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地獄のクラスルーム
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さて。現在、学校の休み時間。
私は悩んでいた……。
「どうかしたのか、マシロ」
前の席のセントが丸めた教科書で、頭を軽くポンとやってくる。
セントはいつもこうやって、私のノドにつっかえているものを軽々と吐き出させようとしてくれる。
昔からの付き合いって、ありがたいなあ。
「劇団に入ったこと、お母さんに言ったの」
「おお、何だって?」
「やるのは良いけど、成績が下がったら劇団は辞めなさいって言われた」
「はは。それは読み聞かせの時から言われていたことだな」
そうなのだ。
実は私は、勉強が苦手。
ボランティアをやっていた時も平均点ギリギリ。
成績を落としたら、ボランティは辞めなさいと言われていたのだ。
「マシロは好きなことしか熱中できないタイプだからなあ」
「うん……」
私はガタンッ、とイスからいきおいよく立ち上がって言った。
「お願い、テスト勉強……協力して!」
「マジ?」
「私が赤点とって劇団辞めることになったら、人数が減るでしょ。みんな困るでしょ。だから……助けてっ」
手を合わせて頼み込む私。
セントは眉尻を下げ、へらっと笑う。
「相変わらず、下手な頼み方だなあ」
私が一人ではどうにも出来ないことで困っている時、セントは必ず助けてくれるんだよね。
昔からちっとも変わらない。
「マシロが劇団を辞めることになったら、ウガツ先輩とハイド先輩にネチネチ言われるからな」
劇団の先輩、二人ともネチネチタイプって。
セントってば、今までよく一人で対応してたな。
「でも、苅安賀先輩に至っては、私が辞めることに関してそんなにネチネチ言わないでしょ。むしろ、下手な団員が辞めて好都合とか言いそう」
「いや。この前の魔法学校のエチュードで、苅安賀先輩はかなりお前のことを見直してたぞ。先輩の表情をよく見たらわかるよ」
なんなの。その難易度レベルマックスの間違い探しは。
「そうだ。テスト勉強、どうせならヒミツ基地でやらないか?」
「ええっ、いいのかな」
「こういうのも〝演技の練習〟になるだろ」
腹黒濃縮度百パーセントでニヤリと笑う、セント。
な、なんか……嫌な予感がするのは、気のせい?
「でも、セント。美術部の方はいいの?」
「大丈夫。部長には言ってあるし」
何を、と思ったけれど止めておいた。
今は、劇団ヒミツ基地の方に専念してくれるような理由があるということかな。
「俺のほうからウガツ先輩に言っておくからさ。放課後はヒミツ基地でテスト勉強! いいよな」
「わかった! ありがと、セント」
とりあえず今は、自分のテスト勉強の方に集中しよう。
放課後の部活時間、私はセントとテスト勉強をするために、劇団ヒミツ基地の演劇小屋にやってきた。
稽古部屋に入ると、すでに先輩たちは柔軟を始めていた。
セントが「おはようございます」と言ったので、私もそれにならった。
先輩たちもそれぞれに「おはようございます」と返してくれる。
この挨拶の仕方、さっきセントが教えてくれたんだ。
「昼でも夜でも〝おはようございます〟。これは、演劇や映像の現場では当たり前の挨拶の仕方なんだ。〝早くからの稽古でお疲れさまです〟というねぎらいの言葉として使われるようになったらしい」
そう言われると「~ございます」っていう丁寧っぽい挨拶って、「おはようございます」
だけだよね。
なんだか、業界人になった気分!
「さて。鳥塚くんから聞いたよ。沈丁花くんはあまり学校の成績が良くないらしいね」
「うッ……は、はい」
セントのやつ、テスト勉強を手伝ってとは言ったけれど!
成績のことを先輩たちにバラす必要はないじゃん!
「そんなワケで、さっそく練習メニューを組んだよ」
「えっ、先輩が?」
まさか、ウガツ先輩もテスト勉強に付き合ってくれるの?
と、いうか……練習メニューって一体?
「エチュードをやりながら、〝滑舌の練習〟も出来る。一石二鳥のお得メニューさ!」
待って。
一体、なんの話ッ?
