上 下
242 / 611
【第九章】アンデッドなメイドたち編

9-7【希少種】

しおりを挟む
ぜぇー、ぜぇー……。

とりあえずセルフヒールだな……。

俺はランスで受けた肩と背中の傷にセルフヒールを施す。

「ふぅ~~」

一息付いたぞ。

最後は呆気なかったけれど、デスナイトの騎乗ランス攻撃はキツかったぜ。

俺はデスナイトが消えた場所を見た。

何か落ちている。

黒いランスと黒いカイトシールドだった。

デスナイトが装備していた武具だな。

ラッキーだわ。

これで俺も明日からランスチャージとかが、やれるってことだな。

アキレスと組み合わせたら、そりゃあもうカックイ~だろう。

まあ、これの鑑定はあとにして、まずは探索だ。

俺が周りを見回すと、まだすべての出入り口が檻で塞がれていた。

あれの解除手段もどこかにあるだろう。

閉まったんだから開くはずだ。

檻を壊しちゃってもいいんだけれど、敵を排除したんだからゆっくり開く仕掛けでも探そうか。

俺はランスとカイトシールドを異次元宝物庫に仕舞うと女神像のほうに向かって歩いて行った。

女神像の高さは7メートルほどあるだろうか。

大理石の石像だ。

なんともご立派な女神像である。

あるが……。

なんだろう……。

とても腹が立つ……。

女神を見ると何故か腹が立ってくる。

女神って存在にさ、アレルギーを感じるわ。

これは駄女神像だ!

きっと駄女神だな!!

こんな駄女神像を見上げていても御利益も糞もないわ。

とにかく、檻を開閉させる仕掛けを探そう。

んん、なんか駄女神の前に何か積まれているぞ。

お供え物かな?

俺は近寄ってそれを眺める。

魔法のスクロールだった。

スクロールが上から一本二本三本と、三角形に段々と積まれている。

計六本だ。

その後ろにティアラと剣が飾られている。

ラッキー!

お供え物に手をつけるなんて罰当たりかも知れないが、相手は駄女神だ。

そんなの関係ねーよー!!

このスクロールも全部頂いちゃえってんだ。

何せ冒険者なんて墓荒しみたいなもんだしな。

遺跡を漁ってなんぼですがな!

俺はスクロールを異次元宝物庫に投げ込んでから、剣に手を伸ばした。

剣はショートソードサイズだが、宝刀だった。

柄や鞘に細かな装飾が施されルビーやらの宝石で飾られていた。

ティアラも美しいデザインである。

しかもティアラもショートソードもマジックアイテムだな。

魔力関知に引っ掛かったぞ。

ラッキー、ラッキー、超ラッキーだ!!

今日は久々に大収穫だぜ。

この二つも、もーらいっと!

よし、異次元宝物庫にしまってかーらーのー。

俺は駄女神像の後ろに回り込んだ。

すると駄女神像の背中に何か書かれていた。

読めるかな、読めそうだな。

どれどれ~。

『我が最愛なる大地の王女ガイア。ここに眠る』

王女ガイア……。

ここに眠るってことは、ここが墓かな?

じゃあこの駄女神像は墓標ですか?

だとすると、この下に王女ガイア様が眠ってるってわけか?

うん、無視だ。

最近は女運がひじょーーーに悪いから、無視だな。

ここで万が一にもこの王女様が復活とか言う急展開があったら面倒だ。

さっさと檻を開ける仕掛けを見つけて帰ろうかな。

何せマジックアイテムもスクロールもウハウハなぐらいゲットしたしさ。

あれ、レバーがある。

しかも二本もだ。

檻が開くレバーかな?

それともトラップかな?

だとしても、ほっとけないよね。

レバーがあったら引いてみる。

ボタンがあったら押してみる。

それが正しい冒険者の心得だからね。

俺は問答無用でレバーを一本引いた。

するとグラグラと音を鳴らして床の一部が開いた。

すると地下に下る階段が現れる。

おお、更に地下室か……。

更にもう一本のレバーを引いた。

すると出入り口を塞いでいた檻が上がって開閉される。

あらら……。

ここて帰るか更に進むか選択だな……。

すげー、嫌な予感がするんだけど、進めるのに帰っちゃうって出来ないよね。

俺はそんなヘタレな冒険者じゃあないぞ。

俺は嫌な予感を振り払って地下に進んだ。

階段を下りて直ぐに部屋が広がっていた。

さほど広い部屋ではない。

10メートル四方程度の広さである。

その部屋の奥に棺があった。

石の棺だ。

それ以外に目立った物はない。

うん、完全に墓地だな……。

しかも王家の間っぽいよね。

「でも、嫌な予感がするのぉ~……」

それでも俺は冒険者だ。

この石棺を開けなければなるまい。

開けなきゃ嘘だね。

墓があるのに漁らないのも無礼な冒険者だと言えよう。

例え中から元美女のプリンセスのミイラが出てこようとも、金銀財宝が一緒に埋葬されていても、すべては俺の物だ。

見つけた俺の物なんだ。

それ以外が出てきたら困っちゃうけれど、兎に角棺の蓋を開けるしかないだろう。

俺は石棺の前に歩み寄った。

石棺を注意深く観察した。

トラップは無さそうだ。

知らんけど……。

「でも、開けちゃうよね~。好奇心は猫を殺すって言うけど、冒険者も一緒だわ……」

俺は呟きながら厚い石の蓋をずらした。

半開きになった隙間から俺は石棺内部に光りを入れる。

「あっ……」

目が合った。

ミイラと目が合ったのと違った。

なんだかお肌が艶々な少女と目が合ったのだ。

石棺の中に幼女が入っていやがる……。

俺は一旦石の蓋を戻して閉めた。

少し考える。

「あれー、ちょっと違うな~……」

上で見た女神像はただの墓標で埋葬されている王女様を象ったものじゃあないのかな?

