落ちろと願った悪役がいなくなった後の世界で

黄金 

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神様のいいように

109 死の国

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 トステニロスが出かけてはや数週間。
 書類仕事は使えないと言われて雑用と結界維持を担当しながらテトゥーミは花守主の屋敷にやって来た。
 今日もノーザレイの身体に開いた穴を確認しに来たのだ。
 テトゥーミはあまり仕事は出来ないが神聖力は多かった。使い方がわからないというより使い方を覚えきれなかっただけなのだが、唯一得意な結界はテトゥーミの仕事になっている。
 天空白露全体を覆う結界は聖王陛下ロアートシュエの仕事だが、その他の細々としたものは全てテトゥーミがやっていた。
 一度結界を作ればあとは維持に努めるだけなので、神聖力が豊富なテトゥーミにでも出来ている。
 透金英の枯れ木を抜けて、テトゥーミはノーザレイを埋めている結界の所まで来た。
 結界はちゃんと動いている。
 地面にはクオラジュが書いた結界補強の術式が緻密に書かれていて、ノーザレイを埋めた場所を中心に円を描いていた。
 神聖力を流して今日の任務は終了だ!まだ陽は高いがテトゥーミにはやり切った感があった。
 この後ツビィロラン様をお見舞いに行こうと思う。最近背中が痛むと起き上がれなくなって来ていた。
 おかげでクオラジュ殿の機嫌が悪い…。怖くて近寄れない。これで平気なのは聖王陛下と神聖軍主だけだと思う。後はトステニロスがいたらトステニロスだけかなぁと惚れた弱みでトステニロスを持ち上げた。

 ふんふんと歌を歌いながらまた透金英の枯れ木を抜けていると、後ろでパキンと音がした。

「ふん?」
 
 鼻歌を歌いながら後ろを振り向く。

「ひょえ!?」

 ノーザレイを埋めた場所の上に、ワサッと腕が生えていた。






 フィーサーラは追いかけているのだが一向に追い付けなかった。確かにデウィセンは目の前を走っている。

「ここは妖霊の王の手のひらの中というわけですね。」
 
 己の神聖力は使えるが、だからといってデウィセンを捕まえることが出来なかった。フィーサーラは土を操るのが得意なのだが、ここはただの暗闇の中で地面がない。どういった空間なのかは分からないが、羽を出して高速で飛んでいるのに追いつけない。デウィセンは足で走っているのだというのに。

 飛び続けているとデウィセンの足元にタイル張りの床が現れ出した。
 屋敷?いや、大きさからどこかの城…。
 
「は、ははっ、ラナススの城に出たぞ!」

 デウィセンが説明してくれた。
 王城に出たのだろうかとフィーサーラは用心して自分も羽をしまい床に足を付けた。
 
「?」

 まず気配がおかしい。
 なんと言いようがないが、静寂が深いと言えば良いのだろうか。人がいて使用人達が忙しなく働いている。騎士もいて官吏達も働いている。だがなんとなく静かだ。明らかにこの王城の人間ではないフィーサーラを見咎める者もいない。
 目の前で笑いながら洗濯メイドが籠を持って通り過ぎた。
 その向こうをデウィセンは笑いながら走って行く。
 疲れることなくずっとだ。
 
「気持ち悪い空間ですね。」

 思わずそう呟いてしまう程にこの空間の静寂が重い。静かな中に人の声が響いている。この静けさも態とらしいくらいによく聞こえる人の声と動作音もおかしい。
 歩きながらやけに景色が白く感じるなと思っていたら影がないのだと気付いた。
 フィーサーラにはあるが他の影はない。デウィセンにも無かった。
 現実世界ではなさそうだ。
 ナラススの王城に辿り着いたのかと思ったが、妖霊の王ジィレンが作った空間なのだろう。まずい所に出てしまったと内心焦る。
 
「デウィセン様、今日はどうされたのですか?」

 王族らしい豪華な衣装を来た人間がデウィセンを呼び止めた。

「私は逃げているのです!」

「おおっ!それは大変だ!ジィレン様に相談しなくては!」
 
「ジィレン様は今お忙しい。」

「穴を広げなくてはならないからな。」

 デウィセンの周りに人が増えてきた。
 フィーサーラには何が起こっているのか理解出来なかった。
 

ーーー我々は常世の国へ行くのだから……ーーー


 彼等の声が木霊した。

 何を言っているのか……。笑うデウィセン達が不気味に写る。
 フィーサーラは緊張ではぁと息を吐いた。
 これはどうすべき?デウィセンを切るか?ここにいる人間らしに者達全てを切っていいのか?
 どうする?トステニロス様ならどうする?青の翼主なら………。
 ドクドクと心臓が鳴る。ああ、緊張する。こんな経験初めてだ。

