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【第三章】青龍クラブル編
3-9【ワイズマン】
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ウェイトレスのバイトに専念した次の日に俺は冒険者ギルドに出向いた。
今日こそギルマスと仕事の話を進めるためだ。
もう、時刻は昼過ぎである。
俺は念のために冒険者ギルド本部に入る前に酒場の様子を覗き見た。
また、昨日みたいにハンスさんに捕まって、ウエイトレスをやらされたら堪らない。
だから俺は、そろ~りそろ~りと入り口から顔半分を出して酒場の店内を覗き込む。
するとホールではハンスさんの他にもウェイトレスさんが三人ほど働いていた。
昨日は欠席していたウェイトレスさんが今日は出勤している。
それを見て俺は、ホッと溜め息を吐いた。
どうやら今日はシフトが揃っている様子だ。
これで代役をしなくても済みそうである。
俺は安心して建物に入って行った。
まずはカウンター席に腰掛けると、バーテンダーのハンスさんに話かける。
「今日はウェイトレスさんも揃って居るようだね、ハンスさん。ちょっと安心したよ」
「ああ、お陰さまで全員インフルエンザが治って職場復帰したよ」
「はやっ! インフルエンザが治るの早くね!?」
どう言うことだろう?
一日でインフルエンザって治るの、普通さ!?
てか、仮病だったの!?
俺が驚いているとハンスさんが理由を延べる。
「なんでも魔法使いギルドが販売しているインフルエンザの特効薬があるらしくてね。そのポーションを飲んで一晩寝たら、すっかり治ったらしいんだ」
「魔法のポーションって、凄いな……」
もしかしたらこっちの世界のほうが、医学はともかくとして薬学は上なのかな?
薬だけなら魔法があるぶんだけ効力は高いのかも知れないぞ……。
俺とハンスさんがインフルエンザの話をしていると、俺の横から誰かがコーヒーの注がれたカップを差し出してきた。
カコンっと音を鳴らして俺の前に古びたコーヒーカップが一つ置かれる。
なんかどこかで見覚えがあるコーヒーカップだった。
そして俺は、それを置いた人物のほうを見る。
「やあ、キミ。こんにちわ」
「だれ?」
男性だった。
モッチリとしたおっさんだ。
中年で太っているが上等な洋服を着ている。
身なり風貌からして、嫌みなぐらい金持ちなのが分かる。
首には金のネックレスを下げて、太い指にはいくつもの宝石指輪を嵌めていた。
明らかに冒険者じゃあないだろう。
貴族か金持ちな商人風である。
だが、知らないおっさんであった。
「キミ、私のことを忘れたかね?」
「いゃ~~、すんません。ぜんぜん覚えていませんわぁ~」
「ならば、これなら思い出すかな?」
そう言うとモッチリとしたおっさんは、何を考えたか服を脱ぎだし始めた。
あれよあれよと言う間に全裸になってしまう。
変態だ!
真っ昼間の酒場で酔っていないのに躊躇なく全裸になれるなんて変態しかいないだろう。
俺には変態の知り合いなんてギルマスのギルガメッシュぐらいしかいないぞ。
誰だ、この変態は!?
