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【第十一章】増殖祭り編。
11-6【嘘】
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満面の笑顔でカンパネルラ爺さんが言う。
「よぉ~~し、仕事だぁ。それじゃあ可愛い可愛いシルバーウルフちゃんの子供たちに会いに行きますかぁ~」
はしゃぐように言ったカンパネルラ爺さんが、スキップをしながらボロ屋を出て行く。
俺もその後ろに続いて、桶の水面を眺めて苦悩した。
それなりの美少年なのに、何故モテないと……。
それにしても本当にテンションが高いな、この爺さんは……。
小屋を出ると二人の巨漢な爺さんが、丸太に座りながら俺のほうを睨むように見ていた。
こっちは暗いな……。
なんかめっちゃ怖いしさ……。
二人はカンパネルラ爺さんの弟たちでランパネルラとルンパネルラだ。
カンパネルラ爺さんは、スキップで二人に駆け寄ると、肩に腕を回して絡み付く。
そして陽気に述べた。
「二人とも聞いてくれよ~。俺にテイマーとしての仕事が来たよ~。テイマーだよ、テイマー。しかも仕付けるのはシルバーウルフだぜ。この辺で生息してないレアだぜ。この歳で就職だよ、本当にラッキーだわ~」
弟二人は額に血管を浮かべながら黙って兄の戯れ言を聞いていた。
今にも兄を殴り倒しそうな表情である。
ブチ切れる寸前だろう。
俺ならば切れてカンパネルラ爺さんの首を絞めているところだ。
「まあとにかくだ。だからしばらくは豚農家は手伝えないかもしれないが、そこんとこよろしくな~。あと、俺が可愛がって育てた豚のランちゃんとルンちゃんは絶対に殺すなよ~。あの子たちを特製ソーセージになんか加工したら怒るからな!」
ランパネルラが兄の腕を払い除けながら怒鳴る。
「うるせえよ、仕事ならさっさと行きやがれ、この糞兄貴が!!」
「うわ、怒るなよ、怖いな。俺がビビリなの知ってるだろ。もう分かったよ、行きますよ~だ!」
うわー、うぜー……。
こいつマジで大丈夫かな?
これでテイマーとして使えなかったら即クビだぞ。
「お~い、ご主人様よ~。それで、何処に行くんだい? 家はどっちだい?」
俺が背伸びをして見てみれば、借りてるログハウスの屋根が荒野の果てに見えた。
俺はそれを指差しながら言う。
「あ~、ここからでも見えるわ。あのログハウスだ」
「近所じゃんか、分かったぜ~!」
カンパネルラ爺さんは、相当機嫌が良いのかスキップでログハウスを目指した。
俺も続いて豚農家を出ようとしたところで二人の巨漢な弟たちに呼び止められる。
「なあ、坊主。ちょっといいか」
「んん、なんだ?」
二人は真面目な表情で言う。
「正直、兄をテイマーとして雇ってくれてありがたい。感謝するぜ」
「えっ、もしかして、テイマーとしてヘボイのか……」
「いや、そんなことはない。正直この町で一番のテイマーだったし、父や祖父より腕が立つと聞いていた」
「なら良かったわ~。あの性格でヘボかったら地獄だぞ……」
「とにかくだ。兄はお調子者で嘘つきだが、善人だ。それだけは理解してくれ」
「あー、それはなんとなく分かったわ~」
「それとだ。すまないが、さっきの話はすべて聞かせてもらった……。何せ穴だらけのボロ屋だからな」
あー、やべー、聞かれてたのかよ……。
「だが、兄の話はほとんど嘘だ……」
「ウソ……?」
ええっ、どう言うこと?
「兄が父に拾われたのは本当だが、養子じゃあない。兄は記憶喪失で放浪しているところを父に拾われて、それから弟子として育てられたんだ。それから大人になって俺たちの姉のユンパネルラ姉さんと結婚したんだよ」
あれれ、食い違いがあるぞ?
「えっ……。なんでそんな小さな嘘を?」
「知らない。だが、兄はチラホラと自分の過去を偽る癖があるんだ、昔っからな。それが何故かは俺たちも分からない」
転生者としての防衛本能かな?
それともただの嘘つきなのか?
