Doubts beget doubts

朔月

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地震雷火事おやじ

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 最近、俺が住んでいる地域では地震が多くなってきた。
あまりに頻繁に揺れるものだから、地域一帯の学校が一時休校という形をとっていた。
もちろん、俺のテンションは上がっていた。
何しろ、遊び放題だからな。
自宅学習なんてしてられるか。
今日は、今から彼女と街に遊びに行く予定だ。
さて、そろそろ出発するか。

ーーーーーーーーーーーーーー

待ち合わせ場所に着くと、そこには既に彼女がいた。

「ごめん待ったか?」

「ううん、待ってないよ~。いこっ」

今日はあいにくの雨だったが、そんなものは彼女を見た瞬間に吹き飛んだ。
俺達は相合傘をしながらショッピングモールへと向かった。
しばらく歩くと、雨が激しくなってきた。

「大丈夫?濡れてない?」

俺は彼女に聞いた。

「濡れてないよ。そっちこそ肩びしょ濡れじゃん!そんなに気を使わなくてもいいんだよ?」

そんな調子で話していたら、突然後ろから声がした。

「びしょ濡れになっても傘はさすな」

びっくりして俺は振り向いたが、そこには誰もいなかった。
しかし、確かに声は聞こえたし、どこかで聞いたことのあるような声だった。
不吉な予感がしたし雨も土砂降りだったので、近くのカフェに入って少し雨宿りすることにした。

「それにしても、すげぇ雨だな」

俺は外を眺めながら言った。

「そうだねぇ~」

彼女がそう言った刹那、雷光が瞬き、雷鳴が轟いた。
外を眺めていた俺は即座に異変に気付いた。
さっきまでそこで相合傘しながら歩いていたカップルが、焼け焦げている。
思わず目を逸らし、もう一度見る。
やはり、焼けている。
異変に気付いた人が電話をしたらしく、すぐに救急車が来て搬送されていった。
雷は周辺数ヶ所にも落ちたようだ。
あの時カフェに入っていなかったらどうなっていたことだろうか。
とりあえずその日は何か危険な予感がしたので、デートはまた今度となった。

ーーーーーーーーーーーーーー

それにしてもあの声は何だったのだろう。
気になりすぎて数学の問題集なんか手につかない。
ただずーっと同じページを見つめている。

「地震に雷か…」

これはもしかして地震雷火事親父の順番に災いが起きるということなのか?
だとしたら次は火事か。
まあ、そんなことはないはずだ。
ただの偶然に決まっている。

「デートは明後日にしろ」

突然、またあの声が後ろから聞こえた。
振り返ってみたが、案の定誰もいなかった。
前はあの声に助けられたが、きっとただの偶然だ。
もし、災いを啓示してくれる声だったら虫がよすぎる。
それに、そんな些細なことでデートの日を決めたりなんかしたくない。
だから、俺はデートの日程を4日後に設定した。

2日後、彼女は死んだ。

家の火事で。

声の啓示は正しかった。
あの時、俺がデートを明後日、つまり2日後に設定していたら彼女は火事に巻き込まれることはなかった。
そして、今も俺の隣にいたはず…。
後悔しても、もう遅い。
次に降りかかる災いを避けなければ。
次は親父?いやでも元の由来は大風おおやじとか大山風おおやまじって聞いたことがあるぞ…。
確か台風のような意味だったよな。
天気予報を見てみるか。
スマホの画面に写ったのは晴れマークのみだった。
これで確定した。
次は、親父…。
親父が何かするっていうのか?
嘘だろ…。

「親父に近づくな」

あの声が聞こえた。
何を言ってるんだ?
俺が親父のもたらす災いを避けたら、他の人に降りかかるかもしれないんだぞ!?
それを分かってて、何もするなと…。
ふざけるな。
俺はこの手で運命を変えてやる。

ーーーーーーーーーーーーーー

『今朝未明、○○県の○○山の中腹で白骨化した死体が発見されました』

俺がそのニュースを見たのは、学校を卒業してからの話だった。
警察が証拠を見つけて、俺を逮捕しにきた。
俺は自分の手首にかけられた銀色の輪を眺めながら思った。
地震雷火事親父の「おやじ」は、「親父」ではなく「親死」だったのではないかと。
俺に親父を殺させないために、あの声は警告したのだ。
いつか、タイムマシンが出来たなら俺はあの時の自分に忠告しに行くだろう。



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みんなの感想(1件)

彪
2016.09.18
ネタバレ含む
朔月
2016.09.18 朔月

その通りです

解除

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