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【第十三章】魔王城攻略編
13-13【アインシュタイン】
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俺は魔王城に向かう森の中で知り合ったホビットと仲良くなり、ホビットの家に招かれることになった。
ホビットの暮らしに興味があったのもあるが、いろいろと探りを入れたかったからだ。
何よりも、森の情報や、魔王城の情報を訊きだしたかった。
どんな些細な情報でも無いよりましだ。
俺たちはホビットの家に向かって森を進んでいた。
幸いにも魔王城の方向に進んでいる。
「なあ、ホビット。俺の名前はアスランだ。お前は?」
俺の前を進むホビットが棒読みで答える。
「オラの名前はアインシュタインだー(棒読み)」
「えっ、マジ………」
こんな馬鹿なしゃべり方なのに、そんな天才的な名前なのかよ……。
信じられねぇ……。
もしかして、この世界のアインシュタインってお馬鹿系の名前なのかな?
まあ、いいか。
「でえ、アインシュタイン。家までは遠いのか?」
「直ぐだよー、直ぐー(棒読み)」
「お前、家族は?」
「居ないー。一人で住んでいるー(棒読み)」
「他にホビットの仲間は居るのか?」
「居ないー、全員クマに食われただー(棒読み)」
サラリと寂しいことを言うヤツだな……。
マジで仲間も家族もクマに食われたのかな?
「だから誰かと話すのはー、久々だー。だから沢山話したいー(棒読み)」
「そうか、一人でこの森に住んでいるのか……」
なんだ、ボッチかよ。
てっきりホビットの村でもあるかと思ったのにさ。
するとアインシュタインが立ち止まった。
「ここがオラの家だー。遠慮するなー、入ってけろー(棒読み)」
「ここが……」
そこは大樹の切り株の下に掘られた粗末な穴だった。
ただの小動物が掘った巣穴に見える。
文化人が住むような家ではないだろう。
「入り口も狭いがー、中も狭いから気をつけてくりよなー(棒読み)」
そう言うとアインシュタインは巣穴に入って行った。
小人ならば中腰で進めるサイズの穴だが、人間の俺では四つん這いで進まなければ入っていけないだろうサイズの入り口である。
「膝が汚れてしまう。しゃあねえか……」
俺も身を屈めて巣穴に入って行く。
通路は狭いが深さはあった。
そして、案の定だが手と膝が泥だらけになってしまう。
しかし少し進むと開けた部屋に出た。
それでも天井は低く屈んでいないとならない。
壁には低い棚があり、木製の皿や器が並んでいた。
アインシュタインはランプに明かりを灯しながら言う。
「ここに座れー(棒読み)」
藁の上に卓袱台がある。
俺はそこに招かれた。
「いま白湯を出すだねー(棒読み)」
「お構い無く……」
「じゃあお湯を沸かすの大変だから水なー(棒読み)」
すると木のカップに水を出された。
カップの中を覗き込めば水に異物が泳いでいる。
「おい、水の中にボウフラが泳いでいるぞ……」
「遠慮せずに飲んでいいぞ(棒読み)」
これは飲めんな……。
俺は静かにカップの中の水を床に捨てた。
「なあ、アインシュタイン。お前はこの森に長いのか?」
「長いよー。なんでー?(棒読み)」
「どのぐらい長い?」
「産まれた時からー、この森を出たことがないぞー(棒読み)」
「この森出身なのか?」
「そうだー。前まではオトンとオカンが居たけれど、クマに仲良く食われたぞー(棒読み)」
「仲良く食われるってなんだよ……」
「それから一人で仲良く暮らしてるー(棒読み)」
仲良くって誰とだよ、一人じゃん……。
「この森にはクマ以外に強いモンスターは居ないのか?」
「この森の王はクマだー。そのクマもアスランが倒したからアスランが次の王だー(棒読み)」
「もしかして、あのクマが一番強かったのか?」
「赤いモヒカンのクマはー、一匹しか居ないからなー(棒読み)」
「なるほど……」
どうやら偶然にも食物連鎖の頂点を倒してしまったらしい。
なんかラッキー。
「じゃあお前はマミーレイス婦人って知ってるか?」
「誰だー、それー?」
「お城に住んでる悪霊のボスだ」
「もしかしてー、闇の女王かー?(棒読み)」
「闇の女王?」
「オトンが言ってたぞー。クマが森の王で、ワニが水の王。そして、お化けが闇の女王だってー(棒読み)」
「たぶん、それだな」
「オラー、闇の女王を見たことないぞー。だって湖を渡れないからなー(棒読み)」
「城には入ったことが無いのか?」
「無いだー。だって水の王はクマより怖いものー(棒読み)」
「水の王って、ワニとか言ったな?」
「でっかいワニが水の王だー(棒読み)」
確か魔王城の周りは湖だったよな。
そこに巨大ワニが住んでいるのかな?
ならば、そいつも討伐せにゃあならんぞ。
そんな馬鹿大きなワニが居たら、城の修復作業もできないだろう。
とりあえず分かったことは、水の王ワニと、闇の女王マミーレイス婦人の討伐だな。
まずはワニの討伐からだ。
まあ、それは置いといてだ。
「なあ、アインシュタイン?」
「なんだー、アスラン?(棒読み)」
「この部屋をしばらく借りていいか?」
「一緒に添い寝したいのかー?(棒読み)」
「いや、お前には新しい居場所を提供するよ」
「んん? 言ってる意味が分からんぞー(棒読み)」
俺は異次元宝物庫から転送絨毯を出して狭い穴蔵の部屋に敷いた。
それだけで穴蔵の部屋の半分以上を使ってしまう。
「おお、綺麗な絨毯だー。くれるのかー?(棒読み)」
「アインシュタイン。俺と一緒にここに乗れ」
「分かったー。優しくしてねー(棒読み)」
「チ◯コ!」
俺とアインシュタインは転送絨毯でソドムタウンにテレポートした。
半壊したログハウスの一室に飛ぶ。
「あれれー、ここはどこだー? 誘拐かー?(棒読み)」
「ソドムタウンだよ」
「ソドムタウン……?(棒読み)」
知らないよな。
何せあの森から出たことが無いんだもの。
俺がキョロキョロするアインシュタインを連れて部屋を出ると、リビングでゴリがエプロン姿で晩飯の準備をしていた。
俺に気付いたゴリがテーブルに皿を並べながら言う。
「やあ、アスランお帰り。あれ、客人か? それとも誘拐してきたか?」
後半の発言は無視する。
「ああ、こいつはホビットのアインシュタインだ」
「やあ、オラはアインシュタインだー、よろしくなー。今拐われて来たばかりだー(棒読み)」
「やっぱり拐ってきたんじゃあないか」
「これから薄い本のエルフみたいに辱しめられるところだー(棒読み)」
ゴリも後半の発言を無視した。
「俺はゴリだ、よろしくな。それにしてもホビットとは珍しいな」
「ホビット、珍しいかー? でも、タマタマは二つあるぞー(棒読み)」
アインシュタインを無視して俺はゴリに訊いた。
「皆は?」
「バイマンは魔法使いギルドにバイトだ。オアイドスは酒場で歌ってるだろうさ。ガイアとカンパネルラ爺さんは狼の散歩に出ているよ。スカル姉さんは君主のところだ」
「なんか最近スカル姉さんは君主に呼び出されてばかりだな。何か悪いことでもしたのか? 詐欺か?」
「その内に、ちゃんと話があるだろうさ」
だと良いのだが……。
ゴリが言う。
「まあ、そろそろ皆も帰って来るころだ。そのホビットも飯を食うんだろ?」
「ああ、食うはずだ」
「ええっ!? ご飯をご馳走してくれるのかー(棒読み)」
「もちろんだよ」
「じゃあ俺たちはもう夫婦だなー。いつ式を上げるー?(棒読み)」
俺とゴリが声を揃えて同じ台詞を口走った。
「「いや、断る!!」」
「なーんーでーだー!?(棒読み)」
すると半壊したログハウスの外からスカル姉さんの声が飛んで来る。
「よう、アスランお帰り」
「ああ、スカル姉さん、ただいま」
「んん、なんだその間抜けそうなホビットは?」
「オラ、アインシュタインだー。貧乳のお姉さん、よろしくなー(棒読み)」
スカル姉さんが無言で修復材料の丸太をアインシュタインに投げ付けた。
「ぐふぅー、たすけーてーくーりー。おーもーいー(棒読み)」
太い丸太の下敷きになったアインシュタインを皆が無視して話を進める。
「スカル姉さん、それよりもだ。最近やたらと君主のところに呼び出されていないか?」
「ああ、その件なんだが、明日アスランも来い」
「君主のところにか?」
「皆が揃うから、丁度良かろうて」
「皆が……?」
その時に、俺は初めて知る。
俺が一人で立ち上げた秘密基地製作が、今では独り歩きして、大がかりなプロジェクトとして走り出していたことを──。
ホビットの暮らしに興味があったのもあるが、いろいろと探りを入れたかったからだ。
何よりも、森の情報や、魔王城の情報を訊きだしたかった。
どんな些細な情報でも無いよりましだ。
俺たちはホビットの家に向かって森を進んでいた。
幸いにも魔王城の方向に進んでいる。
「なあ、ホビット。俺の名前はアスランだ。お前は?」
俺の前を進むホビットが棒読みで答える。
「オラの名前はアインシュタインだー(棒読み)」
「えっ、マジ………」
こんな馬鹿なしゃべり方なのに、そんな天才的な名前なのかよ……。
信じられねぇ……。
もしかして、この世界のアインシュタインってお馬鹿系の名前なのかな?
