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番外編

71 ホトナルは自分の心が分からない②

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 ホトナルは隣国に飛んでいた。飛んだ先はハンニウルシエ王子が過ごしたと言われる幼少期時代の屋敷だ。
 ハンニウルシエ王子は王族でありながら王宮で過ごしていない。貴族の間では割と知られている事実だ。
 やってきた屋敷を見てホトナルは王族のやりそうな事だと納得する。
 鉄格子付きの監獄。
 『瞬躍』で不法侵入を果たし、使用人部屋から予備の服を拝借する。コソコソと聞き取り調査をして回った。なるべく年老いた人間に聞いていく。勤続年数が長ければ、過去のハンニウルシエ王子のことを知っているはずだ。

 辞める人数が多く手こずったが、年老いた牢屋番が殆ど教えてくれた。
 
 可哀想な王子様はずっとここに居たんだよ。

 中は見せてくれなかったので、勝手に飛んで入った。
 湿った地下牢。小さな明かり取りの窓。チョロチョロと壊れた剥き出しの配管から水が流れている。
 かろうじてトイレと手洗い場があるだけ。

「………病気なりそ。」

 時々引っ張り出されて傷だらけで帰ってくるのだと言っていた。その時だけは治療されてまともな食事が届く。
 時々短くて一週間、長くて二ヶ月程度帰ってこない。帰ってきたと思ったら酷く怯えている。
 十歳を超える頃には虚になり、出る頃には傲慢に振る舞うようになっていた。
 そう牢屋番は話した。

 帰ってこない期間、何をしていた?恐らくこの屋敷からは出ていない。
 この国の王族が考えそうなことと言えば……。

「調教ですかね。」

 しかしやった人間は既にここにはいないだろう。
 専門の人間が雇われてやったはずだ。王家に忠誠を誓った者なら、今は別のスキル持ちを調教している頃だろうし、雇われた人間なら始末されている。
 主従契約がなくても順従に従うよう躾けられた?
 あの王子を?
 いや、そうかも?熱でボーと見上げた目は虚だった。
 スキルを限界まで使っても躊躇わない。身体が不調を訴えても表情を変えることなくスキルを使い続ける。
 命令されれば何でもやるように言いつけられた?
 ハンニウルシエ王子は攫ってきては、連れてきたスキル持ちを一旦自分自身と主従契約を結ばせていた。
 そして中央へ運んで解除し引き渡している。
 王子自身が主従契約の従の方になると、攫った人間と契約出来ないので、そういう方法をとった可能性がある。
 
「あんなに素晴らしいスキルがあるのに、心に根付く傷を負わせて自由を奪ったということになりますね。」

 本人がどこまで理解しているかは分からないけども。
 うーんとホトナルは考える。
 可哀想だなとは思う。話を聞けば物心つく頃にはここにいた。思考も身体的な自由も全て管理されただろう。
 
 ならば今のハンニウルシエ王子の心理的状況はどうなっている?
 王子は自由がどういうものか知っているのか?
 現在はルキルエル王太子殿下と主従契約を結び下僕、おっと従者かな?家臣かな?になっている。最初の頃こそ反抗的だったが、途中で順従になった。
 どこから従うようになった?
 
「………………孕ませると言ったあたりか?」

 薄汚い地下牢の中に、ホトナルの手を叩く乾いた音が響いた。
 孕ませると言われて酷く嫌がった。
 
 ホトナルはまた翔ぶ。
 元の北離宮に戻ってきた。靴が汚れたので自室に飛んで靴を脱ぐ。少し足をついただけでべっちゃりと何かが付着した。
 かなり衛生面が汚い。
 
 風呂に入り清潔な服に着替えた。

 そして飛ぶ。ハンニウルシエ王子の自称監禁部屋へ。もっと明るい部屋も用意すると言われたのに出たがらない理由をホトナルは理解し始めた。

 王子は眠っていた。まだ明け方には遠い。自分のスキルの有用性は無駄な移動時間がないことだ。こういう時便利だし、思いついたら直ぐに飛んで来れる。
 だから迷いなく飛んできた。
 
 トンッと降り立ったのはハンニウルシエ王子の地下にある自室。
 王子は急に現れたホトナルに気付いたらしく、慌てて起き上がった。汗をかいて黒髪が濡れ、瞳が潤んでいる。熱が上がりっぱなしなのだろう。その時初めて瞳の色が紫色なのだと認識する。

