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ミカエルとワイアット様の結婚式
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「やっとこの日が来たわ!」
今日はミカエルとワイアット様の結婚式だ。
教会の2階にある王族用の控室には隠し窓が付いている。窓をのぞくとすでに多くの人が今日の主役を待っていた。
教会に流れる厳粛的な空気は凛としていて、シェドの太陽をいっぱいに浴びて育った花々がインパクトのある色彩を放っている。バージンロードも花びらで埋め尽くされ、まるで絨毯のようだ。
自分の結婚式でもないのに、スザン王子に婚約破棄を言い渡された卒業パーティーより緊張をしている。
***
3日前には客船としては処女航海だったマリオッティ号も無事に戻り、カルロス王太子やキース達とも再会を果たした。キースは怪我もなく、話し合いで済んだと聞いて胸を撫で下ろした。妹のレスティさんだけは出番がなかったと不満なようだ。
そして、ウェスト王国からはるばる来日した、ウラーラ侯爵夫人とバッカム卿も船の旅を楽しんでくれたようだ。
「貴方がレイシャル・オッド公爵令嬢ね。貴方の船は最高だったわ。美味しいお食事に、マリオ船長の歌声。それに水平線から昇る太陽に感動して足が震えたわ」
「喜んでくださって私も嬉しいです。船のデザインや催しはオーロラ商会の従業員がアイデアを出し合ったのです」
「ふっふっふ。宰相のザトルがアティーブルの結婚相手に望む気持ちが良く分かるわ。アティーブルはバイオリンがとても上手だし、なかなかのハンサムなのよ。会いたくなったらいつでもおしゃってね」
「平民になった私には王族の方との婚姻なって恐れ多いです」
「王族の方ね・・・ふっふっふ」
キースによるとウラーラ侯爵夫人も元ドルトムント一族だという。
ミカエルからは『ドルトムント一族に会えるとしたら、それは自分が死ぬ時だ』と言っていた割には、私は既に3人もドルトムント一族と会っている。私の周りはドルトムント率が高すぎる気がする。
一応お約束として『何が得意ですか』と聞けば、『針が得意です。針が1本あれば簡単に人を殺せますから』と律儀に答えてくれた。その会話を聞いているバッカム卿も動揺することもなく夫人に微笑んでいた。彼もなかなかの人物のようだ。
バッカム卿は現在37歳。異国の地でも堂々としているのは大人としての経験の違いだろうか。バッカム卿の何気ないエスコートに思わず身を委ねてしまいそうになる。これが大人の男の魅力というやつだろうか。それがまた下心もなく自然体なのだ。
ウラーラ侯爵夫人もまた大人の女性だった。バッカム卿がマナー上他の令嬢に手を差し伸べても相手に嫉妬をすることもない。ウラーラ侯爵夫人もウエンのお母様も王妃を経験した女性は、美しさの中に一本芯が通ったような強さも兼ね備えている。
ウラーラ侯爵夫人はシックな装いだったが、バッカム卿から愛されている自信が彼女を輝かせていた。
「バッカム侯爵って大人の男性って感じで素敵ですね。ウラーラ侯爵夫人が羨ましいです」
「珍しいわね、ルビーがそんなことを言うなんて」
「気にしないでください。ここ最近結婚式用のドレスばっかりデザインしているので、頭がお花畑になっているのです」
そんなことを話していると、キースとリブルが控室に到着したようだ。リブルは着いて早々支店長になるための心得をベンハーに教わっている。キースも一緒に付き合っているので到着した時、挨拶を交わしたぐらいでまだ話せていなかった。
「お嬢様、それにしても船のアイデアは素晴らしかったですね。お嬢様の陰で誰もが快適な旅を楽しめましたよ」
