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【第二章】最臭兵器スバル編

2-28【重い思い】

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森でたんまりと薬草を取った俺たちは次のポイントに移動することにした。

移動だけ済ましてからキャンプを張ることにしたのだ。

次に狙っている薬草は、森の中の沼地に生えている水草だそうな。

その沼地周辺にはリバーボアって言う大蛇が巣くっている。

やはり蛇だけあって夜になると活発に活動するらしいのだ。

蛇って夜行性だからね。

だから夜は沼地から離れた場所にキャンプを張って、朝を待ってから薬草である水草を採取しに行くらしい。

そのほうがリバーボアと出合う可能性も低くなる。

流石は薬師で何度も薬草を取りに来ているだけあってスバルちゃんは、ちゃんと考えて行動しているな。

正直なところ護衛のはずの俺より心強い存在だと思えた。

そして俺たちは日が落ちる寸前で、次の沼地がある森の前に到着した。

直ぐに薪を集めてキャンプを張る準備を始める。

俺たちは焚き火を燃やすとそこで取れ立てのキノコを焼いて持ってきていた黒パンと一緒に食べた。

キノコはスバルちゃんが薬草を取りながら一緒に取ってきた物だ。

しかし、俺はキノコが余り好きでないので殆ど手をつけなかった。

俺たちは焚き火を挟んで向かい合う。

明日に備えて早く寝ることにしたが、正直まだ時間も早かったので眠くない。

俺もスバルちゃんも揺れる焚き火をなんとなく眺めていた。

するとスバルちゃんが話し掛けて来る。

「アスランさん……」

「なに?」

「私って、やっぱり臭いますよね?」

「えっ!」

まさか触れてはならないと考えていた部分に自ら触れてくるとは思ってもいなかった。

俺のほうが戸惑い答えに悩む。

なんと述べればいいのか分からない。

「私は私の臭いだから、あまり分からないんですよ」

「そ、そうなの?」

余りじゃあなくて、ぜんぜんだよね?

「でも、小さなころから言われてました。お前らの一家は臭いんだよってね」

一家で体臭バリバリだったのかよ!

てか、遺伝なのね!

「私もお父さんお母さんが臭かったから、自分も臭いのかなって思っていたんですよ」

「へぇー……」

へぇー、としか言えないですよ!

あと、なんて言えばいいのさ!?

「だから子供のころは村でも良く苛められましてね」

「へ、へぇー……」

マジでさ、なんて受け答えたらいいか分かりません!

ぜんぜん分かりませんよ、本当にさ!

とにかく、重めですよ!

そう言うのは、俺は苦手なんですよ。

「だから私は大人になってから人の役に立つ仕事をしようと考えて薬師になったんです」

「そ、そうなんだ……」

きーまーずーいーよー!

こう言う重い空気は苦手です!

なんか無理矢理に地雷を踏まされたような気分ですわ!

「だから薬師になってから皆のために安く薬を作って、皆の健康に貢献することで、臭いとかって揶揄されなくなりました」

なるほど、だから誰もスバルちゃんの悪口を直接本人には言わないのか。

「でも、影口を言われているのは分かっています。どんなに私が頑張っても、やっぱりそれだけは変わりません」

「あ、ああ……」

もう、完全に何を言ったらいいか分かりません!

重い話は止めてくれよ!

「香水とかも試したんですよ。でも、更に臭いが混ざり合って、へんてこな悪臭になるんです」

「策なしですか……」

俺も今の空気を打開する策なしですわ!

「だから私は体臭を押さえる薬をいつか完成させようと研究をしているんですが、ぜんぜん新薬は完成しなくて。逆に更に体臭が臭くなる一方で……」

自分で人体実験するからですよ!

「でも、諦めません……」

そうだよ、諦めなければ明日が来るさ!

そうか、今思いついた台詞を伝えればいいんだ!

「でもれぇ、影口ほぉー言われているのは分かっていますぅよ。どんなに私が頑張ってもお、ひっぱりそれだけは変わりまへんがなぁ~」

あれ、スバルちゃんの台詞がリピートしてないか?

しかも、なんか口調が可笑しいし?

「でもぉれぇ、影口ほぉー言われているのわはわははははぁ、分かっていますぅよ~んだ。どんなにどんなにどんなにブルドックな私が頑張ってもぉ~ん、ひっぱりそれだけワンワン!変わりまへんよねぇぇええええん! わひゃひゃひゃひいああ!」

何これ!

完全に可笑しいよ!

絶対普通じゃあないぞ!

何が起きてますか!?

「わひゃひゃびゃびゃぴゃぴゃ~。このキノコ美味しいね~」

なに!

キノコだと!?

俺はあまりキノコが好きじゃなかったから殆ど食べなかったけど、どうやらヤバイ毒キノコが混ざっていたようだ!

「暑いよ~、スバル~、暑いよ~」

うわわわぁ!

スバルちゃんがローブを脱ぎ始めた!

いくら毒ガス美少女で俺の官能のストライクゾーンから外れていても、裸になられたら別だ!

乙女の裸は凶器だ!!

俺が呪いの効果で死んでしまう!!

どうにかしなくては!?

おっ、荷馬車にロープが!

「ごめんよ、スバルちゃん!」

「ほえ?」

俺は無理矢理にもスバルちゃんをロープでグルグル巻きに拘束した。

今まで拘束されることはあったが、拘束する側に回るのは初めてだった。

立場が逆転して、なんか変な気分である。

お尻の穴がムズ痒い。

俺がスバルちゃんを拘束すると、彼女は呆け眼を閉じて、すやすやと眠り込む。

顔色も悪くないから毒キノコで死ぬことはないだろう。

きっと、明日になれば正気を取り戻してくれることだろうさ。

「とりあえず、これで一安心かな……」

それから俺も眠ることにした。

朝になり俺が目を覚ますと、スバルちゃんが縛られたまま寝っ転がり、俺を覚めた目で見ていた。

きーまーずーいーなー!

「あぁ……、。おはよう、スバルちゃん」

寝っ転がりながらスバルちゃんが怖い口調で言う。

「アスランさん、これはどう言うわけでしょうか、なぜ私は卑猥に縛られているのでしょうか?」

うーわー、軽蔑されてますよ、俺……。

「これには、いろいろ事情があってね……」

どうやら彼女は、昨晩の記憶がないようだった。

縄をほどいたあとに、俺は理由を説明して誤解を解くのに小一時間掛かる。

まあ、なんとか誤解は溶けたのである。

それから俺たちは薬草を取りに森へ入って行った。

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