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【第二章】最臭兵器スバル編

2-14【監獄地獄】

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ウルブズトレイン事件のあとに俺は逮捕された。

戦いの中で威張り腐りながら指示を飛ばしていた警備隊長だと思われる髭オヤジに、戦いが終わった直後に笑顔で言われたのだ。

「おまえ、なかなかやるな~」

長い戦いにヘバリ果てた俺は照れ隠しに頭をボリボリとかきながら謙遜の言葉を返す。

「そっスか~」

「ああ、その若さで凄いよ」

「褒めすぎですよ~」

「じゃあ、両手を前に出して」

「はい?」

「両手を縛るからな」

「なんで?」

「逮捕するからだよ」

「マジで……」

そんなこんなで今俺は牢獄に居ます。

警備隊宿舎の地下一階ぐらいにある牢獄だ。

武器や防具は没収されたがフード付きローブまでは必死に懇願したら取られなかった。

牢獄と言っても留置場に近い間取りですかね。

広さは十畳ぐらいだろうか。

背後だけがブロック塀で、三方向は鉄格子で囲まれている。

そのような部屋が四室連なっていた。

俺の居る檻には、こっ汚い酔いどれ爺さんが一人で鼻提灯を膨らませながら高い鼾を響かせて寝て居やがる。

酔っぱらっているのだろう、とにかくゴォーゴォーと鼾が五月蝿い。

だが、それ以上に問題は両サイドの牢獄である。

流石はソドムタウンの留置場であると思った。

俺が居る牢獄の両サイドの部屋には、明らかに仕事の途中で捕まっただろうと思われるセクシーな身形の風俗嬢と思われるお姉さんがたが沢山留置されていた。

綺麗なボディーに、きわどくセクシーな洋服を身に付け、魅惑的な胸や太股を晒し、時折からかうように両サイドからピンク色の声を俺に掛けてくる。

「うぬぬぬ……」

糞女神の呪いに苦しむ俺に取ってはまさに地獄だ。

本来なら天国のような監獄生活なのに、俺の心臓がキリキリと痛みだしている。

呪いがなければ牢獄内でもパラダイスのはずなのに!!

俺は身を震わせながらローブのフードを深くかぶり、牢獄の中央で体育座りで呪いに耐えていた。

どっちの壁際にも寄れないのだ。

右に寄れば若くて魅惑的なお姉さんに暇潰し気分で茶化され、左に寄ればセクシーで豊満なミセスにいろいろ弄られる。

どっちに寄っても地獄だから、部屋の中央に避難していたけれど、両サイドからやっぱり茶化され弄られる。

とにかく、地獄である!

右の牢獄から娼婦のお姉さんが甘ったるく声を掛けて来た。

「ねぇ~、坊やぁ~。そんなところに居ないでこっちきなよ。お姉さんと遊ばない~。お金なんか取らないからさ~」

今度は左の牢獄から娼婦のミセスが色っぽく声を掛けて来る。

「あらあら、ねえ、僕ぅ。私が天国に連れてってあげましょうか。私も暇だから無料よ」

「ち、畜生……」

俺だって遊びてーよ!

俺だって天国に行ってみてーよ!

だけどな、だけどな!!

俺は心中で血の涙を流しながら呪いの苦痛に耐えていた。

ただただ胸の痛みと無念差に口元を噛み締める。

そんな俺の気持ちも知らずに両サイドの娼婦たちが俺を遊び気分て煽ってくるのだ。

「ねぇ~、ここでお姉さんがしてやろうかぁ~」

「あらあら、僕ぅ。どうせなら私のを使わないかしらぁ?」

きぃーーーーーーー!!

らめーーーーーーー!!

この作品は性的描写有りにチェックが入っていないし15禁でもないんですよ!!

それ以上の発言はアカンのですよ!!

てか、もう胸が痛いわ!!

心臓が破裂しそうですわ!!

やーめーてー!!

とーめーてー!!

さーそーわーなーいーでー!!

「うわぁ~、かわいい坊やぁだことぉ~。震えちゃってさあ~」

「あらあら、僕ぅ。もう我慢が出来ないのかなぁ。震えているしさぁ。ここで出しちゃうのかしら?」

「わお、出しちゃうのぉ~。いったい何を出してくれるのかな~?」

出ねえーよ!!

何も出さないよ!!

出したら完全にアウトじゃんか!!

何を出しても通報されて終りですよ!!

強制非公開の刑ですよ!!

もう、痛いんですよ!!

震えるほどに心臓が痛いんですよ、呪いがさ!!

俺がちやほやとお姉さまがたに構われているのを檻の外で眺めている警備兵のおっさんが、詰まらなそうに鼻毛を抜いている。

助けてください!

もう反省しましたから、この牢獄から出してください!!

てか、早く事情聴取とかを別室でやってくださいな!!

なんでもゲロりますからさ!!

お腹が空いてるからカツ丼も食べたいしさ!!