「そう言ってもらえたらマリオ船長も喜ぶわ。時間がなかったから突貫工事だったけど不自由はなかった?」
「まったく問題ありませんでした。それに、船の上でフルコースが食べられるとは思わなかったですよ」
「リブルさんは久しぶりに妹のウラーラ侯爵夫人とお話ができたとか」
「ええ、何年ぶりにゆっくりと話しました。すぐにバッカム侯爵が迎えに来て連れて行ってしまうのですが、これからは一緒に働けますからね。採用してくれたお嬢様には感謝しています」
リブルさんはキースと同じ年だと聞いていたけど、キースより年上に見える。
「おや、お嬢様のドレスはウエン王子の瞳と同じ色ですね」
「そうなのよ。ルビーが最近この色ばっかり選ぶものだから、変な噂が立たないか心配になるわ」
「・・・・・ほう、これだけ時間があったのにまだ言ってなかったとは驚きですね」
「え?」
「ほら!お嬢様急がないと式が始まりますよ」
「あら、そんな時間。また後で・・・」
シェドの伝統的な音楽で始まった結婚式は格式に則ったものだったが、私たちには逆に新鮮だった。邪気を払う剣舞で発せられる声は勇ましく、教会に何重にもこだますると人の声とは思えない不思議な音色になって教会を包み込む。結婚式をプロデュースした陛下はなかなかの才能の持ち主のようだ。
ルビーがデザインした衣装も素晴らしかった。背中の中央に開いた生地からレースが足元まで流れているのだ。マントにも見えなくはないが、レースが繊細で花嫁がつけるベールにも見える独特なデザインになっていた。その衣装がミカエルにとても似合っているのだ。
ミカエルがワイアット様と永遠の愛を誓うときには感極まりミカエルが泣くシーンもあったが、ミカエルを慰めるワイアット様の顔はとても穏やかで満たされていた。
(私までもらい泣きしちゃうじゃない・・・)
前世でも今世でも結婚式は泣けるもののようだ。
(ミカエルを見ていたら、なんだか私もウェディングドレスを着てみたくなるわね。ルビーに頼んで作ってもらおうかしら。結婚ができなくても隠れてウェディングドレスを着るぐらい、誰かも迷惑をかけないしいいわよね)
腕輪の交換ではワイアット様の末弟が腕輪を持つ大役を果たしたが、アリーが間違った腕輪をワイアット様に渡すと兄達が慌てて腕輪を交換したのだ。そんな兄弟のあわてる姿が余りにも可愛らしく笑いが起こる場面もあった。
「本当にいい結婚式だったわね」
「ええ、あの兄が恋をするとあんな顔になるんですね。妹の私でも驚きました」
「ミカエル、綺麗だったわね」
「はい、とっても・・・」
リリアンと結婚式が終わり披露宴会場に移動したが、ふたりの周りには人だかりができて今は行けそうにない。ふたりでのんびりと新婚のふたりを眺めながら食事を突いている。
「リリアン、なんだか元気がないわね・・・」
「そうなんです。最近求婚者が減ってどうしたものかと」
「そうね。最近は求婚者と言うより挑戦者になってきた気がするわね」
「分かりますか?ノルの女性騎士達に鍛えられた騎士達が自信たっぷりに挑戦してきても、騎士相手と暗殺者相手では戦い方が違うと気づかないようで・・・。勝てないことに意地になってきている気がします」
「まさかリリアンが元暗殺者とは気づかないのも分かる気がするけど、明日も試合があるのよね」
「はい」
「では、お祝いを言ったら帰りますか。明日に控えないとね」
***
「お兄ちゃん、おめでとう」
人が減ったの頃合いを見てふたりの元に行くと、ミカエルはワイアット様のご家族と楽しそうに話していたが私たちに気づいたようだ。
「なんだかリリアンの前だと照れくさいな」
「ずっと俺は結婚しないって言ってたものね」
「ああ、そうだな」
「ふっふっふ・・・」
「・・・リリアン。笑っているな」