……ハッ! まさか。
セントが言っていた〝演技の練習〟って、これのことっ?
「それじゃあ、始めよう。お題は『中学一年の社会科の授業風景』ってとこかな」
ウガツ先輩の提案に、苅安賀先輩が「オーケー」と頷く。
私と視線があうと、フッと悪魔の笑みを浮かべる苅安賀先輩。
「そうだな。腹筋トレーニングとパントマイムの練習も取り入れよう」
「はっ?」
思わず、すっとんきょうな声をあげてしまう私。
「授業風景ということは、生徒は着席していなければならない。しかし今回は小道具……つまり、イスと机は使わずに演技をしよう」
「えーっと。それって、つまり」
「エチュード中は腹筋を鍛えるために終始、空気イスをする」
冗談でしょ!
苅安賀先輩、鬼すぎる!
もう、私をいじめるために提案してるよね、コレ!
しかし、私の心境に反して、ウガツ先輩は目を輝かせている。
「素晴らしいアイデアだ、ハイド! 沈丁花くんはこのエチュードで、かなりスキルアップできそうだな!」
ウガツ先輩、違います。
この苅安賀ハイドって人は、ただ単にいじわるを言っているだけなんですよー!
「腹筋、シックスパックになれるといいな。一年生」
悪魔の微笑みを浮かべる、苅安賀先輩。
ほらね、やっぱり。
……不安だ。
今日のエチュードは、前の魔法学校の時と違って、色んなことをいっぺんにやろうとしている。
演技に滑舌練習、そしてパントマイム。
体育の成績、三! 運動センス皆無!
……そんな素人の私に、いきなりレベル高過ぎだよ!
でも……これは、テストのため。
やるしか……ない!
「沈丁花くん。そろそろエチュードを始めようか」
「はい。ウガツせんぱ……」
顔を上げると……。
そこにはすでにイスに座るパントマイム———もとい、空気イスをしているウガツ先輩と苅安賀先輩が!
(ええええ、これって……!)
二人とも、すごい!
足も腰も、ピクリとも震えてない!
しかもウガツ先輩は、教科書を読んでいるパントマイム、苅安賀先輩は頬杖をついているパントマイムが、完璧!
本当に、二人の前に机があるように見える。
「あんなふうにはとてもできないよ……」
「マシロ、大丈夫だ」
セントがそっと、耳打ちしてくれる。
「テストのために〝先輩たちを利用してやる〟。そう考えるんだ」
そうだよね。
これは私のテスト勉強のために組んでもらった特別メニュー。
今は、自分の成長のことだけ考えよう。
そのために、私はこの劇団に入ったんじゃないか。
「あ……いいこと思いついたっ」
今から私は、絵本『鬼ガール』に出てくる主人公・オニコなりきろう。
地獄学校に通う、オニコが地獄ならではのスパルタ教育に四苦八苦するお話。
授業中の居眠りは、チョークじゃなくて金棒が飛んでくるし、体育は針山でやっちゃう地獄っぷり。
でもオニコにとっては、そんなものは日常茶飯事!
体育のあとは、みんなで地獄のマグマ風呂に入って一服。
厳しいこともあるけれど、その二倍も三倍も楽しいことはあるんだ。
なかなか気づけない大切なことをユーモラスに教えてくれる、大好きな絵本!
よーし。先輩たちなんか、気にしないぞ。
今できる精一杯をやってやる!
さっそく私は腰を落とし、初めてのパントマイムを試みる。
自分の席に座って、授業を受けている自分をイメージ。
その体制をじっとキープ……!
してみたものの……やっぱり、キツい~~~!
