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【第十七章】クローン研究編

17-11【アスエボとの対決】

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巨漢のクローンが背中に背負った二本の剣から一本を抜き出した。

まずは一刀流で挑戦ですかい。

悪魔が一歩前に出ると勇ましく言った。

「オリジナルさんよ。俺は俺を食らってアンタの寿命を全部頂くぜ。本物の寿命は、さぞかし長いんだろうな~」

俺も腰から黄金剣を一本抜くとダラリと下げた。戦闘を受けて立つ。

「そりゃあ長いさ。俺はお前らと違って人間なんだ。この先まだまだ生きる予定でね。寿命も何十年も続くだろうさ」

巨漢のクローンはロングソードを∞の字を描くように何度も振るった。切っ先が可憐な流れを模倣しながら宙を泳いでいる。その動きから剣技が多少は出来ることが分かった。

巨漢のクローンが眼光を鋭く光らせ姿勢を低く構える。その筋肉が引き締まり張りを立たせていた。

「羨ましい。実に羨ましいぜ。ただ俺たちと違ってオリジナルに産まれただけで、なんの悩みも持たずにダラダラと長生き出来るなんてよ!」

「クローンとオリジナルじゃあ、生まれついての権利が違うんだよ。生物としての特権が段違いなんだぜ」

「その権利、俺がすべて貰う!!」

「やるか、バーーカ!!」

「このアスエボが、進化を促す!!」

あー、なるほどね。

エボって、エボリューション進化の訳語なのね。

「いざ、参る!!」

ロングソードを右手にぶら下げたアスエボが前に出てきた。悪魔の瞳に凛々しさが輝いている。希望、欲望、願望を掴み取ろうと闘志に燃えていた。

「ふっ!!」

そして、強い踏み込みからの剣を頭の高さまで振りかぶった。予備運動が見え見えだぜ。剣技の甘さが鑑みれた。

俺も剣を腰の高さまで上げる。

「斬っ!!」

アスエボの力強い一撃が降って来る。

俺の頭部から胴体まで真っ二つにせんと振られた長剣の切っ先が閃光と化して迫ってきた。

だが、遅いな。それに、剣筋が単純で読める。

俺は前に踏み出していた右足を軸に身体を右後ろに翻す。最小限の動きで回避だ。

すると俺の眼前をアスエボが振るった長剣が過ぎて行った。

そして、空振った切っ先が床を叩く刹那、俺は前に構えていた剣を緩く付き出した。

狙いはアスエボの脇腹。静かに進んだ剣先が筋肉質な脇腹を抉ると思えた瞬間である。

アスエボがバックスェーで、迫り来る剣先を後退して回避した。

あら、スムーズで滑らかな動きだな。この筋肉野郎、結構な体術を有しているぞ。

「危ねえ、危ねえ~」

言いながら突き技を連続で繰り出すアボエボの剣が、俺の顔面ばかりを狙ってきた。

俺は右に左にと更には上下に頭を振って剣突きを躱して見せる。

「なかなか、スムーズで滑らかな動きだな!」

なに、こいつ、俺と発想が同じじゃんか!?