「ちょっと王子の幼少に過ごした屋敷に行ってきました。」

 ハンニウルシエ王子の肩が震えた。

「なかなか大変だったようですね。」

 ホトナルは薄っすらと笑う。ああ、これはチャンスではないだろうか。
 ホトナルは上半身だけ中途半端に起き上がったハンニウルシエ王子の上にズカズカとまたがった。
 後ずさろうとする王子の肩を押し布団に押し付ける。熱のせいか全く抵抗がない。いや、抵抗出来ない?
 紫の瞳に恐怖の色が移っていた。

「王子がお世話になった牢屋番はまだご健在でしたが、大分耳が遠くて聞き出すのに手間取りました。ですが、彼の話だけでもおおよそどういった扱いを受けたかは想像することが出来ます。」

 ジッと王子の瞳を見つめて話した。ホトナルは自分の精神状態が高揚しているのを感じていた。

「王子はこういう時、話す許可は得ていましたか?」

 ハンニウルシエ王子はゆるゆると首を振った。濡れた黒髪は更に出てきた汗で水気を増す。額にはポツポツと汗が浮かんでいる。
 その様子をホトナルは静かに観察した。

「では許可しますので、口頭で返事をして下さい。」

「…………わ、わかっ、た……。」

 その返事にホトナルは満足気に笑った。
 ここで返事をするということは、ハンニウルシエ王子はホトナルにも従う可能性があるということだ。
 あまり人に知られたくない過去を突然話され、しかも何があったのか知っているのだと仄めかされる状況とは、どれくらいの緊張感を与えるのだろう?

「よく従属したスキル持ちを王城に連れていってましたよね?その時暫く滞在してましたが、何をしてたんですか?」

 苦し気に顔を顰めて反らせられ、ホトナルはそれを許さないと顎を持って正面に向かせた。

「誰が相手ですか?それとも複数ですか?答えて下さい。」

「…………へ、陛下、や兄上達……………。」

 紫色の瞳の中の瞳孔が狭まりブルブルと震える。
 顎を離してやると苦し気に目を閉じた。もう少し見ていたかったのにと残念な気持ちになる。

「………血の繋がった親子でですか?何とも凄まじいですね。」
 
「お、俺は、王族ではないと………。」
 
 手を前にやって必死に抗おうとしているが、力は出ないようだ。
 『黒い手』のスキルを使えば簡単に逃げられるのに、逃げることが出来ない。幼少期から躾ければこうなるのかと感心する。
 
「王子は確実に同じ血でしょう?まぁ、そこらへんはどうでもいいです。そんな事より、王子の今の主人は誰なんですか?」

 主人………?震えながら不思議そうな顔をしている。
 ああ、そんなことも分からないくらいに判断力がないのか……。
 ホトナルはこの幸運に笑った。
 今ハンニウルシエ王子は自由なのに、自由であることに気付いていない。自由であったことがないから分かっていないのだ。
 今の王子は迷子だ。

「ルキルエル王太子殿下じゃ、ないのか……?」

 王子は混乱しながら答えた。

「まぁ、確かに主従契約ではそうなりますね。でも王太子殿下は王子を従えさせる気はありませんよね?それは感じているはずです。あの人は統治する者として優れている。個人の能力を伸ばす為にある程度の自由を許しています。それはハンニウルシエ王子にも適用されている。でも、王子はそんな主人は主人と思えないのではないですか?」

 今まで息をするのすら管理された人生しか送っていなかったのに、自由に息をしていいと言われても分からないはずだ。
 だからここで研究を手伝えと言われれば手伝うし、スキルの可能性を広げろと言われれば従う。最初こそ元々の主人であった父王陛下や兄達に対する従属心が残っていただろうが、時間が経つごとにそれも薄れ、今は誰に従えばいいのか分からなくなっている。完全に迷子なのだ。

「主人……?」

「私がなりたいんですけど、いいですか?」

 ホトナルは思うままに言葉を吐く。ハンニウルシエ王子は絶句していた。
 それが何を意味するのか考えて、初めて逃げようとスキルを出す。王子の影からシュルシュルと手が出てきた。