「………きっと、あの人達なら迷わず切るのでしょうね。」

 彼等が元々人間で、魂となって操られた可哀想な人達だとしても、きっとあの二人なら迷わず排除することを選ぶ。
 フィーサーラは剣を構えた。
 真っ直ぐに大声で騒ぎ出したデウィセン達に刃を向ける。
 大勢の人間達がフィーサーラを見た。目は皆見開き血走っている。武器を持たない人間を切ったことはないが、フィーサーラは覚悟を決めて、まず歯を剥き出しにして噛みついてこようとした洗濯メイドを切った。開けた口の中がやけにどす黒く血の塊のように見えて、その身体が本当の人間のものなのかと疑問に思う。

 次々と雄叫びを上げて襲いかかる彼等はまるで獣のようだった。
 とても静かな静寂の中に、獣の雄叫びとフィーサーラの息遣い、そして肉を裂く音が延々と続く。
 デウィセンは何故か襲いかかって来ずに逃げようとしていた。

「待ちなさい!」
 
 フィーサーラは襲いくる人々を切り伏せながら追いかけて行く。
 影がないのでやたら白く見える王城の中、フィーサーラは延々と追いかけっこをすることになってしまった。






 フィーサーラを追いかけさせ、トステニロスはジィレンに対峙したわけだが、当のジィレンは静かに佇んでいた。
 襲ってくるわけでも、何かを話しかけてくるわけでもない。

「こちらから行けばいいのか?」

 トステニロスは剣を構えてジィレンに話しかけた。
 ジィレンがニィと笑う。同じ銀の瞳にトステニロスは腹が立った。

「ここがどういった空間か気付いているか?」

 ジィレンの問い掛けにトステニロスは視線を固定したまま考える。
 とりあえず飛び込んできた空間だが、未だここがなんなのか、常世と言われても詳しくはわからなかった。神聖力は使えるが、暗闇ばかりで見渡す限り何もない。

「いや?」

「ここは世界の壁がある場所だ。」

 世界の壁?それはクオラジュが引き込まれそうになったツビィロランを連れ戻した場所だ。クオラジュは何度か向こうの世界を見たらしいが、魂まではいったわけではないのだという。それでも向こうの世界は不思議だったと話して聞かせた。神聖力のない物質に重きを置く世界。
 
 妖霊の王ジィレンはその壁に穴を開けるのだろうと言っていた。天空白露をぶつけて大きな穴を。

「それで?」

 天空白露にあるノーザレイの穴はテトゥーミが結界で封じている。テトゥーミはあまり色々なことは出来ない人間だが、一度やれるようになるとそれだけは完璧にやりこなせる。結界は得意なのでそうそうノーザレイにかけた結界が解けるとは思えなかった。

「線と点は強い方がいい。」
 
「?」

 ジィレンがツビィロランの身体と中に入った異世界の魂の元の身体と繋げようとしていることは聞いている。
 それが点で刺した針に繋がる糸が線?それを強化する為に何がしたい?

「あの針と糸は魂を練り合わせて作った。」

「……誰の魂を?」

 ジィレンは笑って答える。

「とりあえずラナススの人間を使ったがな。」

 トステニロスは剣の鞘をギリリと握り締めた。トステニロスは綺麗事を言う人間ではない。人は悪を持つものだ。それがたとえ妖霊でも変わらないと思っている。ジィレンが大勢の人の魂を使って何かをすることもあり得るのだろうと思っている。
 だが天空白露を犠牲にされるのは許せない。

「つまり、天空白露にいる者達の魂を使って引き寄せると?」

 天空白露の大地だけなら住んでいる人間は逃げたらいい。だが住んでいる者達の、トステニロスが大切だと認識している者達の魂を使うつもりなら止めるつもりだ。
 何よりクオラジュがツビィロランを向こうの世界に行かせまいと引き留めている。
 クオラジュの神聖力で魂が剥がれるのを防いでいるのだ。だからツビィロランは苦しいはずだ。
 世界の壁を通り抜けて双方を引き寄せようとする力は魂に負担をかけている。引き寄せ合う力に負ければ身体から魂が抜ける。魂が抜ければツビィロランの中にいる魂は元の世界の方へ引っ張られる。それは向こうにいるツビィロランの魂も同じだろう。
 ツビィロランの身体と魂に今天空白露の重みが乗っている状態だ。クオラジュの負担も大きい。
 
「態とそうしたな?」

 クオラジュが魂を食い止めると理解していて、ツビィロランの魂に針を刺し糸を引っ張る点にした。
 
「頑張ってくれているようでなりよりだ。」

 糸を切れないだろうか……。ここが世界の壁がある空間なのだとしたら、きっと糸がある。

「糸は切れんぞ?魂はずっと追加し続けている。天空白露が西に落ちたおかげで東には死人が山ほど出来ているからな。これからも増え続ける。」
 
 トステニロスの顔から笑みが消えた。

「じゃあ術者お前をやればいいな。」
 
 ドッとトステニロスは空間を走った。剣を突きの形に突き出すが、ジィレンは難なく避ける。
 ジィレンは特に武器は持たないがトステニロスの剣を避け続けていた。
 ジィレンが手を振ると、黒い影がトステニロスに襲いかかる。暗闇の中でこの色は見えないだろう!?と心の中で悪態を吐きつつ、トステニロスは剣で切って避けて行く。
 トステニロスの剣は徐々にジィレンに届き傷をつけていくが、ジィレンの闇の刃もトステニロスを傷つけていった。