足はプルプル震えるし、腰はガクガク。
こんな状態でさらに演技に滑舌練習までやるなんて、私には……無理だっ。
「しっかりやろうとするな」
「へっ」
苅安賀先輩が、後ろから声をかけてきた。
空気イスの姿勢を一切崩さずに。
「初日から空気イスなんかやり続けたら、腰を悪くする。初心者は最高で三十秒その状態をキープできればいい。休憩しつつ、それを三セット。エチュード内でそれができたら、十分だ」
「は、はい……」
何だろう。苅安賀先輩が優しい。
「ハイドは、演劇に関してのアドバイスは惜しまないのさ。それと同じくらい、厳しいことも言うけどね」
ウガツ先輩が笑いながら言うと、苅安賀先輩は「チッ」と舌打ちをした。
「余計なことを言うな、ルイ」
「まさか。良いことを言ったの間違いじゃないか、ハイド」
でも、苅安賀先輩のアドバイスは正直助かった。無理せず、やればいいんだ!
よーし。がんばるぞ!
「じゃあ、鳥塚くん。君が配役を決めてくれないか?」
ウガツ先輩が言った。
私……何役になるんだろう?
こんな状況だし、難しい役にだけはなりたくないよー!
「はい。それじゃあ……」
セントは少し考えてから、みんなの配役を指示していく。
「ハイド先輩が熱血教師役、ウガツ先輩はクールな生徒役、マシロは……素直でひかえめな性格の生徒役を演じてくれ」
「素直でひかえめな性格っ?」
足をガクガクさせながら叫ぶ。
どちらかというと、自分は素直と言うよりはちょっとひねくれているし、ひかえめというよりはまっすぐに突っ走るほうだ。
「私とは正反対の性格だよ! どうやって演じればいいのっ?」
すると、横からウガツ先輩が言った。
「沈丁花くん。今まで、周りにそんな性格の子はいなかったかい」
「えっと、同じクラスの桜木さんはひかえめな性格です。でも、素直って言うよりかは上品な感じかなあ。いつも図書館の読み聞かせに来てくれるユウリちゃんは、素直な性格だけど、ちょっとわがままで自由奔放なんですよね。あっ、そうだ。図書館司書の森上さん! 素直で、落ち着きがあってひかえめな人です」
ウガツ先輩はそれを聞いて、「うんうん」とうなずいた。
「いいね。沈丁花くん。さすがだよ」
満足そうに微笑むウガツ先輩。
「あ、ありがとうございます……!」
周りの人の性格を言っただけなのに、そんなに褒めてもらえるなんて。
「〝それ〟は演じる者にとって、もっとも大切なもの。これからも大切にしてくれたまえ」
「えっ、何のことですか?」
しかし、セントのパンパンと言う手を叩く音で、続きを聞くことはできなかった。
「はいはい。それじゃあ、始めましょう」
「オーケー。鳥塚くんはこのエチュードを後から見返せるように、動画撮影にいそしんでくれたまえ」
へっ……このエチュード、録画するの?
見ると、セントがスマホをこちらに向けて構えている。
「ま、マジ……」
自分の未熟なところを撮られる恥ずかしさにより放心状態の私を置き去りに、セントはスマホの画面越しに言った。
「それでは、エチュード開始!」
エチュード開始から、約十秒。
まだまだ始まったばかりにも関わらず、私はすでに限界点に到達していた。
パントマイムと言う名の空気イス。
しんどい。辛い。足プルプル。
しかも、動画撮影しているセントのスマホが気になって仕方ない!
私、変な顔してないよねっ?
その時、スッと苅安賀先輩が空気イスから立ち上がる。
ちょっとお! 自分はちゃっかり地獄のパントマイムから逃亡ですか!
「よーし、お前ら。授業はじめるぞ」
そうか、苅安賀先輩は教師役なんだっけ。
魔法学校エチュードの時とは違った、ゆったりとした大人って感じの口調。
どっしりとした演技だ。
教科書を開き、チョークで黒板に文字を書くパントマイム。
すべて、道具がそこにあるみたいに見えてくる。
わかっていたけれど、やっぱり思う。
ウガツ先輩だけじゃない。
苅安賀先輩も……すごい!
「それじゃあ、沈丁花! まずは『世界の気候』の授業だ。行くぞ」
「は、はいっ?」
びっくりした。苅安賀先輩に初めて名前を呼ばれた。
エチュード内とは言え、ドキッとしてしまった。
戸惑う私に、苅安賀先輩はニヤッと笑う。
「〝熱帯、温帯、乾燥帯、短い夏の亜寒帯、雪と氷の寒帯は降水量もごくわずか〟。さあ、ここテストに出るぞ~」
ななな、何なの今の。
まるでマシンガンみたいな、とてつもない早口!
