ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語

ヒィッツカラルド

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第58話【山沿いの街道】

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夜のうちに旅たった俺が、ソドムタウンが在る平原から山道に入ったのは日が昇ってからだった。

山道と言っても、この辺は乾燥地帯だから、草木が殆ど生えてないゴツゴツした岩山ばかりが目立つ。

おそらく既に俺は山賊が出没するエリアに入っているだろう。

俺自身が囮になっているのだから、さっさと食い付いて貰いたいものだ。

こんな詰まらない仕事は、サクッと終わらせて、もっと冒険者らしい刺激的でロマン溢れる仕事がしたいのだ。

ダンジョンとかに潜りたいのだ。

正直なところ、小者の山賊風情に時間を費やしてはいられない。

何せ時間は無限ではない。有限なのだから！

よし、俺ってばかっこいいこと言ったぞ！

まあ、それはさておき──。

俺は岩山と岩山に挟まれた街道を進んでいた。

スダンと言う町までは、ほぼほぼ一本道らしい。

ソドムタウンを出る前にスカル姉さんから、スダンまでの道のりや、いろいろな情報を仕入れていた。

まずスダンと言う小さな町は人口500人程度の宿場町で、農家が主力産業の町らしい。

主に家畜を育てている農家が多く、その殆どがソドムタウンに肉やミルクを下ろしている。

だからソドムタウンで口にする多くの肉が、この町から運ばれてきた家畜の肉らしいのだ。

また、多くの旅人や行商人が立ち寄ることから宿場町としても盛んだとか。

だから遠方から来たピンの旅商人を狙って山賊が現れるのだろう。

そして今回はスカル姉さんから素晴らしい情報も仕入れている。

おそらく山賊がソドムタウンかスダンを寝床にしていないなら、道中のどこかにキャンプを張っていなければ可笑しいとのことだ。

即ち、商人から強奪した品物を溜め込んでいる場所が在るはずだと言うのだ。

その候補となるポイントを三ヶ所ばかりスカル姉さんが教えてくれたのである。

もしも山賊が俺を襲いに現れなかったとしても、そのキャンプ候補地を探せば高確率で山賊どもの寝床が掴めるってことになる。

流石は元冒険者のスカル姉さんだ。

素晴らしい情報を高値で提供してくれたもんだ。

あのババァ、俺の弱みに漬け込んで、この情報を50Gで売り付けて来やがったんだぜ！

ひでーよ、人の足元見やがってさ！

でも、有力な情報だ。

これで仕事が早く終わるかもしれない。

スピードは大事だ。

何せ時間は無限ではない。有限なのだから！

よし、決まったぜ！

今のうちに練習しとかないとな。

いざ人前でこの台詞を言う時が来たら、役に立つさ。

今の練習がさ！

そんなことを考えながら俺が山沿いの街道を歩いていると、道の先から人影が歩んで来る。

最初はただの旅人かと思ったが、明らかに様子が可笑しかったから、俺は警戒しながら歩き続けた。

その人影は、おっさんだった。

モッチリと太った腹の中年男性で、やたらと疲れた顔をしている。

何より可笑しいのは、そのおっさんが全裸で歩いていることだった。

なんとも珍しいものだ。

俺以外にも全裸で旅する人って居るんだなって思ったよ。

すると全裸おっさんも俺に気付いたやうで、こちらに駆け寄ってきた。

俺はなんだかキモかったから怪訝な顔でおっさんを見た。

全裸で旅をするのは構わないけど、他人に絡んでくるのはやめて貰いたい。

誰かに見られたら、こっちまで変態だと思われるじゃあないか。まったくもぉ～。

そして俺の前まで駆け寄った全裸おっさんが言う。

「すまない、若い旅人よ」

「なんだ、変態おっさん？」

「いやいや、私は変態ではないぞ！」

「いやいや、どう見ても変態ですよ？」

「ど、どの辺が！？」

「全裸なところがだよ！」

「好きで全裸なわけがないでしょう！！」

「嫌いなら服を着ろよ」

「その服もすべて取られたから全裸なんですよ！」

「取られた？」

「そう、山賊に、荷物も服も全部持ってかれたんですよ」

「あー、山賊の被害者か。俺はてっきりそう言う性癖のおっさんかと思ったよ」

「そんなわけあるか！！」

「怒鳴るなよ、五月蝿いな。俺がおっさんから服を奪ったわけじゃあないんだからよ」

「それはそうだが。普通はそんな勘違いしないだろ！」

「そうかな～？」

「そうだよ！」

「でも、いきなり全裸のおっさんと出合ったら、俺みたいな反応を見せないか、普通さ？」

「私はいままで全裸の人と出くわしたことが無いからわからんわ！」

「そうだろうさ。何せ全裸はおっさんのほうだからな」

「そ、そうだけれども……」

「もしも、おっさんが別の全裸と出合ったら全裸同士が鉢合わせになったことになるんだぜ。そんなミラクルなかなかないぞ」

「あってたまるか！それに普段の私は全裸じゃあないわい！」

「って、ことはだ。いまのあんたは、普段じゃあないプレイ中ってことだろ、全裸おっさん？」

「だからプレイ中じゃあないわい！」

「プレイ中じゃあないのに全裸ってことは、やっぱり変態じゃあねえの？」

「だから違うって、お前は馬鹿か！？」

「変態の全裸おっさんに、馬鹿呼ばわりされてもね」

「だから私は山賊に襲われて身ぐるみを剥がされただけだってば！」

「えっ？山賊に襲われたの。大丈夫？」

「こっちは全裸だよ、大丈夫なわけが無いじゃんか！
それにさっき言ったよね、山賊に襲われたってさ！」

「とりあえず、コーヒーカップをあげるから、これで大事なところだけでも隠せよ」

「なんですっぽりと収まりが良さそうな物で隠せって言うのさ。普通は服を譲れよ！」

「服はやれんよ。俺の着替えが無くなるじゃんか」

「じゃあなんか、タオルか何かくれないかな。せめてさ！？」

「いいや、いまんところあげられるのは、そのコーヒーカップぐらいだわ。それか、サボテンの苗木ぐらいかな。どっちがいい？」

「サボテンの苗木は無いわぁ～。それで全裸の私が隠せる場所は無いわぁ～……。もしも、サボテンの苗木で大事なところを隠していて、間違って触れたら偉いことになりそうだしさ……」

「だろう。だったらコーヒーカップで我慢しろよ」

「せめて布切れでいいから持ってないかな……？」

「もってない！」

「うわぁ……。絶対に持ってるけど、力強く言いきりやがったな！」

「とりあえず、コーヒーカップのお礼代わりに訊きたいんだが、山賊に襲われたのはいつごろだ？場所は？」

「場所は直ぐそこだ。100メートルくらい戻ったところだ。時間は30分ぐらい前かな。まだ山賊どもが、その辺を彷徨いてて危険かも知れないぞ」

なんだ、襲われたてのほやほやじゃんか。

「そうか、サンキュー」

俺がお礼を言うと、全裸のおっさんは、コーヒーカップを股間に被せて歩きだした。

両腕をぶらぶら振ってたから、コーヒーカップの収まりが丁度良かったのだろう。

しかし、その背中に寂しさを感じる。

でも、あんたなら絶対に立ち直れるさ。

きっとね！

【つづく】

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