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不健康診断
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「ところで、その世界を越えちゃった俺はこの先どうしたらいいんだい?」
俺は1番気になる事を澄玲に聞いてみる。このままだと住所不定無職はやむを得ないとして今日住む家もなければ無一文と言う状態だ。
「まずは病院に行って検査かな。数日はかかると思うし、その間は入院だから衣食住の心配はないでしょ?その間に幸介さんの住居も決まると思うから退院したらそこに住むといいと思うよ」
「検査かぁ、この世界に来て最初にする事が『不健康診断』とはまいったな…」
若い頃は暴飲暴食を繰り返しても何ともなかった体だが、この年になるとさすがに衰えを感じざるを得ない。ここ数年の健康診断で悪い結果が出るのは多々あったから俺は悪い所を探す診断って事で『不健康診断』と思い言っているのだ。
「あはは… 不健康診断かぁ!面白い事思いついたね。ボクもその言葉借りちゃおうかな。それと咲良にも聞いたけど、幸介さんは45歳なんでしょ?どう見ても45歳には見えないんだけど自分の顔を確認した?」
そう言われれば咲良にも同じ事を言われたが確認してないな。良い機会なのでこの場で確認したい所だ。
「その顔はまだ確認してないって顔だね。ここに鏡があるから確認してみるといいよ」
澄玲はそう言って俺に手鏡を渡してくれた。俺は鏡を覗き込むと そこにはバケモノの姿が… と言うオチはなく若くイケメンをも言える顔が写っている。
「誰だ?これ?」
俺は自分の顔が認識できずに澄玲に確認を取る。この顔若い時の俺をベースにイケメンにしてみました。って感じの顔なんだが…
見た目は20歳より若くみえる。顔は20歳でも肉体能力はどうなんだろう?『顔『だけ』は20歳。他は40代』なんてことがあったら嫌なんだけど…
「誰だって言っても、これが幸介さんだとしかボクには言えないね。ボクの見た感じだと15歳位に見えるけどね。だから幸介さんを見つけた時はすぐに声を掛けたんだよ。この国では車の免許は18歳からになってるからね」
「なるほど…これが俺か… 俺は20歳位だと思っていたがこれで15歳とはこの世界でも俺は老け顔なのか…」
俺が落ち込んでいると澄玲は大笑いしながら机を叩いている。バンバンうるさい… こっちは落ち込んでいるんだ。そんなに笑うな…
「ごめんごめん… つい可笑しくて笑っちゃった。これは幸介さんが老けているのではなくて、この世界の男性はみんなこんな感じなの」
「ふむ… 男性はみんな年上に見られ、女性は若く見られるって事か」
「ボク達が若く見られてるのかわからないけど、みんなこんな感じだよ。参考まで聞いてみたいけど最初にボクを見た時に何歳だと思った?」
「俺は澄玲が16歳、咲良は澄玲を先輩って言ってるから15歳位かな?ただその年齢で仕事してるのもおかしいと思ったから実年齢はいくつなんだろう?とは思ってたな」
「ふむふむ、幸介さんの世界だとボク達はそれ位に見えるのか。じゃぁ年齢の話はこれでおしまい!あとはこの世界の男性はこんな感じだよ。って話をしてボクは幸介さんから幸介さんの世界の男性はこんなだよ。って聞きたい」
俺と澄玲でお互いの世界の男性の話をする。
「なるほど、この世界の男性は仔犬みたいなものか…」
「仔犬ってどうしてそう思ったの?」
「そりゃぁ内心ではビビってるのに、それを見せない為に吠えたり噛みつこうとしている。まさに仔犬そのものではないか?」
俺の言い方がツボにはまったのか、また澄玲は笑いながら机を叩いている。
「幸介さんって本当に面白い事思いつくよね… 仔犬かぁたしかにそう言われるとその通りだわ!」
