善家って言ってるのは、周りが勝手に言ってるだけだからな。私だって御忍びで遊びに出たい時もあるさ」
ソドムタウンのピンク街で密かに遊び回りたかったのかな。
「なるほど、それで一人だったのね」
「じゃあ、そろそろ行こうか」
「はぁ?」
いやいや、言ってる意味が分からないわ。
なんで同伴のキャバ嬢を連れ出すように、俺に言うんだよ。
マジで気持ち悪い。
「キミがアスランくんだよね?」
「なんで俺の名前を知っている……」
そうだよ、キモイよ。
なんでこんな変態慈善家富豪が俺の名前を知っているのさ?
それだけで、鳥肌が立つほどキモイわ!
そもそも名乗ったか、俺は?
「キミもギルガメッシュくんのところに呼ばれているんだろ?」
「ええ、まあ……。何故それを?」
「私もこれから、彼に会うからだ。だから、一緒に行こうかって言ってるんですよ」
「あんたも呼ばれてるの、これから?」
「だから一緒に行こうっていってるんだよ」
「それなら、しゃあないか……」
こうして俺は、モッチリ変態慈善家商人のおっさんと、ギルマスの部屋を目指した。
まだちょっと、キモくて怖い。
突然おさわりとかしてこないよね!
俺は警戒だけは怠らなかった。
【つづく】
今日こそギルマスと仕事の話をするためだ。
もう、時刻は昼過ぎである。
俺は念のために冒険者ギルド本部に入る前、酒場の様子を覗き見た。
また、昨日みたいに捕まって、ウエイトレスをやらされたら堪らない。
だから俺は、そろ~りと入り口から顔半分を出して覗き込む。
するとハンスさんの他にもウェイトレスさんが三人ほど働いていた。
どうやら今日はシフトが揃っている様子だ。
俺は安心して建物に入って行った。
まずはカウンター席に腰掛けると、バーテンダーのハンスさんに話しかける。
「今日はウェイトレスさんも揃って居るようですね、ハンスさん」
「ああ、お陰さまで全員インフルエンザが治って職場復帰したよ」
「はやっ! インフルエンザが治るの早くね!?」
どう言うことだろう?
一日でインフルエンザって治るの、普通!?
てか、仮病だったの!?
俺が驚いているとハンスさんが理由を延べる。
「なんでも魔法使いギルドが販売しているインフルエンザの特効薬が有るらしくてね。そのポーションを飲んで一晩寝たら、すっかり治ったらしいんだ」
「魔法のポーションって、凄いな……」
もしかしたらこっちの世界のほうが、医学は兎も角として薬学は上なのかな?
薬だけなら魔法が有るぶんだけ効力は高いのかも知れないぞ……。
俺とハンスさんがインフルエンザの話をしていると、俺の横から誰かがコーヒーの注がれたカップを差し出す。
俺の前のカウンターに湯気が立つコーヒーカップが置かれた。
俺は、それを置いた人物のほうを見る。
「やあ、キミ。こんにちわ」
「だれ?」
男性だった。
モッチリとしたおっさんだ。
中年で太っているが上等な洋服を着ている。
身なり風貌からして、嫌みなぐらい金持ちなのが分かる。
冒険者じゃあないだろう。
だが、知らないおっさんであった。
「キミ、私のことを忘れたかね?」
「いゃ~~、すみません。ぜんぜん覚えていませんわぁ~」
「ならば、これなら思い出すかな?」
そう言うとモッチリとしたおっさんは、何を考えたか服を脱ぎだし始める。
あれよあれよと言う間に全裸になった。
そして、おれの前に差し出したコーヒーカップの中身を一気に飲みほすと、そのコーヒーカップを股間に被せた。
そこまで見て、俺は思い出す。
「あー、あんたは、山賊に追い剥ぎされてた人かぁ~」
「ふぅん、やっと思い出してくれたか。では、隣に座ってもいいかな?」
「いいけど……。いや、あんまり良くないな、変態だもの」
「マスター、私にバーボンを」
「はい」
「嫌だって言ってるだろ、無視すんな」
俺の言葉を無視したモッチリおっさんは、そのまま俺の隣に座った。
まず服を着ろって感じだわ。
「おっさん、隣に座るのはいいから、せめて服を着ろよ」
