奏でる二人

なゆみ♪

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第1章 奏でる二人

あとから入ってきた打楽器メンバー

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正式入団の手続き諸々、やってくれたのは、当時副代表をしていた、三上真由。彼女はコントラバスとエレキベースの担当。
「ベースとたいこって、私の中では一緒だと思ってるから、よろしくね!」
彼女は、底抜けの明るさと細やかな気配りと、ときに毒舌があらわれる、そんなキャラの女性だった。
彼女も美加と同じくバツイチで、現在は、三上義行という、スタジオ兼居酒屋を経営している人と婚姻関係にある。
週末には、ライブをやったりしているそうだ。
「じつは、打楽器に一人メンバーがいたんだけど、心の不調でお休みしててね、でも近々戻るそうだから、またよろしくね」
そうなんだ。誰なんだろう?どんな人なんだろう?

その戻ってくる打楽器メンバーは、山崎まゆみという。たまたま、菜由美は練習に参加できず、初対面は美加が担当した。あとからLINEで様子を聞く。
「あ、会ったよ。なゆちゃんと同じ何でもできる人だよ。」
「そうなんだ。」
「自分でスネア持っててね、かなり上手いんだけど。。」
美加は何かを感じていた。それが、のちに二人の楽器活動を狂わせることになるのは、そのときは気づくことはなかった。ただ、何かの違和感は感じていた。

次の練習時には菜由美もまゆみに会うことができた。
イベントや演奏会の譜割り等をどう進めるか話をした。

美加は、入団当初からパートリーダーを引き受けてくれていた。菜由美もそんな美加を支える形で運営のお手伝いをしていた。まゆみもそんな二人に寄り添うように‥は見えなかった。
彼女は、ずっと一人でやってきたのだという。だから、楽器運搬などは、管楽器の人を割り振ってみんなでやっていた。しかし、やはり打楽器パートというのは特殊で一人では運営が難しい。新メンバーが入ることもあったが、すぐに辞めてしまっていたのだと言う。そんな中、心に不調をきたし、休んでいたのだそうだ。

美加はそんなまゆみを受け入れようと必死だった。気分をあげて、「ランチでもしませんか~?」とか言ってみたりもした。だけど、なんだか反応はイマイチだった。

イベントの譜割りはなんとか出来た。菜由美は鍵盤中心だが、『365日の紙飛行機』のドラムを担当。あとは、美加とまゆみで、ドラムを均等に割り振った。
いろんな楽器を担当できるようにしたい。美加も菜由美もそう考えていた。
まゆみは、今まで一人だったから、全部ドラムだったのだと思う。だから、まゆみにとっても、違うパートが選べるのは良いことだと、美加も菜由美もそう思っていた。

イベントはとある商業施設の海に面した展望デッキで行われた。強風に煽られ、譜面が吹っ飛ばされないよう必死に対策しながら、でも楽しく演奏ができた。
アリオーソに入団して、最初の本番。
美加と菜由美の二人の楽器活動は、こうして、歯車が回り始めた。

次は、翌年2月の定期演奏会。
この譜割りも、考えていかないとならなかった。

音楽監督の望月俊和が言うように、先生(プロの打楽器奏者)と、松田悠人というアマチュアだがドラムが上手い人にお願いする形らしい。だが、団員がまずは好きなパートを選んで、残ったパートをその二人の賛助に頼めばよい、ということになった。

シベリウス作曲『フィンランディア』。トロンボーンやユーフォニウムが多いこの楽団には、あってる曲だと思う。菜由美はティンパニをやりたいと思っていた。
「ティンパニは、スタジオにはないから、いつもみっちゃんにやってもらってるんだよ」
俊和はそう言っていた。みっちゃんとは、そのプロの打楽器奏者、秋山美智恵のこと。
でも、菜由美はどうしてもやりたかった。合奏時には、楽譜を見ながらエアで参加していた。演奏会近くになれば、どこかの学校をお借りして、吹奏楽部の楽器をお借りすることで、本物楽器で練習が出来るが、それまではエアだった。

まゆみは、スネアやドラムしか出来ないと自分で思い込んでいるフシがあった。今まで一人だったから、吹奏楽としてはメインの、スネアやドラムばかりをやってきたのは仕方ない。
彼女は、スネアやドラムを中心に、だが、『3つのジャポニスム』や『フィンランディア』では、違う楽器を担当した。

美加もスネアやドラムが得意なので、何曲か死守した。彼女はブランクに負い目を感じていて、最初はドラム担当も少なかったが、賛助の悠人に、「そこはドラムは団員だろ」と言われ、『情熱大陸セレクション』という曲でドラムを担当することになった。

飲み会や忘年会が行われて、私たち二人もだんだん、アリオーソに馴染みつつあった。一方で、あとから来た打楽器奏者まゆみの扱いに戸惑う感じも少しあった。
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