まあ、いいか。
「でえ、アインシュタイン。家までは遠いのか?」
「直ぐだよー、直ぐー(棒読み)」
「お前、家族は?」
「居ないー。一人で住んでいるー(棒読み)」
「他にホビットの仲間は居るのか?」
「居ないー、全員クマに食われただー(棒読み)」
サラリと寂しいことを言うヤツだな……。
マジで仲間も家族もクマに食われたのかな?
「だから誰かと話すのはー、久々だー。だから沢山話したいー(棒読み)」
「そうか、一人でこの森に住んでいるのか……」
なんだ、ボッチかよ。
てっきりホビットの村でもあるかと思ったのにさ。
するとアインシュタインが立ち止まった。
「ここがオラの家だー。遠慮するなー、入ってけろー(棒読み)」
「ここが……」
そこは大樹の切り株の下に掘られた粗末な穴だった。
ただの小動物が掘った巣穴に見える。
文化人が住むような家ではないだろう。
「入り口も狭いがー、中も狭いから気をつけてくりよなー(棒読み)」
そう言うとアインシュタインは巣穴に入って行った。
小人ならば中腰で進めるサイズの穴だが、人間の俺では四つん這いで進まなければ入っていけないだろうサイズの入り口である。
「膝が汚れてしまう。しゃあねえか……」
俺も身を屈めて巣穴に入って行く。
通路は狭いが深さはあった。
そして、案の定だが手と膝が泥だらけになってしまう。
しかし少し進むと開けた部屋に出た。
それでも天井は低く屈んでいないとならない。
壁には低い棚があり、木製の皿や器が並んでいた。
アインシュタインはランプに明かりを灯しながら言う。
「ここに座れー(棒読み)」
藁の上に卓袱台がある。
俺はそこに招かれた。
「いま白湯を出すだねー(棒読み)」
「お構い無く……」
「じゃあお湯を沸かすの大変だから水なー(棒読み)」
すると木のカップに水を出された。
カップの中を覗き込めば水に異物が泳いでいる。
「おい、水の中にボウフラが泳いでいるぞ……」
「遠慮せずに飲んでいいぞ(棒読み)」
これは飲めんな……。
俺は静かにカップの中の水を床に捨てた。
「なあ、アインシュタイン。お前はこの森に長いのか?」
「長いよー。なんでー?(棒読み)」
「どのぐらい長い?」
「産まれた時からー、この森を出たことがないぞー(棒読み)」
「この森出身なのか?」
「そうだー。前まではオトンとオカンが居たけれど、クマに仲良く食われたぞー(棒読み)」
「仲良く食われるってなんだよ……」
「それから一人で仲良く暮らしてるー(棒読み)」
仲良くって誰とだよ、一人じゃん……。
「この森にはクマ以外に強いモンスターは居ないのか?」
「この森の王はクマだー。そのクマもアスランが倒したからアスランが次の王だー(棒読み)」
「もしかして、あのクマが一番強かったのか?」
「赤いモヒカンのクマはー、一匹しか居ないからなー(棒読み)」
「なるほど……」
どうやら偶然にも食物連鎖の頂点を倒してしまったらしい。
なんかラッキー。
「じゃあお前はマミーレイス婦人って知ってるか?」
「誰だー、それー?」
「お城に住んでる悪霊のボスだ」
「もしかしてー、闇の女王かー?(棒読み)」
「闇の女王?」
「オトンが言ってたぞー。クマが森の王で、ワニが水の王。そして、お化けが闇の女王だってー(棒読み)」
「たぶん、それだな」
「オラー、闇の女王を見たことないぞー。だって湖を渡れないからなー(棒読み)」
「城には入ったことが無いのか?」
「無いだー。だって水の王はクマより怖いものー(棒読み)」
「水の王って、ワニとか言ったな?」
「でっかいワニが水の王だー(棒読み)」
確か魔王城の周りは湖だったよな。
そこに巨大ワニが住んでいるのかな?
