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【第十四章】太陽のモンスター編。

14-25【神々のスコップ】

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日中。

魔王城前のキャンプで、俺は不思議な光景を目の前にしていた。

「アニキ、これってば不思議ですね」

エルフの凶介が神々のスコップで地面を掘り返していた。

ほんの数度だけ地面を掘り返しただけなのに、掘った穴より大きな土の山が築かれている。

掘った土の量が倍に増えているのだ。

【神々のスコップ+3】
望んだ鉱物のありかを示す。堀当てた鉱物が二倍に増幅する。知能が有りアドバイスをくれる。

掘り当てた鉱物が二倍に増えるってあるが、掘った土まで二倍に増えてるよ。

何これ?

ある意味で神アイテムだよね。

要らない土が二倍に増えるって言ってもさ、資源が二倍に増えるってやばいだろ。

スコップを握る凶介が言う。

「アニキ、これ、一度増やした土はもう増えないみたいですね」

「なるほど」

無限増殖は出来ないのか……。

それが出来たらヤバイよな。

地面にスコップを刺した凶介が言う。

「ところでアニキ。こいつ本当に知力があるんですか。さっきからうんともすんとも言いませんよ?」

「だが、マジックアイテムの説明だと、知能もあるって書いてあるぞ。アドバイスまでくれるってよ」

「本当っすか~?」

「とりあえず、金を掘り当てようぜ。望んだ資源のありかを教えてくれるんだろ」

「そっすね~。金を掘り当てられたら町作りの予算に使えますからね」

「こいつが金の鉱脈でも見つけてくれたらいいんだが」

俺たちがそんな話をしていると、地面に刺さったスコップがムクムクと動き出した。

「な、なんじゃい!?」

驚いた凶介がスコップから跳ねて退くと、地面に刺さっていたスコップが勝手に地面から抜け出て倒れた。

それからクネクネと蛇のように動き出す。

「キモイっすね、このスコップ……」

「だな……」

俺たちが見守っていると、スコップは森の中に進んで行く。

「おい、あとを追うぞ!」

「へい、アニキ!」

俺と凶介の二人はクネクネと進むスコップを追って森の中に入って行った。

そのままスコップは一キロぐらい森の中を進んで行く。

時折俺たちと距離が離れすぎると停止して待っててくれる気遣いまで見せてくれていた。

「けっこう優しい気遣いが出来るスコップっすね……」

「だな……」

するとスコップが進む前方で藪が激しく揺れた。

俺たちが何事かと足を止めると藪の揺れが止まる。

「な、なんでしょう……?」

「さあな……」

俺たちも怪しい静けさに警戒した。

凶介は背負っていたロングボウを構える。

俺も異次元宝物庫からジャイアントウッドクラブを取り出した。

俺は静けさの中に殺気を感じ取る。

藪の中に敵が居るってことだ。

「凶介、来るぞ!」

「へい!!」

凶介が返事を返した刹那だった。

藪の中からスコップを加えたレッドヘルムベアーが走り出てきた。

「うわー、スコップが食われてるーー!!」

「凶介、救出するぞ!!」

「へい、アニキ!!」

凶介が矢を放った。

矢はレッドヘルムベアーの体に刺さったが傷は浅いようだ。

赤頭熊の突進を止めるほどでない。

「おらっ!!」

俺がジャイアントウッドクラブを横に振るった。

唸る大木棍棒が赤頭熊の頭部を横殴ると、加えていたスコップを飛ばした。

「凶介、スコップを頼む!!」

「へい、アニキ!!」

弓を下ろした凶介が飛んで行ったスコップを追った。

俺は怯んでいる赤頭熊に二撃目を振るう。

今度は縦に真っ直ぐ頭を狙った。

だが、重い大木棍棒の一撃は遅くて赤頭熊に回避されてしまう。

俺の攻撃を避けた赤頭熊がベアークローを振るって来た。

「おっと!!」

俺は身を屈めてベアークローを躱した。

そこからの反撃。

「とう、とう、とう!!」

中段後ろ廻し蹴りで熊の頬を蹴飛ばし、打ち下ろしの拳骨で脳天を殴り、膝蹴りで顎をカチ上げた。

三連コンボが綺麗に決まる。

しかも、俺の素手での攻撃が熊に効いていた。

これって、熊を素手で倒せるんじゃね?

っと、俺が調子に乗った直後だった。

熊が振るった鍵爪が俺の頭部をザックリとかきむしる。

「はぐっ!?」

凄い衝撃の後に視界が赤く染まった。

かきむしられた傷から出た鮮血が両目に入ったのだろう。

「アニキっ!!」

「ざけんな!!」

俺は怯むことなく後ろ足だけで立ち上がっていた赤頭熊の腹に身を屈めてタックルを決める。

そして、赤頭熊の腹に抱き付いた俺はタックルの勢いのまま流れるように滑って赤頭熊の背後に回り込んだ。

バッグを取る。

「うぉらぁぉああああ!!」

俺は赤頭熊を持ち上げていた。

この森に入って初めて出合ったレッドヘルムベアーほどの巨漢じゃあなかったが、俺は熊を持ち上げているのだ。

自分でも自分のパワーに感心していた。

「ジャーマンスープレックスだぁぁあああ!!」

ドイツ人式後方反り投げが赤頭熊に決まる。

「すげーぞアニキ。熊をジャーマンで投げちまったぞ!!」

「ふぅ~~」

俺が溜め息の後に立ち上がると赤頭熊も立ち上がった。

だが頭を揺らしてフラフラしている。

視点も定まっていない。

「それっ!!」

俺は両足を揃えて高く跳躍した。

「ドロップキックだ、ゴラァ!!」

俺の繰り出したドロップキックが赤頭熊の顔面を両足で蹴り飛ばした。

後方に倒れた赤頭熊がゴロゴロと転がる。

着地した俺は熊を確認しながら叫んでいた。

「どうだ、格好いいだろ!!」

「アニキ、最高です!!」

すると赤頭熊はノシノシと森の中に逃げて行く。

「凶介!」

「へい、アニキ!?」

「追うぞ!!」

「えっ……?」

「だから追ってボコるぞ!!」

「いや、スコップも無事に回収できたんだし、このぐらいでいいんじゃあないですか……」

「なんで?」

「逃げるヤツを追い回すって、男として格好悪いですよ……」

「あー、そうか……」

「理解してもらえて感謝っす、アニキ……」

「じゃあ、金脈探しを再開させるか……」

「へい、アニキ……」


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