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24【鬼人オーガファイター】
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ゴブリンキングが持っている深紅の水晶体から召喚されし巨漢のモンスターは、鬼人オーガファイター。
それは額に二つの角があり、表情は鬼人らしく荒々しい。
堀の深い目元に赤い眼光を揺らめかし、しゃくれた下顎からは二本の牙が突き出ていた。
ゴリラに似た骨格だが、それは明らかに魔人の骨格だった。
このように恐ろしい骨格の人間も動物も存在しないだろう。
そして、肌の色は黒ずんだ赤。赤鬼の成りである。
身長は220センチほどあり身体も筋肉でモリモリのマッチョマンだった。
着ているものはトラ柄のパンツが一丁。野性的だが全裸ではない。
「ウガァァアアア!!!」
天に向かって吠えたてるオーガは次に愛美を睨み付けた。
どうやら分かっているようだ。
自分が戦うべき相手を──。
その証拠に愛美を確認したオーガが目の前のゴブリンたちを蹴散らしながら愛美に向かって激しく突進していく。
愛美も突進してくるオーガを睨み付けながら後方のセンシローに指示を飛ばした。
「センシローさん、村長さんをお願いします。守ってやってください!」
「分かりました、あねさん!」
その刹那、肩を突き立てるオーガが愛美に向かって体当たりをかます。
そのタックルを愛美は大きな胸で受け止めた。
まるでオーガは筋肉の弾丸。一方の愛美は筋肉の巨壁である。
後ろに片足を突きだし踏ん張る愛美。
「ウガァァアアア!!」
「なんの!!」
止まった。オーガの突進を愛美が受け止めて停止させる。
だが、オーガはそのまま押しきろうと怪力で踏ん張りを重ねた。
しかし、愛美も怪力だ。動かない。
両者が押し合う。
押し合うが動かない。
その押し合う愛美の背中にゴブリンたちが石斧や石槍で飛び掛かる。
当然ながら愛美は回避不能だ。
しかし、非力なゴブリンたちの攻撃は一撃たりとも愛美にはダメージを負わせられない。分厚い筋肉が攻撃を通さないのである。回避の必要すらないのだ。
ゴブリンたちは武器を手にしていながらもダメージを与えられないのである。故にノーダメージのままゴブリンたちが愛美に群がるだけだった。
次なる愛美のアクション。
愛美はオーガの片腕を取ると素早く体を返して背を胸に当てる。愛美の腰がオーガの下腹に滑り込んだ。
「これで、どうだ!!」
柔道の一本背負い投げである。
オーガの片腕を引きながら腰を払う。そして、巨漢のオーガを投げ飛ばした。
投げられたオーガはゴブリンたちを巻き込んで数メートル飛ぶと背中から地面に落ちた。
受け身は取れていない。
しかも巨漢に巻き込まれたゴブリンたちがぺしゃんこに成っている。
そもそもオーガは格闘技たる技術を知らないのだろう。だから受け身なんて取れないのだ。
それでもオーガは野生の耐久力を生かして直ぐに立ち上がった。
本当は内蔵が捻れるほどにグツグツしていたが我慢している。本能だけで闘志を燃やすのであった。
そのオーガに向かって愛美の追撃が飛んでくる。それはゴブリンの投擲。
「ゴブゴフゴフ!?」
「そりゃぁ!!」
「ゴブーーー!!!」
愛美は近くに居たゴブリンの頭を鷲掴むとフルスイングでオーガに向かって投げ付けてきたのだ。
名付けてゴブリンバズーカ。
これはプロレス技ではない。
だが、愛美は球技が大の苦手。投げ付けたゴブリンはオーガの真横を過ぎて後方に立っていたホブゴブリンに命中してしまう。誤射である。
だが、それでも投げられたゴブリンとそれが直撃したホブゴブリンは絶命していた。
「よし、狙ったとおりだわ!」
嘘である。愛美は強がった。