滑らかな滑舌だったから、なんて言ったのかはわかったけどさ。
もしかしてこれ……滑舌の練習?
「では、沈丁花。言ってみろ」
「え!」
「噛まずに、先生と同じくらいのスピードで」
やっぱり!
口調は穏やかなのに、言ってる内容はいつもの苅安賀先輩だ!
「……えっと、ねっ熱帯、温帯、かんそお帯、短い夏のあっかん帯、雪と氷のあんたいはこお水ろおもごくわずか」
「ううーん、全然だめだな」
苅安賀先輩はバカにしたような、したり顔!
悔しさに、顔をしかめる私。
「沈丁花。口をはっきり動かすことが、滑舌がよくなる第一歩だ。がんばれ」
今度は、ウガツ先輩に初めて呼び捨てにされた。
先輩方、エチュード内での役の人柄をこの一瞬で分析してるんだ。すごい。
私は、素直でひかえめな性格の生徒役だけど……。
先輩たちとは同級生役だから、普段のような敬語じゃおかしいよね。
やりづらいけど、ここは舞台だ。
演じなきゃ!
「も、もっと滑舌がよくなりたいんだけど、どうしたらいいかな」
「そうだな。巻き舌ってできる?」
「やったことある、けど……」
「じゃあ、これやってみて」
すると、ウガツ先輩は口を閉じた状態で「ドゥルルルル」と唇を振動させた。
「これで、滑舌がよくなるの?」
「うん。リップロールっていう、ボイストレーニングのひとつだよ。一時的なものだけど、多少効果はある。それに、リラックス効果もあるんだ。発声はリラックスすることがなにより大切。まずは一分を目指して、やってみよう」
「うん、わかった」
ウガツ先輩みたいに、唇を「ドゥルルル……」と震わせてみる。
しかし、十秒ほどでリップロールが途切れてしまう。
これを一分は、キツい!
仕方がないので、十秒くらいのを何回か続けた。
「さて。授業の続き、始めるぞ」
熱血教師役の苅安賀先輩が、エアー机をバンッと叩く仕草をする。
次の早口言葉がくる!
リップロールもやったし、ちょっとは成果が出ているといいけど……。
「では、続いて歴史の問題だ。〝打製から進化、磨製へ変化。縄文の発達、より活発〟。さあ、言ってみろ!」
よ……よおし、やってやる!
「だ、打製から進化、磨製へ変化っ。じょーもんの発達、より活発っ!」
「おお。つっかえずに言えたな。おぼつかないが」
熱血苅安賀先生が、褒めてくれる。
素直に、嬉しい!
リップロールの効果、あったんだ!
「それじゃあ、次だ」
「ひえっ? まだあるんですかっ」
「何言ってるんだ。これはテスト勉強前提のエチュードだぞ。沈丁花がカンペキに百点をとれる自信があるなら、エチュードを終了してもいいが?」
「うっ」
そうだ。今は、テスト勉強の真っ最中。
苅安賀先生がビシッと、チョークを私に向ける。
「次は、理科の問題だっ。〝花弁が合体・合弁花、一枚一枚離れた離弁花。アサガオ合弁、離弁はアブラナ。被子の胚珠は子房へイン、種子植物は種子作る〟。さあ、噛まずに言うんだ」
「すみません……。い、今……何て言ったんですか? 覚えられなかったです……」
「全く……しっかりしろ。一年生」
ちょっとお。
今の、熱血教師役じゃなくて苅安賀先輩だったでしょ。
「リップロールを百回やれば、思い出すかもな」
「その前に、くちびるがタラコになりますよ!」
口をタコみたいに尖らせる私に、ウガツ先輩とセントが吹き出した。
「アッハッハ。鳥塚くん、ちょっと中断して、休憩にしようか」
「フハハ、そうですねえ」
二人は和やかムードだけど、私は苅安賀先輩に対して絶賛威嚇モード。
くそう。
いつか苅安賀先輩よりもきれいな滑舌で、早口言葉を言えるようになってやる~!