ぜんぜん覚えがない。
そしてモッチリしたおっさんは、俺の前に差し出したコーヒーカップの中身を一気に飲みほすと、そのコーヒーカップを股間に被せた。
股間に被せたコーヒーカップは手を離しても落下しない。
完全に肉とコーヒーカップがフィットしている。
そこまで見て、俺は思い出した。
「あー、あんたは、山賊に追い剥ぎされてた人かぁ~」
「ふぅん、やっと思い出してくれたか。では、隣に座ってもいいかな?」
「いいけど……。いや、あんまり良くないな、変態だもの」
「マスター、私にバーボンを」
「はい」
「嫌だって言ってるだろ、無視すんな」
俺の言葉を無視したモッチリしたおっさんは、そのまま俺の隣に座った。
まず服を着ろって感じだわ。
「おっさん、隣に座るのはいいから、せめて服を着ろよ」
「ああ、忘れてたよ。普段はそんなに人前で脱がないからね。ついつい服を着直すのを忘れてしまった」
「いやいや、随分と脱ぎ慣れた感じがしたぞ」
「そうかい。まあ、ちょっと待っててくれたまえ。上着だけでも着るから」
「いや、ちゃんと下半身も穿けよ」
「え、気になる?」
「コーヒーカップだけだと、かなり気になるな」
「仕方ないな」
「仕方なくねーよ」
「若いのに細かいことを気にしすぎだな、キミは」
「細かいことと言えば、さっきさ、チンチロリンに嵌めたコーヒーカップで、俺にコーヒーを進めなかったか?」
「そのコーヒーカップはキミから貰ったものだから、返そうかと思ってね」
「要らねーよ。くれてやるから家宝にしやがれ……」
「そうなの、要らないのか。もしもあとから返してくれって言っても返さないぞ?」
「ぜってーに言わんから安心しろ」
上等な洋服をちゃんと着直したモッチリしたおっさんが、俺の隣の席に座ってバーボンを飲み始める。
「で、話ってなにさ?」
「やあ、キミにコーヒーカップを貰って随分と助けられたからね」
「あの状況からコーヒーカップひとつで助かったって、どう言うことだよ。 意味わかんねーよ?」
「それに、なんでも山賊に奪われた荷物を取り返してくれたのも、キミらしいじゃないか」
「へー、商人ギルドから荷物を返して貰ったんだな。良かったじゃん」
「まあ、すべては帰ってこなかったがね。マジックアイテムのダガーと指輪に、魔法のスクロールが二枚だけ、あいつら山賊どもに持って行かれたようだ」
「そ、そうなんだ……」
俺は左の人差し指に嵌めてる指輪をそっと隠した。
どうやら俺が猫ババしたのはバレていないようだぜ。
セーフって感じである。
「そうだ、まだ私の名前を名乗ってなかったな。私はゴモラタウンで商いを営んでいるワイズマンって者だ」
「ワイズマン!?」
モッチリおっさんの名乗った名前を反芻して驚いたのはハンスさんだった。
「ハンスさん、このモッチリとしたおっさんのことを知ってるの?」
「モッチリも何も、……違った」
ハンスさんが言い直す。
「知ってるも何も、ゴモラタウンのワイズマンと言ったら慈善家の大富豪で有名ですよ……」
「慈善家?」
俺が知ってる慈善家の単語の意味が違うのかな?
慈善家って書いて変態って読むのかな?
いや、慈善家って、進んで慈善の行為をする人だよね?
だとするならば、俺にはこのモッチリしたおっさんが慈善家には見えないけれど。
ただの変態オヤジじゃんか?
「その慈善家さんが、なんで護衛も付けずに旅をして山賊に襲われていたんだよ?」
モッチリワイズマンが理由を答えてくれる。
「慈善家慈善家って言ってるのは、周りが勝手に言ってるだけだからな。私だって御忍びで遊びに出たい時もあるさ」
ソドムタウンのピンク街で密かに遊び回りたかったのかな。
「なるほど、それで一人だったのね」
「じゃあ、そろそろ行こうか」
「はぁ?」
いやいや、言ってる意味が分からないぞ。
「なんで同伴のキャバ嬢を連れ出すように、俺を連れ出そうとするんだよ?」
マジで気持ち悪い。
「キミがアスラン君だよね?」
「なんで俺の名前を知っている……。もしかして、そう言う趣味か!?」
「そう言う趣味って、どう言う趣味だよ!?」
「俺に言わせる気かよ!?」
「是非ともキミの口から真相を聞きたいな!」
「キモっ!!」
そうだよ、マジでキモイよ。
そもそもだ──。
なんでこんな変態慈善家富豪が俺の名前を知っているのさ?
それだけで、サボイボのような鳥肌が立つほどキモイわ!
そもそもあの時に俺はこいつに名乗ったか?
いや、名乗っていないはずだ。
俺だって唐突に野外で出会った全裸の変態に名乗るのは躊躇するはずである。
だから名乗っていないのは間違いないだろう。
「キミもギルガメッシュさんのところに呼ばれているんだろ?」
「ええ、まあ……。何故それを?」
「私もこれから、彼に会うからだ。だから、一緒に行こうかって言ってるんですよ」
どうやら俺の誤解のようだ。
「俺はてっきりデートの誘いかと思ってしまったぞ……」
「何故に私がキミをデートに誘うんだ?」
「これからあんたも呼ばれてるの、ギルマスに?」
「だから一緒に行こうって言ってるんじゃあないか」
「それなら、しゃあないか……」
こうして俺は、モッチリ変態慈善家商人のおっさんと、ギルマスの部屋を目指した。
まだちょっと、キモくて怖い。
突然お尻をおさわりとかしてこないよね!
