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【第十章】蠱毒のヒロイン編
10-11【瞬速の中の戦い】
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俺は壁の門をくぐって森に入ると、細い道を進みながら周囲を観察していた。
そして、幾つか気付く。
まずは森の草木なのだが、思ったよりも普通である。
木の太さも高さも普通で、周囲に生えている雑草も普通だった。
何か異様に成長している節は見あたらない。
それに草木や土を漁れば小さな昆虫を発見できた。
そのサイズは普通だった。
別に巨大昆虫ってことはないのだ。
この森は、いたって普通に窺えた。
俺は藪の中で見付けた小さなバッタを手の平に乗せながら呟く。
「なんだよ、巨大昆虫なんて居ないじゃあないか。何より居る昆虫は普通サイズだぞ」
そのまま俺は小さなバッタを連れて森の中の道を進んだ。
すると、前方の藪の中で何かがガサガサと動いている。
クマか?
イノシシか?
俺は手の平のバッタを放り投げると腰のロングソードを引き抜いた。
バッタはキチキチと鳴きながら飛んで行く。
「さてさて、何が出るかな?」
俺が警戒していると藪の中から大きな殿様バッタが姿を現した。
「えっ、巨大殿様バッタ……」
全長2メートルほどありそうだった。
その後ろ足は立派で、あんなので蹴られたら堪らないだろう。
俺と巨大殿様バッタがお見合いをしていると、突然ながら凄いスピードで殿様バッタが上空に消えた。
その動きは立派な後ろ足でジャンプしたのとは違っていたのだ。
そういう動きではない。
瞬時の出来事に俺が森の上を見てみれば、不自然な形で巨大殿様バッタの姿があった。
その巨大殿様バッタの背後には──。
「カ、カマキリ……」
そう、巨大殿様バッタは、木の上に潜んで居た巨大カマキリの両手の鎌に捕獲されていたのだ。
2メートルの巨体を二つの鎌でガッチリと掴むカマキリは、逆さまに木にぶら下がりながら俺を凝視していた。
そう、巨大カマキリは森の草木に擬態して潜んで居たのだ。
「うわ、デカイな……」
俺も巨大カマキリから目を離せないでいると、巨大カマキリは今捕獲したばかりの巨大殿様バッタと俺とを何度か見比べている。
「やーな感じー……」
俺は少しずつ後退りながら言う。
「俺よりバッタのほうが美味しいってばよ。そのまま食事にしなはれや……」
しかし、巨大カマキリは殿様バッタを解放すると木の上から降りて来た。
音も無くストンと着地する
捕まっていた巨大殿様バッタが何処かに跳ねて逃げ去ると、俺は確実に実感した。
俺は巨大カマキリと向かい合いながら言う。
「俺のほうが、美味しく見えたのね……」
すると──。
「ギギギ。この森に人間が来るのは久しぶりだ。俺も人間を食べて見たかったんだ」
えっ!?
しゃべりやがったぞ!!
これはもしかして、先日拾ったばかりのランゲージリング+2の効果ですか!?
【ランゲージリング+2】
下等種族の言語が話せるようになる。下等種族の文章が読めるようになる。
もしかして昆虫の言語も分かるのか!?
昆虫って下等種族ですか!?
いや、待てよ。
俺はロングソードを地面に突き刺すと、指に装備されたランゲージリングを外してみた。
「何をしている、人間?」
うわー、やっぱりしゃべった!!
しゃべってるよ~!!
ランゲージリングを外しているのに巨大カマキリがしゃべるってことは、やっぱり巨大カマキリがしゃべるってことですよね!!
俺は混乱しながらも指輪を装着するとロングソードを引き抜き構え直す。
「よーーし、来いや!!」
俺は良く分からんが、その言葉で気合いを入れ直す。
とにかくこいつは俺を食べたいらしいから敵だ。
敵なら戦わなければなるまい。
殺気も感じられる。
「キキキィ」
巨大カマキリは四本の足て体を左右に振り出した。
あー、子供のころに見たことあるわ~。
俺が住んでいた場所は都会じゃあなかったから、どこにでも昆虫が居たんだよな。
だからバッタとかカマキリをよく捕まえたもんだ。
だからカマキリの生態も少しは知っている。
この左右に体を振るう動きは戦闘態勢だ。
体を左右に振って威嚇をしているんだ。
即ち、これは狩りじゃあなくて、戦闘だと理解してやがるんだ、こいつは。
「キキキィ。勝利して、喰う!」
「そうは行くかってもんだ!」
俺も意思を固める。
勝つぞ!!