「ああ、忘れてたよ。普段はそんなに人前で脱がないからね。ついつい服を着直すのを忘れてしまった」
「いやいや、随分と脱ぎ慣れた感じがしたぞ」
「そうかい。まあ、ちょっと待っててくれたまえ。上着だけでも着るから」
「いや、ちゃんと下半身も穿けよ」
「え、気になる?」
「コーヒーカップだけだと、かなり気になるな」
「仕方ないな」
「仕方なくねーよ」
「若いのに細かいことを気にしすぎだな、キミは」
「細かいことと言えば、さっきさ、ち◯こに嵌めたコーヒーカップで、俺にコーヒーを進めなかったか?」
「そのコーヒーカップはキミから貰ったものだから、返そうかと思ってね」
「要らねーよ。くれてやるから家宝にしろよ」
「そう、要らないの。もしもあとから返してくれって言っても返さないぞ?」
「ぜってーに言わんから安心しろ」
上等な洋服をちゃんと着直したモッチリおっさんが、俺の隣の席に座ってバーボンを飲み始める。
「で、話ってなに?」
「やあ、キミにコーヒーカップを貰って随分と助けられたからね」
「あの状況からコーヒーカップ一つで助かったって、どう言うことだよ? 意味わかんねーよ」
「それに、なんでも山賊に奪われた荷物を取り返してくれたのも、キミらしいじゃないか」
「へー、商人ギルドから荷物を返して貰ったんだな。良かったじゃん」
「まあ、すべては帰ってこなかったがね。マジックアイテムのダガーと指輪に、魔法のスクロールが二枚だけ、あいつら山賊どもに持って行かれたようだ」
「そ、そうなんだ……」
俺は左の人差し指に嵌めてる指輪を隠した。
「そうだ、まだ私の名前を名乗ってなかったな。私はゴモラタウンで商いを営んでいるワイズマンって者だ」
「ワイズマン!?」
モッチリおっさんの名乗った名前を反芻して驚いたのはハンスさんだった。
「ハンスさん、このモッチリとしたおっさんのことを知ってるの?」
「モッチリも何も、……違った」
ハンスさんが言い直す。
「知ってるも何も、ゴモラタウンのワイズマンと言ったら慈善家の大富豪で有名ですよ……」
「慈善家?」
俺が知ってる慈善家の単語の意味が違うのかな?
俺にはこのモッチリおっさんが慈善家には見えないけれど。
ただの変態オヤジじゃんか?
「その慈善家さんが、なんで護衛も付けずに旅をして山賊に襲われていたんだよ?」
モッチリワイズマンが理由を答えてくれる。
「慈善家慈善家って言ってるのは、周りが勝手に言ってるだけだからな。私だって御忍びで遊びに出たい時もあるさ」
ソドムタウンのピンク街で密かに遊び回りたかったのかな。
「なるほど、それで一人だったのね」
「じゃあ、そろそろ行こうか」
「はぁ?」
いやいや、言ってる意味が分からないわ。
なんで同伴のキャバ嬢を連れ出すように、俺に言うんだよ。
マジで気持ち悪い。
「キミがアスランくんだよね?」
「なんで俺の名前を知っている……」
そうだよ、キモイよ。
なんでこんな変態慈善家富豪が俺の名前を知っているのさ?
それだけで、鳥肌が立つほどキモイわ!
そもそも名乗ったか、俺は?
「キミもギルガメッシュくんのところに呼ばれているんだろ?」
「ええ、まあ……。何故それを?」
「私もこれから、彼に会うからだ。だから、一緒に行こうかって言ってるんですよ」
「あんたも呼ばれてるの、これから?」
「だから一緒に行こうっていってるんだよ」
「それなら、しゃあないか……」
こうして俺は、モッチリ変態慈善家商人のおっさんと、ギルマスの部屋を目指した。
まだちょっと、キモくて怖い。
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※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
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