俺が今見たものは幼女だった。

間違いなく幼女だった。

そもそもお肌艶々な幼女が棺の中に横たわってますか?

あり得ないよね?

よし、もう一度確認しよう。

今度は思いっきり大胆に行くぞ。

「おーーらぁぁあああ!!」

俺は全力で棺の蓋を押しのけた。

ガゴンっと音を鳴らして石の蓋が棺から落ちる。

俺はショートソードに掛かったマジックトーチの明かりで棺内を照らし出す。

「ああ………」

「ああ………」

また目が合った。

幼女は白い死に装束で横たわり、胸には短剣が突き刺さっていた。

そして、今回は眠たそうな声で「ああ………」って言いましたよ。

この幼女は間違いなく生きてやがるぞ。

俺は墓の中の幼女を見下ろしながら訊いた。

「お前は、誰だ?」

棺の中の幼女も訊いてきた。

「あなたは、誰ぇ?」

抑揚の無い、淡々とした口調だった。

「冒険者アスランだ……」

「墓荒し?」

「そうとも言う」

「じゃあ、お兄ちゃんは、ガイアにエッチなことをするの?」

「それはないな。俺はロリコンじゃあないからな。ボインボインが好みだ」

「ガイア、ボインボインじゃあないの?」

ガイアと名乗る幼女は短剣が突き刺さる薄っぺらい貧乳を揉んでいた。

「ああ、お前はエコパイだ」

「そうか、ガイアはエコなんだ」

「ああ、エコだ。じゃあ俺は帰るからね」

「お兄ちゃん、帰るの?」

「うん、帰るよ」

「ガイアに、いやらしいことしないで帰るの?」

「ああ、しないで帰る」

「じゃあ、私の胸の剣を抜いてくれる?」

「それを抜くとヤバイことになるだろ?」

「うん、たぶん」

「具体的には?」

「あなたのお家で、いつでも食っちゃ寝してあげる」

食っちゃ寝だと!!

怠惰ですねーー!!

ヤバイ!!

この子は面白いかも知れないぞ。

ただのロリキャラじゃあないな。

お笑い系ロリだな。

そう、ロリ希少種だ!!


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

◆完結◆修学旅行……からの異世界転移!不易流行少年少女長編ファンタジー『3年2組 ボクらのクエスト』《全7章》

カワカツ
ファンタジー
修学旅行中のバスが異世界に転落!? 単身目覚めた少年は「友との再会・元世界へ帰る道」をさがす旅に歩み出すが…… 構想8年・執筆3年超の長編ファンタジー! ※1話5分程度。 ※各章トップに表紙イラストを挿入しています(自作低クオリティ笑)。 〜以下、あらすじ〜  市立南町中学校3年生は卒業前の『思い出作り』を楽しみにしつつ修学旅行出発の日を迎えた。  しかし、賀川篤樹(かがわあつき)が乗る3年2組の観光バスが交通事故に遭い数十mの崖から転落してしまう。  車外に投げ出された篤樹は事故現場の崖下ではなく見たことも無い森に囲まれた草原で意識を取り戻した。  助けを求めて叫ぶ篤樹の前に現れたのは『腐れトロル』と呼ばれる怪物。明らかな殺意をもって追いかけて来る腐れトロルから逃れるために森の中へと駆け込んだ篤樹……しかしついに追い詰められ絶対絶命のピンチを迎えた時、エシャーと名乗る少女に助けられる。  特徴的な尖った耳を持つエシャーは『ルエルフ』と呼ばれるエルフ亜種族の少女であり、彼女達の村は外界と隔絶された別空間に存在する事を教えられる。  『ルー』と呼ばれる古代魔法と『カギジュ』と呼ばれる人造魔法、そして『サーガ』と呼ばれる魔物が存在する異世界に迷い込んだことを知った篤樹は、エシャーと共にルエルフ村を出ることに。  外界で出会った『王室文化法暦省』のエリート職員エルグレド、エルフ族の女性レイラという心強い協力者に助けられ、篤樹は元の世界に戻るための道を探す旅を始める。  中学3年生の自分が持っている知識や常識・情報では理解出来ない異世界の旅の中、ここに『飛ばされて来た』のは自分一人だけではない事を知った篤樹は、他の同級生達との再会に期待を寄せるが……  不易流行の本格長編王道ファンタジー作品!    筆者推奨の作品イメージ歌<乃木坂46『夜明けまで強がらなくていい』2019>を聴きながら映像化イメージを膨らませつつお読み下さい! ※本作品は「小説家になろう」「エブリスタ」「カクヨム」にも投稿しています。各サイト読者様の励ましを糧についに完結です。 ※少年少女文庫・児童文学を念頭に置いた年齢制限不要な表現・描写の異世界転移ファンタジー作品です。

処理中です...