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6.影

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「なんだ、聖剣の姿だけど一応の手足は生やせるみたいだね。」 

手足の生えた聖剣の姿で、

「仕方ないだろ!」

「じゃあそのままの姿でいいじゃない。」

「良くない!どう見ても不自然だろ!」

「どこが?」

「聖剣から手足生えてるんだぞ!」

聖剣(隼一郎)は、手足を消した。
そのまま剣は倒れる。

「そのままにしておけば誰か拾ってくれるんじゃない?まぁ、時間掛かるかもだけど。」

隼一郎は気づかなかった。
ここは深い森のほぼ中心であることを。

「どういうことだ?」

「ここになんてほとんど人来ないもん。村人なんてこんな危ない森に近づかないし、魔王のいる城から逆方向だから勇者がいても来ないよ。」

「なんで七花はここへ?」

「方向音痴でね。迷った。遺跡にたどり着いてようやく気づいたけど、面白そうだから入ったんだよ。そしたら声がして…。」

聖剣(隼一郎)に出会ったというわけである。

「まぁ、面白い聖剣だから使って上げてもいいよ。でも鞘がないのは不満。」

「村で作れないのか?」

「どうだろう。とりあえず行ってみる?」

「そうしよう。」

七花は地面に転がっている聖剣(隼一郎)を掴むと、腰に差した。

「あ、一応言っておくけどさ。」

「ん、なんだ?」

「この森のモンスターはなかなかに強いからよろしく。来るときは隠れながら来たけど今は聖剣あるから堂々と行くことにする。」

さらっと、きついことを言う七花。
確かにこの森のモンスターはどれも強い。さらに遺跡のゴーレムはもっと強い。
だがそれを倒せたのでなにも恐れるものはない七花であった。

「よく来れたな…。」

「隠れるのは得意よ。」

「じゃあ隠れて帰れよ!」

「だって~、この聖剣のおかげで小さい物影に隠れられなくなったし、だから折ったのに戻っちゃうし。」

「悪いの全部俺かよ!」

しかし、歩いているのはいいが、隼一郎たちは全然モンスターに出会わない。
気配すらない。

「おかしい…。全然モンスターいないよ。」

「そんなもんじゃないのか?」

「来るときは結構いたよ。」

すると、突然ゴォォォォという地響きと、森の木々、動物が暴れまわる。

「なんだ!?」

「なに…これ?」 

風がだんだん強くなる。
体が少しずつ引きずられる。

オオオオオオオオオ!!!!!!

遺跡のゴーレムと比べ物に鳴らないくらいの激しい鳴き声。

日差しが木々の隙間から差し込んでいたのが嘘のように、辺りが暗くなった。

風は少し渦を巻く。

グオオオオオオオオアアア~!!!!!!
 
隼一郎たちの周りが暗くなったのは影。

その影は…、

天空を舞う、


ある幻獣の影だった―。
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