「じゃあ、転生の話や、子供たちの話も嘘なのか?」
「子供二人がテイマー冒険者と獣医師になったのは本当だが、転生の話は良く分からん……。ただ小さなころから、そんなようなことは語ってた。俺たちは、記憶喪失で放浪していたころの兄の記憶が、転生者だと思った切っ掛けだと考えているんだ」
マジか……。
じゃあ全部ウソなのか?
まだ、弟たちが語る。
「あと、兄が冒険者のころから飲んだくれてたって言うのと、この豚農家を始めたのが俺たち二人だってのも嘘だ……」
「嘘が多いジジイだな!」
「まあ、最後まで聞いてくれ!」
「あ、ああ……」
凄まれたので俺は黙った。
マジでこの巨漢な爺さんたちは怖いんだもの……。
「兄が酒に溺れたのはここ数年だ」
「えっ?」
ランパネルラ爺さんが言う。
「俺たちの姉で、カンパネルラ兄貴の妻のユンパネルラ姉さんが病気で死んでから、兄貴は寂しさで酒に溺れたんだ……。それが三年前ぐらいの話だ」
続いてルンパネルラ爺さんが言った。
「この豚農家もテイマーとして上手く行かない俺たちを心配して、最初はカンパネルラ兄貴が資金を出して始めてくれたんだ……」
「あ、あら……」
なんだか全然話が違うじゃんか?
「だからカンパネルラ兄貴を信じないでくれ。兄貴は嘘つきだが、善人なんだ。あいつの嘘は、半分が優しい嘘だからよ……」
「あー、分かったよ、爺さんたち……」
「でも、もう半分は本気でムカつく嘘だからな」
「それも分かってる……」
俺はそう言うと踵を返した。
「まあ、テイマーとしてウデコキなら問題無いからよ~」
俺は背中で手を振るとアキレスを召喚して股がった。
そして、先をスキップで進んでいるカンパネルラ爺さんを追った。
な~んだ。
まあ、善人ならまだあの糞みたいな性格でも許せるかな。
許せる……?
許せるかなぁ~~……?
無理かも……。
たぶんいつか斬り捨てるかも知れんな……。
きっと……。
だって、あのカンパネルラって言う爺さんは、生理的にムカつくんだもの。
俺の堪忍袋の緒が自分で思っている以上に丈夫なことを祈ろうか……。
「よぉ~~し、仕事だぁ。それじゃあ可愛い可愛いシルバーウルフちゃんの子供たちに会いに行きますかぁ~」
はしゃぐように言ったカンパネルラ爺さんが、スキップをしながらボロ屋を出て行く。
俺もその後ろに続いて、桶の水面を眺めて苦悩した。
それなりの美少年なのに、何故モテないと……。
それにしても本当にテンションが高いな、この爺さんは……。
小屋を出ると二人の巨漢な爺さんが、丸太に座りながら俺のほうを睨むように見ていた。
こっちは暗いな……。
なんかめっちゃ怖いしさ……。
二人はカンパネルラ爺さんの弟たちでランパネルラとルンパネルラだ。
カンパネルラ爺さんは、スキップで二人に駆け寄ると、肩に腕を回して絡み付く。
そして陽気に述べた。
「二人とも聞いてくれよ~。俺にテイマーとしての仕事が来たよ~。テイマーだよ、テイマー。しかも仕付けるのはシルバーウルフだぜ。この辺で生息してないレアだぜ。この歳で就職だよ、本当にラッキーだわ~」
弟二人は額に血管を浮かべながら黙って兄の戯れ言を聞いていた。
今にも兄を殴り倒しそうな表情である。
ブチ切れる寸前だろう。
俺ならば切れてカンパネルラ爺さんの首を絞めているところだ。
「まあとにかくだ。だからしばらくは豚農家は手伝えないかもしれないが、そこんとこよろしくな~。あと、俺が可愛がって育てた豚のランちゃんとルンちゃんは絶対に殺すなよ~。あの子たちを特製ソーセージになんか加工したら怒るからな!」
ランパネルラが兄の腕を払い除けながら怒鳴る。
「うるせえよ、仕事ならさっさと行きやがれ、この糞兄貴が!!」
「うわ、怒るなよ、怖いな。俺がビビリなの知ってるだろ。もう分かったよ、行きますよ~だ!」
うわー、うぜー……。
こいつマジで大丈夫かな?
