上 下
185 / 611
【第七章】魔王城へ旅立ち編

7-14【秘密基地説明会】

しおりを挟む
場所はスカル姉さんの診療所があった空き地。

二つのテントが並ぶ空き地の中央には焚き火が燃やされ、火にはシチューを煮込んだ鍋がぶら下げられていた。

「はぁ~~い、皆さん注目~~」

俺はフライパンの裏をお玉で叩きながら皆の注目を集めた。

「皆さんは夕飯を食べながらでいいですから俺の話を聞いててくださいね~」

俺は焚き火の前で食事を取っているスカル姉さん、バイマン、ゴリ、それに三匹の狼に説明を開始する。

「なんだ、なんだ?」

「何よ、アスラン?」

「「「ガルルルルゥ?」」」

俺はこれから行おうとしているビッグプロジェクトの全貌を、彼ら三人と三匹に説明しようとしていた。

しかし──。

「では、まずですね~」

「はいっ!」

俺の言葉を遮るようにゴリが手を上げた。

邪魔くさいな。

なんだよこいつは、開幕から何が言いたいんだ?

まあ、仕方無いか、話を聞いてやるよ。

「何かね、ゴリくん?」

「俺の飯だけ、用意されてないんですが?」

「はぁ~?」

スカル姉さんとバイマンは、俺が買ってきた鶏肉をコーンスープにぶち込んだだけのスープをおかずにパンを食べているが、ゴリの分だけ用意されていない。

狼たちですら鶏肉をガブガブと骨ごと食べているのにだ。

俺は溜め息を吐いてから答えた。

「だってお前は、さっき串焼き三本を食べたじゃん。もう飯は要らんだろ」

「あれでは足りません。だって俺は身体がデカイもの!!」

「分かりました。では、パンの数は足りないので、スープだけを飲んで構いませんよ」

「ありがとうございます!!」

これで静かになるだろう。

よし、それじゃあ夢のロマンス計画を説明するぞ。

「はい、では、説明に戻りますね~」

「あのー!?」

またゴリが手を上げた。

なんだよ、このゴリラ顔野郎はさ!

本当に邪魔くさいな~。

まあ、冷静に聞いてやろうか……。

「何かね、ゴリくん?」

「器がないんですが~……」

器かよ!!

今度は器ですか!!

俺はスカル姉さんに訊いてみた。

「スカル姉さん、使ってない器の余りはないか?」

「ない」

即答。

「だ、そうな。では、説明を始めますよ~」

「いやいや、ちょっと待ってくれよ。俺だって腹が減ってるんだ。飯を食わせてくれよ!」

何を言ってやがる、この糞ゴリラ。

いま器がないって言われただろうが。

しゃあないな。

かくなる上は──。

「分かった、ゴリくん。それじゃあ、器がないから、両手を出してごらん。そこに激熱コーンスープ(鶏肉入り)を注いであげるから、好きなだけ頂きなさい」

「いやいやいや、無理無理!」

「なんで?」

「なんでじゃあないよ。お前は出来るのかよ!?」

んー、出来るかな?

試して見るか。

俺は両手を合わせて素手の器を作った。

「スカル姉さん、さあ、スープを注いでくれ!!」

「はいよー」

お玉を持ったスカル姉さんは、容赦無く俺の手の中に激熱コーンスープ(鶏肉入り)を注いだ。

あーーつ!!!

でも、熱くない熱くない!!