「王子、拒否したらいけません。」

 ピシャリと言い切られてハンニウルシエの身体も黒い手も止まる。

「王子には主人がいた方がいいでしょう?今からどうしたらいいのか迷うくらいなら、私に従った方が楽ですよ。」

 顔を近付け囁く。ハンニウルシエ王子は抵抗しない。こうやって高圧的に抑え込むと抵抗出来ないのだろう。
 ゆるゆると力が抜けていく。それを了解ととった。

「一応潤滑油を持ってきました。実は童貞なのでよろしくお願いします。」

 ハンニウルシエ王子の顔がギョッとする。

「い、今まで?」

「はい、他人に興味ありませんし、性欲もあまり湧きませんでしたし。………でも何だか今は反応してるんですよ。」

 ハンニウルシエは自分に跨るホトナルの股間を見た。確かにズボンの中が膨らんでいた。何故やったこともないのに勃起する?ハンニウルシエにもホトナルが人に欲情するような人間ではないと気付いていた。だから側に置いてても安全だと思っていたのだ。
 
「王子は経験豊富でしょうから、そこは指南して下さいね。」

 和かな顔してハンニウルシエに教えろというが、ハンニウルシエ自身も物のように扱われてきたので、それをそのまま教えたくもない。
 碌に慣らしもせずに入れられて痛いだけだ。
 逆にホトナルが潤滑油を用意してきたことに驚くくらいだ。

「嫌だ………っ!」

「え~~~~?でもそのまま入れるのは流石の私でも痛いと知っています。ちゃんと私のものになって下さい。王子の『黒い手』は私のものですよ。」

 その言葉にハンニウルシエ王子はブルブルと震える。ホトナルはハンニウルシエ自身ではなくハンニウルシエのスキルが欲しいのだ。
 今までその理由でしか求められたことはないが、それでもそれが個人の尊厳を無視した言葉なのだということは理解出来ている。
 
 ホトナルは王子がきていた毛布を剥ぎ取り、寝巻きのガウンの腰紐を取ってしまう。はだけた前をホトナルは笑顔で無感情に眺め、下着をずり下ろした。
 トプトプと容器から落ちる潤滑油に、ハンニウルシエ王子がビクッと一際大きく震えたが、その反応にホトナルの下半身はゾワゾワと疼いた。
 
 こういう興奮は初めてだった。

 新たなスキルを知る時、可能性を見出した時、それを人に語る時には気分が高揚し幸福度も高まるが、その他のことには何も心が動かされなかった。
 スキルで興奮することはあっても、人の反応に興奮したことはない。どんなに美しい容姿をしていても、どんなに富も名誉も見せびらかされても、欲しいとも羨ましいとも思わないのがホトナルだった。

 肛門に指を入れてみる。抵抗はあるがズルッと入った。それが普通なのかも分からないが、確か三本程度は入った方が良かったはず。

 グチュと音がして潤滑油はそういらなかったかなと冷静に観察する。
 二本に増やして抜き差しすると、ハンニウルシエ王子の身体が小刻みに震えた。ずっと下ばかり見ていたが、上を見て顔を見ると細められ上気した紫の瞳が涙を溜めていた。口からは小さく喘ぐ声が漏れている。
 指を入れたままクルッと回して反応を観察する。

 どこだろう?
 確か気持ちいいと感じる場所があるはずだ。人のここに指を入れたことなんてなかったので、よく分からない。
 グチュグチュ、グルッと回しながら、中の感触を確かめる、
 コリッと膨らんだ部分に触れた時、王子の身体が一際震えた。

「あ、ここですか?ようやく分かりました。気持ち良いんですよね?」

 これが前立腺かと探し当てたことに喜びながら、ホトナルは遠慮なしにそこを攻め立てた。

「ーーーーっっあ゛っ!ぁーーーーーやめ、…やめ、ろっ!ゔぁ、あーーーーーっ!」

 ドブっとハンニウルシエ王子は射精してしまう。
 早いなと思いつつ、こんなものかもしれないと更に前立腺をコリコリと指で挟んで弄った。

「やめっ、や、やだ…………、イッてる、出てるっ………っっ。」

 半泣きで嫌がる。
 ハンニウルシエ王子から出た精液を、ホトナルは自分の陰茎に塗った。
 こんなにビキビキと勃ち上がったのは初めてかもしれない。

「すみません、私も初めてで勝手が分からず。とりあえず入れさせて下さい。」

 遠慮なく後孔にホトナルの陰茎の先っぽが当てられた。
 ハンニウルシエは目を見開く。
 
 ズプンと勢いよくホトナルの陰茎が入って来た。








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