落ち着きを取り戻した澄玲は先程とはまったく違った真面目な表情で俺に聞いてきた。
「ところで、幸介さん。ボクに触れてみたいと思う?」
「ブッ!」
丁度お茶を飲んだ所で変な事を言われたので飲みかけのお茶を吹いてしまったではないか。吹く直前に顔を横に向けたので澄玲に直撃しなかったのは不幸中の幸いではなかろうか。
「ゲホッゲホッ いきなり真面目になって話すから何の事かと思ったら変な事を言うとはさすがに予想してなかったぞ…」
「真面目も真面目、大真面目だよ!それでどうなの?」
何か期待をしているような目を向ける澄玲。真面目に言うのであればこちらも真面目に答えるとしよう。
「俺は澄玲に触れてみたいと思うぞ? と言うか俺の世界で澄玲みたいな可愛い娘がそんなことを言うと勘違いしたバカから襲われるかもしれないぞ?」
「男性から襲われるかぁ、それはそれで最高なんだけど… 幸介さんもボクを襲ってくれるのかな?」
「俺の場合は俺から見たら『お父さんと娘』って感じだからな、今は若い姿になったとは言え、頭の中身は40代のままなんだよ…」
「そっか…でも『襲わない』とは言わないんだね。じゃぁこの世界に慣れて襲いたくなったらいつでも来て!ボクはいつでもウェルカムだからね!」
親指を立てる澄玲だが、この世界の女性はこれが普通なんだろうか?咲良みたいな清楚な女性もいるものだと信じたい…
「ちなみに咲良も幸介さんとならOKみたいだから、いつでも襲っていいからね!」
『いいからね!』じゃねぇよ! 大人しそうに見える咲良でもそうならこの世界はこういう感じなんだろうな…
「あ、そう言えば襲う襲わない関係なしにして、俺のスマホは使えるのか?」
襲いたくなったら『連絡する』って事を思ったら思い出した。俺のスマホはおそらく使えないと思うがそうなると連絡手段がまったくないってことになる。
「幸介さんの世界でもスマホってあるんだね。でも違う世界のものだし使えないと思うよ。それも入院中に用意する事になってるから心配しなくていいよ。それにボクと咲良の連絡先も入れておくからいつでも連絡してね!」
「わかった、新しく貰ったら連絡しよう」
「約束だよ!絶対だよ! しなかったら泣くからね!」
「わかったわかった… いつになるかわからないが連絡するから楽しみに待っとけ」
わーいわーい! とはしゃいでる澄玲。これがこの世界の23歳なのかと思うと頭が痛くなってきた…
「よし!それじゃ話す事も話したし聞くことも聞いた事でご飯にしよ!咲良を呼んでくるからちょっと待っててね!」
俺の返事も聞かずに澄玲は飛び出して行った… 数分後元気な澄玲と息を切らした咲良がやってくる。
「咲良… お疲れ様…」
澄玲に振り回されている咲良を労う。咲良は私なんかにもったいない…と言うが、アレに付き合わされてるのかと思うと咲良に同情してしまう…
「ところでご飯にするのはいいんだが、俺はこれから検査になるんだろ?検査前に飯を食っても大丈夫なのか?」
「問題ないよ?ご飯を食べても検査の数値には影響しないから遠慮しないで食べるといいよ」
「そうか、それでどこに行くんだ? と言っても俺はこの辺の事を何も知らないから2人にお任せになるんだがな」
「ふっふっふ、そこは心配しなくて大丈夫!咲良が良い所に連れてってくれるはず!」
自信満々に他力本願の澄玲と今にも泣きそうな咲良…
「心配しなくていいぞ咲良、さすがに世界が変われば食べ物も変わるというわけでもないだろう。ここで1番美味しい物を食べたら、それが普通になると困るので、無難な店に連れてってくれ。金なら心配するな、ここの大先輩が快く奢ってくれるはずだ」
『ゑ”』と言いそうな感じで澄玲が振り向く、「当然だよなセ・ン・パ・イ」と俺が言うと渋々了承した。
