落ちろと願った悪役がいなくなった後の世界で

黄金 

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竜が住まう山

37 スプラッタ怖い

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 一際高い山が五つ。その中でも一番高い山の頂に、スペリトトの像は設置してあるのだという。
 山の勾配はどの山よりも激しく、しかも木々が減り真っ直ぐ下が見えてしまう。
 アオガを救いに行く為に登り出したはいいが、完全にツビィロランの足は途中で止まってしまった。

「俺もう登山とかしない……。」

 自分が転げ落ち頭がパカーンと割れる想像しかできない。
 そう呟いたら道案内役のカンリャリがツビィロランをおんぶした。そしてそのまま登りきり、頂上にある開けた場所に出た。

「俺はここまでしか近付けない。あそこが見えるか?」

 カンリャリが指差す方を見ると、更に少し登った場所に平らになっていそうな場所が見える。

「あそこにスペリトトの像があるのか?」

 カンリャリはそうだと頷いた。

 トネフィトの話では、スペリトトの像を中心に古代文字と何かの絵のような文字がびっしりと書かれているらしい。その文字は風化することなく地面に黒く描かれており、空から飛んで見て見ようとしても見えない。霞がかかり、スペリトトの像ごと見えなくなってしまうらしい。
 目くらましの術が掛かっているのだろうと教えてくれた。
 広範囲に描かれている為、空から全体像を見たくても見ることも出来ず、トネフィトは何が描いてあるのか調べることが出来なかったのだが、今回クオラジュが頂上に登り調べたらしい。
 クオラジュは天上人である為、悪夢の術には掛からなかった。
 全部紙に書き写してくれた量は膨大で、大まかな内容はクオラジュとトネフィト二人の知識を絞り出して解明した。
 今まで悪夢に入ると逃れる術がなかったのだが、今回地面に書かれた術式から綻びを見つけた。
 夢に干渉し、身体を起こしてやれば、術から逃れることができるようになった。
 その代わり悪夢を見ている者のそばにいる必要がある。

「でもクオラジュはそばにいなかったけど?」

「おそらく神聖力の差かと。夢の中から無理矢理身体を起こしたんじゃないかな?普通は側に寄って身体を揺するなどして起こすしかないよ。」

「神聖力だけなら俺もいっぱいあるけど?」

「私は知識はあるけど神聖力がない。ツビィロランに起こす方法を教えるから実行してみて。」

 そう言ってトネフィトはそっと一枚の紙を渡してくれた。
 びっしりと書かれた呪文のような何か。

「え?見てもサッパリわかんねー。」

「………………。」

 トネフィトは教えることを諦めた。ツビィロランの声が本当に何もわかっていなさそうだったからだ。何が分からないのかすら分かっていない声だと思った。
 トネフィトはスペリトトの像に近付けないので、ツビィロランに一枚の紙に古代文字を使った術式を描いたものを渡した。クオラジュが描いていったものらしい。

「おそらくその方はスペリトトの像の近くで倒れていると思うよ。彼に触れて神聖力を流しながら一緒に眠るんだ。そうすれはスペリトトの像の周りにある術式に乗って、ツビィロランも同じ夢の中に入るはずだよ。その方の悪夢に入ったら、夢を壊してね。内容は個人で違うから、どうやればいいのかは私にもちょっと分からないんだ。そこは任せるから。夢が壊れて目が覚める状態になったら、この紙を破ること。そうすればその方も一緒に起きることができるはずだからね。」

 という説明をトネフィトから受けた。
 やるのは護衛の誰かでもツビィロランでも誰でもいい。悪夢を必ず終わらせてあげられる人が一番だと言われた。


 カンリャリを置いて俺達はスペリトトの像がある、更に頂上に向かった。
 山の上はちょっと肌寒いくらいだ。
 明け方と共に登って来たが、太陽は既にかなり上にきている。
 頂上の開けた場所には草木一つ生えず、土と石のみの広場の真ん中にスペリトトの像があった。地面には教えられた通り、びっしりと古代文字と何かの絵のような文字が描かれている。これが遥か昔に描かれて今もなおあり続けるのは、劣化防止の術も掛けられているかららしい。
 ツビィロランにはサッパリ理解出来ない。
 
「ひとっつも分からん。」

「私はところどころといった感じでしょうか。」

 ヤイネも覗き込んでそう言った。ついて来た護衛達も同じ反応だ。
 ツビィロランは本当に勉強を何一つしていなかった。勿論地上で十年生きていた津々木学に分かるはずもない。