「ええ、この国に来ていいことばかりだもの。お兄ちゃんも笑ってるね」
「そうだな・・・」
そう話すふたりの目には、薄っすら涙が浮かんでいた。
「ワイアット様、不束者の兄ですがよろしくお願いします」
「ああ、任せてくれ。これで君も私の妹だ。もうひとり兄ができたと思って私にも頼って欲しい」
「ええ、もちろんです」
ミカエルを見れば大役を果たしたアリーが、ミカエルの膝の上で眠り込んでいる。ミカエルはすっかり家族に溶け込んでいる。アウアー卿もベラ夫人も嬉しそうにいつでも遊びに来てねとリリアンに声をかけていた。
「ミカエル、今度ゆっくり仲間内でお祝いをしましょうね。今日は人も多いし退散するわ。1週間しかないけどハネムーンを楽しんでね」
ウエンがミカエル達の為に王族専用の別荘を貸してくれたのだ。粋な計らいにふたりとも嬉しそうだ。
「ありがとう、レイシャル様」
挨拶も終え、リリアンと会場の出口に向かいながらウエンを探す。そうするとあの自称幼馴染だという令嬢とウエンが一緒にいるのが見えた。
「あらあら、ウエン王子に腕を絡めて何を話しているのでしょう。あれってデボラ男爵令嬢ですよね」
ウエンは後ろを向いていて表情が見えないが、デボラ男爵令嬢は私に気づくと手を振ったのだ。私も手を振り返す。
「もういいわ、リリアン帰りましょう」
「ウエン王子に帰るって言わなくていいのですか?」
「いいのよ。楽しそうだし邪魔をしては悪いでしょう」
「ふーん。嫉妬ですか?」
「なっ、何を言っているのよ。そんな訳ないじゃない」
思わず声が裏返った。
「まあ、いいですけど。レイシャル様が声もかけずに帰ったと知るとウエン王子は悲しむでしょうね」
「そんなことはないわ。私はただの妹ですもの」
「ふーーーん」
「なによ。今日のリリアンは意地悪ね」
「私なりの親切ですよ。それに彼女の行動に見覚えがあるので気になって」
レイシャルはベッドに入ってもなかなか戻ってこないウエンに腹が立ったが、10分で眠りについた。
今日はミカエルとワイアット様の結婚式だ。
教会の2階にある王族用の控室には隠し窓が付いている。窓をのぞくとすでに多くの人が今日の主役を待っていた。
教会に流れる厳粛的な空気は凛としていて、シェドの太陽をいっぱいに浴びて育った花々がインパクトのある色彩を放っている。バージンロードも花びらで埋め尽くされ、まるで絨毯のようだ。
自分の結婚式でもないのに、スザン王子に婚約破棄を言い渡された卒業パーティーより緊張をしている。
***
3日前には客船としては処女航海だったマリオッティ号も無事に戻り、カルロス王太子やキース達とも再会を果たした。キースは怪我もなく、話し合いで済んだと聞いて胸を撫で下ろした。妹のレスティさんだけは出番がなかったと不満なようだ。
そして、ウェスト王国からはるばる来日した、ウラーラ侯爵夫人とバッカム卿も船の旅を楽しんでくれたようだ。
「貴方がレイシャル・オッド公爵令嬢ね。貴方の船は最高だったわ。美味しいお食事に、マリオ船長の歌声。それに水平線から昇る太陽に感動して足が震えたわ」
「喜んでくださって私も嬉しいです。船のデザインや催しはオーロラ商会の従業員がアイデアを出し合ったのです」
「ふっふっふ。宰相のザトルがアティーブルの結婚相手に望む気持ちが良く分かるわ。アティーブルはバイオリンがとても上手だし、なかなかのハンサムなのよ。会いたくなったらいつでもおしゃってね」
「平民になった私には王族の方との婚姻なって恐れ多いです」
「王族の方ね・・・ふっふっふ」
キースによるとウラーラ侯爵夫人も元ドルトムント一族だという。