3人で駐車場に向かい、クルマに乗り込む。俺は飯にした後、食後の休憩を取ってそのまま病院に送るのだと言う。俺の車は厳重に保管しておくので鍵だけ渡してもらえればいいというので、それに任せる事にした。
薄々感じていたが、タイヤを使っている車は俺だけで他のクルマはタイヤがなかった。
その事を2人に聞いてみると、2人が子供の頃はタイヤの車が使われてたのだと言う。この20年で技術が発展し今ではタイヤを使う者は昔懐かしさに使う者だけだと言う。今の外見の俺みたいな若者が使うことはまず無いらしい。
さて、今運転しているのは咲良だ、俺と澄玲は後部座席に座っているわけなんだが、どうも澄玲との距離が近すぎる…
「澄玲さんや、何で俺との距離がこんなに近いのかね?」
「やだよぉ幸介さん、そんなのボクだって幸介さんに触ってほしいからに決まってるじゃないかい」
「そんなに触りたければ自分で触ればいいんじゃないか?」
「なんで触ってくれそうな男が隣にいるのに1人で触るような悲しい事をしなきゃいけないのさ!幸介さんが大人しく触ってくれればいいんじゃないか!」
「なぁ咲良、何で俺が怒られなきゃいけないんだ?」
俺は理不尽な怒りを受けた事を咲良に言っても、それは私ばかり触ってもらって先輩が触ってもらえないから拗ねてるんですよ。と返される。
俺はしかたがないと思いつつ澄玲の頭を撫でてやる。どうもそれだけでは不満なようだ…
「幸介さん、頭だけじゃなく他の所も触ってほしいなぁ なんて…」
我儘娘がうるさいので肩に手を乗せ俺の胸へと引き寄せる。澄玲は吃驚してたが、俺の胸に顔をうずめ大人しくしている。
「咲良~ ボクのこの時間を少しでも長くしたいからゆっくり走っていいからね」
「やかましい!そんなにヤりたいのなら俺が退院したら2人共相手するからそれまで我慢するんだ」
「え!本当にHしてくれるの!絶対だからね!嘘ついたら武装して咲良と殴り込みに行くからね!」
男性が少ないと、女性はそこまで野獣になるものなのか?男女比1:1の世界では考えられないと思ったが、よく考えればたまに女性に乱暴した。とかニュースになってるからそれみたいなものなのかな?と思ったりもした。
そんな事をしている内に目的地に到着する。見た感じではファミレスっぽい建物だが、この世界に家族で外食したりするんだろうか?とも思ったりしている。
「本当はもっと美味しい店も知ってるんだけどね。幸介さんが最初にそれを食べてそれが普通になったら困るから、無難にファミレスにしてみたよ」
「へぇ~こっちの世界にもファミレスってあるんだな」
男親はなしで、母親と娘だけで来たりするのかな? そんな事を考えながら澄玲に連れられて店に入る。
「さすがに幸介さんを他のお客に見せると大騒ぎになるから個室にしたからね」
ふむ、つまり澄玲みたいな野獣が大勢いるわけか…
「何か失礼な事考えてるみたいだけど、それがこの世界では普通だからね!咲良みたいなのもいるけど表に出さないだけで心の中ではボクよりすごい事を考えているはずだよ」
「先輩… 私はそこまではしたなくないです…」
「ふっ… 幸介さんの前だからってカッコつけなくてもいいんだよ。咲良がむっつりなのはみんな知ってるからね!」
なるほど咲良はむっつりさんか。俺が頷いてると咲良は顔を赤くしながら全力で拒否した。
そんなこんなやりとりをしつつ席に着きメニュー表を見る。どうやら食事は向こうの世界と変わりないようで安心した。
ただ、女性客だらけの店の割にはガッツリ系のメニューが多いのが気になった。
俺がどれにするか悩んでいると澄玲はすでに決まったようだ。咲良もまだ悩んでいる。
「咲良、幸介さんの前だからってそんなに悩むことないでしょ?そんなに悩むのなら『いつもの』でいいんじゃないの?」
「せ・先輩!さすがにそれを幸介さんの前で食べるのは勇気がいります…」
