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第60話【四対一】
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俺は壁の裏に隠れながら出て行くタイミングを見計らっていた。
さてさて、ここで正面から出ていけば棍棒野郎とクロスボウ野郎を同時に相手をしなければならない。
それは明らかに不利である。
だとするならば、まずは未知数の相手だがエロイお姉ちゃんからやっつけてやろうかな。
野郎二人は後回しだ。
そう策した俺は壁際を走って中に入れる場所を探した。
そして入り口を見付けて中に躊躇無く飛び込んだ。
中には黒マントの女が居るはずだった。
そして、確かに黒マントの女が居た。
だが、黒マントの女の横には2メートルほどの身長を有した岩の巨人が立っていた。
ストーンゴーレムだ!
マジでかよ!!
予想外である。
黒マントの女とストーンゴーレムが飛び込んで来た俺に気付いて反応を見せる。
黒マントの女が叫んだ。
「あそこに居たわよ、やぁっておしまい!」
ストーンゴーレムが「フンガァ!」って唸りながらこちらに走り出す。
うそぉ~~ん。
この姉ちゃんはゴーレムマスターかよ!
これじゃあ四対一じゃんか!
ドシンドシンと地鳴りを響かせながらストーンゴーレムが走って来る。
重量感溢れる突進だった。
やばいな。このまま遺跡内に居たら挟まれる。
後ろからチビマッチョと痩せた男が追い付いて来るだろう。
ならば!
俺は迷わず前に走った。
ゴーレムが拳を振り下ろして来るが、俺はスライディングで地面を滑り、ゴーレムの股下を潜ってすり抜けた。
そしてすぐに立ち上がると更に走る。
黒マントの女に向かって走った。
黒マントの隙間からセクシーなボンテージ姿が覗き見えていたが、今は煩悩に浸っている場合じゃあない。
兎に角、黒マントの女との間合いを詰めるために走った。
走り迫る俺に黒マントの女が片手を翳した。
すると掌内が魔力に輝く。
アタッカー魔法が来るのか!?
「マジックアロー!」
やっぱりだぜ!
俺は再びスライディングで地を滑る。
俺の頭上を魔法の矢が過ぎて行った。
そのまま俺は滑りながら黒マントの女のむっちりとした脚の爪先を弾いて転ばした。
「きっあ!」
黒マントの女は俺のスライディングキックに足元を掬われて尻餅をついて転倒する。
ハイヒールなんて履いているから軽く蹴られただけで転ぶんだよ!
「姉さん!」
俺の後方から野郎の声が聴こえた。
どうやら野郎共二人に追い付かれたようだ。
俺は立ち上がると尻餅をついたままの女の後ろに回り込みショートソードの切っ先を首元に当てた。
「全員動くな! 動いたら彼女の首を切り裂くぞ!!」
俺が黒マントの女を人質に取ると、野郎共二人とゴーレムが動きを止めた。
黒マントの女も座ったまま動かない。
俺の見下ろす角度からは、黒マントの女の表情は窺えなかったが、代わりに大きな乳の谷間がモロに見えた。
あたたたっ……。
目の毒である。
猛毒サイズの乳だった。
しかし、俺は視線を野郎共のほうに向けて、エロイ景色を見ないように心掛ける。
我ながら、なんとも悔やまれる行為だった。
糞女神の呪いがなければと心中で怒りを燃やして煩悩から逃れる。
こうしないと大事なところで胸が痛むのだ。
そうすると隙が生まれてしまう。
本当にウザイ呪いである。
まあ、とりあえず俺のほうが有利に立ったぞ。
俺は改めて周りの状況を確かめた。
冷静に状況把握をして整理する。
まずは巨漢のストーンゴーレムが一体居る。
これは黒マントの女がコントロールしているのだろう。
自分の首に刃物が当てられている以上は、安易に操作できまい。
そのストーンゴーレムの横にはチビマッチョが棘付き棍棒を持って立っていた。
四角い顔の頭に耳まで隠れる革の被り物を被っている。
ちんちくりんな胴体にも革鎧を着込んでいた。
先程の僅かな攻防で分かっていることは、力は強そうだが棍棒を振るう腕前はたいしたことがない。三流だ。
そしてもう一人、痩せた男が居る。
痩せた男はクロスボウを構えて銃口をこちらに向けていた。
今でも俺を狙っている。
長細くて高い鼻の顔にはチョビヒゲを生やしていやがる。
頭にはチビマッチョと同じ革の帽子を被り、胴体もお揃いの革鎧を着込んでいた。
クロスボウを構える姿は猫背で蟹股だ。
先程の射撃からしてクロスボウの腕前はたいしたことがないだろう。三流だ。
ゴーレム使いの女に、力任せの男とへっぽこ狙撃手。
それが三人組の正体ってところだろう。
俺は威嚇の意味を込めて黒マントの女に怒鳴る。
「ゴーレムの魔法を解除しろ。じゃないと首をかっ切るぞ!」
「分かったわ。分かったから興奮しないでね!」
女が何やら呪文を念じると、ゴーレムが力無く肩を落とした。
そのままゴーレムは両膝をついて踞る。
これでゴーレムは片付いたな。
後は野郎共二人だ。
「あんたらも武器を捨てろ!」
野郎共はお互いの顔を見合わせてから頷いた。
それから棘付き棍棒とクロスボウを前に投げ捨てる。
武装解除に成功だ。
勝ったぜ!