私は悩んでいた……。
「どうかしたのか、マシロ」
前の席のセントが丸めた教科書で、頭を軽くポンとやってくる。
セントはいつもこうやって、私のノドにつっかえているものを軽々と吐き出させようとしてくれる。
昔からの付き合いって、ありがたいなあ。
「劇団に入ったこと、お母さんに言ったの」
「おお、何だって?」
「やるのは良いけど、成績が下がったら劇団は辞めなさいって言われた」
「はは。それは読み聞かせの時から言われていたことだな」
そうなのだ。
実は私は、勉強が苦手。
ボランティアをやっていた時も平均点ギリギリ。
成績を落としたら、ボランティは辞めなさいと言われていたのだ。
「マシロは好きなことしか熱中できないタイプだからなあ」
「うん……」
私はガタンッ、とイスからいきおいよく立ち上がって言った。
「お願い、テスト勉強……協力して!」
「マジ?」
「私が赤点とって劇団辞めることになったら、人数が減るでしょ。みんな困るでしょ。だから……助けてっ」
手を合わせて頼み込む私。
セントは眉尻を下げ、へらっと笑う。
「相変わらず、下手な頼み方だなあ」
私が一人ではどうにも出来ないことで困っている時、セントは必ず助けてくれるんだよね。
昔からちっとも変わらない。
「マシロが劇団を辞めることになったら、ウガツ先輩とハイド先輩にネチネチ言われるからな」
劇団の先輩、二人ともネチネチタイプって。
セントってば、今までよく一人で対応してたな。
「でも、苅安賀先輩に至っては、私が辞めることに関してそんなにネチネチ言わないでしょ。むしろ、下手な団員が辞めて好都合とか言いそう」
「いや。この前の魔法学校のエチュードで、苅安賀先輩はかなりお前のことを見直してたぞ。先輩の表情をよく見たらわかるよ」
なんなの。その難易度レベルマックスの間違い探しは。
「そうだ。テスト勉強、どうせならヒミツ基地でやらないか?」
「ええっ、いいのかな」
「こういうのも〝演技の練習〟になるだろ」
腹黒濃縮度百パーセントでニヤリと笑う、セント。
な、なんか……嫌な予感がするのは、気のせい?
「でも、セント。美術部の方はいいの?」
「大丈夫。部長には言ってあるし」
何を、と思ったけれど止めておいた。
今は、劇団ヒミツ基地の方に専念してくれるような理由があるということかな。
「俺のほうからウガツ先輩に言っておくからさ。放課後はヒミツ基地でテスト勉強! いいよな」
「わかった! ありがと、セント」
とりあえず今は、自分のテスト勉強の方に集中しよう。
放課後の部活時間、私はセントとテスト勉強をするために、劇団ヒミツ基地の演劇小屋にやってきた。
稽古部屋に入ると、すでに先輩たちは柔軟を始めていた。
セントが「おはようございます」と言ったので、私もそれにならった。
先輩たちもそれぞれに「おはようございます」と返してくれる。
この挨拶の仕方、さっきセントが教えてくれたんだ。
「昼でも夜でも〝おはようございます〟。これは、演劇や映像の現場では当たり前の挨拶の仕方なんだ。〝早くからの稽古でお疲れさまです〟というねぎらいの言葉として使われるようになったらしい」
そう言われると「~ございます」っていう丁寧っぽい挨拶って、「おはようございます」
だけだよね。
なんだか、業界人になった気分!
「さて。鳥塚くんから聞いたよ。沈丁花くんはあまり学校の成績が良くないらしいね」
「うッ……は、はい」
セントのやつ、テスト勉強を手伝ってとは言ったけれど!
成績のことを先輩たちにバラす必要はないじゃん!
「そんなワケで、さっそく練習メニューを組んだよ」
「えっ、先輩が?」
まさか、ウガツ先輩もテスト勉強に付き合ってくれるの?
と、いうか……練習メニューって一体?
「エチュードをやりながら、〝滑舌の練習〟も出来る。一石二鳥のお得メニューさ!」
待って。
一体、なんの話ッ?