ならば、そいつも討伐せにゃあならんぞ。
そんな馬鹿大きなワニが居たら、城の修復作業もできないだろう。
とりあえず分かったことは、水の王ワニと、闇の女王マミーレイス婦人の討伐だな。
まずはワニの討伐からだ。
まあ、それは置いといてだ。
「なあ、アインシュタイン?」
「なんだー、アスラン?(棒読み)」
「この部屋をしばらく借りていいか?」
「一緒に添い寝したいのかー?(棒読み)」
「いや、お前には新しい居場所を提供するよ」
「んん? 言ってる意味が分からんぞー(棒読み)」
俺は異次元宝物庫から転送絨毯を出して狭い穴蔵の部屋に敷いた。
それだけで穴蔵の部屋の半分以上を使ってしまう。
「おお、綺麗な絨毯だー。くれるのかー?(棒読み)」
「アインシュタイン。俺と一緒にここに乗れ」
「分かったー。優しくしてねー(棒読み)」
「チ◯コ!」
俺とアインシュタインは転送絨毯でソドムタウンにテレポートした。
半壊したログハウスの一室に飛ぶ。
「あれれー、ここはどこだー? 誘拐かー?(棒読み)」
「ソドムタウンだよ」
「ソドムタウン……?(棒読み)」
知らないよな。
何せあの森から出たことが無いんだもの。
俺がキョロキョロするアインシュタインを連れて部屋を出ると、リビングでゴリがエプロン姿で晩飯の準備をしていた。
俺に気付いたゴリがテーブルに皿を並べながら言う。
「やあ、アスランお帰り。あれ、客人か? それとも誘拐してきたか?」
後半の発言は無視する。
「ああ、こいつはホビットのアインシュタインだ」
「やあ、オラはアインシュタインだー、よろしくなー。今拐われて来たばかりだー(棒読み)」
「やっぱり拐ってきたんじゃあないか」
「これから薄い本のエルフみたいに辱しめられるところだー(棒読み)」
ゴリも後半の発言を無視した。
「俺はゴリだ、よろしくな。それにしてもホビットとは珍しいな」
「ホビット、珍しいかー? でも、タマタマは二つあるぞー(棒読み)」
アインシュタインを無視して俺はゴリに訊いた。
「皆は?」
「バイマンは魔法使いギルドにバイトだ。オアイドスは酒場で歌ってるだろうさ。ガイアとカンパネルラ爺さんは狼の散歩に出ているよ。スカル姉さんは君主のところだ」
「なんか最近スカル姉さんは君主に呼び出されてばかりだな。何か悪いことでもしたのか? 詐欺か?」
「その内に、ちゃんと話があるだろうさ」
だと良いのだが……。
ゴリが言う。
「まあ、そろそろ皆も帰って来るころだ。そのホビットも飯を食うんだろ?」
「ああ、食うはずだ」
「ええっ!? ご飯をご馳走してくれるのかー(棒読み)」
「もちろんだよ」
「じゃあ俺たちはもう夫婦だなー。いつ式を上げるー?(棒読み)」
俺とゴリが声を揃えて同じ台詞を口走った。
「「いや、断る!!」」
「なーんーでーだー!?(棒読み)」
すると半壊したログハウスの外からスカル姉さんの声が飛んで来る。
「よう、アスランお帰り」
「ああ、スカル姉さん、ただいま」
「んん、なんだその間抜けそうなホビットは?」
「オラ、アインシュタインだー。貧乳のお姉さん、よろしくなー(棒読み)」
スカル姉さんが無言で修復材料の丸太をアインシュタインに投げ付けた。
「ぐふぅー、たすけーてーくーりー。おーもーいー(棒読み)」
太い丸太の下敷きになったアインシュタインを皆が無視して話を進める。
「スカル姉さん、それよりもだ。最近やたらと君主のところに呼び出されていないか?」
「ああ、その件なんだが、明日アスランも来い」
「君主のところにか?」
「皆が揃うから、丁度良かろうて」
「皆が……?」
その時に、俺は初めて知る。
俺が一人で立ち上げた秘密基地製作が、今では独り歩きして、大がかりなプロジェクトとして走り出していたことを──。
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