53 / 71
51.その背中
しおりを挟む
『シヌガイイ……。』
両足に力を込めて前方に飛ぶサタン。
右手の爪を鋭く立てて振り上げる。
「沙夜っ!」
サタンの狙いは、ブリュンヒルデの契約者である沙夜。
沙夜が正気を保てていないこの場面では、ブリュンヒルデを狙うことより、契約者を殺せば必然的に天使も消える結果となるからだ。
「沙夜っ、死ぬつもりですか!」
真希が敵となってしまったことを受け止められない。
真希とは戦えない、戦いたくない。
そういう思いが渦巻いている心の中に、ブリュンヒルデの言葉が入る隙間はなかった。
『グォォォォ!!!!』
沙夜は一切逃げようとしない。
「くっ!」
サタンの右手は、沙夜に向かって振り下ろされた。
「もう終わり?残念。」
それをずっと見ていた真希の目に映ったのは、
「ぐっ……。」
沙夜を守るために、サタンの一撃を背中に負ってしまうブリュンヒルデの姿だった。
『トドメダ……。』
サタンは今度は左手に力を集中させる。
紫の光が出始め、渦を巻く。
そして、禍々しい紫の玉を形成する。
「…………。」
背中に攻撃を負いながら、無言なブリュンヒルデの背中に、向かってそれを叩きつける。
が……しかし、
「残念でしたね、魔王サタン。」
攻撃がブリュンヒルデの背中に当たった瞬間、
『ナン……ダト?』
「ええぇ!?」
サタンと真希は驚いた。
ブリュンヒルデと沙夜が消えたのだ。
無数の光の粒となって、青い空に―。
驚きでサタンは、左腕を伸ばしたまま動かなかった。
「何してるのですか?ここですよ。」
その声は明らかに、先ほどの消えたブリュンヒルデ。
『ナッ……。』
サタンの左側から聞こえるその声。
左に視線を向けようとした時、伸ばした左腕からは赤い噴水が現れ、サタンの両目を防いだ。
『グァッ…………ナ……ンダト……。』
右手で咄嗟に両目を押さえる。
左腕を攻撃されたサタン。
目は閉じているが、気配で感じた。
首もとに槍を突きつけられていることを……。
「なにが起こったの……?」
疑問に思う真希の後ろには、
「うまくはまってくれたわね、真希。」
先ほどとは別人かのように、雰囲気が違う沙夜がいたのだった―。
両足に力を込めて前方に飛ぶサタン。
右手の爪を鋭く立てて振り上げる。
「沙夜っ!」
サタンの狙いは、ブリュンヒルデの契約者である沙夜。
沙夜が正気を保てていないこの場面では、ブリュンヒルデを狙うことより、契約者を殺せば必然的に天使も消える結果となるからだ。
「沙夜っ、死ぬつもりですか!」
真希が敵となってしまったことを受け止められない。
真希とは戦えない、戦いたくない。
そういう思いが渦巻いている心の中に、ブリュンヒルデの言葉が入る隙間はなかった。
『グォォォォ!!!!』
沙夜は一切逃げようとしない。
「くっ!」
サタンの右手は、沙夜に向かって振り下ろされた。
「もう終わり?残念。」
それをずっと見ていた真希の目に映ったのは、
「ぐっ……。」
沙夜を守るために、サタンの一撃を背中に負ってしまうブリュンヒルデの姿だった。
『トドメダ……。』
サタンは今度は左手に力を集中させる。
紫の光が出始め、渦を巻く。
そして、禍々しい紫の玉を形成する。
「…………。」
背中に攻撃を負いながら、無言なブリュンヒルデの背中に、向かってそれを叩きつける。
が……しかし、
「残念でしたね、魔王サタン。」
攻撃がブリュンヒルデの背中に当たった瞬間、
『ナン……ダト?』
「ええぇ!?」
サタンと真希は驚いた。
ブリュンヒルデと沙夜が消えたのだ。
無数の光の粒となって、青い空に―。
驚きでサタンは、左腕を伸ばしたまま動かなかった。
「何してるのですか?ここですよ。」
その声は明らかに、先ほどの消えたブリュンヒルデ。
『ナッ……。』
サタンの左側から聞こえるその声。
左に視線を向けようとした時、伸ばした左腕からは赤い噴水が現れ、サタンの両目を防いだ。
『グァッ…………ナ……ンダト……。』
右手で咄嗟に両目を押さえる。
左腕を攻撃されたサタン。
目は閉じているが、気配で感じた。
首もとに槍を突きつけられていることを……。
「なにが起こったの……?」
疑問に思う真希の後ろには、
「うまくはまってくれたわね、真希。」
先ほどとは別人かのように、雰囲気が違う沙夜がいたのだった―。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】逃がすわけがないよね?
春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。
それは二人の結婚式の夜のことだった。
何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。
理由を聞いたルーカスは決断する。
「もうあの家、いらないよね?」
※完結まで作成済み。短いです。
※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。
※カクヨムにも掲載。
ああ、もういらないのね
志位斗 茂家波
ファンタジー
……ある国で起きた、婚約破棄。
それは重要性を理解していなかったがゆえに起きた悲劇の始まりでもあった。
だけど、もうその事を理解しても遅い…‥‥
たまにやりたくなる短編。興味があればぜひどうぞ。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる