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5.目覚めし聖剣

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「近寄れねぇ…どうする?七花。」

ゴーレムを囲む無数の瓦礫は下手に突っ込んで行くと蜂の巣である。

「近寄れねないなら近寄らなければいい。」

「たしかにそうだが、それじゃあの目は壊せないだろ。」

「近づかずに壊せる。」

「どうするんだ?飛び道具持ってるのか?」

すると、七花は聖剣(隼一郎)を右手で逆手に持った。
そして、そのまま耳元に聖剣(隼一郎)を構え、剣先をゴーレムの顔に向ける。

「ここに貫通力のいい最高の弾丸があるじゃん。」

「俺かよ!俺は弾丸じゃねぇ!剣だ。」

「突き刺すことはできるでしょ?」

「そりゃ……できるよ。ってお前まさか…。」

「なら投げて刺しても問題ないじゃん。」

隼一郎は剣の姿なので抵抗できない。
ただただ使用者の好き勝手にされるしかない。

「待て!まだ他に手があるはずだ!」

「この方法より楽な手段があるの?」

「それは……。」

「ないね。じゃあ~いくよ。」

「待って、待ってくれ~!」  
 
「いっけぇーーーーー!」

ゴーレムの目に照準を合わせると、七花は左足を前に突き出して重心を低く構えると、問答無用に聖剣(隼一郎)を投げた。

空気を裂いて、ゴーレムの周りの石を破壊しつつ突き進む聖剣(隼一郎)。

「あっ、あっ…。痛いような気がする…。でも…なんか癖になる…。」

隼一郎は完全に『なにか』に目覚めたようだ。

その飛んでいく姿は、剣ではなく槍のよう。

オオオオオオオオオオオオ……オオ…オ…。  

聖剣(隼一郎)は正確にゴーレムの左目に刺さった。

ゴーレムは、魔力源が途絶えたため機能を停止し膝から崩れ落ちた。

「隼一郎の言った通りね。」

「おーい。見えてはいけない部分が見えてるって!」

聖剣(隼一郎)はゴーレムに刺さったままである。
剣なので当然動けるはずない。

「さっ、帰ろう。」

七花は刺さった聖剣(隼一郎)をそのまま放置して、出口の方に歩き始めた。

「何でっ!?早く抜いてくれよ!」

「しゃべる剣なんて使いたくな~い。」

七花は歩みを止めようとしない。

「それなかなかに傷つくんですけど!」

「大丈夫でしょ~。折れたってまた治るんだから。」

「治るのは心じゃなくて、剣ってか体の方だっ!」

彼女はそのまま出口に続く廊下に行ってしまった。
ゴーレムが死んだおかげで、地響きは止まった。
どうやら地響きは遺跡のゴーレムが原因だったらしい。

「どうしよう。」

取り残された聖剣(隼一郎)は、

「足とか腕とか生えねぇかな。」

なぜか手足が生えてこないかと考えた。

そしたらなんと…、

「生えたわ。」

鉛筆で書いたかのような細い棒が4つ生えたのだ。

自分の体(聖剣)をその細い腕で押し上げると抜けることに成功した。

「あいつを追うか。」

聖剣が手足を生やしてるなんて話は、聞いたこともないし、信じたくもないが……、

「待ってぇ~お嬢さ~ん!!」

聖剣(隼一郎)は七花の後を、急いで追うのだった―。
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