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【第十二章】大地母神ガイア編
12-32【一つ目のボッチ】
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サイクロプスを偵察しての率直な結論。
「さて、帰ろうかな……」
俺は岩陰に隠れながら考えていた。
率直に勝てるか勝てないかで結論を出してしまえば、難しいだろう。
勝てるが七割で、勝てないが三割だ。
いえ……、強がりました。
勝てるが一割で、勝てないが九割だろうさ。
腕立て伏せやスクワットなどの筋トレまでは良い。
しかし、その後に見せたデンプシーロールとハイキックが問題だ。
筋トレにシャドー、その二つからして、あのサイクロプスが知能に溢れているのが鑑みれた。
ただデカイだけの巨人ならばずる賢く策を捻り出せば勝てただろう。
だが、知識や知恵が備わっている巨人となれば無理に近い。
知恵比べの類いで、あの巨漢とのハンデを埋められるだろうか?
騙し合いの類いで、あの訓練された巨人を出し抜けるだろうか?
何より、そこまでして勝つ理由があるだろうか?
そこまでして戦う理由があるだろうか?
…………………………。
……………………。
……………。
んんーー、無いよね~……。
もう、戦う理由が無いよね!!
あんなハイキックを食らったら人間だって木っ端微塵になっちまうよ!!
逃げよう……。
素直にドワーフの村長さんには「あれは無理だわ」っと言うしかない。
あのドワーフの村長さんだって、呆れながらも「ですよね~」って言ってくれるさ。
さて、帰ろうかな~。
「居るのは分かってるのだぞ!」
あー、凄く低い声だわ~……。
今のはサイクロプスの声だよね……。
俺、見つかってますか?
見つかってるのかな?
「出て来い。直ぐには殺さないぞ」
直ぐには殺さなくっても、いずれは殺す気なんですね。
とほほ……。
「逃げられないぞ。そもそも歩幅が違うのだ。走って私に勝てると思うなよ」
ですよね~。
こりゃあ、逃げ道も絶たれたかな……。
しゃあないか……。
早々と観念した俺は岩の陰から姿を出した。
15メートルほど先にサイクロプスが立っている。
サイクロプスは戦闘態勢こそ築いていないが、僅かな殺気を垂れ流していた。
戦う気満々だ。
置かれてあったはずのスレッジハンマーを両手に確りと持っている。
その剛腕に青筋が何本も勇ましく走っていた。
「こりゃあ、参ったわ……」
巨漢で素手の使えるファイターが武装している。
それだけで涙が出てきそうだわ……。
アカン……。
勝てる気がしない……。
だが、ビビっても居られない。
俺は顔を引き締めて一つ目の面を見上げて睨む。
強気だけでも相貌から放った。
僅かな抵抗である。
するとサイクロプスが訊いて来る。
「質問だ、人間よ。何故に武装した人間が一人で私のところに来たのだ。それとも離れた森に軍隊でも隠しているのか?」
「いや、俺は一人だ……」
ここは正直に出るか。
嘘をついてもしゃあないだろう。
「討伐か? 腕試しか?」
「両方だ!」
やべぇー!!
言っちゃったよ!!
もー、戻れねーぞー!!
「それはさいわいだ。私も暇を持て余していたのだ」
「それは丁度良いタイミングだな!」
俺は異次元宝物庫から黄金剣の大小を引き抜いた。
ゴールドロングソード+3とゴールドショートソード+3の二刀流だ。
余裕なんて見せてられない。
下手をしたら敗北どころか木っ端微塵だ。
最初っから全力全開で戦わなければ死んじゃうよ。
俺が黄金の双剣を構えると、サイクロプスの一つ目が赤く輝いた。
「両剣ともプラス3の業物だな。その他にも多数のマジックアイテムを全身に帯びている。かなりのマジックアイテムの武装量だ。並みの戦士が有する数ではないぞ。実に面白い!」
「バレた!?」
さっき一つ目が赤く輝いたのは魔力感知をしたのか!!
