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【第五章】閉鎖ダンジョン前編

5-2【星型の謎】

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俺とゾディアックさんが酒場の二階に上がるとギルマスの部屋に通された。

マッチョなモヒカンオヤジのギルガメッシュがソファーセットで寛いでいる。

今日は普通のサスペンダー姿であった。

いやいや、上半身裸なのだ、普通ではないか。

そして、ソファーで寛ぐギルガメッシュが自分の乳首を指先で撫でながら、まったりとした口調で話し掛けてくる。

「やあ、二人してお越しかい。仲が良いねぇ」

ギルガメッシュの変態仕草を無視したゾディアックさんが大人らしい対応で答えた。

「ああ、下で偶然にも出会いましてね。だから一緒に出向いたしだいで」

「偶然だ。ただの偶然なんだぞ。決して怪しい関係じゃあないんだからね!」

「アスランくん。あんまり必死に言い訳をしないでくれないか。逆に怪しく思われるからさ……」

「ああ、済まない。わざとだから」

「まあ、いいさ。君たちの挨拶が済んでるなら座りたまえ」

俺とゾディアックさんがギルガメッシュの向かいに腰掛けるとパンダの剥製がお茶を運んで来る。

「では、ゾディアック殿、今回の依頼の内容を聞かせてもらおうか?」

そうギルガメッシュが言った。

どうやらギルマスも依頼内容を知らないらしい。

それで良く俺に仕事を振る気になりやがったな。

この糞オヤジが!

「その前に、この仕事をアスランくんに依頼するつもりなのですか、ギルマス殿は?」

「ああ、キミから最初に聞いた必要戦力ならば、彼一人で十分だと察したが。何か不満かね?」

「いいえ、ややキツイですが、彼ならどうにかしてくれるでしょう……」

なんだ?

ちょっと不満があるっぽいな。

俺では信用できないのかな?

「まあ、細かな話を聞かせてもらおうか。内容次第では別を当てるよ」

「分かりました」

「俺の意見は聞かないのね。まあ、いいけれどさ」

「では、話します」

一旦畏まってからゾディアックさんが話し出した。

「今回の依頼したい内容は、ゴモラタウンの閉鎖ダンジョンを捜索してもらいたい」

捜索イベントか。

それにしてもゴモラタウンの閉鎖ダンジョンってなんだろう?

「ゴモラタウンの閉鎖ダンジョンで、何かあったのかね。普段のあそこは立ち入り禁止のはずだが?」

「ええ、君主殿が代々立ち入り禁止にしています。それは今も変わりません」

「へぇー、そうなんだ」

っと、言葉を漏らしてみたが俺にはなんの話なのか、ぜんぜん分からない。

「それなんですが、突然に君主殿が極秘に閉鎖ダンジョンの捜索を依頼して来たのですよ」

「それが、例の条件だったのか……」

例の条件ってなんだよ?

「はい、なので、案外にアスランくんなら良いのかも知れませんね」

「で、例の条件ってなんだよ。俺にも聞かせろ」

ゾディアックさんは視線を反らしたが、ギルガメッシュは無情にも答えた。

「出された条件は、無名で口が固くて使えるヤツだ」

「なるほど」

うん、そんなクールなヤツは俺しか居ないな。

うんうん、分かる分かる。

「ゴモラタウンの閉鎖ダンジョンに挑むのは極秘です。何せ普段は立ち入り禁止のダンジョンですからね」

「でぇ、そこで俺は何を探せばいいんだ?」

「君主ベルセルク殿の過去です」

よし、わけが分からん!