「人間って、どんな味がするんだろう。バッタより旨いんだろうな」
ああ、こいつは人間を喰ったことがないんだな。
ならば、まだ、人食い巨大カマキリってわけじゃあないんだ。
ただの巨大カマキリなんだ。
そう考えたらちょっぴり怖くなくなって来たぞ。
それならば──。
「そんなことないぞ。人間なんて美味しくないんだぞ。バッタのほうが美味しいぞ」
「嘘つけ!」
「嘘じゃあないってばよ。本当だ。だってその人間が言うんだから間違いないだろう」
「えっ、本当に……」
「マジマジ、本当にさ」
よし、巨大カマキリは首を傾げて困惑していやがる。
このまま心理戦に持ち込んでやるぞ!
「騙されるか!」
「いやいや、騙してなんかいないぞ。だってお前は人間を食べたことがないんだろ。ならば美味しいか美味しくないか分からんじゃあないか。それなのに人間が不味いって言っている俺の言葉を信用できないのか」
「いや、それは……」
よしよし、混乱している混乱している。
幾らしゃべれても、昆虫なんて脳味噌が小さいんだ。
このまま丸め込んでやる。
「なあ~、だから俺を食べるのなんかやめようぜ」
「いや、食べる!」
刹那である。
巨大カマキリの片手が動いた。
瞬速の動きで伸びた鎌の先が、4メートルも離れている俺の顔面を打つ。
「げふっ!!」
パチンっと音が鳴った。
まるでプロボクサーに必中のジャブを打ち込まれたような衝撃が俺の頭を揺らした。
勿論俺はプロボクサーにジャブなんて打ち込まれた経験なんぞ無いけれどね。
とにかくだ。
眼前が真っ白に染まり、体が仰け反る。
なんつー長さだ!!
なんちゅー速さだ!!
人間の間合いで考えてたら駄目だぞ。
こいつらの関節は違うんだ。
人間や普通の動物と戦っているのと一緒にしたら駄目なんだ。
そんなことを一瞬の内に考えた俺が、目を開けた次の瞬間には、二本の鎌が飛んで来ていた。
俺は咄嗟にロングソードを横にして防御を築く。
すると凄い力で俺のロングソードが引っ張られる。
「ぬわっ!!」
俺は突然のことにロングソードを手放してしまう。
見れば4メートル先で巨大カマキリが両手の鎌で俺のロングソードを挟んでいた。
「キキキィ」
「にゃろう……」
この野郎!!
俺の武器を奪いやがったぞ!!
しかも4メートル先から動いてないのかよ。
あの巨大カマキリの間合いは4メートルもあるのかい。
長過ぎじゃね!
すげー間合いだな……。
勝てるのか?
勝因は距離感だな。
どうやって近付くかだ。
考えろ!?
俺は腰から二本目のショートソード+1を引き抜く。
俺は逃げずにジリジリと少しずつ前に出た。
体は姿勢を正しく。
ショートソードを両手で握り正面に構える。
経験はないが、良くある剣道の構えだ。
これでいいんだ。
眼光は真っ直ぐに巨大カマキリを睨み付けた。
巨大カマキリが言う。
「戦いのオーラが出ているぞ。お前は俺の餌ではなく、敵として見ているな」
「当然よ!」
「ならば、こちらもその気で行くぞ」
まるで武士───。
言うや否や巨大カマキリが動いた。
まだ3メートル弱はある距離から二本の鎌が瞬速の動きで飛んで来る。
それは俺の反射神経で追える速度ではなかった。
だが、感覚で分かる。
二本の鎌が俺の両肩をガッシリと掴んで引き寄せた。
痛い!
