上 下
306 / 611
【第十一章】増殖祭り編。

11-10【ヘルハウンド科ケルベロス属】

しおりを挟む
モンスター名、ケルベロス。

種族名、ヘルハウンド。

この異世界だと、生息地は炎の山だったかな。

そんなとこに俺は行ったことがないわ。

そんでもって、全長3.5メートルほどで、一つの胴体に三つの頭部を有した超大型犬だ。

狼じゃあないな、犬だわ。

完全に頭部が違うもん。

その体格は見た目的には、象並みにデカイ。

口からは火が揺らいでいるから、炎に対しては無効能力を有しているだろう。

そうじゃなきゃ、喉どころか肺まで黒焦げだわな。

モンスターとしての強さはどのぐらいか分からない。

ただ、初弾のアッパーカットを決めた感覚では、勝てない相手ではないだろう。

俺の鉄腕アッパーが効いていたもんな。

てか、これらの情報を俺なりに分析した結果では、間違いなく勝てる相手だ。

うんうん、勝てるぞ。

チョロいチョロい。

そして、ギャラリーが多い町中での戦闘だ。

周りが怪我をしないように配慮して戦わなければなるまい。

飛び道具や爆破魔法は使えないかな。

万が一にも怪我人を出したら戦った俺のせいにされかねないもん。

ここは、道理よりも感情論が強い世界だからな。

また牢獄行きには成りたくないからね。

まあ、戦うからには目立つために頑張ろう。

何故に目立つかって言えば、格好いいからってのもあるが、何よりも俺の存在をアピールせにゃあならない。

ウルフズトレイン事件や全裸闊歩事件の汚名を晴らしゃあならんのだ。

ここいらで冒険者ギルドにソロ冒険者アスラン様有りってのを知らしめたいのである。

じゃあないと、いつまで経っても爪弾き者だからな。

そのための功績とさせてもらうぜ、この戦いをよ。

どれ、ここは見た目的にも派手な武器を出して行こうかな。

俺は異次元宝物庫からセルバンテスの黄金剣+3とガイアの宝剣+3を取り出した。

【コールドロングソード+3】
剣術スキルが向上する。攻撃力が向上する。魔法耐が久向上する。

【ゴールドショートソード+3】
攻撃力が向上する。命中率が向上する。魔法サンダーエンチャントウェポンが掛けられる。

俺は黄金剣と宝剣を左右に構えた。

豪華な二刀流である。

長い黄金剣を臍の前に低く、短い宝剣を頭よりも高く構えた。

天地二極の構えである。

そして、心に熱い炎を燃やして表情を引き締めた。

「凛ッ!」

周りで観戦している一般ピープルたちがざわめいた。

「なんだ、あの黄金剣は?」

「しかも黄金剣で二刀流だぞ、ちょっと格好良くないか!」

うし、目立ってるぞ。

流石はゴールデンツーハンドだ。

「おい、それよりもアイツはアスランじゃあねえか?」

「アスランって、あのアスランか?」

「あの全裸変態のアスランか?」

「ドクトル・スカルのところに転がり込んだ、穀潰しの引きこもりボーイのアスランか?」

「たぶん、そうだよ。その変態だ」

「最近は何も事件を起こさないで大人しかったが、ついに出てきやがったぞ」

「って、ことはだ。今回も大爆笑事件に発展するのか?」

「それは面白い見せ物だな。しばらく手を出さずに見ているか」

「そうだな」

ちくしょう……。

 町中の物陰に隠れて居るヤツらが勝ってなことをほざいていやがる……。

もう言いたい放題だ。

中には冒険者たちも多く混ざって居るが、完全に観戦モードに入りやがったぜ。

まあ、こっちとしたら都合がいいやね。

ならば、一人で行きますぞ。

ソロ冒険者の強さを見せてやる。

否、魅せてやる!

「ガルルルルル!!」

「待たせたな、三頭ワンちゃん!」

俺は喉を鳴らして威嚇を強めるケルベロスと向かい合っていた。

ケルベロスは三つの頭を低くして飛び掛かろうとしている。

「面白い、早く飛び掛かってこいよ。綺麗に三等分にしてやるぜ!」

「「「ガルッ!!」」」

三頭が同時に唸って飛び掛かって来た。

俺はロングソードを横にしてケルベロスの牙を受け止める。

ケルベロスの真ん中の頭部が、俺の黄金剣を噛み付く形となった。

だが、残り二つの頭は俺に噛み付けない。

まあ、頭が三つあっても、距離ってものもあるだろう。

そうそう自分より小型の人間を、三頭同時に噛み付けないだろうさ。

だが、凄いパワーだな。

俺から黄金剣を奪い取ろうとケルベロスが頭を左右に振るった。

すると俺の体も左右に振られる。

凄いパワーだ。

俺の体は地面から足が離れて空中で∞の字を描く。

「ガルルルルル!!!!」

「のわわわっ!!」

うわ、畜生が、格好悪いな!!

ケルベロスに振り回される俺の耳に観客たちの野次が聴こえて来た。

「なんだ、だらしね~な~」

「おーい、アスラン大丈夫か~」

「なんなら俺たちも手伝ってやろうか~。あはははは~」

糞、舐めやがって!