なんか嫌な気分だわ~。

「それっ!」

「おっと!!」

俺は剣を下から掬い上げるとアスエボの剣を上に弾いた。

そこから身体を捻らせながら身を屈めると、下段後ろ回し蹴りでアスエボの足元を狙う。

「水面蹴りかっ!!」

アスエボがジャンプで俺の鎌のような踵を回避した。

そして、真上に跳躍した状態から飛び蹴りを繰り出して来る。

「せいっ!!」

「足刀か!!」

俺は左の鉄腕を顔の前に立ててアスエボの飛び足刀を受け止める。

ガンっと鉄と石が激突したかのような音が響くと、アスエボが蹴りの威力を活かして後方に飛んで行った。

「アイツ、足技も使えるのか。でも、逃がさないぜ!!」

しゃがんだ状態から脚力を爆発させた俺は、ロケットダッシュの勢いで飛んで行ったアスエボを追う。

そしてアスエボが膝を抱えながら回転すると着地をするのだが、その刹那を狙って俺が切りかかった。

黄金剣での三連攻撃。

「ふんっ、ふんっ、ふんっ!!」

下段横切り、中断突き、上段縦切り。綺麗な三段攻撃だったが、見事に避けられ、躱され、回避された。

「こいつ、回避だけは一流か!?」

俺が愚痴にも近い言葉を溢した刹那だった。アスエボの反撃が飛んでくる。

「ダッシュクラッシャー!!」

「なにっ!!」

至近距離からのダッシュクラッシャーだと!!

スキルを使ったのはアスエボだった。

ほとんどゼロ距離からの3メートルダッシュで俺に体当たりして来る。

筋肉で厚い肩を俺に突き立て3メートルを押し切ると、俺の腹をサイドキックで突き飛ばす。そこからの斬撃だった。

「畜生っ!!」

俺は黄金剣を盾に斬撃を防いだ。すると激しく剣と剣がぶつかり合う。

「防がれたか!」

「おろろ……」

だが俺は、大きくバランスを崩してしまう。それが隙となって次なる動きがとれなかった。そのために更なる先手をアスエボに取られる。

「隙有りだ。ヘルムクラッシャー!!!」

「のわっ!!」

俺は黄金剣を頭の上で横に構えると超攻の一打を受け止めた。重い威力が全身にのし掛かる。

アスハンの巨大化ハンマー攻撃も重たかったが、それ以上に重たい攻撃だった。俺の腰や間接の節々が軋み悲鳴を上げている。

「ぬぬぬぬぬっ!!」

俺は黄金剣の切っ先を左の鉄腕で支える。もしも俺の左腕が鋼鉄じゃあなかったら、黄金剣で左手が切断されていただろう。ここでまた鉄腕に助けられた。鉄腕に感謝だぜ。

「耐えたかっ!!」

「耐えるわい!!」

俺は全力でアスエボの剣を払いのけた。

そして、アスエボの股間を狙って掬い蹴りを繰り出す。狙いは金的だ。

「それ」

「おっと、危ねえ!!」

だが、アスエボは両足を内股に閉じると俺の金的蹴りを防いだ。俺の蹴り足はアスエボの両膝に激突しただけで止まってしまう。

「ならばっ!!」

続いて左手をV字に構えるとアスエボの両眼を狙って目潰しを繰り出す。

ストレートにVの字拳が飛んで行く。

しかし、アスエボは片手をチョップの型に立てると俺の目突きを防いで見せた。俺の人差し指と中指の間にアスエボのチョップが挟み込まれる。俺のチョキがパーに防がれたのだ。

「こなクソっ!!」

続いて俺の右上段廻し蹴り。だが、その蹴りに合わせてアスエボも右上段廻し蹴りを繰り出してきた。

二つの廻し蹴りが対戦相手の頭部を蹴り殴る。相打ちだ。

「ぐっはっ!?」

「おらっ!!」

しかし、蹴り技を振り切ったのはアスエボだけだった。俺が蹴り技で力負けしていたのだ。

「クソっ!!」

俺は廻し蹴りに飛ばされて地を滑った。

転倒こそ免れたが、2メートル横に飛ばされ、更に1メートルほど地を滑ったのだ。

そして、片膝立ちで止まる。その状態のまま俺はアスエボを睨みながら言った。

「てめー、マーシャルアーツスキルも持ってやがるな!?」

アスエボはロングソードを∞字に振るいながら返答する。

「お前が習得できる戦闘スキルは、全部俺も習得できるはずだ。だから、お前が使えるスキルは、俺がすべて使える可能性が高いってわけなんだぜ」

そう述べるとアスエボの口角が釣り上がる。

ちっ、生意気だ……。まるで鏡の中の自分と戦っているようだぜ……。




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