その愛美に対して今度はオーガのほうが近くに居たゴブリンを捕まえると投げ付け返す。
「ゴブーーー!!」
オーガのコントロールは抜群。投げられたゴブリンが愛美に迫ったが、愛美も飛んできたゴブリンを逆水平チョップで打ち落とす。弾き飛ばされたゴブリンが愛美の真横に叩き付けられた。
それでもオーガは次々とゴブリンを捕まえては愛美に投げ付けてきた。ゴブリンバズーカの連射である。
しかし、愛美も負けてはいられない。パンチや逆水平チョップを振るって飛んでくるゴブリンを撃墜していった。
しかも撃墜するだけではない。打撃系の技で撃墜しながら前進を試みていた。少しずつオーガとの間合いを詰めていく。
そして、やがてはオーガの眼前に愛美が立った。するとオーガもゴブリンの投擲を辞める。代わりに己の拳を大きく振りかぶった。
愛美も拳を頭の高さに振り上げる。そこからの殴り合い開始。
「パーーンチ!」
「ウゴォォオオオ!!」
両者のストレートパンチが交差する。左拳と右拳がすれ違うと両者の頬にめり込んだ。
「ふごっ!」
「ウゴッ!」
クロスカウンターだ。
しかし、パンチの打ち合いによろめいたのはオーガだけである。愛美は凛と表情を引き締めて耐えていた。
「ウガァァアアア!!」
だが、直ぐ様にオーガは体勢を建て直すと二撃目のパンチを繰り出した。
大振りのフックである。
そのフックを愛美は食らいながらもキックでオーガの腹を蹴った。
更にオーガのアッパーカット。
そのアッパーカットを食らいながら愛美はニーリフトでオーガの顎を蹴り上げる。
続いてオーガのミドルキックが愛美の横腹を蹴りつける。
それに対して愛美もオーガの頬に張り手をかましていた。
打ったら打ち返す。打たれても打ち返す。やられたらやり返すの攻防だった。両者共に引くことなく乱打を繰り返す。
魔物とゴリラの殴り合い。回避を捨てた両者が意地と本能だけで殴り合う。
そんな中でセンシローは大量のゴブリンたちに苦戦していた。
姉貴分の愛美にモブギャラコフを守れと言われたが大量のゴブリンたちから自分の身を守るのですらやっとだった。
正直守ってもらいたいのは自分のほうである。ゴブリンの数が多すぎるのだ。
しかもゴブリンたちを殺しても殺しても減りやしない。
それはそのはずだ、後方に控えているゴブリンキングが深紅の水晶体から次々とゴブリンたちを召喚しているのだから。これでは敵が減る訳がない。
このままではいずれはゴブリンたちの津波に飲み込まれるのは時間の問題だろう。
「クソ、このままだと、ゴブリンたちに飲み込まれてしまうぞ……」
センシローが弱気な思いを溢した瞬間だった。
センシローたちに迫り来るゴブリンたちの間を歩いて横断している少年の姿を見付ける。
群れの中を歩む少年。
それは不思議な光景だった。
「えっ……?」
センシローは呆然としてしまう。
ゴブリンたちの群れの中を横断してくる黒髪の少年は、さぞ当たり前のように歩いていたからだ。
しかもゴブリンたちは、その少年に気が付いていない。
黒髪の少年は、完全に気配を消してゴブリンたちの群れの中を歩いているのだ。
そんな黒髪の少年とセンシローの目が合った。
黒髪の少年はかなりの美形。そんな黒髪の美少年の表情は凛々しくも涼しげであった。
黒髪の美少年がセンシローに問い掛ける。
「にーさん、助けてやろうか?」
少年がそう言った刹那である。
少年の前方に居た数匹のゴブリンたちが白目を向いて倒れ込む。
その数は6体。
何やら黒髪の少年が攻撃した様子。だが、何をしたのか分からない。
そのダウンで初めて他のゴブリンたちが黒髪の少年の存在に気が付いた。
「「「ゴブッ!?」」」
ゴブリンたちは自分たちの中央に立つ黒髪の少年に気が付いて驚いている。
更に───。
ガンッ、ガンッ、ドガッ、ガツ!