俺は変態オヤジの変態行為に対しての警戒だけは怠らなかった。
今日こそギルマスと仕事の話を進めるためだ。
もう、時刻は昼過ぎである。
俺は念のために冒険者ギルド本部に入る前に酒場の様子を覗き見た。
また、昨日みたいにハンスさんに捕まって、ウエイトレスをやらされたら堪らない。
だから俺は、そろ~りそろ~りと入り口から顔半分を出して酒場の店内を覗き込む。
するとホールではハンスさんの他にもウェイトレスさんが三人ほど働いていた。
昨日は欠席していたウェイトレスさんが今日は出勤している。
それを見て俺は、ホッと溜め息を吐いた。
どうやら今日はシフトが揃っている様子だ。
これで代役をしなくても済みそうである。
俺は安心して建物に入って行った。
まずはカウンター席に腰掛けると、バーテンダーのハンスさんに話かける。
「今日はウェイトレスさんも揃って居るようだね、ハンスさん。ちょっと安心したよ」
「ああ、お陰さまで全員インフルエンザが治って職場復帰したよ」
「はやっ! インフルエンザが治るの早くね!?」
どう言うことだろう?
一日でインフルエンザって治るの、普通さ!?
てか、仮病だったの!?
俺が驚いているとハンスさんが理由を延べる。
「なんでも魔法使いギルドが販売しているインフルエンザの特効薬があるらしくてね。そのポーションを飲んで一晩寝たら、すっかり治ったらしいんだ」
「魔法のポーションって、凄いな……」
もしかしたらこっちの世界のほうが、医学はともかくとして薬学は上なのかな?
薬だけなら魔法があるぶんだけ効力は高いのかも知れないぞ……。
俺とハンスさんがインフルエンザの話をしていると、俺の横から誰かがコーヒーの注がれたカップを差し出してきた。
カコンっと音を鳴らして俺の前に古びたコーヒーカップが一つ置かれる。
なんかどこかで見覚えがあるコーヒーカップだった。
そして俺は、それを置いた人物のほうを見る。
「やあ、キミ。こんにちわ」
「だれ?」
男性だった。
モッチリとしたおっさんだ。
中年で太っているが上等な洋服を着ている。
身なり風貌からして、嫌みなぐらい金持ちなのが分かる。
首には金のネックレスを下げて、太い指にはいくつもの宝石指輪を嵌めていた。
明らかに冒険者じゃあないだろう。
貴族か金持ちな商人風である。
だが、知らないおっさんであった。
「キミ、私のことを忘れたかね?」
「いゃ~~、すんません。ぜんぜん覚えていませんわぁ~」
「ならば、これなら思い出すかな?」
そう言うとモッチリとしたおっさんは、何を考えたか服を脱ぎだし始めた。
あれよあれよと言う間に全裸になってしまう。
変態だ!
真っ昼間の酒場で酔っていないのに躊躇なく全裸になれるなんて変態しかいないだろう。
俺には変態の知り合いなんてギルマスのギルガメッシュぐらいしかいないぞ。
誰だ、この変態は!?
ぜんぜん覚えがない。
そしてモッチリしたおっさんは、俺の前に差し出したコーヒーカップの中身を一気に飲みほすと、そのコーヒーカップを股間に被せた。
股間に被せたコーヒーカップは手を離しても落下しない。
完全に肉とコーヒーカップがフィットしている。
そこまで見て、俺は思い出した。
「あー、あんたは、山賊に追い剥ぎされてた人かぁ~」
「ふぅん、やっと思い出してくれたか。では、隣に座ってもいいかな?」
「いいけど……。いや、あんまり良くないな、変態だもの」
「マスター、私にバーボンを」
「はい」
「嫌だって言ってるだろ、無視すんな」
俺の言葉を無視したモッチリしたおっさんは、そのまま俺の隣に座った。
まず服を着ろって感じだわ。
「おっさん、隣に座るのはいいから、せめて服を着ろよ」
「ああ、忘れてたよ。普段はそんなに人前で脱がないからね。ついつい服を着直すのを忘れてしまった」
「いやいや、随分と脱ぎ慣れた感じがしたぞ」
「そうかい。まあ、ちょっと待っててくれたまえ。上着だけでも着るから」
「いや、ちゃんと下半身も穿けよ」
「え、気になる?」
「コーヒーカップだけだと、かなり気になるな」
「仕方ないな」
「仕方なくねーよ」
「若いのに細かいことを気にしすぎだな、キミは」
