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アミスティの手紙には傭兵たちの訓練も終わり、第三王子のベガル王子も筋がいいのか腕をあげたと書かれていた。ウラーラは王宮の奥深くに隠れ、目立った行動はしていない。ただ、ボーロ商会の活動が活発になっているいう。
ミリューに潜伏している部下からの報告書も来ていた。ミリュー王族への信頼は失墜し国を見捨て領地に戻った貴族が多いようだ。スザン王子は未だにリリアンを探しているようだが、未だに見つけてはいない。
「カミュール公爵の噂は、そろそろスザン王子の耳に入る頃か」
その話を聞いてスザン王子がどのような行動に出るか興味もあるが、ミリューでは小さな暴動があちらこちらで起こっているのでそれどころではないだろう。
ミリュー国王は焦って権威を取り戻そうとしているが、オーロラ商会が海外移転した話は新聞ですでに王都の人々も知るところだ。オーロラ商会を失って初めてその存在の大きさに気づいただろう。
スザン王子はレイシャル嬢にもリリアン嬢にも見捨てられた情けない王子と言う印象が強く残った。高額の持参金を持って嫁いでくれる婚約者を探しているようだが、誰もなりたがらないのが現実だ。
スザン王子と元側近たちは、王宮で監視され過ごしているようだ。国王はいずれスザン王子を廃嫡にする決断を迫られだろう。
報告書を読み終えると、そのまま暖炉の火で手紙が燃えるのを見つめていた。
「荷ほどきは必要ないな。指揮を執る為ウェスト王国に入るか」
ベッドに入ったキースだが、目が冴えているせいか眠ることができない。
「母がシェドを気に入るのも分かりますね。あの国にいると自分ですら普通の人間になれた気がしますからね」
シェドの国は大らかだ。どの国も暗い側面があるが、シェドではそれがないように見受けられる。王族にすらドロドロした部分がないのだ。
王妃も庶民の出だし、ミリタ王子がこれから結婚を望んでいるのも庶民の出であるジジだ。そしてウエン王子も高貴族だったレイシャル様ではあるが、今は平民となった女性を王妃に望んでいる。
他国では貴族を黙らせるにも大変なことだが、シェド王族への信頼の厚さが違うのだ。
シェドに入国して大型船が港に着いた時ウエン王子達を連れて視察に出たが、ウエン王子は上着を脱ぐと男達と一緒に積み荷を運び始めた。シェドの男達は驚くこともなく、それが普通なことの様にウエン王子に話しかけている。
各国の王族や貴族を見てきたがキースだったが流石に驚いて、ミリタ王子に『普段からこんな事をしているのか』と聞いたほどだ。
「ああ、私たちの母親は庶民の出だからな。子供の頃から徹底的に躾けられている。破れば尻叩き100回の刑だからな・・・」
「尻叩きって」
「何を言っているのです。優しい王妃様はそうは言っても10回ぐらいしか叩いたことがないでしょう。私が代わりましょうと提案しても、こればかりは自分の子供の教育だからと言って代わってくださいませんし」
「アンヌは100回が終わってもまだ続けそうだからな・・・」
「そんなことはありません。100回で十分満足します」
「・・・・・」
手伝いに向かったミリタ王子を追うように護衛達も手伝い始めた。私もアンヌに背中を押され、手伝う羽目になったが自分としては珍しく労働が楽しいと感じたのだ。
(育て方なんでしょうかね)
そんなことを思い出しているうちにキースはいつの間にか眠りにつくのだった。
******
設定を誤り54話が先に公開されました。一旦ひっこめました。また54話で楽しんでください。
ミリューに潜伏している部下からの報告書も来ていた。ミリュー王族への信頼は失墜し国を見捨て領地に戻った貴族が多いようだ。スザン王子は未だにリリアンを探しているようだが、未だに見つけてはいない。
「カミュール公爵の噂は、そろそろスザン王子の耳に入る頃か」
その話を聞いてスザン王子がどのような行動に出るか興味もあるが、ミリューでは小さな暴動があちらこちらで起こっているのでそれどころではないだろう。
ミリュー国王は焦って権威を取り戻そうとしているが、オーロラ商会が海外移転した話は新聞ですでに王都の人々も知るところだ。オーロラ商会を失って初めてその存在の大きさに気づいただろう。
スザン王子はレイシャル嬢にもリリアン嬢にも見捨てられた情けない王子と言う印象が強く残った。高額の持参金を持って嫁いでくれる婚約者を探しているようだが、誰もなりたがらないのが現実だ。
スザン王子と元側近たちは、王宮で監視され過ごしているようだ。国王はいずれスザン王子を廃嫡にする決断を迫られだろう。
報告書を読み終えると、そのまま暖炉の火で手紙が燃えるのを見つめていた。
「荷ほどきは必要ないな。指揮を執る為ウェスト王国に入るか」
ベッドに入ったキースだが、目が冴えているせいか眠ることができない。
「母がシェドを気に入るのも分かりますね。あの国にいると自分ですら普通の人間になれた気がしますからね」
シェドの国は大らかだ。どの国も暗い側面があるが、シェドではそれがないように見受けられる。王族にすらドロドロした部分がないのだ。
王妃も庶民の出だし、ミリタ王子がこれから結婚を望んでいるのも庶民の出であるジジだ。そしてウエン王子も高貴族だったレイシャル様ではあるが、今は平民となった女性を王妃に望んでいる。
他国では貴族を黙らせるにも大変なことだが、シェド王族への信頼の厚さが違うのだ。
シェドに入国して大型船が港に着いた時ウエン王子達を連れて視察に出たが、ウエン王子は上着を脱ぐと男達と一緒に積み荷を運び始めた。シェドの男達は驚くこともなく、それが普通なことの様にウエン王子に話しかけている。
各国の王族や貴族を見てきたがキースだったが流石に驚いて、ミリタ王子に『普段からこんな事をしているのか』と聞いたほどだ。
「ああ、私たちの母親は庶民の出だからな。子供の頃から徹底的に躾けられている。破れば尻叩き100回の刑だからな・・・」
「尻叩きって」
「何を言っているのです。優しい王妃様はそうは言っても10回ぐらいしか叩いたことがないでしょう。私が代わりましょうと提案しても、こればかりは自分の子供の教育だからと言って代わってくださいませんし」
「アンヌは100回が終わってもまだ続けそうだからな・・・」
「そんなことはありません。100回で十分満足します」
「・・・・・」
手伝いに向かったミリタ王子を追うように護衛達も手伝い始めた。私もアンヌに背中を押され、手伝う羽目になったが自分としては珍しく労働が楽しいと感じたのだ。
(育て方なんでしょうかね)
そんなことを思い出しているうちにキースはいつの間にか眠りにつくのだった。
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