黄金剣がプラス3だとバレたところからしてアイテム鑑定までされちゃったのかな!?
こいつ、魔力感知とアイテム鑑定スキルを持ってやがるぞ!!
ヤバイ!?
こんなの初めて!!
今までそんな敵に会ったことすらねーぞ!!
なのにそれがサイクロプスかよ!!
巨人かよ!!
巨人じゃなくっても強敵になりうる条件なのに、選りに選ってそれがサイクロプスかよ!!
最悪だ!!
これは最悪だぞ!!
マジックアイテムを使った騙し撃ちすら難しいじゃんかよ!!
「嬉しいぞ!」
言いながらサイクロプスが手にあるスレッジハンマーをクルクルと振り回しだした。
それはバトントワラーのように可憐に回すと言うよりも、遥かに多彩で複雑であった。
腕を使うだけでなく、全身を使って回しているのだ。
腕、肩、脚、腰、首の回りをスレッジハンマーが器用に交差するようだった。
まるで見ている相手を惑わすことを課題に振り回すカンフーの動きに窺えた。
そして振り回していたスレッジハンマーが最後に止まった位置は一角頭部の真上だった。
サイクロプスは両腕でスレッジハンマーを上段の構えに止めている。
「嬉しい、実に嬉しいぞ!!」
「嬉しい? 何が嬉しいの……?」
「戦えることが嬉しいのだ!!」
「そ、そんなに……」
「実に百年ぶりだろうか!?」
そんなにブランクがあるんだ……。
そのブランクのために腕が鈍ってると助かるんだけどな~……。
「百年ほど前に、人間の冒険者が二十人で討伐隊を編成して挑んで来た」
「そいつらは、どうなりました?」
「詰まらない戦力だったから粉砕してやったぞ!!」
粉砕かよ!!
「皆殺しにしたの……?」
「三人に逃げられた!」
生き残れた奴が居たんだね……。
「それ以来だ。戦っていない。日々トレーニングだ」
「なんで、そんなに戦いたいの。戦いたいのなら、町や村を襲えばいいじゃんか。幾らでも戦えるし、幾らでも討伐部隊が編成されるぞ?」
「私とて馬鹿ではないのだ」
あー、やっぱり馬鹿じゃあないよね……、残念!!
「弱者とて無駄に殺せば討伐部隊が編成される。それを打ち破っても次は討伐軍団が編成される。それは何度打ち破っても、どんどんと大きくなるだろう。そうなれば、いずれ私も殺される。私は死にたいわけではないのだ」
案外と臆病と言うか、堅実的なんだな。
モンスターにはあるまじき理念だわ。
「私は戦士だった。寧ろ軍人だ。元軍人だった」
「えっ、軍人なの……」
「故に大義名分もなしに殺戮は出来ない。だからここで挑んで来る者を待っているのだ!」
「あ~……、ちょっと訊いていいか?」
「なんだ?」
「軍人さんなの?」
サイクロプスは振り上げていたスレッジハンマーを下ろした。
一時休戦に入ってくれたようだ。
「正確には軍人だっただ。もう、仕える王も居ない……」
サイクロプスの額に悲しさから皺が寄る。
俺はピーーンっと来た。
「もしかして、あんた、魔王軍か……?」
「元魔王軍だ……」
うわーー!!
魔王軍の生き残りだ!!
てか、魔王軍が居たのって、何百年前の話だよ!!
確か五百年ぐらい前だよね!!
あれ、もっと前だったかな?
とにかくだ。
俺が仰天していると、サイクロプスが勝手に語り出す。
「私は元魔王軍四将の一角、タイタロス様に仕えた副将のミケランジェロと申す!」
なんか微妙にご立派な称号だな!!
すげー微妙に大物っぽいしさ!!
副将だよ!?
やっぱり微妙だけど侮れないよね!!
こうなったら俺も名乗ってやるぞ!!
