天の街

ゲキブノウサギ

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歯車

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響「えぇっ!!」

思わず私らしからぬ奇声を上げてしまったのには理由がある。

響「そんな、なんで今日図書館お休みなんですか…」

巨大な丸い球体型の建物のドアには「本日臨時休館」と書いてある。
とりあえずトンボ羽根とゴーグルを脱いで、休館の理由を聞こうとあたりを見渡す。と、滑降してきた世話焼きかまちょの、おっと、「師匠の」姿が。

千夏「よいしょっと、響、やっばりあなたは優しい子ねぇ、私が追いつくまで待っててくれるんですもの」
響「違います断じて違います」
千夏「じゃあどうして中に入らないのってあらまぁ今日休館なのねざ~んね~ん」
響「ツブす(小声)」
千夏「あらあら響ったら師匠に対しての敬意さえ忘れてしまったのかーしーらー笑?」
響「潰し申し上げまするお師匠様笑」
千夏「あら?誰か呼んでるわよ。ほら後ろ、女の子」
響「会話のキャッチボールくらいして下さい師匠」

この人は世話焼きとかかまちょとかなんかじゃない。
ただの人の話を聞かない気取り野郎だ。
振り返るとそこに、こちらに手を振るたくましさ溢れる茜色の髪の幼なじみ、ツバキが。

椿「キョーさまー」
響「あ、なんだ椿か、後ろの女の子って誰かと思った。あ、毎回言うけどそれと」
椿「キョー様呼びをやめて欲しい、だろ。いやだ」
響「なんで」
椿「気に入ってるし、言いやすいんだ」
響「椿が気に入ってても私は嫌なんですが」
椿「何で」
響「だって」

後ろからの視線を感じる。

千夏「ぷぷっ。キョゥサマァ」
響「必殺!お黙んなさいスマーッシュ!」

振り返りざま、足蹴りをくれてやる。だってこういう馬鹿にする奴がいるからだ
が、攻撃はあっさり片手で止められた。悔しい。無性に悔しい。ま、これも日常茶飯事なのだが。

響「ふー、んでどうしたのわざわざ」
椿「あぁ、いや、今日から長期休暇だしな。一緒に下界見物したいと思って誘いに来ただけだ」
響「えー…」
椿「あっもし良ければ千夏さんもご一緒いかがです?」
千夏「私もいいの?あらじゃあお言葉に甘えまして」
響「師匠も付いてくるんですかー…」
椿「乗り気じゃなさそうだな、嫌なのか?大丈夫だお師匠さんがついてるぞ」
千夏「お師匠さんがついてるわよ」
響「いやそのお師匠さんがついてるから不安の種が倍増してるんですよ」
椿「不安の種?不安なのか」
響「なんで下界なんか見に行くのにそんなテンションあげてるのか意味が分からなくて」

雲の隙間からしか見れない世界なんて興味ないのに何故わざわざ危ない真似をする

椿「いつか軍人に選ばれるかもしれないからじゃないか。その時のための訓練だ」
響「…あーなるほど」
椿「大丈夫、ぱっと行ってじっくり見てちゃっと帰ってくるだけだから。なっ?」
響「わかったよ」
椿「よぅし!じゃ早速行こう、ゴーグル取ってくるから先飛んでて!」
響「はーい、じゃ先行きますかー師匠」
千夏「お友達、待っていたほうがいいんじゃない?」
響「え?あ、はい。…どうしたんですか、いつもは真っ先に飛びたがる師匠が」
千夏「私はいつも通りよ」

その時






下からの衝撃をもろに食らった地面は、信じられない方向に傾いた

空中に放り出された私は意識が千切れそうになる感覚の中でそのまま地球に引っ張られていった




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