「ん? いつも頼んでるのがあるのならそれでいいんじゃないか?俺は別に咲良がこのガッツリ系を3人前食べていると言われてもすこし驚く位で済むぞ?」
「えぇ… さすがにそんなに食べませんけど、こんなに食べる女性って変じゃないですか?」
「何が変なのかわからないが、男も女も生きる為に食べなければいけない。体を動かさない仕事をしてる者がそれを食べると太りそうな気もするが、咲良はそう見えないし仕事で動いているのかもしくは他で体を動かしているのかのどちらかだと思うのだが。とりあえず俺はこの体がどんなものか試すのもあるから、いつも頼んでいる量+一品にしてみるかな」
「えぇ!幸介さんって普段はそんなに食べないの?」
「俺は体を動かす仕事じゃないから、そんなに食べない。それと歳のせいもあって昔より小食になってる。40代の俺を知らない2人にとっては不思議に見えてもしかたないかな」
注文が決まりテーブルの上にあるタッチパネルで注文する。料理を運ぶのも機械が運んでくれるから店員と顔を合わせる必要もなく、騒ぎになりにくいのだと澄玲は言う。
しばらくして注文した品が届き、食事を楽しむことになる。幸いこの体は顔だけ若返ってるわけではなく内部も若返っているようだ。
食事も終え澄玲の会計が済んだ所でクルマに乗り込む。客の何人かは俺に気付いたらしく何か話しているようだが澄玲と咲良の姿を見て俺に近寄って来るものはいなかった。
病院までは澄玲の運転で後部座席には俺と咲良が乗っている。むっつりの咲良らしく距離を置いて座っているが、それじゃ面白くないと思った俺は咲良の頭を俺の膝に乗せ咲良の頭を撫でる。
猫ならばここでゴロゴロいいそうなのだが、咲良は『あわわわ…』と唸りながら病院へと向かっていた。
病院に着くと正面入り口ではなく緊急用の入り口に向かった。これも俺を見て騒ぎを起こさない為なのだと言う。
中には美人医師と小柄な看護師が出迎えてくれた。
「お待ちしてました。遠山幸助様ですね。私は遠山様の検査を担当させて頂きます。『上里(かみざと)』です。まずはこれからの予定をお話させて頂きますのでこちらへどうぞ」
「それじゃボク達はここまでだね、幸介さん新しいスマホが届いたら連絡忘れないでよ!」
何度も俺の方を振り返り大きく手を振る澄玲、咲良は帰り間際にお辞儀をして中々帰ろうとしない澄玲に悪戦苦闘していた…。
俺は1番気になる事を澄玲に聞いてみる。このままだと住所不定無職はやむを得ないとして今日住む家もなければ無一文と言う状態だ。
「まずは病院に行って検査かな。数日はかかると思うし、その間は入院だから衣食住の心配はないでしょ?その間に幸介さんの住居も決まると思うから退院したらそこに住むといいと思うよ」
「検査かぁ、この世界に来て最初にする事が『不健康診断』とはまいったな…」
若い頃は暴飲暴食を繰り返しても何ともなかった体だが、この年になるとさすがに衰えを感じざるを得ない。ここ数年の健康診断で悪い結果が出るのは多々あったから俺は悪い所を探す診断って事で『不健康診断』と思い言っているのだ。
「あはは… 不健康診断かぁ!面白い事思いついたね。ボクもその言葉借りちゃおうかな。それと咲良にも聞いたけど、幸介さんは45歳なんでしょ?どう見ても45歳には見えないんだけど自分の顔を確認した?」
そう言われれば咲良にも同じ事を言われたが確認してないな。良い機会なのでこの場で確認したい所だ。
「その顔はまだ確認してないって顔だね。ここに鏡があるから確認してみるといいよ」
澄玲はそう言って俺に手鏡を渡してくれた。俺は鏡を覗き込むと そこにはバケモノの姿が… と言うオチはなく若くイケメンをも言える顔が写っている。
「誰だ?これ?」
俺は自分の顔が認識できずに澄玲に確認を取る。この顔若い時の俺をベースにイケメンにしてみました。って感じの顔なんだが…
