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【第20章】喧嘩祭り編

20-29【鬼の射手】

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俺は木の裏に隠れてボロ屋敷の様子を窺っていた。

俺が隠れている枯れ木の森からボロ屋敷までの距離は役50メートル弱だろう。ボロ屋敷は三階建てだ。殆どの窓が閉まっていてカーテンで室内を隠しているが、三階の一番左の窓だけが開いている。

風にカーテンが揺れていた。あそこからアーチャーのスナイパーが弓矢で狙撃して来たのだろう。

「射手か、ちょっと遠いな……」

相手の武器は、距離的にはロングボウサイズの大型の弓だろうさ。それかマジックアイテムで飛距離が鍛えられた弓だな。欲しい。

「さて、どうするかだな」

ボロ屋敷の前に2メートルちょっとのレンガ造りの塀が並んでいる。

彼処まで一気に走るか──。

俺は異次元宝物庫からブラックカイトシールド+2を取り出して左手に構えた。

【ブラックカイトシールド+2】
矢の直撃を二回だけ避ける。

これで二回は矢の狙撃を無効に出来るだろう。それにネックレスの効果で更に一回は無効化できる。計三回は矢を外せるってわけだ。三回も防げればボロ屋敷の前の壁まで走って行けるだろうさ。

それに、魔法の効果が尽きてもカイトシールドで防御しているんだ、そうそう矢も当たらないはずだ。これなら行けるはず。

「よし、行くぞ!」

俺はブラックカイトシールドを身体の前に出すと、木の陰から走り出た。すると、俺が木の陰から出た途端に矢が撃ち込まれて来る。完全に待ち構えていたのだろう。シュンっと風が鳴った。

しかし俺のマジックアイテムが発動した。矢は魔法の効果で露骨にカーブして狙いを大きく外す。

今のうちだ!

「走れ、走れ、走れ!!」

俺が走り出すと更に追撃の矢が飛んで来る。その矢も狙いを反らされて地面に刺さった。

だが、矢が地面に刺さるや否や、ちゅど~んと爆音を鳴らして爆発したのだ。爆風が俺の顔を叩く。

ゴメスが俺の頭の上で靡いていた。

「のわっ!? 爆発した!!」

俺は爆風を浴びてよろめいた。

「なんだ、今のは? びびったぞ!!」

爆発耐久に優れた俺にはダメージは無かったが、爆音に驚いて走る足が止まってしまう。まさか爆発するとは思わなかったからだ。

「やべぇ、止まってなんかいられねえぞ!!」

再び走り出した俺に、またやが飛んで来る。その矢もマジックアイテムで狙いを外されるが地面に刺さると爆音を轟かせながら爆発した。

「うひょ~!!」

俺は滑り込むようにレンガ造りの壁の陰に隠れた。

「間に合ったぞ……。てか、あの矢は魔法感知に引っ掛からないから、物理的に爆発してるんだな。魔法でもマジックアイテムでも無いぞ。純粋な爆弾だ」

まあ、壁に隠れられたんだ。これで一安心だろう。

だが、次の瞬間、俺が隠れてた壁の横が爆発して吹き飛んだ。

「糞、壁ごと爆破しやがったぞ!」

俺が壁の陰沿いに左に走ると、その背後を次々と壁が爆破されていく。

「不味い、不味い!!」

俺はブラックカイトシールドを投げ捨てると、代わりに異次元宝物庫からバックラーを取り出した。それを素早く装着すると、壁の陰から姿を晒す。

「こん畜生が!!」

見上げれば三階の窓から白い仮面を被った鬼がロングボウで俺を狙って居た。あいつが狙撃者だ。

「撃って来いや!!」

矢が放たれる。俺は装着したばかりのバックラーで爆発の矢を受け止めた。

すると矢がバックラーの中に吸い込まれた。次の刹那には、矢が逆さまを向いて飛んで行く。吸い込んだ矢をバックラーが吐き出したのだ。

撃ち返された矢は三階の窓に飛び込んで行った。そして、爆発する。更に誘爆して爆音を連呼した。

「他の爆発の矢に引火したのかな?」

そして、窓枠が吹き飛び破片が降って来る。

「なるほど、こんな感じで跳ね返すのか……」

俺が使ったマジックアイテムは、異次元バックラー+2だ。

いつか使おうと思ってたけれど、なかなか使う機会が無かった一品である。正直なところ、何時何処でゲットしたかも忘れていた。

【異次元バックラー+2】
防御力の向上。受け止めた飛び道具系の弾丸や矢を反射する。魔法の攻撃やマジックアイテムは反射できない。

俺は爆発した三階の部屋を見上げた。爆破で煙が上がってて良く見えないが、部屋の中で人影が動いているのがチラリと見えた。

「まだ、動けるのか」

俺は異次元宝物庫からラージクロスボウ+2を取り出して上に向かって構える。

【ラージクロスボウ+2】
ボルトが発光して攻撃力向上。撃った矢が直角に曲がりホーミングする。

そして、爆発された三階に向かって光る矢を発射した。

「スマッシュアロー!」

ついでにスキルも乗せて光るボルトを発射した。部屋に飛び込んだボルトが直角に曲がる。

すると「ギャッ!!」っと悲鳴が聞こえた。どうやら命中したらしい。それっきり反撃は来なかった。

「どれ、見に行くか」

カイトシールドを回収してから俺はクライムウォールスキルを使ってボロ屋敷の壁を登って行った。爆破されて窓枠がくずれた部屋に入る。

「煙りっぽいな~」

「がるるるるぅぅ……」

俺が部屋に入ると壁際に二角の鬼が立っていた。仮面は砕けて醜悪な顔が晒されている。

だが、肩を貫通したクロスボウのボルトが壁に突き刺さって動けない様子だった。光るボルトで貼り付けにされているのだ。

俺は二角の鬼に顔を近付けながら言った。

「すまん、すまん。痛いだろ。俺にはお前を鬼から人間に戻してやる力は無いから、少し待っててくれないか。ギレンの野郎をぶっ倒して、呪いを解いてやるから、なっと!!」

俺は言葉の最後に鬼の顔面をぶん殴った。顔の中央を殴られた鬼は後ろの壁に後頭部をぶつけると項垂れて動かなくなる。

二角鬼は気絶した。

「喧嘩手加減スキルが有るから、素手だと死なないだろうさ。さて、弓は何処かな~?」

部屋の中は瓦礫で散らかっている。そんな荒れた部屋の隅に鬼が使っていたロングボウが転がっていた。

魔法感知スキルで見てみれば、青く輝いている。

「ラッキー、マジックアイテムゲットだぜぇ~」

俺はロングボウを拾うと異次元宝物庫に仕舞う。

爆発していた矢は残っていない。全部誘爆して無くなったのかな?

「さ~て、次に行ってみようかぁ~」

俺は傾いた部屋の扉を蹴り破ると荒れ果てた部屋を出て廊下に進んだ。

三階からの侵入になったが、仕方有るまい。だってロングボウを拾いたかったんだもん。

それに、幾度の爆発音で俺の侵入もバレバレだろうしさ。たぶんこれから他の鬼の熱い熱い歓迎的な出迎えもあるだろうさね。

俺は廊下を進んで階段に到着する。外から見た通りで、あまり広い屋敷でもないようだ。

さて、目的のギレンは何処に居るのかな?

俺は階段を下って行った。屋敷内に潜んでいるだろうギレンを探す。

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