上 下
248 / 611
【第九章】アンデッドなメイドたち編

9-13【お化け屋敷】

しおりを挟む
俺はミーちゃんが勤めている不動産屋に出向いた。

店に入るとカウンターにはミーちゃんが牛乳ビンの底のような眼鏡を掛けながら算盤を弾いていた。

俺が来店して来たのに気付くと慌てて眼鏡を外して笑顔を作る。

「あ~、アスランちゃ~ん、やっと来たんだ~。まってたぞ~」

ミーちゃんは明るく振る舞っていたが、明らかに芝居だ。

わざとらしさが滲み出ている。

「久しぶりだな、ミーちゃん」

俺は挨拶を交わすが目線はローブのフードで隠した。

ミーちゃんのビキニブラの胸元を見ないためにだ。

あー、もー!!

頭は可笑しいが、スタイルだけはバツグンなんだよな!!

こん畜生、目の毒だわ。

あー、胸が苦しいなー!!

糞ッ!

もう、自棄糞だわ!!

「でぇ、ミーちゃん。件のお化け屋敷ってどこよ? 早く仕事を片付けたいからさ、件の場所に案内してくれないか」

「はいは~い、分かりました~。今、屋敷の鍵を取って来ますね~」

そう言うとミーちゃんは、事務所の奥に消えて行った。

事務所の奥からミーちゃんの声が聞こえて来る。

「おとーさーん、防壁外西三丁目の屋敷の鍵をしらない?」

「トイレに置いてないかい?」

「ないわよ~」

「あー、ワシのお尻に刺さってたわい」

「もー、お父さんったら~」

また、このくだりかよ!!

天丼ですか……。

「はーい、お待たせ。鍵を取ってきたから行きましょうか~」

「あ、ああ……」

「あれ、鍵になんか付いてる」

「付いてるのかよ!!」

俺はミーちゃんと二人で不動産屋を出た。

道中でミーちゃんに訊かれる。

「ねぇ~、あなた、旧魔王城に町を作るんだって?」

うそぉ~~ん……。

ミーちゃんまで知ってるのか……。

てっ、ことは、もうだいぶ噂になってるってことか……?

「誰から聞いた、その話を?」

「ドクトル・スカルから」

あーいーつーかー!!

ユキちゃんじゃあないのね!!

スカル姉さんまでもがしゃべりまくりですか!!

もう完全にばらしまくりだな。

そしてミーちゃんが嫌らしい目ですり寄って来る。

「ねーねー、もしも良かったらだけどさ~」

「な、なんだよ……」

うわ、ちょっとやめて!!

腕を組んでこないで、胸を擦り付けてこないでくれ!!

ぐーるーじーいー!!

「もしも良かったらさ、私に旧魔王城内の不動産物件を管理させてくれないかな~?」

「不動産の管理?」

「そうそう、住居人や物件のご紹介、お客様の呼び込みまでやるからさ~」

あ~、なるほどね。

こいつら不動産屋に取って町一つ出来るってことは、それだけビジネスの場が増えるってことなのか。

新しい町イコールビジネスチャンスなのね。

「まあ、考えておくよ……」

「よろしくね♡」

あー、うぜー……。

まあ、不動産屋は必要なのだろうか?

それすら分からんな。

とにかく、旧魔王城を占拠してから考えるか。

それからでも遅くはないだろう。

そんな話をしながら俺とミーちゃんは、ソドムタウンの防壁を出て町の西側に向かった。

すると大きな屋敷が見えて来る。

かなり大きな洋館だ。

3メートルほどの壁に囲まれて、門から屋敷まで100メートルほど距離がある。

大きさ的にワイズマンの屋敷よりも少し大きいかも知れない。

「この屋敷か?」

俺が訊くと門の鍵を開けているミーちゃんが答えた。

「ええ、この屋敷ですよ~。それにしても前の主も凄いですよね。お化け屋敷で有名なこの屋敷を別荘に買うなんてさ。よし、開いた~」

あれ?

なんか最初に聞いた話と違わね?

前の住人が死んで、僅かな間に悪霊が住みついたって言ってなかったっけ?

俺は前を歩くミーちゃんに問う。

「ここがお化け屋敷になったのはいつからなんだ?」

「五年ぐらい前に別荘として買われたんですが、お化けが出るって言われて放棄されたんですがね。それから買い取りてが居ませんでしたからね~」

うむ、話が違う。

これは、はめられているのか?

俺を指名した依頼人に騙されているのかな?

それともギルガメッシュに騙されているのかな?

だが、どちらにしても理由が分からんな……。

俺をはめてなんになる?

アマデウスの嫌がらせか?

いや、そこまであいつは俺を眼中に入れてない。

それにワイズマンとアマデウスが知り合いなのか?

何だか考えれば考えるほどに話が混濁していく。

まあ、考えても無駄だろう。

ここは成り行きに任せるか。

バカはバカなりに頑張るのが一番だ。

「ここが件のお化け屋敷で~す」

俺はミーちゃんに言われて洋館を見上げた。

三階建てで木造建築の洋館だ。

「すべての窓が木の板で塞がれているな」

「防犯対策ですが、無用でしたよ~。今だとお化けのせいで、この屋敷に立ち寄る人すら居ませんから~」

「ところで、どんなお化けが出るんだ?」

「人形たちと、メイドたちの悪霊です」

「人形たちと、メイドたち……。複数いるのか?」

「人形は沢山、メイドも沢山です。そりゃあもう、暴力的で危険なほどにで~す」

ミーちゃんは明るく爽やかに述べていたが、明るく言っても駄目だろう。

悪霊の暴力的って、だいたいが殺人的だって決まっているものな。

その時である。

扉の向こうでゴトンと音が鳴った。

俺とミーちゃんの視線が両開きの扉に集まった。

無言で凝視する。

「今、音がした……?」

「しましたよね……」

「無人でしょう……?」

「長らく無人です。鍵も掛かってるから誰も入れません……」

「じゃあ、今の音は何……?」

「噂に名高い、ラップ音じゃあないですか?」

「だよね……」

たぶん悪霊さんの物音だ。

すると、ゆっくりと扉に歩み寄ったミーちゃんが扉の鍵を開ける。

「じゃあ、あとはよろしくお願いします。生きてたら、また会いましょうね、アスランくん!」

そう述べるとミーちゃんは走って逃げて行く。

俺は一人で残された。

背後の扉からは怪訝な気配が漂って来る。

俺はゆっくりと踵を返した。

そして扉を見ると、僅かに開いていた。

あれ、誰が開けたの?

ミーちゃんは、鍵を開けたが扉までは開けてないよね?

勝手に開いたのかな?

俺は深呼吸をした。

「よし、中に入る前に、ここで昼飯にしようかな……」

とりあえず現実逃避だな。

飯だ、メシ!!

これでいいのらぁ!!!


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語

ヒィッツカラルド
ファンタジー
ハクスラ異世界✕ソロ冒険✕ハーレム禁止✕変態パラダイス✕脱線大暴走ストーリー=166万文字完結÷微妙に癖になる。 変態が、変態のために、変態が送る、変態的な少年のハチャメチャ変態冒険記。 ハクスラとはハックアンドスラッシュの略語である。敵と戦い、どんどんレベルアップを果たし、更に強い敵と戦いながら、より良いマジックアイテムを発掘するゲームのことを指す。 タイトルのままの世界で奮闘しながらも冒険を楽しむ少年のストーリーです。(タイトルに一部偽りアリ)

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...