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5-14 ハッピー・ライフ・ゴースト
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その声に、ハッと気づく。
母親の姿が、なかった。
どこを探してもいない。
テーブルに並んだハンバーグオムライスからは、まだあたたかそうなゆげがのぼっている。
そこには、ケチャップでこう書かれていた。
——〝ゲンキデイテネ〟。
冷蔵庫を開けるといつのまに作ったのか、作り置きのおかずがタッパーに入れられ、きれいに並んでいた。
冷蔵庫のドアポケットに入っているオレンジジュースにもメモが貼られている。
——‶飲むなら、百パーセントにしてね〟。
「そんな……お母さん! お母さん! いや! ユメジまでいなくなったの! ユメジがいなくなって……ハニービーに出会って、ようやく立ち直ってきたところだったのに、こんなの……こんなのないよ! またいなくなるくらいなら、出てこないでよ……こんなもの見せないでよ————ッッ!」
「いただきまーす」
そこに現れたのは、ハニービーじゃない……モノクロのバクだ。
モノクロバクは大きな口を開けて、悪夢にむさぼりついた。
——バクッ
「うーん。ヤミ~!」
バクバクと食べられていく悪夢を、私はただ黙って見上げていた。
「ううっ……ううう……」
気づくと、まだ涙が止まらない私の背中を、誰かがさすってくれている。
モノクロバクのパートナーらしき女の子だ。
黒髪ロングのパッツンヘア。
あれ、この子。どこかで会ったことのあるような……。
「おい、お前!」
母親の姿が、なかった。
どこを探してもいない。
テーブルに並んだハンバーグオムライスからは、まだあたたかそうなゆげがのぼっている。
そこには、ケチャップでこう書かれていた。
——〝ゲンキデイテネ〟。
冷蔵庫を開けるといつのまに作ったのか、作り置きのおかずがタッパーに入れられ、きれいに並んでいた。
冷蔵庫のドアポケットに入っているオレンジジュースにもメモが貼られている。
——‶飲むなら、百パーセントにしてね〟。
「そんな……お母さん! お母さん! いや! ユメジまでいなくなったの! ユメジがいなくなって……ハニービーに出会って、ようやく立ち直ってきたところだったのに、こんなの……こんなのないよ! またいなくなるくらいなら、出てこないでよ……こんなもの見せないでよ————ッッ!」
「いただきまーす」
そこに現れたのは、ハニービーじゃない……モノクロのバクだ。
モノクロバクは大きな口を開けて、悪夢にむさぼりついた。
——バクッ
「うーん。ヤミ~!」
バクバクと食べられていく悪夢を、私はただ黙って見上げていた。
「ううっ……ううう……」
気づくと、まだ涙が止まらない私の背中を、誰かがさすってくれている。
モノクロバクのパートナーらしき女の子だ。
黒髪ロングのパッツンヘア。
あれ、この子。どこかで会ったことのあるような……。
「おい、お前!」
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