「あ、アオガ様ですっ!」

 スペリトトの像の後ろにアオガらしき人影が倒れているのが見えた。
 顔は金髪がかぶさって見えないが、白い剣を抱きしめているので間違いない。
 話し合った結果、何が起きるか分からないので、全員で近付き、アオガの夢に入るのはツビィロランとヤイネが二人で行くことにし、後の護衛達には身体を守ってもらうことにした。
 天上人にはこの術は効かない。そう聞いてはいても、皆用心しながら像に近付いて行く。
 スペリトトの像はツビィロランが夢の中で見た通り、胸の前に手を組んだ状態でそこにあった。
 そろそろと近付いてアオガの横に座り、顔にかかった金髪を手でどけると、固く瞑った目と歯を食いしばった表情のアオガが眠っていた。
 ツビィロランとヤイネはお互い頷き合ってアオガの横に寝そべる。
 両隣でアオガの手をそれぞれ握り、神聖力を流しながら目を閉じた。
 グラリと頭が揺さぶられる感覚と共に、暗闇の中に落ちていく。
 二人はアオガの夢の中へと入っていった。








「ーーーーっ!………っっ!!ーーーーあ゛ぁーーーーーっ!もぉっ!」

 何やら叫び声が聞こえる。
 目を開けると隣にヤイネが立っていた。

「…………入ったのか?」

「おそらく。」

 二人でキョロキョロと辺りを見回す。景色はどこかの建物の中。雰囲気から天空白露にある建物のように感じた。この白多めの神殿っぽい感じが天空白露っぽい。

「……………うっっっざいっ!!いつまで続くんだよ!!」

 アオガの声がする。
 頷き合って叫び声がする方へ歩いて行った。きっと悪夢に対して声を上げているのだろう。

「……大丈夫でしょうか。」

 ヤイネが心配そうに呟いた。もう丸一日以上、悪夢を見ている。
 ここか?という扉の前に来た。ゴクリと喉を鳴らし、ツビィロランは取っ手を握ってゆっくりと開けた。悪夢は個人で内容が違う。アオガの悪夢がなんであるのか、誰にも想像ができない。
 ガチャ…………。
 そっと開けた隙間から二人で縦になって中を覗き、呆然と目を見開いた。

「え?」

「…………。」

 アオガがいた。本人だろう。さっきから聞こえる叫び声の通り、アオガは叫びながら………、というか文句を言いながら剣を振っていた。

 ドシュッッーーーーーー!

 上がる血飛沫にヤイネと二人でブルブルと震えた。アオガの顔に飛んだ血飛沫がベッタリとついているし、着ている服も真っ赤に染まっている。
 
「B級ホラー…………。」

 ツビィロランの口からポロリと出た言葉に、ヤイネは「は?」と思わず返した。二人とも悪夢とは本人がきっと心なり身体なり傷付いていくものだと思っていた。それを救うものだと思っていた。
 まさか悪夢を見ている本人が剣を片手に暴れているなんて思ってもいなかった。

「うひゃぁー………、切られてるのサティーカジィだし…。」

 怖い。部屋は広めの応接室といった感じの部屋だが、その部屋の中にサティーカジィが三人分真っ赤になって転がっている。
 どういう状況?
 ツビィロランの声はどうやらアオガに届いてしまった。なんだか届いて欲しくない状況なのに、思わず普通に出た声はしっかりと届いてしまった。
 真っ赤な瞳が開いた扉を捉える。
 ツカツカとアオガは歩いて来て、バンッと扉を開けた。

「!!」

 ツビィロランとヤイネはバタンと室内に転がり込む。

「………………ツビィロランとヤイネ?なんで?お前らも夢なの?」

 血まみれで無表情に尋ねられ、ひえぇと二人で手を握り合った。
 アオガの表情がイラッとした顔に歪む。
 き、切られる!

「…ま、待てっ!俺達は助けに来たんだ!というかなんだよこれっ!どんな悪夢だよ!?」

「そ、そうですよ、というか予言者サティーカジィ様ですよね…?なんでこんなにいっぱい……!」

 室内に入ると更に奥にまでサティーカジィの死体が転がっていた。

「………わらわらとわいて出るから?」

 そんな虫を退治するみたいにアッサリと言わないで欲しい。

「え?実はサティーカジィのこと嫌ってたのか?」

 好きなのかと思ってたのに、サティーカジィの許嫁っていう立場は望んでいなかったとか?ツビィロランは混乱した。

「そうじゃないけど、偽物はムカつくから切りだしたらどんどん出てくるんだ。………それよりも二人は本物?」

 ツビィロランとヤイネはこくこくと頷いた。
 危ないな、こいつ。実はこんな凶暴な性格してたのか?
 ヤイネが俺を庇うように前に出た。

「いけません。いくら悪夢に出てくるとはいえ、元許嫁をこんな風に切れば、現実に戻った時に思い出してしまいますよ?」

 説得を試みるようだ。ここはヤイネに任せたい。というか俺無理。アオガがこんな凶暴だとは知らなかった。もっとフレンドリーにやっていけるかと思ってたけど、意外とつかめない奴かも。
 アオガはふむ、と顎に手をやった。