でも~。

「分かったぜ。過去でも何でも探してやろうじゃあないか」

本当は何も分かってないけれどね。

とりあえず冒険の仕事が出来るなら、なんだってやるさ。

ましてや相手はダンジョンだろ。

大冒険じゃあないかよ。

断る理由が皆無だわ。

「でぇ、君主の過去って何だよ?」

「それは僕も知らないんだ。これを持っていけば君主ベルセルク殿が直々に話してくれるはずだ」

そう言いながらゾディアックさんは、懐から羊皮紙の手紙を取り出した。

それを俺に手渡す。

「中を見てくれ」

「どれどれ……」

羊皮紙は口を蝋燭で封印されていた。

俺はそれを外して中身を読む。

「これ、何語?」

しかし俺には読めない文字だった。

俺がゾディアックさんに見せるが彼にも分からなかった。

「な、なんて書かれているんだろう。僕が知っている魔法の文字じゃあないね……」

「おいおい、魔法使いのゾディアックさんに読めない文字を俺が読める分けないだろ」

そこにギルガメッシュが覗き込んで答えた。

「あー、これはドラゴンの文字だろ」

「ドラゴン?」

俺の脳裏に馬鹿ドラゴン兄妹の記憶が蘇った。

ブルードラゴンのグラブルに、レッドドラゴンのアン。

お馬鹿なドラゴン兄妹だ。

あいつら今ごろ何をしているのかな~?

グラブルの野郎は女の子になれたのかな~?

それよりも──。

「このスクロール、なんて書いてあるのか読めるのかよ、ギルガメッシュ?」

「どれどれ~」

俺から羊皮紙の手紙を受け取ったギルガメッシュが、考えながら文章を読み上げた。

「愛しき人間。私は地下で待つ。長きに渡って、地下で待つ。心が決まったら、会いに来い。かな」

「ラブレターかな?」

「それっぽいな?」

「違うだろう……」

「なんで君主の野郎は、こんなものを俺に見せたのだろうか?」

三人は腕を組んで考え込んだ。

しかし、結論は当然ながら出ない。

「こりゃあ、とりあえずは君主さんによ、会いに行って話を詳しく聞かんと分からんだろうな」

「そうだね。じゃあ、アスランくんが訊きに行ってくれないか」

「ああ、分かった」

まあ、そうなるよね。

これ以上ここで話しても何も話は進まんだろう。

「ところで依頼料金は、幾らなんだ?」

「それなんだが、無しだ」

「え、無し?」

「ただし、ゴモラタウンの閉鎖ダンジョンで手に入れたすべての物を譲渡するらしいよ」

なるほどね。

長いこと人が入っていないダンジョンがステージだ。

そこに侵入できて、手に入れたアイテムが全部自分の物になるならば、かなりの儲け話になりそうだぜ。

これは受けずにいられない仕事だわな。

「分かったぜ。その謎が多い仕事は、俺の物だ!」

興奮した俺が拳を握りながら立ち上がると、ギルガメッシュが何気ない動きでサスペンダーを僅かにずらした。

するとギルガメッシュの乳首が僅かに見える。

乳首は星型だった。

なぜ!?

何故に乳首が星型なんだよ!?

俺の中ですべてが吹っ飛んだ。

「まあ、興奮するな、アスラン」

ギルガメッシュが俺を落ち着かせて座らせるが、俺の頭の中はそれどころではない。

何故に乳首が星型なんだよ!!

「じゃあ、この話はアスランに任せるで良いですな、ゾディアックさん」

「はい、僕は構いません」

構うだろ!

だって乳首が星型だったんだぞ!!

お前は見なかったのか、ゾディアック!?

「じゃあ、アスラン。旅の支度が済んだら、直ぐにゴモラタウンに旅立ってくれ」

「あ、ああ。分かった……」

それで話が終わった。

俺とゾディアックさんが部屋から出て行く時だった。

ギルガメッシュに俺が呼び止められる。

「アスラン……」

「なんだよ?」

俺が振り返るとギルガメッシュがイタズラっぽく微笑みながら、両手で両サスペンダーをずらしていた。

両方の乳首が星形だった。

「なっ!!」

そしてギルガメッシュは振り返るとマホガニーの机のほうに歩いて行った。

それっきりである。

俺が遅れて部屋を出ると、ゾディアックさんが待って居た。

そして、ゾディアックさんがボソリと述べる。

「乳首、星型だったよね……」

「あんたも見てたんかい!!」


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