見た目は20歳より若くみえる。顔は20歳でも肉体能力はどうなんだろう?『顔『だけ』は20歳。他は40代』なんてことがあったら嫌なんだけど…
「誰だって言っても、これが幸介さんだとしかボクには言えないね。ボクの見た感じだと15歳位に見えるけどね。だから幸介さんを見つけた時はすぐに声を掛けたんだよ。この国では車の免許は18歳からになってるからね」
「なるほど…これが俺か… 俺は20歳位だと思っていたがこれで15歳とはこの世界でも俺は老け顔なのか…」
俺が落ち込んでいると澄玲は大笑いしながら机を叩いている。バンバンうるさい… こっちは落ち込んでいるんだ。そんなに笑うな…
「ごめんごめん… つい可笑しくて笑っちゃった。これは幸介さんが老けているのではなくて、この世界の男性はみんなこんな感じなの」
「ふむ… 男性はみんな年上に見られ、女性は若く見られるって事か」
「ボク達が若く見られてるのかわからないけど、みんなこんな感じだよ。参考まで聞いてみたいけど最初にボクを見た時に何歳だと思った?」
「俺は澄玲が16歳、咲良は澄玲を先輩って言ってるから15歳位かな?ただその年齢で仕事してるのもおかしいと思ったから実年齢はいくつなんだろう?とは思ってたな」
「ふむふむ、幸介さんの世界だとボク達はそれ位に見えるのか。じゃぁ年齢の話はこれでおしまい!あとはこの世界の男性はこんな感じだよ。って話をしてボクは幸介さんから幸介さんの世界の男性はこんなだよ。って聞きたい」
俺と澄玲でお互いの世界の男性の話をする。
「なるほど、この世界の男性は仔犬みたいなものか…」
「仔犬ってどうしてそう思ったの?」
「そりゃぁ内心ではビビってるのに、それを見せない為に吠えたり噛みつこうとしている。まさに仔犬そのものではないか?」
俺の言い方がツボにはまったのか、また澄玲は笑いながら机を叩いている。
「幸介さんって本当に面白い事思いつくよね… 仔犬かぁたしかにそう言われるとその通りだわ!」
落ち着きを取り戻した澄玲は先程とはまったく違った真面目な表情で俺に聞いてきた。
「ところで、幸介さん。ボクに触れてみたいと思う?」
「ブッ!」
丁度お茶を飲んだ所で変な事を言われたので飲みかけのお茶を吹いてしまったではないか。吹く直前に顔を横に向けたので澄玲に直撃しなかったのは不幸中の幸いではなかろうか。
「ゲホッゲホッ いきなり真面目になって話すから何の事かと思ったら変な事を言うとはさすがに予想してなかったぞ…」
「真面目も真面目、大真面目だよ!それでどうなの?」
何か期待をしているような目を向ける澄玲。真面目に言うのであればこちらも真面目に答えるとしよう。
「俺は澄玲に触れてみたいと思うぞ? と言うか俺の世界で澄玲みたいな可愛い娘がそんなことを言うと勘違いしたバカから襲われるかもしれないぞ?」
「男性から襲われるかぁ、それはそれで最高なんだけど… 幸介さんもボクを襲ってくれるのかな?」
「俺の場合は俺から見たら『お父さんと娘』って感じだからな、今は若い姿になったとは言え、頭の中身は40代のままなんだよ…」
「そっか…でも『襲わない』とは言わないんだね。じゃぁこの世界に慣れて襲いたくなったらいつでも来て!ボクはいつでもウェルカムだからね!」
親指を立てる澄玲だが、この世界の女性はこれが普通なんだろうか?咲良みたいな清楚な女性もいるものだと信じたい…
「ちなみに咲良も幸介さんとならOKみたいだから、いつでも襲っていいからね!」
『いいからね!』じゃねぇよ! 大人しそうに見える咲良でもそうならこの世界はこういう感じなんだろうな…
「あ、そう言えば襲う襲わない関係なしにして、俺のスマホは使えるのか?」