難なく山賊攻略を成功させたぞ。
俺が心中で歓喜していると、女がクールに話し掛けてきた。
「あんた、賞金稼ぎかい?」
「冒険者だよ。山賊退治の依頼を受けてやって来た。これからソドムタウンにあんたら三人を連行する」
「本当かい?」
黒マントの女の口調はねっとりしていた。
「そんな面倒臭いことをするよりさ。私たちと手を組まないかい?」
「はぁ?」
黒マントの女の声がうっすらと笑っている。
「だって私たち三人を無理矢理連行するよりさ、私たちと取り引きしたほうがいいんじゃない?」
「何を言ってるんだ、おまえ?」
「だってさ、私たちを連行しても、私たちが強奪した品物は全部没収でしょう。だったら私たちと取り引きして、私たちの分け前を貰ったほうがお得だと思わない?」
「取り引きして、命乞いをするつもりか?」
「私たちが集めた金品を山分けしない? 四人でさ」
「四人で、山分け……」
俺は積み重ねられた荷物の山を見る。
かなりの物品量だ。
すべて捌いたら、かなりの金額になるだろう。
少なくとも今回の依頼料の数百倍以上には替わるはずだ。
俺は、少しだけど誘惑に心が揺れた。
だが、そんな取り引きを出来るわけがない。
俺は今回の仕事を金のために受けているわけではないのだ。
しかし、黒マントの女の誘惑が続く。
「あなたは私たちを見逃してくれればいいだけよ。私たちも潮時だと思ってたから、見逃してくれたらこの地を去るわ。あなたは私たちから分け前を貰ったら、雇い主に私たちを殺したって言えばいいじゃないかぁ」
「なるほどね。一石二鳥ってわけか……」
「そうそう。それでなんの苦労もなく仕事が終わるわよ」
甘い誘惑だった。
ここで俺が賢い大人のふりをして誘いに乗れば、楽に仕事が終わるだろう。
だが、楽な道を進めば、そのつけがいつかは回り回って帰って来るかもしれない。
万が一に帰って来たら、それは数倍の大きさの罪となっているだろう。
これは、賢い選択ではない。
楽な道には、楽な道なりのリスクが潜んでいる。
今は苦労するが、苦難の道の果てには、それだけの栄光と達成感が待っているはずだ。
どちらを信じるかは人それぞれだが、俺の進むべき道は、後者だ。
そのほうが俺らしい。
「すまんな、俺は安易な取り引きはしないんだ。こう見えても真面目ちゃんでね。てへぺろ」
「それは、残念ね」
言うなり黒マントの女が俺の顔を目掛けて砂を投げつけてきた。
俺は黒マントの女の美乳を覗き見ないようにしていたがために、その仕草に気付いていなかったのだ。
モロに砂を顔面に浴びる。
黒マントの女は、俺が当てていたショートソードを振りほどくと立ち上がり、仲間のほうに走り出した。
「畜生!」
顔を脱ぐいながら俺が涙めで前を見ると、野郎共二人が落ちている武器を拾い上げるところだった。
黒マントの女は野郎たちの後ろに隠れると魔法の呪文を唱え始める。
するとストーンゴーレムの瞳が魔力で輝いた。
ストーンゴーレムが再起動する。
重々しい身体が再び動きだした。
これで俺のターンが終わる。
来る第2ラウンドの開始であった。
ちっ、仕方がない。
こうなったら、とことんやってやるぜ!