四打の響き。
ゴブリンのこめかみを狙った裏拳。
後ろに立つゴブリンに対しての後方中段蹴り。
延髄への水平チョップ。
前方のゴプリンに対しては掬い前蹴りでの金的蹴り。
一瞬による四方向への打撃技。
あまりのスピードに四打の攻撃が同時に放たれたかのようにセンシローには見えた。瞬く間に4匹のゴブリンが白目を向いて崩れ落ちる。
強い殺気。
先程まで気配すら消していた黒髪の少年から強い殺気が放たれた。その殺気がゴブリンたちを遠ざける。
ゴブリンたちは黒髪の少年を恐れるように遠ざかって行った。
「た、助かったのか……?」
センシローたちの周辺からもゴブリンたちが居なくなっていた。
ゴブリンたちとセンシローたちとの間に狂気な少年が割って入ったからである。
それは額に二つの角があり、表情は鬼人らしく荒々しい。
堀の深い目元に赤い眼光を揺らめかし、しゃくれた下顎からは二本の牙が突き出ていた。
ゴリラに似た骨格だが、それは明らかに魔人の骨格だった。
このように恐ろしい骨格の人間も動物も存在しないだろう。
そして、肌の色は黒ずんだ赤。赤鬼の成りである。
身長は220センチほどあり身体も筋肉でモリモリのマッチョマンだった。
着ているものはトラ柄のパンツが一丁。野性的だが全裸ではない。
「ウガァァアアア!!!」
天に向かって吠えたてるオーガは次に愛美を睨み付けた。
どうやら分かっているようだ。
自分が戦うべき相手を──。
その証拠に愛美を確認したオーガが目の前のゴブリンたちを蹴散らしながら愛美に向かって激しく突進していく。
愛美も突進してくるオーガを睨み付けながら後方のセンシローに指示を飛ばした。
「センシローさん、村長さんをお願いします。守ってやってください!」
「分かりました、あねさん!」
その刹那、肩を突き立てるオーガが愛美に向かって体当たりをかます。
そのタックルを愛美は大きな胸で受け止めた。
まるでオーガは筋肉の弾丸。一方の愛美は筋肉の巨壁である。
後ろに片足を突きだし踏ん張る愛美。
「ウガァァアアア!!」
「なんの!!」
止まった。オーガの突進を愛美が受け止めて停止させる。
だが、オーガはそのまま押しきろうと怪力で踏ん張りを重ねた。
しかし、愛美も怪力だ。動かない。
両者が押し合う。
押し合うが動かない。
その押し合う愛美の背中にゴブリンたちが石斧や石槍で飛び掛かる。
当然ながら愛美は回避不能だ。
しかし、非力なゴブリンたちの攻撃は一撃たりとも愛美にはダメージを負わせられない。分厚い筋肉が攻撃を通さないのである。回避の必要すらないのだ。
ゴブリンたちは武器を手にしていながらもダメージを与えられないのである。故にノーダメージのままゴブリンたちが愛美に群がるだけだった。
次なる愛美のアクション。
愛美はオーガの片腕を取ると素早く体を返して背を胸に当てる。愛美の腰がオーガの下腹に滑り込んだ。
「これで、どうだ!!」
柔道の一本背負い投げである。
オーガの片腕を引きながら腰を払う。そして、巨漢のオーガを投げ飛ばした。
投げられたオーガはゴブリンたちを巻き込んで数メートル飛ぶと背中から地面に落ちた。
受け身は取れていない。
しかも巨漢に巻き込まれたゴブリンたちがぺしゃんこに成っている。
そもそもオーガは格闘技たる技術を知らないのだろう。だから受け身なんて取れないのだ。
それでもオーガは野生の耐久力を生かして直ぐに立ち上がった。
本当は内蔵が捻れるほどにグツグツしていたが我慢している。本能だけで闘志を燃やすのであった。
そのオーガに向かって愛美の追撃が飛んでくる。それはゴブリンの投擲。
「ゴブゴフゴフ!?」
「そりゃぁ!!」
「ゴブーーー!!!」
愛美は近くに居たゴブリンの頭を鷲掴むとフルスイングでオーガに向かって投げ付けてきたのだ。
名付けてゴブリンバズーカ。
これはプロレス技ではない。
だが、愛美は球技が大の苦手。投げ付けたゴブリンはオーガの真横を過ぎて後方に立っていたホブゴブリンに命中してしまう。誤射である。
だが、それでも投げられたゴブリンとそれが直撃したホブゴブリンは絶命していた。
「よし、狙ったとおりだわ!」
嘘である。愛美は強がった。
その愛美に対して今度はオーガのほうが近くに居たゴブリンを捕まえると投げ付け返す。
「ゴブーーー!!」
オーガのコントロールは抜群。投げられたゴブリンが愛美に迫ったが、愛美も飛んできたゴブリンを逆水平チョップで打ち落とす。弾き飛ばされたゴブリンが愛美の真横に叩き付けられた。