襲いたくなったら『連絡する』って事を思ったら思い出した。俺のスマホはおそらく使えないと思うがそうなると連絡手段がまったくないってことになる。
「幸介さんの世界でもスマホってあるんだね。でも違う世界のものだし使えないと思うよ。それも入院中に用意する事になってるから心配しなくていいよ。それにボクと咲良の連絡先も入れておくからいつでも連絡してね!」
「わかった、新しく貰ったら連絡しよう」
「約束だよ!絶対だよ! しなかったら泣くからね!」
「わかったわかった… いつになるかわからないが連絡するから楽しみに待っとけ」
わーいわーい! とはしゃいでる澄玲。これがこの世界の23歳なのかと思うと頭が痛くなってきた…
「よし!それじゃ話す事も話したし聞くことも聞いた事でご飯にしよ!咲良を呼んでくるからちょっと待っててね!」
俺の返事も聞かずに澄玲は飛び出して行った… 数分後元気な澄玲と息を切らした咲良がやってくる。
「咲良… お疲れ様…」
澄玲に振り回されている咲良を労う。咲良は私なんかにもったいない…と言うが、アレに付き合わされてるのかと思うと咲良に同情してしまう…
「ところでご飯にするのはいいんだが、俺はこれから検査になるんだろ?検査前に飯を食っても大丈夫なのか?」
「問題ないよ?ご飯を食べても検査の数値には影響しないから遠慮しないで食べるといいよ」
「そうか、それでどこに行くんだ? と言っても俺はこの辺の事を何も知らないから2人にお任せになるんだがな」
「ふっふっふ、そこは心配しなくて大丈夫!咲良が良い所に連れてってくれるはず!」
自信満々に他力本願の澄玲と今にも泣きそうな咲良…
「心配しなくていいぞ咲良、さすがに世界が変われば食べ物も変わるというわけでもないだろう。ここで1番美味しい物を食べたら、それが普通になると困るので、無難な店に連れてってくれ。金なら心配するな、ここの大先輩が快く奢ってくれるはずだ」
『ゑ”』と言いそうな感じで澄玲が振り向く、「当然だよなセ・ン・パ・イ」と俺が言うと渋々了承した。
3人で駐車場に向かい、クルマに乗り込む。俺は飯にした後、食後の休憩を取ってそのまま病院に送るのだと言う。俺の車は厳重に保管しておくので鍵だけ渡してもらえればいいというので、それに任せる事にした。
薄々感じていたが、タイヤを使っている車は俺だけで他のクルマはタイヤがなかった。
その事を2人に聞いてみると、2人が子供の頃はタイヤの車が使われてたのだと言う。この20年で技術が発展し今ではタイヤを使う者は昔懐かしさに使う者だけだと言う。今の外見の俺みたいな若者が使うことはまず無いらしい。
さて、今運転しているのは咲良だ、俺と澄玲は後部座席に座っているわけなんだが、どうも澄玲との距離が近すぎる…
「澄玲さんや、何で俺との距離がこんなに近いのかね?」
「やだよぉ幸介さん、そんなのボクだって幸介さんに触ってほしいからに決まってるじゃないかい」
「そんなに触りたければ自分で触ればいいんじゃないか?」
「なんで触ってくれそうな男が隣にいるのに1人で触るような悲しい事をしなきゃいけないのさ!幸介さんが大人しく触ってくれればいいんじゃないか!」
「なぁ咲良、何で俺が怒られなきゃいけないんだ?」
俺は理不尽な怒りを受けた事を咲良に言っても、それは私ばかり触ってもらって先輩が触ってもらえないから拗ねてるんですよ。と返される。
俺はしかたがないと思いつつ澄玲の頭を撫でてやる。どうもそれだけでは不満なようだ…
「幸介さん、頭だけじゃなく他の所も触ってほしいなぁ なんて…」
我儘娘がうるさいので肩に手を乗せ俺の胸へと引き寄せる。澄玲は吃驚してたが、俺の胸に顔をうずめ大人しくしている。
「咲良~ ボクのこの時間を少しでも長くしたいからゆっくり走っていいからね」
「やかましい!そんなにヤりたいのなら俺が退院したら2人共相手するからそれまで我慢するんだ」