俺の体が瞬間的に巨大カマキリのほうに引き寄せられる。
多分それは一秒もない刹那の間だったと思う。
そして、巨大カマキリに捕獲されて引き寄せられた俺は、突き出していたショートソードで巨大カマキリの頭を突き刺していた。
巨大カマキリの頭が真っ二つに割れている。
「やり……」
「キ、キキィ……」
それでも巨大カマキリの口の牙は左右に動いていた。
勿論頭は左右に割れているので、左右に離れた牙では俺を噛めない。
「キ、キ、キィ……」
あー、昆虫って、脳味噌が割れても直ぐに死なないのね。
本当に生命力が高いな。
そして、幾つか気付く。
まずは森の草木なのだが、思ったよりも普通である。
木の太さも高さも普通で、周囲に生えている雑草も普通だった。
何か異様に成長している節は見あたらない。
それに草木や土を漁れば小さな昆虫を発見できた。
そのサイズは普通だった。
別に巨大昆虫ってことはないのだ。
この森は、いたって普通に窺えた。
俺は藪の中で見付けた小さなバッタを手の平に乗せながら呟く。
「なんだよ、巨大昆虫なんて居ないじゃあないか。何より居る昆虫は普通サイズだぞ」
そのまま俺は小さなバッタを連れて森の中の道を進んだ。
すると、前方の藪の中で何かがガサガサと動いている。
クマか?
イノシシか?
俺は手の平のバッタを放り投げると腰のロングソードを引き抜いた。
バッタはキチキチと鳴きながら飛んで行く。
「さてさて、何が出るかな?」
俺が警戒していると藪の中から大きな殿様バッタが姿を現した。
「えっ、巨大殿様バッタ……」
全長2メートルほどありそうだった。
その後ろ足は立派で、あんなので蹴られたら堪らないだろう。
俺と巨大殿様バッタがお見合いをしていると、突然ながら凄いスピードで殿様バッタが上空に消えた。
その動きは立派な後ろ足でジャンプしたのとは違っていたのだ。
そういう動きではない。
瞬時の出来事に俺が森の上を見てみれば、不自然な形で巨大殿様バッタの姿があった。
その巨大殿様バッタの背後には──。
「カ、カマキリ……」
そう、巨大殿様バッタは、木の上に潜んで居た巨大カマキリの両手の鎌に捕獲されていたのだ。
2メートルの巨体を二つの鎌でガッチリと掴むカマキリは、逆さまに木にぶら下がりながら俺を凝視していた。
そう、巨大カマキリは森の草木に擬態して潜んで居たのだ。
「うわ、デカイな……」
俺も巨大カマキリから目を離せないでいると、巨大カマキリは今捕獲したばかりの巨大殿様バッタと俺とを何度か見比べている。
「やーな感じー……」
俺は少しずつ後退りながら言う。
「俺よりバッタのほうが美味しいってばよ。そのまま食事にしなはれや……」
しかし、巨大カマキリは殿様バッタを解放すると木の上から降りて来た。
音も無くストンと着地する
捕まっていた巨大殿様バッタが何処かに跳ねて逃げ去ると、俺は確実に実感した。
俺は巨大カマキリと向かい合いながら言う。
「俺のほうが、美味しく見えたのね……」
すると──。
「ギギギ。この森に人間が来るのは久しぶりだ。俺も人間を食べて見たかったんだ」
えっ!?
しゃべりやがったぞ!!
これはもしかして、先日拾ったばかりのランゲージリング+2の効果ですか!?
【ランゲージリング+2】
下等種族の言語が話せるようになる。下等種族の文章が読めるようになる。
もしかして昆虫の言語も分かるのか!?
昆虫って下等種族ですか!?
いや、待てよ。
俺はロングソードを地面に突き刺すと、指に装備されたランゲージリングを外してみた。
「何をしている、人間?」
うわー、やっぱりしゃべった!!
しゃべってるよ~!!
ランゲージリングを外しているのに巨大カマキリがしゃべるってことは、やっぱり巨大カマキリがしゃべるってことですよね!!
俺は混乱しながらも指輪を装着するとロングソードを引き抜き構え直す。
「よーーし、来いや!!」
俺は良く分からんが、その言葉で気合いを入れ直す。
とにかくこいつは俺を食べたいらしいから敵だ。
敵なら戦わなければなるまい。
殺気も感じられる。
「キキキィ」
巨大カマキリは四本の足て体を左右に振り出した。
あー、子供のころに見たことあるわ~。
俺が住んでいた場所は都会じゃあなかったから、どこにでも昆虫が居たんだよな。
だからバッタとかカマキリをよく捕まえたもんだ。
だからカマキリの生態も少しは知っている。
この左右に体を振るう動きは戦闘態勢だ。
体を左右に振って威嚇をしているんだ。
即ち、これは狩りじゃあなくて、戦闘だと理解してやがるんだ、こいつは。
「キキキィ。勝利して、喰う!」
「そうは行くかってもんだ!」
俺も意思を固める。
勝つぞ!!