「俺の名は、ソドムタウン冒険者ギルドの若きエース、ソロ冒険者のアスランだ!!」
「ソロ冒険者だと?」
「そうだ!!」
「なんだ、お前もボッチか……」
「一緒にすんな!!」
「さて、帰ろうかな……」
俺は岩陰に隠れながら考えていた。
率直に勝てるか勝てないかで結論を出してしまえば、難しいだろう。
勝てるが七割で、勝てないが三割だ。
いえ……、強がりました。
勝てるが一割で、勝てないが九割だろうさ。
腕立て伏せやスクワットなどの筋トレまでは良い。
しかし、その後に見せたデンプシーロールとハイキックが問題だ。
筋トレにシャドー、その二つからして、あのサイクロプスが知能に溢れているのが鑑みれた。
ただデカイだけの巨人ならばずる賢く策を捻り出せば勝てただろう。
だが、知識や知恵が備わっている巨人となれば無理に近い。
知恵比べの類いで、あの巨漢とのハンデを埋められるだろうか?
騙し合いの類いで、あの訓練された巨人を出し抜けるだろうか?
何より、そこまでして勝つ理由があるだろうか?
そこまでして戦う理由があるだろうか?
…………………………。
……………………。
……………。
んんーー、無いよね~……。
もう、戦う理由が無いよね!!
あんなハイキックを食らったら人間だって木っ端微塵になっちまうよ!!
逃げよう……。
素直にドワーフの村長さんには「あれは無理だわ」っと言うしかない。
あのドワーフの村長さんだって、呆れながらも「ですよね~」って言ってくれるさ。
さて、帰ろうかな~。
「居るのは分かってるのだぞ!」
あー、凄く低い声だわ~……。
今のはサイクロプスの声だよね……。
俺、見つかってますか?
見つかってるのかな?
「出て来い。直ぐには殺さないぞ」
直ぐには殺さなくっても、いずれは殺す気なんですね。
とほほ……。
「逃げられないぞ。そもそも歩幅が違うのだ。走って私に勝てると思うなよ」
ですよね~。
こりゃあ、逃げ道も絶たれたかな……。
しゃあないか……。
早々と観念した俺は岩の陰から姿を出した。
15メートルほど先にサイクロプスが立っている。
サイクロプスは戦闘態勢こそ築いていないが、僅かな殺気を垂れ流していた。
戦う気満々だ。
置かれてあったはずのスレッジハンマーを両手に確りと持っている。
その剛腕に青筋が何本も勇ましく走っていた。
「こりゃあ、参ったわ……」
巨漢で素手の使えるファイターが武装している。
それだけで涙が出てきそうだわ……。
アカン……。
勝てる気がしない……。
だが、ビビっても居られない。
俺は顔を引き締めて一つ目の面を見上げて睨む。
強気だけでも相貌から放った。
僅かな抵抗である。
するとサイクロプスが訊いて来る。
「質問だ、人間よ。何故に武装した人間が一人で私のところに来たのだ。それとも離れた森に軍隊でも隠しているのか?」
「いや、俺は一人だ……」
ここは正直に出るか。
嘘をついてもしゃあないだろう。
「討伐か? 腕試しか?」
「両方だ!」
やべぇー!!
言っちゃったよ!!
もー、戻れねーぞー!!
「それはさいわいだ。私も暇を持て余していたのだ」
「それは丁度良いタイミングだな!」
俺は異次元宝物庫から黄金剣の大小を引き抜いた。
ゴールドロングソード+3とゴールドショートソード+3の二刀流だ。
余裕なんて見せてられない。
下手をしたら敗北どころか木っ端微塵だ。
最初っから全力全開で戦わなければ死んじゃうよ。
俺が黄金の双剣を構えると、サイクロプスの一つ目が赤く輝いた。
「両剣ともプラス3の業物だな。その他にも多数のマジックアイテムを全身に帯びている。かなりのマジックアイテムの武装量だ。並みの戦士が有する数ではないぞ。実に面白い!」
「バレた!?」
さっき一つ目が赤く輝いたのは魔力感知をしたのか!!
黄金剣がプラス3だとバレたところからしてアイテム鑑定までされちゃったのかな!?
