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【第十四章】太陽のモンスター編。

14-14【ルイレアール】

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俺は防具を装備しなおすと階段を下って行った。

やっとこさラスボスだ。

レッサーデーモンのルイレアール。

おそらくビキニアーマーを装備した下級悪魔だろう。

ここまで来てビキニアーマーを装備していなかったら嘘である。

悪魔の癖に空気が読めないヤツになるぞ。

問題は、男性か女性かだ。

女性ならビキニアーマーでも問題無い。

いや、俺の場合は呪いの関係で問題有るか……。

だが、それ以上に男性のほうが問題だ。

だいぶ慣れてきたけれど、やっぱり男がビキニアーマーを纏っているのは見苦しい。

俺自身が着込んでいたから良く分かる。

見るのも見せるのも痛々しいのだ。

まあ、どんなヤツが出て来るかは開けてビックリ玉手箱ってわけでお楽しみである。

そんなことを考えながら俺が階段を下って行くと続いて短い廊下に出た。

その先に木の扉があり、扉の隙間から煌々と強い光が漏れていた。

邪悪な気配も漏れ出ている。

「あの扉の向こうに悪魔さんが居やがるな」

俺は扉に近付くと拳で軽くノックした。

すると扉の向こうから返答が戻って来る。

「はーい、ちょっと待ってね~。今バスローブを羽織るから~」

口調は女性の物だったが、声が少し太くてハスキーだ。

これだけでは男か女か分からない。

それにしてもバスローブだと!!

って、ことはだ。

今まで全裸だったのか!?

うぐっ、ちょっぴり心臓が痛む……。

この痛みが無駄に終わる可能性が高いのに、俺は考えずに居られない。

若いって罪だよね!

煩悩のパワーは無限大だ!

そんなことよりも──。

俺が胸の痛みを耐えていると、扉の向こうから準備OKの返答が飛んで来る。

「はい、良いわよ。入りなさいな~」

「失礼しまーす」

恐縮して俺が扉を開けて中に入ると、そこは15メートル四方の部屋だった。

室内には豪華そうな家具が幾つも並んでいる。

タンス、テーブル、ベッド、ソファー、どれもこれも赤い着色が目立つ家具ばかりだった。

そして、それら装飾品のような家具を、高い天井からぶら下がる豪華なシャンデリアが照らし出していた。

「あら、ノームじゃあないのね?」

「人間でーす」

そいつは赤いソファーにバスローブで寛ぐようなセクシーポーズで横になっていた。

ソバージュの長い髪は炎のように赤く、白いバスローブから見える肌も赤かった。

誘惑的な深紅だ。

しかし、顔の骨格はゴツイ。

瞳は切れ長で睫毛が長い。

バスローブの隙間から見える胸元は豊満ならぬ筋肉質。

赤いソファーに誘惑的に横たわり見えているセクシーな太股は野生の馬のようにも見えた。

このレッサーデーモンは、豊満と呼ぶより筋肉質だ。

「結構マッチョだな……」

俺は余裕を気取るレッサーデーモンにネーム判定を行う。

【レッドアリーマです】

「レッドアリーマ?」

レッドアリーマって、あのレッドアリーマー族か?

ならガーゴイルのはずだ。

昔見たゲームの設定だとそうなっている。

俺の呟きを聞いたレッドアリーマが言い返して来た。

「あら、あなた私の種族を知っているの?」

「いや、詳しくは知らん。ただ、レッドアリーマーってガーゴイルだろ。レッサーデーモンじゃあないよな?」

「私はレッドアリーマーじゃあないわよ。レッドアリーマなの。語尾を伸ばさないわ」

「微妙な差なのね」

レッサーデーモン種、レッドアリーマ族、名前がルイレアールなのね。

赤いソファーに寝そべっていたルイレアールが立ち上がった。

デカイ……。

寝そべっていたから分かりずらかったが、身長は190センチを越えている。

この身長でレッサーデーモンと言うのだから発育が良いのだろう。

ルイレアールが俺の質問に答えた。

「何を言うのかしら、この人間は?」

少し怒っているな。

「レッドアリーマは立派なレッサーデーモンよ。ガーゴイルのような半端な魔法生物と一緒にしないでちょうだいな!」

「まー、そう怒るな」

「それで、人間風情が何しに来たわけよ?」

俺は素直に答える。

「煩悩を叶える水晶を貰いに来た」

「あら、まあ、ストレートね。でも、はい、あげますって言えないわね~」

「なんでだ?」

「あれは、このダンジョンの宝よ。それをあなた風情にあげられないわ」

「そうか~、それじゃあ仕方ないか~」

「仕方ないなら、どうするの。力任せに奪って行くの?」

「それも有りだ」

ルイレアールがバスローブに包まれた体を誘惑的に捩りながら言った。

「そうなのね。私から乱暴に貞操を奪い取るように水晶を強奪するのね。私が嫌がっていても乱暴に押し倒して馬乗りになってから言うの、おとなしくしろ、そうすれば痛い目に合わないで極楽にも登るような気持ちいい思いで昇天させてやるぜってね!」

「言わん、言わん……」

あー、こいつも脳味噌が膿んでるわ~。

トロットロに膿んでるわ~。

完璧に蛆がわいてるわ~。

「えっ、言わないの、詰まんない子ね。じゃあ、死んでしまいなさいよ!!」

あれ、怒られた……。

なんで……。

ルイレアールがどこか遠くを見詰めながら愚痴るように言う。

「まあ、仕方ないわね。所詮は魔族と人間とでは分かり合えないのよ……。愛なんか芽生えないわ……」

うん、変態悪魔とは分かりあえません。

ましてや愛なんか芽生えません。

落胆したように言うルイレアールがバスローブを脱ぎ捨てた。

すると背中から大きな黒い翼が広がった。

大型蝙蝠のような悪魔の翼だ。

そして、バスローブの下にはやはり赤いビキニアーマーを着込んでやがる。

しかし、その胸は筋肉で分厚くオッパイとは呼べない代物だった。

しかも腹筋はシックスパックで手足も筋肉でパンパンである。

明らかに戦闘用のマッスルだ。

その筋肉から殺気が感じられた。

殺る気満々だな。

「なんだい悪魔。俺と殺り合うつもりか?」

「そのつもりよ。内臓は生で食べて、知能が低そうな頭は良く煮込んでから食べてあげるわ。そして、残った骨はスケルトンに変えて新作ビキニを着せてからダンジョンに放ってあげる」

ルイレアールはそう言うと何も無い空間から細身の剣を抜き出した。

「異次元宝物庫か……」

取り出した武器は少し長いレイピアだ。

そのレイピアと着込んでいるビキニアーマーから強い魔力を感じ取れた。

右手にレイピアを持ち、左手を腰に当てたルイレアールは、ヒュンヒュンと風を切りながらレイピアを手首で振るった。

体は横向きでフェンシングの構えだ。

それにあのレイピアはマジックアイテムだろう。

魔力が感じ取れる。

そして、ルイレアールがおぞましく微笑む。

「命もチ◯コも切り刻んであげるわ!」

無惨なことを言いやがる野郎だぜ。

流石は悪魔だ。

怖いことを言いやがるが、そんな脅しの台詞にはビク付いてもいられない。

俺は腰から黄金剣を抜くと構えながら訊いた。

「最後になんだが、戦う前に訊いておきたいことがあるんだ、いいか?」

「何かしら? 彼氏なら募集中よ」

「おまえ、男? 女? どっち?」

「ニューハーフよ♡」

よし、男だ。

心置き無く殺してやるぞ。


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