【つづく】
さてさて、ここで正面から出ていけば棍棒野郎とクロスボウ野郎を同時に相手をしなければならない。
それは明らかに不利である。
だとするならば、まずは未知数の相手だがエロイお姉ちゃんからやっつけてやろうかな。
野郎二人は後回しだ。
そう策した俺は壁際を走って中に入れる場所を探した。
そして入り口を見付けて中に躊躇無く飛び込んだ。
中には黒マントの女が居るはずだった。
そして、確かに黒マントの女が居た。
だが、黒マントの女の横には2メートルほどの身長を有した岩の巨人が立っていた。
ストーンゴーレムだ!
マジでかよ!!
予想外である。
黒マントの女とストーンゴーレムが飛び込んで来た俺に気付いて反応を見せる。
黒マントの女が叫んだ。
「あそこに居たわよ、やぁっておしまい!」
ストーンゴーレムが「フンガァ!」って唸りながらこちらに走り出す。
うそぉ~~ん。
この姉ちゃんはゴーレムマスターかよ!
これじゃあ四対一じゃんか!
ドシンドシンと地鳴りを響かせながらストーンゴーレムが走って来る。
重量感溢れる突進だった。
やばいな。このまま遺跡内に居たら挟まれる。
後ろからチビマッチョと痩せた男が追い付いて来るだろう。
ならば!
俺は迷わず前に走った。
ゴーレムが拳を振り下ろして来るが、俺はスライディングで地面を滑り、ゴーレムの股下を潜ってすり抜けた。
そしてすぐに立ち上がると更に走る。
黒マントの女に向かって走った。
黒マントの隙間からセクシーなボンテージ姿が覗き見えていたが、今は煩悩に浸っている場合じゃあない。
兎に角、黒マントの女との間合いを詰めるために走った。
走り迫る俺に黒マントの女が片手を翳した。
すると掌内が魔力に輝く。
アタッカー魔法が来るのか!?
「マジックアロー!」
やっぱりだぜ!
俺は再びスライディングで地を滑る。
俺の頭上を魔法の矢が過ぎて行った。
そのまま俺は滑りながら黒マントの女のむっちりとした脚の爪先を弾いて転ばした。
「きっあ!」
黒マントの女は俺のスライディングキックに足元を掬われて尻餅をついて転倒する。
ハイヒールなんて履いているから軽く蹴られただけで転ぶんだよ!
「姉さん!」
俺の後方から野郎の声が聴こえた。
どうやら野郎共二人に追い付かれたようだ。
俺は立ち上がると尻餅をついたままの女の後ろに回り込みショートソードの切っ先を首元に当てた。
「全員動くな! 動いたら彼女の首を切り裂くぞ!!」
俺が黒マントの女を人質に取ると、野郎共二人とゴーレムが動きを止めた。
黒マントの女も座ったまま動かない。
俺の見下ろす角度からは、黒マントの女の表情は窺えなかったが、代わりに大きな乳の谷間がモロに見えた。
あたたたっ……。
目の毒である。
猛毒サイズの乳だった。
しかし、俺は視線を野郎共のほうに向けて、エロイ景色を見ないように心掛ける。
我ながら、なんとも悔やまれる行為だった。
糞女神の呪いがなければと心中で怒りを燃やして煩悩から逃れる。
こうしないと大事なところで胸が痛むのだ。
そうすると隙が生まれてしまう。
本当にウザイ呪いである。
まあ、とりあえず俺のほうが有利に立ったぞ。
俺は改めて周りの状況を確かめた。
冷静に状況把握をして整理する。
まずは巨漢のストーンゴーレムが一体居る。
これは黒マントの女がコントロールしているのだろう。
自分の首に刃物が当てられている以上は、安易に操作できまい。
そのストーンゴーレムの横にはチビマッチョが棘付き棍棒を持って立っていた。
四角い顔の頭に耳まで隠れる革の被り物を被っている。
ちんちくりんな胴体にも革鎧を着込んでいた。
先程の僅かな攻防で分かっていることは、力は強そうだが棍棒を振るう腕前はたいしたことがない。三流だ。
そしてもう一人、痩せた男が居る。
痩せた男はクロスボウを構えて銃口をこちらに向けていた。
今でも俺を狙っている。
長細くて高い鼻の顔にはチョビヒゲを生やしていやがる。
頭にはチビマッチョと同じ革の帽子を被り、胴体もお揃いの革鎧を着込んでいた。
クロスボウを構える姿は猫背で蟹股だ。
先程の射撃からしてクロスボウの腕前はたいしたことがないだろう。三流だ。
ゴーレム使いの女に、力任せの男とへっぽこ狙撃手。
それが三人組の正体ってところだろう。
俺は威嚇の意味を込めて黒マントの女に怒鳴る。
「ゴーレムの魔法を解除しろ。じゃないと首をかっ切るぞ!」
「分かったわ。分かったから興奮しないでね!」
女が何やら呪文を念じると、ゴーレムが力無く肩を落とした。
そのままゴーレムは両膝をついて踞る。
これでゴーレムは片付いたな。
後は野郎共二人だ。
「あんたらも武器を捨てろ!」
野郎共はお互いの顔を見合わせてから頷いた。
それから棘付き棍棒とクロスボウを前に投げ捨てる。
武装解除に成功だ。
勝ったぜ!