……ハッ! まさか。
セントが言っていた〝演技の練習〟って、これのことっ?
「それじゃあ、始めよう。お題は『中学一年の社会科の授業風景』ってとこかな」
ウガツ先輩の提案に、苅安賀先輩が「オーケー」と頷く。
私と視線があうと、フッと悪魔の笑みを浮かべる苅安賀先輩。
「そうだな。腹筋トレーニングとパントマイムの練習も取り入れよう」
「はっ?」
思わず、すっとんきょうな声をあげてしまう私。
「授業風景ということは、生徒は着席していなければならない。しかし今回は小道具……つまり、イスと机は使わずに演技をしよう」
「えーっと。それって、つまり」
「エチュード中は腹筋を鍛えるために終始、空気イスをする」
冗談でしょ!
苅安賀先輩、鬼すぎる!
もう、私をいじめるために提案してるよね、コレ!
しかし、私の心境に反して、ウガツ先輩は目を輝かせている。
「素晴らしいアイデアだ、ハイド! 沈丁花くんはこのエチュードで、かなりスキルアップできそうだな!」
ウガツ先輩、違います。
この苅安賀ハイドって人は、ただ単にいじわるを言っているだけなんですよー!
「腹筋、シックスパックになれるといいな。一年生」
悪魔の微笑みを浮かべる、苅安賀先輩。
ほらね、やっぱり。
……不安だ。
今日のエチュードは、前の魔法学校の時と違って、色んなことをいっぺんにやろうとしている。
演技に滑舌練習、そしてパントマイム。
体育の成績、三! 運動センス皆無!
……そんな素人の私に、いきなりレベル高過ぎだよ!
でも……これは、テストのため。
やるしか……ない!
「沈丁花くん。そろそろエチュードを始めようか」
「はい。ウガツせんぱ……」
顔を上げると……。
そこにはすでにイスに座るパントマイム———もとい、空気イスをしているウガツ先輩と苅安賀先輩が!
(ええええ、これって……!)
二人とも、すごい!
足も腰も、ピクリとも震えてない!
しかもウガツ先輩は、教科書を読んでいるパントマイム、苅安賀先輩は頬杖をついているパントマイムが、完璧!
本当に、二人の前に机があるように見える。
「あんなふうにはとてもできないよ……」
「マシロ、大丈夫だ」
セントがそっと、耳打ちしてくれる。
「テストのために〝先輩たちを利用してやる〟。そう考えるんだ」
そうだよね。
これは私のテスト勉強のために組んでもらった特別メニュー。
今は、自分の成長のことだけ考えよう。
そのために、私はこの劇団に入ったんじゃないか。
「あ……いいこと思いついたっ」
今から私は、絵本『鬼ガール』に出てくる主人公・オニコなりきろう。
地獄学校に通う、オニコが地獄ならではのスパルタ教育に四苦八苦するお話。
授業中の居眠りは、チョークじゃなくて金棒が飛んでくるし、体育は針山でやっちゃう地獄っぷり。
でもオニコにとっては、そんなものは日常茶飯事!
体育のあとは、みんなで地獄のマグマ風呂に入って一服。
厳しいこともあるけれど、その二倍も三倍も楽しいことはあるんだ。
なかなか気づけない大切なことをユーモラスに教えてくれる、大好きな絵本!
よーし。先輩たちなんか、気にしないぞ。
今できる精一杯をやってやる!
さっそく私は腰を落とし、初めてのパントマイムを試みる。
自分の席に座って、授業を受けている自分をイメージ。
その体制をじっとキープ……!
してみたものの……やっぱり、キツい~~~!
足はプルプル震えるし、腰はガクガク。
こんな状態でさらに演技に滑舌練習までやるなんて、私には……無理だっ。
「しっかりやろうとするな」
「へっ」
苅安賀先輩が、後ろから声をかけてきた。
空気イスの姿勢を一切崩さずに。
「初日から空気イスなんかやり続けたら、腰を悪くする。初心者は最高で三十秒その状態をキープできればいい。休憩しつつ、それを三セット。エチュード内でそれができたら、十分だ」
「は、はい……」
何だろう。苅安賀先輩が優しい。
「ハイドは、演劇に関してのアドバイスは惜しまないのさ。それと同じくらい、厳しいことも言うけどね」
ウガツ先輩が笑いながら言うと、苅安賀先輩は「チッ」と舌打ちをした。
「余計なことを言うな、ルイ」
「まさか。良いことを言ったの間違いじゃないか、ハイド」
でも、苅安賀先輩のアドバイスは正直助かった。無理せず、やればいいんだ!
