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【第六章】閉鎖ダンジョン後編

6-18【ファイナルマッチ】

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ダンジョン内の通路を猛ダッシュ中の俺は、走りながら作戦を考えていた。

とりあえずこの広い通路から出てセルバンテスミイラを待ち受けようか。

不意打ちを企むのが適当な作戦だろう。

問題は、どこに潜むかだな。

そもそも追って来ているのかな?

俺は走りながらチラリと後方を見た。

「ぶっ!!」

追って来てますわ!!

しかもすげースプリンターみたいな可憐なホームで疾走してますよ!!

ちょっと気を緩めたら追い付かれるんじゃあないですか!?

すげー速いぞ!!

あのミニスカチャイナだと走りやすいよね!!

畜生が!!

追い付かれるもんか!!

俺の足の速さは世界で二番だからな!!

言い訳じゃあないけれど、まだ一度しか負けたことがないんだもんね!!

『は▧♯ぁ+ぁ─…あ◈~』

キャーー!!

声が近くなってる!?

振り返ったら直ぐそこに居そうですよ!!

もう追い付かれたのかよ!!

マジでやばいぞ!!

うわ、殺気っ!!

俺は咄嗟にしゃがんで避けた。

「うわっ!!」

すると空振った黄金剣の刀身が瞬速で頭上を過ぎて行く。

そして、横一線の剣と同時に俺の横をセルバンテスミイラが、勢い良く追い抜いて行った。

更にセルバンテスミイラが振り返りざまに黄金剣を振るって来る。

『¡っ↔あ!!』

「ひぃ、また来た!!」

一振二振りと繰り返される攻撃が俺の眼前を何度も往復した。

「あぶね! 鼻の頭にカスったぞ!!」

この野郎はマジで俺を殺すきだな!!

洒落にならんぞ、マジでよ!!

てか、走っても良しかよ、ミイラの癖にさ!!

だとすると、こりゃあ逃げきれんな。

こいつも逃がしてくれる気がないようだしさ。

とりあえず時間稼ぎだ。

「ファイアーシャード!」

俺が突然放った炎の飛礫魔法だったがセルバンテスミイラの眼前でかき消える。

やっぱりレジストされた。

「でも……」

あれ?

これ、行けるかも。

俺は再びファイアーシャードをセルバンテスミイラの顔面目掛けて放つ。

やはり魔法はかき消える。

しかし、その一瞬だけセルバンテスミイラの視界が奪われていた。

そして、僅かな瞬間だけセルバンテスミイラが立ち止まるのだ。

俺は魔法の直後にロングソードで顔面を突きに出る。

「どらっ!!」

『▨っ▷►!?』

セルバンテスミイラが咄嗟に剣先を避ける。

しかし、刀身がセルバンテスミイラの耳を斬り落とした。

乾燥した左耳が飛ぶ。

「油断大敵だぜ!」

間合いは超が付くほど接近していた。

俺はロングソードを引きながら左拳でフックを放つ。

「おらっ!!」

『♯◈っ!!』

俺の拳がミイラの下顎にめり込んだ。

そのまま力任せに拳を振りきる。

セルバンテスミイラの身体が俺の拳打で大きく揺れた。

しかし倒れない。

それどころか丸盾を装着した左腕で俺を強打して来た。

「反撃かっ!」

俺は丸盾で胸を殴られよろめく。

だが、こっちだって負けられない。

引けない。

退けられない。

俺はロングソードで頭を狙って横振りの一撃を繰り出した。

しかし、丸盾で弾かれた。

そしてセルバンテスミイラは俺のロングソードを弾くと同時に黄金剣で左足を狙って来る。

俺は太股を切られながら異次元宝物庫から【パワーメイス+2】腕力が小向上する。命中率が向上する。を取り出した。

それを左手に持ってセルバンテスミイラをぶん殴る。

パワーメイスがセルバンテスミイラの左肩を粉砕した。

ボキボキと骨が砕ける音が鳴る。

セルバンテスミイラの丸盾を持った左腕がダラリと下がった。

「筋を断った!」

いや、乾燥した筋肉を破壊して潰したが正解だろうか。

なんにしろこれで盾は使えまい。

しかし、すぐさまセルバンテスミイラの蹴り足が飛んで来た。

上段の前蹴りが俺の顎を蹴り上げる。

俺の視界が衝撃に上下すると、黒と白にチカチカと濁った。

一瞬だが視界を見失ってしまう。

そこに何らかの攻撃が加えられた。

俺は見えてなかったから分からないが、おそらく腹を切られた感じだった。

不味い!!