「はは、血が出ないな?」

 そう言われてジィレンは自分の頬についた傷に手を這わせた。スゥーと傷が消えていく。

「気持ち悪いな。」

 トステニロスにジィレンは笑った。

「これでも私の身体だ。」

 トステニロスはジィレンの言葉をジッと聞いた。

「へえ……?」

 ジィレンが妖霊だからか?それとも…。

 そう会話をしつつもトステニロスとジィレンは剣と闇の刃で切り合っていた。
 ジィレンが放つ刃に、トステニロスの腕が切り裂かれる。パッと飛ぶ血がジィレンの口元にかかり、それをジィレンはペロリとと舐めた。

「……神聖力はあるが…。やはり違うか。」

 なにを?と言う間もなく足元が抜ける。
 羽で咄嗟に浮いたが上から何かが落ちてきた。
 赤い羽がバサっと散り、フィーサーラが落ちてきたのだと知る。

「ーーーーっっ!トス………!」

 フィーサーラも驚いていた。羽を広げて飛ぼうとしていたが、トステニロスにぶつかり二人とも落ちてしまう。

「ーーーっく!」

 落ちながら二人で体勢を取り直した。急に明るくなり視界が開ける。
 羽を出し浮き上がると、そこは天空白露の上空だった。

「なっ!なんで天空白露に!?」

 フィーサーラは驚いている。フィーサーラの方も戦闘があったのか傷だらけになっていた。
 フィーサーラはトステニロスを見て、自分以上に血だらけになっている姿に慌てている。

「大丈夫ですか!?」

「心配ない、それより…。」

 トステニロスはサッと目を走らせた。
 天空白露は結界に覆われている。それは天空白露と繋がる聖王陛下が維持するもので、平穏時には感知できないほど穏やかな結界だ。
 だが今その結界はヒビが入りギチギチと音を立てていた。
 結界が壊れようとしている。

「トステニロス様!あそこにテトゥーミ様が!」

 フィーサーラが指差す方は花守主の屋敷だった。
 テトゥーミがいる。そして透金英の森があった場所で翡翠色の羽を広げて神聖力を操っていた。

「穴が広がってるのか!」

 急いで加勢しないと!
 急降下しようとして黒い羽が広がった。妖霊達が天空白露を襲っていたのだ。結界を壊そうとしていたが、空にトステニロスとフィーサーラが現れた為集まってきていた。
 数が多くてテトゥーミの所に近付けない。
 妖霊達を切り落とすと黒い羽が散り、その隙間からテトゥーミが見えていた。

「私が抑えますから……!」

 フィーサーラが下に行くようトステニロスを促す。
 テトゥーミはノーザレイの身体から開いた穴が広がろうとしているのを抑えている。そんなテトゥーミの周りにも妖霊達が襲いかかっていたが、テトゥーミは自分の周りにも結界を張りながら抑えていた。
 
「テトゥーミ!」

 テトゥーミがハッとして上を見た。

「きたらダメですっ!」

 トステニロスは右にいた妖霊を切りながらテトゥーミを見た。

「もう、ギリギリっ……。」

 テトゥーミが泣きそうな顔で、それでも精一杯神聖力を使っている。そんな無茶な使い方をしたらすぐに力尽きる。
 テトゥーミの周りにいた妖霊達がトステニロスに気付き上がってきたのはいいが、また近寄れなくなった。
 テトゥーミは目の前の結界を維持するのに必死だ。そんなテトゥーミの後ろから近付く存在がいた。

「…………テトゥーミ!危ない!」

 デウィセンだった。ナイフを持ちテトゥーミの背後から近寄っていた。テトゥーミも気付いたがもうすぐそこに迫っていた。
 振り下ろされるナイフがテトゥーミの背中に突き立てられる。

「!!!!」

「ははっやった!」

 デウィセンは笑って飛び退いた。

「くそっ!」

 トステニロスは降りながら妖霊達を切り落としていく。
 テトゥーミの隣に降り立ち倒れたテトゥーミを抱き上げた。
 
「………うう、結界が……。」

「いい、もう無理だ。……フィーサーラ!引くぞ!」

 トステニロスは上空で戦うフィーサーラに声を掛けた。テトゥーミを抱いたまま地を蹴り走り出すと、フィーサーラも上にいる妖霊達を牽制しながらついてきた。
 聖王陛下が維持している結界も時期壊れる。
 テトゥーミを襲ったデウィセンは逃げてしまった。
 何もかもがメチャクチャだ。
 







 
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