「え!本当にHしてくれるの!絶対だからね!嘘ついたら武装して咲良と殴り込みに行くからね!」
男性が少ないと、女性はそこまで野獣になるものなのか?男女比1:1の世界では考えられないと思ったが、よく考えればたまに女性に乱暴した。とかニュースになってるからそれみたいなものなのかな?と思ったりもした。
そんな事をしている内に目的地に到着する。見た感じではファミレスっぽい建物だが、この世界に家族で外食したりするんだろうか?とも思ったりしている。
「本当はもっと美味しい店も知ってるんだけどね。幸介さんが最初にそれを食べてそれが普通になったら困るから、無難にファミレスにしてみたよ」
「へぇ~こっちの世界にもファミレスってあるんだな」
男親はなしで、母親と娘だけで来たりするのかな? そんな事を考えながら澄玲に連れられて店に入る。
「さすがに幸介さんを他のお客に見せると大騒ぎになるから個室にしたからね」
ふむ、つまり澄玲みたいな野獣が大勢いるわけか…
「何か失礼な事考えてるみたいだけど、それがこの世界では普通だからね!咲良みたいなのもいるけど表に出さないだけで心の中ではボクよりすごい事を考えているはずだよ」
「先輩… 私はそこまではしたなくないです…」
「ふっ… 幸介さんの前だからってカッコつけなくてもいいんだよ。咲良がむっつりなのはみんな知ってるからね!」
なるほど咲良はむっつりさんか。俺が頷いてると咲良は顔を赤くしながら全力で拒否した。
そんなこんなやりとりをしつつ席に着きメニュー表を見る。どうやら食事は向こうの世界と変わりないようで安心した。
ただ、女性客だらけの店の割にはガッツリ系のメニューが多いのが気になった。
俺がどれにするか悩んでいると澄玲はすでに決まったようだ。咲良もまだ悩んでいる。
「咲良、幸介さんの前だからってそんなに悩むことないでしょ?そんなに悩むのなら『いつもの』でいいんじゃないの?」
「せ・先輩!さすがにそれを幸介さんの前で食べるのは勇気がいります…」
「ん? いつも頼んでるのがあるのならそれでいいんじゃないか?俺は別に咲良がこのガッツリ系を3人前食べていると言われてもすこし驚く位で済むぞ?」
「えぇ… さすがにそんなに食べませんけど、こんなに食べる女性って変じゃないですか?」
「何が変なのかわからないが、男も女も生きる為に食べなければいけない。体を動かさない仕事をしてる者がそれを食べると太りそうな気もするが、咲良はそう見えないし仕事で動いているのかもしくは他で体を動かしているのかのどちらかだと思うのだが。とりあえず俺はこの体がどんなものか試すのもあるから、いつも頼んでいる量+一品にしてみるかな」
「えぇ!幸介さんって普段はそんなに食べないの?」
「俺は体を動かす仕事じゃないから、そんなに食べない。それと歳のせいもあって昔より小食になってる。40代の俺を知らない2人にとっては不思議に見えてもしかたないかな」
注文が決まりテーブルの上にあるタッチパネルで注文する。料理を運ぶのも機械が運んでくれるから店員と顔を合わせる必要もなく、騒ぎになりにくいのだと澄玲は言う。
しばらくして注文した品が届き、食事を楽しむことになる。幸いこの体は顔だけ若返ってるわけではなく内部も若返っているようだ。
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「それじゃボク達はここまでだね、幸介さん新しいスマホが届いたら連絡忘れないでよ!」
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累計400万ポイント突破しました。
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