これでテイマーとして使えなかったら即クビだぞ。
「お~い、ご主人様よ~。それで、何処に行くんだい? 家はどっちだい?」
俺が背伸びをして見てみれば、借りてるログハウスの屋根が荒野の果てに見えた。
俺はそれを指差しながら言う。
「あ~、ここからでも見えるわ。あのログハウスだ」
「近所じゃんか、分かったぜ~!」
カンパネルラ爺さんは、相当機嫌が良いのかスキップでログハウスを目指した。
俺も続いて豚農家を出ようとしたところで二人の巨漢な弟たちに呼び止められる。
「なあ、坊主。ちょっといいか」
「んん、なんだ?」
二人は真面目な表情で言う。
「正直、兄をテイマーとして雇ってくれてありがたい。感謝するぜ」
「えっ、もしかして、テイマーとしてヘボイのか……」
「いや、そんなことはない。正直この町で一番のテイマーだったし、父や祖父より腕が立つと聞いていた」
「なら良かったわ~。あの性格でヘボかったら地獄だぞ……」
「とにかくだ。兄はお調子者で嘘つきだが、善人だ。それだけは理解してくれ」
「あー、それはなんとなく分かったわ~」
「それとだ。すまないが、さっきの話はすべて聞かせてもらった……。何せ穴だらけのボロ屋だからな」
あー、やべー、聞かれてたのかよ……。
「だが、兄の話はほとんど嘘だ……」
「ウソ……?」
ええっ、どう言うこと?
「兄が父に拾われたのは本当だが、養子じゃあない。兄は記憶喪失で放浪しているところを父に拾われて、それから弟子として育てられたんだ。それから大人になって俺たちの姉のユンパネルラ姉さんと結婚したんだよ」
あれれ、食い違いがあるぞ?
「えっ……。なんでそんな小さな嘘を?」
「知らない。だが、兄はチラホラと自分の過去を偽る癖があるんだ、昔っからな。それが何故かは俺たちも分からない」
転生者としての防衛本能かな?
それともただの嘘つきなのか?
「じゃあ、転生の話や、子供たちの話も嘘なのか?」
「子供二人がテイマー冒険者と獣医師になったのは本当だが、転生の話は良く分からん……。ただ小さなころから、そんなようなことは語ってた。俺たちは、記憶喪失で放浪していたころの兄の記憶が、転生者だと思った切っ掛けだと考えているんだ」
マジか……。
じゃあ全部ウソなのか?
まだ、弟たちが語る。
「あと、兄が冒険者のころから飲んだくれてたって言うのと、この豚農家を始めたのが俺たち二人だってのも嘘だ……」
「嘘が多いジジイだな!」
「まあ、最後まで聞いてくれ!」
「あ、ああ……」
凄まれたので俺は黙った。
マジでこの巨漢な爺さんたちは怖いんだもの……。
「兄が酒に溺れたのはここ数年だ」
「えっ?」
ランパネルラ爺さんが言う。
「俺たちの姉で、カンパネルラ兄貴の妻のユンパネルラ姉さんが病気で死んでから、兄貴は寂しさで酒に溺れたんだ……。それが三年前ぐらいの話だ」
続いてルンパネルラ爺さんが言った。
「この豚農家もテイマーとして上手く行かない俺たちを心配して、最初はカンパネルラ兄貴が資金を出して始めてくれたんだ……」
「あ、あら……」
なんだか全然話が違うじゃんか?
「だからカンパネルラ兄貴を信じないでくれ。兄貴は嘘つきだが、善人なんだ。あいつの嘘は、半分が優しい嘘だからよ……」
「あー、分かったよ、爺さんたち……」
「でも、もう半分は本気でムカつく嘘だからな」
「それも分かってる……」
俺はそう言うと踵を返した。
「まあ、テイマーとしてウデコキなら問題無いからよ~」
俺は背中で手を振るとアキレスを召喚して股がった。
そして、先をスキップで進んでいるカンパネルラ爺さんを追った。
な~んだ。
まあ、善人ならまだあの糞みたいな性格でも許せるかな。
許せる……?
許せるかなぁ~~……?
無理かも……。
たぶんいつか斬り捨てるかも知れんな……。
きっと……。
だって、あのカンパネルラって言う爺さんは、生理的にムカつくんだもの。
俺の堪忍袋の緒が自分で思っている以上に丈夫なことを祈ろうか……。
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