でも、確認できない。

確認して内臓でも出ていたら心が折れちまう。

確認よりも反撃だ。

追撃を絶やしたらいけない。

俺は気力を振り絞ってロングソードを振るった。

「ううらっ!!」

ズシリとロングソードがセルバンテスミイラの左胸を切り裂いた。

肋骨を何本か切り裂いた感触があったがセルバンテスミイラは倒れない。

だろうよ……。

だってアンデッドだもの。

痛くないんだろ。

重傷ぐらいじゃあ倒れないし、止まらないだろう。

動けなくなるぐらいの致命傷をぶちこまなくてはならないんだろうね。

『だ▷っ◀◐!!』

「ぐはぁ!!」

ち、く、しょ、う!!

セルバンテスミイラの突きが俺の腹にヒットする。

黄金剣が俺の腹に突き刺さっていた。

完全に背中まで貫通しているぐらい刺さってますわ。

しかも、さっき切られた傷から内蔵がはみ出てますしよ。

やーーべ、見ちゃったわ……。

心がポッキリと折れちゃいますよ……。

足が震えだした。

腰に力が入らない。

「うっ………」

何だろう……。

喉の奥から生暖かい物が上がって来たぞ。

気持ち悪い……。

吐きたいわ……。

そして、それが口から流れ出して来る。

あー、血だな……。

俺の腹から黄金剣が引き抜かれると、体勢が崩れて両膝から床に付く。

突かれた剣で体が支えられていたのね。

ああ、完全に力が入らない。

俺はうつ伏せに倒れ込んだ。

意識が遠くなる。

俺の視界にはセルバンテスミイラのプレートブーツしか見えない。

俺はあいつの足元にひれ伏しているのかな。

負けだわ……。

俺、死にます……。

勝ちを確信したセルバンテスミイラが踵を返して歩き出す。

去って行きやがる。

畜生……。

も、う、だめ、かな……。

その時である。

頭の中でパキンと何かが割れるような音が響いた。

すると全身に力が沸き上がる。

遠退いて行ってた意識が冴え始めた。

えっ!?

なに!?

俺、死にませんか!?

死にませんよね!?

復活!?

あー、わかったー。

身代わりの置物+1の効果だわ。

おそらく今ごろ異次元宝物庫内で身代わりの置物が砕けているんだろうな。

うつ伏せに倒れている俺が腹を見れば、はみ出た内臓も仕舞われて、刺し傷も消えていた。

完全に全回復した様子ではないが、動けるぐらいには回復していた。

前を見上げれば、背を向けたセルバンテスミイラがヨタヨタと歩いている。

距離はまだ数歩だ。

今なら隙をつけるかも。

悩んでいる暇はないな。

これ以上離れたら、もう隙はないだろう。

今しかない。

即実行!

俺は立ち上がると左手のパワーメイスを投擲した。

すると振り返ったセルバンテスミイラが、パワーメイスを黄金剣で逆水平に払う。

そこに大きな隙が生まれていた。

正面がガラ空きだ。

俺は素早くロングソードで胸を突く。

セルバンテスミイラの胸にズブリとロングソードが突き刺さり貫通した。

「やったか!?」

しかし、セルバンテスミイラは大きく口を開いて波動砲ビームの魔方陣を輝かせ始める。

やーべーー!!

波動砲を撃ってきますよ!!

咄嗟に俺は、セルバンテスミイラの顎を蹴り上げる。

ガゴンっと音が鳴った。

しかし斜め上を向いたセルバンテスミイラは、口を閉じているのに波動砲ビームを発射した。

前歯と唇を吹き飛ばしながら発射された波動砲ビームが天井に大穴を開ける。

「野郎っ!!」

俺は胸に突き刺したロングソードを引き抜くと、横振りの一撃でセルバンテスミイラの首を跳ねた。

まだ波動砲ビームを吐いている最中だったセルバンテスミイラの頭が宙を舞うと、四方八方にビームをバラ撒いた。

「ひぃ~~、あぶね!!」

セルバンテスミイラの頭が床に落ちて跳ねると、やっと波動砲ビームが収まる。

するとミニスカチャイナを着込んだ身体がグッタリと倒れ込んだ。

それで動かなくなる。

「かっ、勝ったのか……」

俺は波動砲ビームでボロボロになった壁や天井を見上げながら呟いた。

「うん、勝ったようだ……」

黄金剣のセルバンテス、撃破だわ。


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