ミカエルからは『ドルトムント一族に会えるとしたら、それは自分が死ぬ時だ』と言っていた割には、私は既に3人もドルトムント一族と会っている。私の周りはドルトムント率が高すぎる気がする。
一応お約束として『何が得意ですか』と聞けば、『針が得意です。針が1本あれば簡単に人を殺せますから』と律儀に答えてくれた。その会話を聞いているバッカム卿も動揺することもなく夫人に微笑んでいた。彼もなかなかの人物のようだ。
バッカム卿は現在37歳。異国の地でも堂々としているのは大人としての経験の違いだろうか。バッカム卿の何気ないエスコートに思わず身を委ねてしまいそうになる。これが大人の男の魅力というやつだろうか。それがまた下心もなく自然体なのだ。
ウラーラ侯爵夫人もまた大人の女性だった。バッカム卿がマナー上他の令嬢に手を差し伸べても相手に嫉妬をすることもない。ウラーラ侯爵夫人もウエンのお母様も王妃を経験した女性は、美しさの中に一本芯が通ったような強さも兼ね備えている。
ウラーラ侯爵夫人はシックな装いだったが、バッカム卿から愛されている自信が彼女を輝かせていた。
「バッカム侯爵って大人の男性って感じで素敵ですね。ウラーラ侯爵夫人が羨ましいです」
「珍しいわね、ルビーがそんなことを言うなんて」
「気にしないでください。ここ最近結婚式用のドレスばっかりデザインしているので、頭がお花畑になっているのです」
そんなことを話していると、キースとリブルが控室に到着したようだ。リブルは着いて早々支店長になるための心得をベンハーに教わっている。キースも一緒に付き合っているので到着した時、挨拶を交わしたぐらいでまだ話せていなかった。
「お嬢様、それにしても船のアイデアは素晴らしかったですね。お嬢様の陰で誰もが快適な旅を楽しめましたよ」
「そう言ってもらえたらマリオ船長も喜ぶわ。時間がなかったから突貫工事だったけど不自由はなかった?」
「まったく問題ありませんでした。それに、船の上でフルコースが食べられるとは思わなかったですよ」
「リブルさんは久しぶりに妹のウラーラ侯爵夫人とお話ができたとか」
「ええ、何年ぶりにゆっくりと話しました。すぐにバッカム侯爵が迎えに来て連れて行ってしまうのですが、これからは一緒に働けますからね。採用してくれたお嬢様には感謝しています」
リブルさんはキースと同じ年だと聞いていたけど、キースより年上に見える。
「おや、お嬢様のドレスはウエン王子の瞳と同じ色ですね」
「そうなのよ。ルビーが最近この色ばっかり選ぶものだから、変な噂が立たないか心配になるわ」
「・・・・・ほう、これだけ時間があったのにまだ言ってなかったとは驚きですね」
「え?」
「ほら!お嬢様急がないと式が始まりますよ」
「あら、そんな時間。また後で・・・」
シェドの伝統的な音楽で始まった結婚式は格式に則ったものだったが、私たちには逆に新鮮だった。邪気を払う剣舞で発せられる声は勇ましく、教会に何重にもこだますると人の声とは思えない不思議な音色になって教会を包み込む。結婚式をプロデュースした陛下はなかなかの才能の持ち主のようだ。
ルビーがデザインした衣装も素晴らしかった。背中の中央に開いた生地からレースが足元まで流れているのだ。マントにも見えなくはないが、レースが繊細で花嫁がつけるベールにも見える独特なデザインになっていた。その衣装がミカエルにとても似合っているのだ。
ミカエルがワイアット様と永遠の愛を誓うときには感極まりミカエルが泣くシーンもあったが、ミカエルを慰めるワイアット様の顔はとても穏やかで満たされていた。
(私までもらい泣きしちゃうじゃない・・・)
前世でも今世でも結婚式は泣けるもののようだ。
(ミカエルを見ていたら、なんだか私もウェディングドレスを着てみたくなるわね。ルビーに頼んで作ってもらおうかしら。結婚ができなくても隠れてウェディングドレスを着るぐらい、誰かも迷惑をかけないしいいわよね)