よーし。がんばるぞ!
「じゃあ、鳥塚くん。君が配役を決めてくれないか?」
ウガツ先輩が言った。
私……何役になるんだろう?
こんな状況だし、難しい役にだけはなりたくないよー!
「はい。それじゃあ……」
セントは少し考えてから、みんなの配役を指示していく。
「ハイド先輩が熱血教師役、ウガツ先輩はクールな生徒役、マシロは……素直でひかえめな性格の生徒役を演じてくれ」
「素直でひかえめな性格っ?」
足をガクガクさせながら叫ぶ。
どちらかというと、自分は素直と言うよりはちょっとひねくれているし、ひかえめというよりはまっすぐに突っ走るほうだ。
「私とは正反対の性格だよ! どうやって演じればいいのっ?」
すると、横からウガツ先輩が言った。
「沈丁花くん。今まで、周りにそんな性格の子はいなかったかい」
「えっと、同じクラスの桜木さんはひかえめな性格です。でも、素直って言うよりかは上品な感じかなあ。いつも図書館の読み聞かせに来てくれるユウリちゃんは、素直な性格だけど、ちょっとわがままで自由奔放なんですよね。あっ、そうだ。図書館司書の森上さん! 素直で、落ち着きがあってひかえめな人です」
ウガツ先輩はそれを聞いて、「うんうん」とうなずいた。
「いいね。沈丁花くん。さすがだよ」
満足そうに微笑むウガツ先輩。
「あ、ありがとうございます……!」
周りの人の性格を言っただけなのに、そんなに褒めてもらえるなんて。
「〝それ〟は演じる者にとって、もっとも大切なもの。これからも大切にしてくれたまえ」
「えっ、何のことですか?」
しかし、セントのパンパンと言う手を叩く音で、続きを聞くことはできなかった。
「はいはい。それじゃあ、始めましょう」
「オーケー。鳥塚くんはこのエチュードを後から見返せるように、動画撮影にいそしんでくれたまえ」
へっ……このエチュード、録画するの?
見ると、セントがスマホをこちらに向けて構えている。
「ま、マジ……」
自分の未熟なところを撮られる恥ずかしさにより放心状態の私を置き去りに、セントはスマホの画面越しに言った。
「それでは、エチュード開始!」
エチュード開始から、約十秒。
まだまだ始まったばかりにも関わらず、私はすでに限界点に到達していた。
パントマイムと言う名の空気イス。
しんどい。辛い。足プルプル。
しかも、動画撮影しているセントのスマホが気になって仕方ない!
私、変な顔してないよねっ?
その時、スッと苅安賀先輩が空気イスから立ち上がる。
ちょっとお! 自分はちゃっかり地獄のパントマイムから逃亡ですか!
「よーし、お前ら。授業はじめるぞ」
そうか、苅安賀先輩は教師役なんだっけ。
魔法学校エチュードの時とは違った、ゆったりとした大人って感じの口調。
どっしりとした演技だ。
教科書を開き、チョークで黒板に文字を書くパントマイム。
すべて、道具がそこにあるみたいに見えてくる。
わかっていたけれど、やっぱり思う。
ウガツ先輩だけじゃない。
苅安賀先輩も……すごい!
「それじゃあ、沈丁花! まずは『世界の気候』の授業だ。行くぞ」
「は、はいっ?」
びっくりした。苅安賀先輩に初めて名前を呼ばれた。
エチュード内とは言え、ドキッとしてしまった。
戸惑う私に、苅安賀先輩はニヤッと笑う。
「〝熱帯、温帯、乾燥帯、短い夏の亜寒帯、雪と氷の寒帯は降水量もごくわずか〟。さあ、ここテストに出るぞ~」
ななな、何なの今の。
まるでマシンガンみたいな、とてつもない早口!