「熱くなーーい、こんなの熱くなーーい!!」

「いやいや、絶対に熱いだろ!!」

俺はマジックアイテムで耐火向上が二つ付いているから耐えられるんだ。

もしもマジックアイテムの効果がなければ、間違いなく耐えられないだろう。

そして俺は手の中の激熱コーンスープ(鶏肉入り)を一気に飲み干した。

「ずずずずずず~~!」

「飲んでる! 激熱コーンスープ(鶏肉入り)を素手で一気飲みしてやがる!!」

「ふぅ~~」

かなり来たぜ~。

危うく「熱い!」とか叫んじゃうかと思ったもの。

でも、これで試練は乗り越えたぜ。

「はーい、じゃあ次はゴリくんね~。両手を出してくださ~い」

「うぅぅ……」

ゴリは恐る恐る両手を差し出す。

そこにスカル姉さんが激熱コーンスープ(鶏肉入り)をお玉で注いだ。

「行くぞ~」

ドボドボドボ……。

「ぁぁああちいいいいぃいぃい!!!」

ゴリは手に注がれた激熱コーンスープ(鶏肉入り)を放り投げて騒ぎ立てる。

その投げた激熱コーンスープ(鶏肉入り)が、スカル姉さんやバイマンの顔にかかって大騒ぎとなった。

現場が瞬時に修羅場と化す。

もう、説明会どころの話ではなくなっていた。

でも、面白いからいいかな。

そして、しばらくして現場が落ち着きを取り戻した。

「はぁ~い、それじゃあ今度こそちゃんと説明するよ~」

「「「はぁ~い」」」

三人が揃って返事をした。

「俺の今回の計画は、秘密基地として村を作ろうと考えております!」

俺がビシッと言うと、スカル姉さんが呆れたように言う。

「はぁ~……。何を言い出すかと思ったら、お前は馬鹿か?」

「えっ……」

「今、私に必要なのは家だ。住む家だ。その住む家すらないのに、何が秘密基地の村だ!」

「あー、それね~」

俺は澄まし顔で述べる。

「まずここに家は建てるよ」

「お金は?」

「俺がどうにかする」

「私に貸すってことか?」

「ああ、無利子で貸してやる。ただし、利子の代わりに別の条件を飲んでもらうがな」

俺が怪しく微笑みながら言うと、スカル姉さんは稲妻に打たれたかのような表情で言った。

「ま、まさかお前は……。わ、私の身体が目的だな!!」

「そんなわけないだろ、ペチャパイ」

「キィィーーー!!」

スカル姉さんが猿のように叫びながら俺に飛び掛かった。

「なんだと、この糞ガキが! 貧乳を舐めんなよ!!」

「うるせぇ! 俺は大きいほうが好きなんだよ。巨乳が正義だ!!」

「このー、貴様に貧乳の魅力を伝授してやるから、吸え!!」

「吸うか、このペチャパイ!!」

「キィイーーーー!!」

「まあまあ、二人とも落ちついて……」

バイマンとゴリが俺とスカル姉さんの間に割って入る。

「この決着は、いつか付けてやるからな。ぺっ!」

「うわ、汚いな! 唾を飛ばすなや、スカル姉さん!!」

「おいおい、二人とも暴れるな!」

「そうですよ、落ち着いて!」

バイマンとゴリの二人が必死に止めて喧嘩は収まる。

そして話は計画説明に戻った。

「まあ、お金は俺が出す。今の貯金は70000Gぐらいあるからな」

スカル姉さんが口元を曲げながら言う。

「それだと小さな家は建つが、前の三階建ての規模は、到底無理だぞ……」

俺は怪しく微笑みながら返す。

「まあ、そこで、別の場所に村を作るんだよ」

またスカル姉さんが呆れながら言う。

「さっきっから言っている、その村ってのが分からんのだよ?」

バイマンとゴリが「そうですよね~」と頷いていた。

俺は異次元宝物庫から転送絨毯を出して広げた。

三人が異次元宝物庫を見て驚いていたが、それを無視して俺は転送絨毯を地面に敷いた。

「まあ、これを見ていてくれ」

俺が言うがスカル姉さんが割って入る。

「それより今のはなんだ!?」

「ああ、異次元宝物庫だ。だいぶ前にドラゴンから貰ったんだ」

「ドラゴン……?」

「それより、これを見ていてくれ」

俺は転送絨毯の上に立った。

合言葉を口に出す。

「チ◯コ!」

「「「!!??」」」

「どう、驚いた~」

目の前の絨毯上から転送された俺が、テントの中から出て来て三人は驚いていた。

「どうなってるんだ、アスラン!?」

「て、手品か!?」

俺はテントの中から、もう一枚の転送絨毯を持ち出して並べる。

「この二枚の絨毯は、転送絨毯って言って、二枚が転送の魔法式で繋がってるんだ」

俺は絨毯の上で「チ◯コ」と言って見せた。

すると隣の絨毯上に瞬間移動する。

「それはテレポーターなのか……」

「そうそう、それだよ」

俺は絨毯上で「チ◯コ、チ◯コ」と連続で合言葉を言った。

俺が二枚の絨毯上を交互にテレポートする。

そして調子に乗った俺は合言葉を連呼する。

「チ◯コ、チ◯コ、チ◯コ、チ◯コ、チ◯コ、チ◯コ!」

すると俺の体がスパパパパパっと絨毯の上で幾つもの残影を写して転送しまくった。

「どうだ、面白いだ……、オエっ!!」

唐突に俺は吐いた。

連続でのテレポートは身体に負担が掛かるらしい。

すげー、気持ち悪いわぁ……。

まるで車酔いのようだ。

「大丈夫ですか、アスランさん……」

バイマンが俺を気遣い背中を擦ってくれた。

お陰で少し落ち着く。

「あ、ありがとう、カイマン。もう大丈夫だ……」

「バイマンです……」

俺は深呼吸したあとに三人に言った。

「まあ、これで、ここと別の場所を繋ぐってわけよ」

「なるほどね~」

スカル姉さんは少し考えたあとに答える。

「分かった。そのプロジェクト、面白い。私も乗ろうじゃあないか」

「流石はスカル姉さんだ。話が分かるな」

そこでゴリが言う。

「それで、俺たちには、どうしろと?」

俺はゴリとバイマンに言う。

「二人には、俺が繋いだ土地の先で、村人になって、土地を管理してもらいたい」

「村人になれと?」

「管理職か……」

「まあ、難しく考えるな。そもそも成功するかはまだ分からない話なんだからさ」

スカル姉さんが、新たな疑問を問う。

「ところで何処に村を作るんだ?」

「秘密基地っぽい村だからな。場所の候補は、ちゃんと考えてあるんだ」

俺は異次元宝物庫から、買ったばかりの地図を広げて見せた。

そして、一点を指差す。

「候補地は、旧魔王城跡地だ!」

「「「魔王城ッ!?」」」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語

ヒィッツカラルド
ファンタジー
ハクスラ異世界✕ソロ冒険✕ハーレム禁止✕変態パラダイス✕脱線大暴走ストーリー=166万文字完結÷微妙に癖になる。 変態が、変態のために、変態が送る、変態的な少年のハチャメチャ変態冒険記。 ハクスラとはハックアンドスラッシュの略語である。敵と戦い、どんどんレベルアップを果たし、更に強い敵と戦いながら、より良いマジックアイテムを発掘するゲームのことを指す。 タイトルのままの世界で奮闘しながらも冒険を楽しむ少年のストーリーです。(タイトルに一部偽りアリ)

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...