腕輪の交換ではワイアット様の末弟が腕輪を持つ大役を果たしたが、アリーが間違った腕輪をワイアット様に渡すと兄達が慌てて腕輪を交換したのだ。そんな兄弟のあわてる姿が余りにも可愛らしく笑いが起こる場面もあった。
「本当にいい結婚式だったわね」
「ええ、あの兄が恋をするとあんな顔になるんですね。妹の私でも驚きました」
「ミカエル、綺麗だったわね」
「はい、とっても・・・」
リリアンと結婚式が終わり披露宴会場に移動したが、ふたりの周りには人だかりができて今は行けそうにない。ふたりでのんびりと新婚のふたりを眺めながら食事を突いている。
「リリアン、なんだか元気がないわね・・・」
「そうなんです。最近求婚者が減ってどうしたものかと」
「そうね。最近は求婚者と言うより挑戦者になってきた気がするわね」
「分かりますか?ノルの女性騎士達に鍛えられた騎士達が自信たっぷりに挑戦してきても、騎士相手と暗殺者相手では戦い方が違うと気づかないようで・・・。勝てないことに意地になってきている気がします」
「まさかリリアンが元暗殺者とは気づかないのも分かる気がするけど、明日も試合があるのよね」
「はい」
「では、お祝いを言ったら帰りますか。明日に控えないとね」
***
「お兄ちゃん、おめでとう」
人が減ったの頃合いを見てふたりの元に行くと、ミカエルはワイアット様のご家族と楽しそうに話していたが私たちに気づいたようだ。
「なんだかリリアンの前だと照れくさいな」
「ずっと俺は結婚しないって言ってたものね」
「ああ、そうだな」
「ふっふっふ・・・」
「・・・リリアン。笑っているな」
「ええ、この国に来ていいことばかりだもの。お兄ちゃんも笑ってるね」
「そうだな・・・」
そう話すふたりの目には、薄っすら涙が浮かんでいた。
「ワイアット様、不束者の兄ですがよろしくお願いします」
「ああ、任せてくれ。これで君も私の妹だ。もうひとり兄ができたと思って私にも頼って欲しい」
「ええ、もちろんです」
ミカエルを見れば大役を果たしたアリーが、ミカエルの膝の上で眠り込んでいる。ミカエルはすっかり家族に溶け込んでいる。アウアー卿もベラ夫人も嬉しそうにいつでも遊びに来てねとリリアンに声をかけていた。
「ミカエル、今度ゆっくり仲間内でお祝いをしましょうね。今日は人も多いし退散するわ。1週間しかないけどハネムーンを楽しんでね」
ウエンがミカエル達の為に王族専用の別荘を貸してくれたのだ。粋な計らいにふたりとも嬉しそうだ。
「ありがとう、レイシャル様」
挨拶も終え、リリアンと会場の出口に向かいながらウエンを探す。そうするとあの自称幼馴染だという令嬢とウエンが一緒にいるのが見えた。
「あらあら、ウエン王子に腕を絡めて何を話しているのでしょう。あれってデボラ男爵令嬢ですよね」
ウエンは後ろを向いていて表情が見えないが、デボラ男爵令嬢は私に気づくと手を振ったのだ。私も手を振り返す。
「もういいわ、リリアン帰りましょう」
「ウエン王子に帰るって言わなくていいのですか?」
「いいのよ。楽しそうだし邪魔をしては悪いでしょう」
「ふーん。嫉妬ですか?」
「なっ、何を言っているのよ。そんな訳ないじゃない」
思わず声が裏返った。
「まあ、いいですけど。レイシャル様が声もかけずに帰ったと知るとウエン王子は悲しむでしょうね」
「そんなことはないわ。私はただの妹ですもの」
「ふーーーん」
「なによ。今日のリリアンは意地悪ね」
「私なりの親切ですよ。それに彼女の行動に見覚えがあるので気になって」
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