滑らかな滑舌だったから、なんて言ったのかはわかったけどさ。
もしかしてこれ……滑舌の練習?
「では、沈丁花。言ってみろ」
「え!」
「噛まずに、先生と同じくらいのスピードで」
やっぱり!
口調は穏やかなのに、言ってる内容はいつもの苅安賀先輩だ!
「……えっと、ねっ熱帯、温帯、かんそお帯、短い夏のあっかん帯、雪と氷のあんたいはこお水ろおもごくわずか」
「ううーん、全然だめだな」
苅安賀先輩はバカにしたような、したり顔!
悔しさに、顔をしかめる私。
「沈丁花。口をはっきり動かすことが、滑舌がよくなる第一歩だ。がんばれ」
今度は、ウガツ先輩に初めて呼び捨てにされた。
先輩方、エチュード内での役の人柄をこの一瞬で分析してるんだ。すごい。
私は、素直でひかえめな性格の生徒役だけど……。
先輩たちとは同級生役だから、普段のような敬語じゃおかしいよね。
やりづらいけど、ここは舞台だ。
演じなきゃ!
「も、もっと滑舌がよくなりたいんだけど、どうしたらいいかな」
「そうだな。巻き舌ってできる?」
「やったことある、けど……」
「じゃあ、これやってみて」
すると、ウガツ先輩は口を閉じた状態で「ドゥルルルル」と唇を振動させた。
「これで、滑舌がよくなるの?」
「うん。リップロールっていう、ボイストレーニングのひとつだよ。一時的なものだけど、多少効果はある。それに、リラックス効果もあるんだ。発声はリラックスすることがなにより大切。まずは一分を目指して、やってみよう」
「うん、わかった」
ウガツ先輩みたいに、唇を「ドゥルルル……」と震わせてみる。
しかし、十秒ほどでリップロールが途切れてしまう。
これを一分は、キツい!
仕方がないので、十秒くらいのを何回か続けた。
「さて。授業の続き、始めるぞ」
熱血教師役の苅安賀先輩が、エアー机をバンッと叩く仕草をする。
次の早口言葉がくる!
リップロールもやったし、ちょっとは成果が出ているといいけど……。
「では、続いて歴史の問題だ。〝打製から進化、磨製へ変化。縄文の発達、より活発〟。さあ、言ってみろ!」
よ……よおし、やってやる!
「だ、打製から進化、磨製へ変化っ。じょーもんの発達、より活発っ!」
「おお。つっかえずに言えたな。おぼつかないが」
熱血苅安賀先生が、褒めてくれる。
素直に、嬉しい!
リップロールの効果、あったんだ!
「それじゃあ、次だ」
「ひえっ? まだあるんですかっ」
「何言ってるんだ。これはテスト勉強前提のエチュードだぞ。沈丁花がカンペキに百点をとれる自信があるなら、エチュードを終了してもいいが?」
「うっ」
そうだ。今は、テスト勉強の真っ最中。
苅安賀先生がビシッと、チョークを私に向ける。
「次は、理科の問題だっ。〝花弁が合体・合弁花、一枚一枚離れた離弁花。アサガオ合弁、離弁はアブラナ。被子の胚珠は子房へイン、種子植物は種子作る〟。さあ、噛まずに言うんだ」
「すみません……。い、今……何て言ったんですか? 覚えられなかったです……」
「全く……しっかりしろ。一年生」
ちょっとお。
今の、熱血教師役じゃなくて苅安賀先輩だったでしょ。
「リップロールを百回やれば、思い出すかもな」
「その前に、くちびるがタラコになりますよ!」
口をタコみたいに尖らせる私に、ウガツ先輩とセントが吹き出した。
「アッハッハ。鳥塚くん、ちょっと中断して、休憩にしようか」
「フハハ、そうですねえ」
二人は和やかムードだけど、私は苅安賀先輩に対して絶賛威嚇モード。
くそう。
いつか苅安賀先輩よりもきれいな滑舌で、早口言葉を言えるようになってやる~!
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