「細かいことと言えば、さっきさ、チンチロリンに嵌めたコーヒーカップで、俺にコーヒーを進めなかったか?」
「そのコーヒーカップはキミから貰ったものだから、返そうかと思ってね」
「要らねーよ。くれてやるから家宝にしやがれ……」
「そうなの、要らないのか。もしもあとから返してくれって言っても返さないぞ?」
「ぜってーに言わんから安心しろ」
上等な洋服をちゃんと着直したモッチリしたおっさんが、俺の隣の席に座ってバーボンを飲み始める。
「で、話ってなにさ?」
「やあ、キミにコーヒーカップを貰って随分と助けられたからね」
「あの状況からコーヒーカップひとつで助かったって、どう言うことだよ。 意味わかんねーよ?」
「それに、なんでも山賊に奪われた荷物を取り返してくれたのも、キミらしいじゃないか」
「へー、商人ギルドから荷物を返して貰ったんだな。良かったじゃん」
「まあ、すべては帰ってこなかったがね。マジックアイテムのダガーと指輪に、魔法のスクロールが二枚だけ、あいつら山賊どもに持って行かれたようだ」
「そ、そうなんだ……」
俺は左の人差し指に嵌めてる指輪をそっと隠した。
どうやら俺が猫ババしたのはバレていないようだぜ。
セーフって感じである。
「そうだ、まだ私の名前を名乗ってなかったな。私はゴモラタウンで商いを営んでいるワイズマンって者だ」
「ワイズマン!?」
モッチリおっさんの名乗った名前を反芻して驚いたのはハンスさんだった。
「ハンスさん、このモッチリとしたおっさんのことを知ってるの?」
「モッチリも何も、……違った」
ハンスさんが言い直す。
「知ってるも何も、ゴモラタウンのワイズマンと言ったら慈善家の大富豪で有名ですよ……」
「慈善家?」
俺が知ってる慈善家の単語の意味が違うのかな?
慈善家って書いて変態って読むのかな?
いや、慈善家って、進んで慈善の行為をする人だよね?
だとするならば、俺にはこのモッチリしたおっさんが慈善家には見えないけれど。
ただの変態オヤジじゃんか?
「その慈善家さんが、なんで護衛も付けずに旅をして山賊に襲われていたんだよ?」
モッチリワイズマンが理由を答えてくれる。
「慈善家慈善家って言ってるのは、周りが勝手に言ってるだけだからな。私だって御忍びで遊びに出たい時もあるさ」
ソドムタウンのピンク街で密かに遊び回りたかったのかな。
「なるほど、それで一人だったのね」
「じゃあ、そろそろ行こうか」
「はぁ?」
いやいや、言ってる意味が分からないぞ。
「なんで同伴のキャバ嬢を連れ出すように、俺を連れ出そうとするんだよ?」
マジで気持ち悪い。
「キミがアスラン君だよね?」
「なんで俺の名前を知っている……。もしかして、そう言う趣味か!?」
「そう言う趣味って、どう言う趣味だよ!?」
「俺に言わせる気かよ!?」
「是非ともキミの口から真相を聞きたいな!」
「キモっ!!」
そうだよ、マジでキモイよ。
そもそもだ──。
なんでこんな変態慈善家富豪が俺の名前を知っているのさ?
それだけで、サボイボのような鳥肌が立つほどキモイわ!
そもそもあの時に俺はこいつに名乗ったか?
いや、名乗っていないはずだ。
俺だって唐突に野外で出会った全裸の変態に名乗るのは躊躇するはずである。
だから名乗っていないのは間違いないだろう。
「キミもギルガメッシュさんのところに呼ばれているんだろ?」
「ええ、まあ……。何故それを?」
「私もこれから、彼に会うからだ。だから、一緒に行こうかって言ってるんですよ」
どうやら俺の誤解のようだ。
「俺はてっきりデートの誘いかと思ってしまったぞ……」
「何故に私がキミをデートに誘うんだ?」
「これからあんたも呼ばれてるの、ギルマスに?」
「だから一緒に行こうって言ってるんじゃあないか」
「それなら、しゃあないか……」
こうして俺は、モッチリ変態慈善家商人のおっさんと、ギルマスの部屋を目指した。
まだちょっと、キモくて怖い。
突然お尻をおさわりとかしてこないよね!
俺は変態オヤジの変態行為に対しての警戒だけは怠らなかった。
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