こいつ、魔力感知とアイテム鑑定スキルを持ってやがるぞ!!
ヤバイ!?
こんなの初めて!!
今までそんな敵に会ったことすらねーぞ!!
なのにそれがサイクロプスかよ!!
巨人かよ!!
巨人じゃなくっても強敵になりうる条件なのに、選りに選ってそれがサイクロプスかよ!!
最悪だ!!
これは最悪だぞ!!
マジックアイテムを使った騙し撃ちすら難しいじゃんかよ!!
「嬉しいぞ!」
言いながらサイクロプスが手にあるスレッジハンマーをクルクルと振り回しだした。
それはバトントワラーのように可憐に回すと言うよりも、遥かに多彩で複雑であった。
腕を使うだけでなく、全身を使って回しているのだ。
腕、肩、脚、腰、首の回りをスレッジハンマーが器用に交差するようだった。
まるで見ている相手を惑わすことを課題に振り回すカンフーの動きに窺えた。
そして振り回していたスレッジハンマーが最後に止まった位置は一角頭部の真上だった。
サイクロプスは両腕でスレッジハンマーを上段の構えに止めている。
「嬉しい、実に嬉しいぞ!!」
「嬉しい? 何が嬉しいの……?」
「戦えることが嬉しいのだ!!」
「そ、そんなに……」
「実に百年ぶりだろうか!?」
そんなにブランクがあるんだ……。
そのブランクのために腕が鈍ってると助かるんだけどな~……。
「百年ほど前に、人間の冒険者が二十人で討伐隊を編成して挑んで来た」
「そいつらは、どうなりました?」
「詰まらない戦力だったから粉砕してやったぞ!!」
粉砕かよ!!
「皆殺しにしたの……?」
「三人に逃げられた!」
生き残れた奴が居たんだね……。
「それ以来だ。戦っていない。日々トレーニングだ」
「なんで、そんなに戦いたいの。戦いたいのなら、町や村を襲えばいいじゃんか。幾らでも戦えるし、幾らでも討伐部隊が編成されるぞ?」
「私とて馬鹿ではないのだ」
あー、やっぱり馬鹿じゃあないよね……、残念!!
「弱者とて無駄に殺せば討伐部隊が編成される。それを打ち破っても次は討伐軍団が編成される。それは何度打ち破っても、どんどんと大きくなるだろう。そうなれば、いずれ私も殺される。私は死にたいわけではないのだ」
案外と臆病と言うか、堅実的なんだな。
モンスターにはあるまじき理念だわ。
「私は戦士だった。寧ろ軍人だ。元軍人だった」
「えっ、軍人なの……」
「故に大義名分もなしに殺戮は出来ない。だからここで挑んで来る者を待っているのだ!」
「あ~……、ちょっと訊いていいか?」
「なんだ?」
「軍人さんなの?」
サイクロプスは振り上げていたスレッジハンマーを下ろした。
一時休戦に入ってくれたようだ。
「正確には軍人だっただ。もう、仕える王も居ない……」
サイクロプスの額に悲しさから皺が寄る。
俺はピーーンっと来た。
「もしかして、あんた、魔王軍か……?」
「元魔王軍だ……」
うわーー!!
魔王軍の生き残りだ!!
てか、魔王軍が居たのって、何百年前の話だよ!!
確か五百年ぐらい前だよね!!
あれ、もっと前だったかな?
とにかくだ。
俺が仰天していると、サイクロプスが勝手に語り出す。
「私は元魔王軍四将の一角、タイタロス様に仕えた副将のミケランジェロと申す!」
なんか微妙にご立派な称号だな!!
すげー微妙に大物っぽいしさ!!
副将だよ!?
やっぱり微妙だけど侮れないよね!!
こうなったら俺も名乗ってやるぞ!!
「俺の名は、ソドムタウン冒険者ギルドの若きエース、ソロ冒険者のアスランだ!!」
「ソロ冒険者だと?」
「そうだ!!」
「なんだ、お前もボッチか……」
「一緒にすんな!!」
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