「そう、かな?捌いた兎を食べた後でも、別の可愛いと思った兎をペットに出来るから、大丈夫かなと思うんだけど。」

「………そ、そうなんです、か……?」

 ヤイネが自信をなくした。オロオロと握り拳を作って震えている。俺は転がったサティーカジィの死体が怖くて周りを見れないから、ヤイネの背中の服を握って、心の中で応援した。

「で、でも!兎と人間は違います!わ、私が悪夢に出て来ても切れますか!?」

「…………え?」

 …………お?これはサティーカジィとヤイネ本人を天秤に掛けさせようとしている?
 それに気付いたアオガも目を見開いた。
 そして一拍遅れてヤイネもハッとした。

「………はっ!いえ、違っ……、私なんぞを予言者の当主様と同列に並べるなんて………!?」

 恥ずかしい~~~~~っ!!とヤイネは真っ赤になってしゃがみ込んでしまった。なのでヤイネの背中に引っ付いていた俺は、アオガと対面することになった。

「うわ………、マジでスプラッタ。」

 血みどろ、ドロドロ。
 どんな悪夢見たらこんなことになるんだ?

「……………。」

 アオガはしゃがみ込んでしまったヤイネをまだ見ていた。肩から前に垂れた長い金髪からは、シタシタと血が流れている。

「…………で、俺達も悪夢に出てくる人間だと思う?」

「いや、なんか目が覚めた。違うって分かる。」

「そーか、そーか、ヤイネの身を挺した玉砕が効いてくれて良かったよ。」

「これって告白?」

 ポツッとアオガが尋ねる。

「そうだ。」

「え!?」

 俺の返事にヤイネがガバッと真っ赤な顔で見上げた。見下ろしているアオガの真っ赤な瞳が、真っ直ぐにヤイネの視線とぶつかった。
 アオガが固まってしまったヤイネの脇を持って立ち上がらせるている。

「どうやって悪夢から出れるの?」

 おお、アオガって冷静だな。

「これだ!」

 俺は手に握りしめていた紙を一枚広げて見せた。
 ヤイネの精神的ヒットポイントは減ったけど、意外と楽勝だったな!

 






 これは夢なんだと早々に理解した。
 何度も何度もサティーカジィ様が出てきて、自分はサティーカジィ様の重翼ではないのだと説明される。

 最初はショックを受けて泣いた。
 そうならなければいいのにと願っていたけど、そうなってしまった現実を何度も体験して、心が痛かった。
 重翼なんて関係なく、アオガという人間を好きになってくれればと努力していたけど、本物には敵わないのだと思い知らされた。
 失恋して、家族を失って、帰る家を失くして、これ以上惨めなことがあるだろうか。

 そう思ったらだんだん腹が立ってきた。

 だったらなんでアオガを許嫁にしたのか…。
 重翼ではないと知っていたのなら、最初から許嫁にしなければ良かったのだ。そうすれば、こんな無駄な努力も、叶わない期待もしなかったのに!

 手にはヤイネが貸してくれた剣を握ったままだった。
 シュィンーー……と軽やかな音を立てて剣を抜く。

「私が、悪いの?わたしが、まちがっているの?」

 アオガの目がわる。

 アオガの努力は無駄になり、多くの人間に嘲笑された。
 全てはサティーカジィ様の為だったのに。
 愛情は憎悪に変わる。
 目の前で優しげに微笑む人の首を躊躇いなく刎ねた。

「……………はっ…………。」

 小さく吐息が漏れる。
 こんなに簡単に自分の愛は崩れるのかと、何かがプツリと切れる気がした。
 何度も出てくる幻を、アオガは切って捨てていった。
 まだ愛情があるのだろうか?何回殺せばこの愛は失くなるだろう?
 どこを歩いても目の前に現れる元許嫁を、血を浴びながら切り捨てていった。
 愛なんかいらなかったのだ。
 そう言い聞かせるように切っていった。
 果てしなく続く死体の山に、心が擦り切れ疲れ切った頃、目の前に突然二人が現れた。
 今までアオガとサティーカジィ様しかいなかった世界に、一陣の風が吹いた。開いた扉から覗き込む二人は、ワァワァと喋り出す。
 サティーカジィ様の様に同じことをばかり喋るのではなく、まるで現実の様に自由気ままに表情を変えて話している。
 質問されて、それに返して、自分の口ではない様な無意識の返答を繰り返して、目の前の人物は一瞬で真っ赤な顔になってしゃがみ込んでしまった。
 
 今、なんて言った?

 まるでアオガに好意があるような言葉に、急に意識が戻ってくる。
 ヤイネじゃないか。
 俺にこの剣を貸してくれた人物。これのおかげで幻を切れた。ヤイネの言葉がアオガの中に突き刺さり、目を覚ました。剣は持ち主に似るのだろうか。

 ツビィロランがコレで悪夢から覚めるのだと、一枚の紙を目の前で破った。
 ヤイネは真っ赤なままだ。
 よっぽど自分で自分の言葉に衝撃を受けてしまったらしい。

「ははっ。」

 アオガは夢から覚めながら思わず笑ってしまった。















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