とにかく早く素早く速攻で何とかしてくれ!

このままただ牢獄にブチ込んどくだけの放置プレイの刑はやめてください!!

それが一番の懲罰ですからさ!!

保釈金なら払いますから!!

なんぼでも払いますからさ!!

このお色気地獄から解放してください!!

もう気絶寸前ですよ!!

ああ、マジで目眩がしてきた……。

おっぱい怖いよ……。

そんな感じで俺が気絶しそうになった直後である。

上の階から階段を下って知った顔の人物が二人下りてくる。

それは、俺を逮捕した髭面の兵士長とスカル姉さんだった。

俺には二人が神様と女神様に見えた。

背後に後光が差して見えるぐらいである。

二人は話ながらこちらの檻に近付いて来た。

髭面のおっさんが、隣のスカル姉さんに言う。

「まさかお前さんが、あの坊主の身元引き受け人として来るとは思わなかったぜ。ドクトル・スカル」

スカル姉さんは薄い胸の前で両手を組みながら返した。

髑髏の仮面で隠れた顔が困り果てたのか俯いている。

「アイツにも困ったもんだわ……」

「で、お前さんとあの坊主は、どう言う関係なんだい?」

「まあ、弟みたいなもんかしら?」

「弟ねぇ~」

俺は檻に飛び付き必死に懇願した。

「スカル姉さん、早く出してくれ。死んでまう。心臓が爆発しそうなんだ!!」

俺の必死な様子を見て二人がキョトンとしていた。

 呪いの事情を知らない兵士長がスカル姉さんに問う。

「どうした、この坊主。何を必死に訴えてんだ?」

溜め息を吐いたスカル姉さんが答える。

「トイレにでも行きたいんじゃないの。膀胱が爆発しそうなんじゃないのかしら……」

「なるほどね」

スカル姉さんは呪いのことを隠してくれている。

でも俺はそれどころじゃない。

「いいから、早く出してくれ!」

「あらあら、坊や。もう行っちゃうの~」

「お姉さんたち、寂しくなっちゃうな~」

その後、俺はすんなり釈放された。

檻から出された直後に俺は、スカル姉さんに抱き付きながら泣きじゃくる。

「怖かったよ~、痛かったよ~。死ぬかと思ったよ~」

そんな俺の姿を見て、檻の中の女たちが俺とスカル姉さんを揶揄する。

「なんだぁ、愛妻が居たのねぇ」

「あらあら。あれ、お母さんじゃないの?」

娼婦の一言が逆鱗に触れたのか、スカル姉さんが俺を殴り付けながら引き離す。

それから檻に向かって怒鳴った。

「誰がお母さんだ!?」

「ほらぁ、やっぱり奥さんじゃないかぁ」

「妻でもねーよ!!」

スカル姉さんはプリプリと怒りながら階段を上って行った。

俺はその後をすぐさま追う。

上の階の受付で、俺は荷物をすべて返して貰った。

チェックしてみたが、ガメられた物は一つもないようだ。

だいたい装備を剥ぎ取られた後は装備品をすべて失うのが最近の俺のパターンなのだが、今回は俺に優しい展開らしい。

すべての装備が返って来たのだ。

ある意味で奇跡である。

「ほら、さっさと帰るよ」

「待ってくれよ、スカル姉さん~」

俺は先に建物を出て行ったスカル姉さんを、素早く荷物をまとめてから追っかけた。

そのまま二人は無言で診療所に帰る。

スカル姉さんは機嫌が悪かった。

娼婦にお母さんとか奥さんとか言われたのが気に食わなかったようだ。

やっぱり姉さんか恋人ぐらいじゃないと不味かったのかな?

たぶんスカル姉さんの古びた乙女心が傷付いたのだろう。

俺はスカル姉さんの機嫌が直るように土下座をしながら頭を下げて謝った。

額を床板に擦り付ける。

そして、謝罪の意味も込めてウルフファングネックレスを差し出した。

「何これ、汚いネックレスね?」

スカル姉さんに、ツンツンと言われた。

確かに汚い狼の牙飾りだ。

俺はしょんぼりとしながら言う。

「このマジックアイテムは、今回の冒険で手に入れた品物なんだけど、スカル姉さんにあげるよ……」

「私にくれるのか。高額なのか?」

「視力向上の効果が有るんだ」

以前に聞いた。

スカル姉さんは視力を病んでいる。

特殊魔法攻撃の後遺症らしい。

それで冒険者を引退したとか──。

多分だが、目を病んでいれば私生活でも不便なことが多いはずだ。

この世界では眼鏡も高級品ぽいしね。

「へぇ~、プレゼントしてくれるんだ」

それからスカル姉さんの固い表情が少し緩んだ。

機嫌を直してくれたスカル姉さんが、ネックレスを受け取ると俺の頭を撫でてくれる。

「ありがとう」

スカル姉さんは、髑髏の仮面の下で微笑んでくれていた。

俺もなんだかちょっぴり嬉しかった。


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