「人間って、どんな味がするんだろう。バッタより旨いんだろうな」
ああ、こいつは人間を喰ったことがないんだな。
ならば、まだ、人食い巨大カマキリってわけじゃあないんだ。
ただの巨大カマキリなんだ。
そう考えたらちょっぴり怖くなくなって来たぞ。
それならば──。
「そんなことないぞ。人間なんて美味しくないんだぞ。バッタのほうが美味しいぞ」
「嘘つけ!」
「嘘じゃあないってばよ。本当だ。だってその人間が言うんだから間違いないだろう」
「えっ、本当に……」
「マジマジ、本当にさ」
よし、巨大カマキリは首を傾げて困惑していやがる。
このまま心理戦に持ち込んでやるぞ!
「騙されるか!」
「いやいや、騙してなんかいないぞ。だってお前は人間を食べたことがないんだろ。ならば美味しいか美味しくないか分からんじゃあないか。それなのに人間が不味いって言っている俺の言葉を信用できないのか」
「いや、それは……」
よしよし、混乱している混乱している。
幾らしゃべれても、昆虫なんて脳味噌が小さいんだ。
このまま丸め込んでやる。
「なあ~、だから俺を食べるのなんかやめようぜ」
「いや、食べる!」
刹那である。
巨大カマキリの片手が動いた。
瞬速の動きで伸びた鎌の先が、4メートルも離れている俺の顔面を打つ。
「げふっ!!」
パチンっと音が鳴った。
まるでプロボクサーに必中のジャブを打ち込まれたような衝撃が俺の頭を揺らした。
勿論俺はプロボクサーにジャブなんて打ち込まれた経験なんぞ無いけれどね。
とにかくだ。
眼前が真っ白に染まり、体が仰け反る。
なんつー長さだ!!
なんちゅー速さだ!!
人間の間合いで考えてたら駄目だぞ。
こいつらの関節は違うんだ。
人間や普通の動物と戦っているのと一緒にしたら駄目なんだ。
そんなことを一瞬の内に考えた俺が、目を開けた次の瞬間には、二本の鎌が飛んで来ていた。
俺は咄嗟にロングソードを横にして防御を築く。
すると凄い力で俺のロングソードが引っ張られる。
「ぬわっ!!」
俺は突然のことにロングソードを手放してしまう。
見れば4メートル先で巨大カマキリが両手の鎌で俺のロングソードを挟んでいた。
「キキキィ」
「にゃろう……」
この野郎!!
俺の武器を奪いやがったぞ!!
しかも4メートル先から動いてないのかよ。
あの巨大カマキリの間合いは4メートルもあるのかい。
長過ぎじゃね!
すげー間合いだな……。
勝てるのか?
勝因は距離感だな。
どうやって近付くかだ。
考えろ!?
俺は腰から二本目のショートソード+1を引き抜く。
俺は逃げずにジリジリと少しずつ前に出た。
体は姿勢を正しく。
ショートソードを両手で握り正面に構える。
経験はないが、良くある剣道の構えだ。
これでいいんだ。
眼光は真っ直ぐに巨大カマキリを睨み付けた。
巨大カマキリが言う。
「戦いのオーラが出ているぞ。お前は俺の餌ではなく、敵として見ているな」
「当然よ!」
「ならば、こちらもその気で行くぞ」
まるで武士───。
言うや否や巨大カマキリが動いた。
まだ3メートル弱はある距離から二本の鎌が瞬速の動きで飛んで来る。
それは俺の反射神経で追える速度ではなかった。
だが、感覚で分かる。
二本の鎌が俺の両肩をガッシリと掴んで引き寄せた。
痛い!
俺の体が瞬間的に巨大カマキリのほうに引き寄せられる。
多分それは一秒もない刹那の間だったと思う。
そして、巨大カマキリに捕獲されて引き寄せられた俺は、突き出していたショートソードで巨大カマキリの頭を突き刺していた。
巨大カマキリの頭が真っ二つに割れている。
「やり……」
「キ、キキィ……」
それでも巨大カマキリの口の牙は左右に動いていた。
勿論頭は左右に割れているので、左右に離れた牙では俺を噛めない。
「キ、キ、キィ……」
あー、昆虫って、脳味噌が割れても直ぐに死なないのね。
本当に生命力が高いな。
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