それでもオーガは次々とゴブリンを捕まえては愛美に投げ付けてきた。ゴブリンバズーカの連射である。
しかし、愛美も負けてはいられない。パンチや逆水平チョップを振るって飛んでくるゴブリンを撃墜していった。
しかも撃墜するだけではない。打撃系の技で撃墜しながら前進を試みていた。少しずつオーガとの間合いを詰めていく。
そして、やがてはオーガの眼前に愛美が立った。するとオーガもゴブリンの投擲を辞める。代わりに己の拳を大きく振りかぶった。
愛美も拳を頭の高さに振り上げる。そこからの殴り合い開始。
「パーーンチ!」
「ウゴォォオオオ!!」
両者のストレートパンチが交差する。左拳と右拳がすれ違うと両者の頬にめり込んだ。
「ふごっ!」
「ウゴッ!」
クロスカウンターだ。
しかし、パンチの打ち合いによろめいたのはオーガだけである。愛美は凛と表情を引き締めて耐えていた。
「ウガァァアアア!!」
だが、直ぐ様にオーガは体勢を建て直すと二撃目のパンチを繰り出した。
大振りのフックである。
そのフックを愛美は食らいながらもキックでオーガの腹を蹴った。
更にオーガのアッパーカット。
そのアッパーカットを食らいながら愛美はニーリフトでオーガの顎を蹴り上げる。
続いてオーガのミドルキックが愛美の横腹を蹴りつける。
それに対して愛美もオーガの頬に張り手をかましていた。
打ったら打ち返す。打たれても打ち返す。やられたらやり返すの攻防だった。両者共に引くことなく乱打を繰り返す。
魔物とゴリラの殴り合い。回避を捨てた両者が意地と本能だけで殴り合う。
そんな中でセンシローは大量のゴブリンたちに苦戦していた。
姉貴分の愛美にモブギャラコフを守れと言われたが大量のゴブリンたちから自分の身を守るのですらやっとだった。
正直守ってもらいたいのは自分のほうである。ゴブリンの数が多すぎるのだ。
しかもゴブリンたちを殺しても殺しても減りやしない。
それはそのはずだ、後方に控えているゴブリンキングが深紅の水晶体から次々とゴブリンたちを召喚しているのだから。これでは敵が減る訳がない。
このままではいずれはゴブリンたちの津波に飲み込まれるのは時間の問題だろう。
「クソ、このままだと、ゴブリンたちに飲み込まれてしまうぞ……」
センシローが弱気な思いを溢した瞬間だった。
センシローたちに迫り来るゴブリンたちの間を歩いて横断している少年の姿を見付ける。
群れの中を歩む少年。
それは不思議な光景だった。
「えっ……?」
センシローは呆然としてしまう。
ゴブリンたちの群れの中を横断してくる黒髪の少年は、さぞ当たり前のように歩いていたからだ。
しかもゴブリンたちは、その少年に気が付いていない。
黒髪の少年は、完全に気配を消してゴブリンたちの群れの中を歩いているのだ。
そんな黒髪の少年とセンシローの目が合った。
黒髪の少年はかなりの美形。そんな黒髪の美少年の表情は凛々しくも涼しげであった。
黒髪の美少年がセンシローに問い掛ける。
「にーさん、助けてやろうか?」
少年がそう言った刹那である。
少年の前方に居た数匹のゴブリンたちが白目を向いて倒れ込む。
その数は6体。
何やら黒髪の少年が攻撃した様子。だが、何をしたのか分からない。
そのダウンで初めて他のゴブリンたちが黒髪の少年の存在に気が付いた。
「「「ゴブッ!?」」」
ゴブリンたちは自分たちの中央に立つ黒髪の少年に気が付いて驚いている。
更に───。
ガンッ、ガンッ、ドガッ、ガツ!
四打の響き。
ゴブリンのこめかみを狙った裏拳。
後ろに立つゴブリンに対しての後方中段蹴り。
延髄への水平チョップ。
前方のゴプリンに対しては掬い前蹴りでの金的蹴り。
一瞬による四方向への打撃技。
あまりのスピードに四打の攻撃が同時に放たれたかのようにセンシローには見えた。瞬く間に4匹のゴブリンが白目を向いて崩れ落ちる。
強い殺気。
先程まで気配すら消していた黒髪の少年から強い殺気が放たれた。その殺気がゴブリンたちを遠ざける。
ゴブリンたちは黒髪の少年を恐れるように遠ざかって行った。
「た、助かったのか……?」
センシローたちの周辺からもゴブリンたちが居なくなっていた。
ゴブリンたちとセンシローたちとの間に狂気な少年が割って入ったからである。
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