難なく山賊攻略を成功させたぞ。
俺が心中で歓喜していると、女がクールに話し掛けてきた。
「あんた、賞金稼ぎかい?」
「冒険者だよ。山賊退治の依頼を受けてやって来た。これからソドムタウンにあんたら三人を連行する」
「本当かい?」
黒マントの女の口調はねっとりしていた。
「そんな面倒臭いことをするよりさ。私たちと手を組まないかい?」
「はぁ?」
黒マントの女の声がうっすらと笑っている。
「だって私たち三人を無理矢理連行するよりさ、私たちと取り引きしたほうがいいんじゃない?」
「何を言ってるんだ、おまえ?」
「だってさ、私たちを連行しても、私たちが強奪した品物は全部没収でしょう。だったら私たちと取り引きして、私たちの分け前を貰ったほうがお得だと思わない?」
「取り引きして、命乞いをするつもりか?」
「私たちが集めた金品を山分けしない? 四人でさ」
「四人で、山分け……」
俺は積み重ねられた荷物の山を見る。
かなりの物品量だ。
すべて捌いたら、かなりの金額になるだろう。
少なくとも今回の依頼料の数百倍以上には替わるはずだ。
俺は、少しだけど誘惑に心が揺れた。
だが、そんな取り引きを出来るわけがない。
俺は今回の仕事を金のために受けているわけではないのだ。
しかし、黒マントの女の誘惑が続く。
「あなたは私たちを見逃してくれればいいだけよ。私たちも潮時だと思ってたから、見逃してくれたらこの地を去るわ。あなたは私たちから分け前を貰ったら、雇い主に私たちを殺したって言えばいいじゃないかぁ」
「なるほどね。一石二鳥ってわけか……」
「そうそう。それでなんの苦労もなく仕事が終わるわよ」
甘い誘惑だった。
ここで俺が賢い大人のふりをして誘いに乗れば、楽に仕事が終わるだろう。
だが、楽な道を進めば、そのつけがいつかは回り回って帰って来るかもしれない。
万が一に帰って来たら、それは数倍の大きさの罪となっているだろう。
これは、賢い選択ではない。
楽な道には、楽な道なりのリスクが潜んでいる。
今は苦労するが、苦難の道の果てには、それだけの栄光と達成感が待っているはずだ。
どちらを信じるかは人それぞれだが、俺の進むべき道は、後者だ。
そのほうが俺らしい。
「すまんな、俺は安易な取り引きはしないんだ。こう見えても真面目ちゃんでね。てへぺろ」
「それは、残念ね」
言うなり黒マントの女が俺の顔を目掛けて砂を投げつけてきた。
俺は黒マントの女の美乳を覗き見ないようにしていたがために、その仕草に気付いていなかったのだ。
モロに砂を顔面に浴びる。
黒マントの女は、俺が当てていたショートソードを振りほどくと立ち上がり、仲間のほうに走り出した。
「畜生!」
顔を脱ぐいながら俺が涙めで前を見ると、野郎共二人が落ちている武器を拾い上げるところだった。
黒マントの女は野郎たちの後ろに隠れると魔法の呪文を唱え始める。
するとストーンゴーレムの瞳が魔力で輝いた。
ストーンゴーレムが再起動する。
重々しい身体が再び動きだした。
これで俺のターンが終わる。
来る第2ラウンドの開始であった。
ちっ、仕方がない。
こうなったら、とことんやってやるぜ!
【つづく】
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