でも、すげーパワーでやんの!!

それでも反撃だ!

「そらっ!」

「キャン!!」

俺はケルベロスに振り回されながらも逆手に握った宝剣でセンターヘッドを切り付けた。

その一撃でケルベロスは咥えていた俺の黄金剣を離し手投げ捨てる。

俺の体も一緒に飛んだ。

宝剣はケルベロスの額を切り、三日月の傷を残す。

俺は空中で体を捻って向きを変えるとクルクルと回ってから綺麗に着地した。

「よし!」

可憐な俺のアクロバティックな着地を見た観戦者たちから拍手と喝采が沸いた。

うっし、イケてるじゃん、俺!

「それじゃあ、今度は俺の反撃と行きますか!」

俺は広く両腕を開いて大きく構えた。

ケルベロスは額から鮮血を流しながら再び頭を低く構える。

「グルルル……」

両腕を広げた俺がジリジリと前に出るとケルベロスが僅かに下がった。

やはり動物系モンスターには、大きく広い構えが心理的に有効だな。

多くの動物が、威嚇を見せる時は体を大きく見せようとする。

熊が両手を上げて立ち上がるようにだ。

そう、動物の世界では大きいは強いなのだ。

だから俺も構えを大きく見せている。

少しでも戦いに有利になるためにだ。

「それ、斬る!!」

今度は俺から攻めて行った。

双剣を翳して斬りかかる。

だが、怖じ気づいたのか、ケルベロスは後方にジャンプして距離を作った。

「あれ、脅かし過ぎたかな?」

それとも逃げるか?

逃げられるのは不味いよね。

全てが台無しだわ……。

しかし、俺の予想とは違う行動をケルベロスが取った。

否、ケルベロスたちが取ったと言えば正しい言い回しかも知れない。

「「「ガルルっ!」」」

最初は三頭が同時に唸って居たが、それが別々に唸り出す。

「ガルルルルっ!!」

「ガルルルルルっ!!」

「グルルルっ!!」

あー、不味いわ~。

嫌なパターンだわ~。

三頭が別々に唸った理由は単純明快だった。

三頭が分離して三匹になったのだ。

すると観客に混ざって見ていたカンパネルラ爺さんが声を上げる。

「そいつらはブラックドッグだ!!」

ブラックドッグ?

一匹のケルベロスが三匹のブラックドッグになったってわけですか~。

でも、体格的にはケルベロスと変わらないじゃんか。

頭が減っただけだよ。

三等分になったのなら体重も三等分にしろよな。

体積保存の法則とかないのかよ。

ずっけーよ。

これじゃあ強さが三倍じゃんかよ。

「ガルルルッ!!」

「ガルルルっ~!!」

「グルルルルルっ!!」

そして三匹のブラックドッグたちは、俺に近付くと周囲をゆっくりグルグルと回り始める。

あら、囲まれた……。

フォーメーションかよ。

こいつら狩りのやり方を心得てますわん……。

このまま回り過ぎて目を回して倒れるとか、バターになるとかしないかな……。

流石に無理な期待かな……。

再び外野から野次が飛んで来た。

「アスラ~ン、大丈夫か~」

「相手は三匹に増えたぞ~」

「なんなら手伝ってやるぞ~」

「面白いな、頑張れアスラン。わっひっひっひっ」

にゃろう……。

他人事かと思いやがって……。

ならば、今度こそ本気モードかな。

俺はエンチャント魔法を自分に施す。

「ジャイアントストレングス、ディフェンスアーマー、フォーカスアイ、アイスエチャントウェポン、アイスエンチャントウェポン!」

俺の体が支援魔法を受ける旅に様々な色で輝いた。

「おお、すげー。自分で魔法を掛けたぞ!」

「アイツ、支援魔法も使えるのか!」

よし、周囲も驚いているな。

やっぱり俺ってイケてるよね。

「よーーし、ここからが本番だ。本気モードで行くぞ!!」

俺は気合いを声に出してアピールした。

相手は三匹になったとは言え、ケルベロスより格下のブラックドッグだ。

これならまだ勝てるだろうさ。

だが、しかし───。

喉の唸りを響かせるブラックドッグたちに異変が起きる。

ムクムクと体が揺らぎ始めた。

「「「ガルルルッ!!」」」

「「「ガルルルっ~!!」」」

「「「グルルルルルっ!!」」」

三匹のブラックドッグたちの肩から二つの頭が生えて来る。

あっという間に三匹のブラックドッグがケルベロス三匹に変貌した。

「あ、あれれ……」

これ、 マジでヤバくね?

増殖してませんか?


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語

ヒィッツカラルド
ファンタジー
ハクスラ異世界✕ソロ冒険✕ハーレム禁止✕変態パラダイス✕脱線大暴走ストーリー=166万文字完結÷微妙に癖になる。 変態が、変態のために、変態が送る、変態的な少年のハチャメチャ変態冒険記。 ハクスラとはハックアンドスラッシュの略語である。敵と戦い、どんどんレベルアップを果たし、更に強い敵と戦いながら、より良いマジックアイテムを発掘するゲームのことを指す。 タイトルのままの世界で奮闘しながらも冒険を楽しむ少年のストーリーです。(タイトルに一部偽りアリ)

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...