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ヒロインよ、王太子ルートを選べ!~本編~
今度こそ伝える私の気持ち③
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「いい? 私が毎日あれだけ色々教えてあげているんだから、言う通りにするのよ。アンタがボヤボヤしているから、私みたいな人に付け込まれるんだからね!」
「はいはい、分かりました……」
最近は、毎朝の身支度をしながらメイからのお説教を受けるのが恒例です。意外と仕事のできるメイはいつも鬼のようなスピードで仕事をこなし、空いた時間でこうして私に色々と情報をインプットしてきたり、私のベッドやソファでゆっくりくつろいだりしています。
メリハリのある人生でうらやましいですね……。
「今日はお忍びでデートなんでしょう? いいじゃないの。チャンスだわ!」
「お忍びデートね……どうせレオ様は目立ってしまうから、お忍びにならないわ。メイも知っているでしょ」
「なーによ! 私がレオと街デートしたことあるからって、やきもちかしら? とにかくチャンスよ。レオがびっくりするくらい、どんどん迫っていかなくちゃ」
メイに言わせると、私はとんでもない奥手らしいです。
これではレオ様の方も押すに押せない。だからとにかく隙を作って、自分からレオ様に積極的に迫る。それがメイの作戦。久しぶりの二人の時間を楽しく過ごそうと思ったのに、こんなミッションまで課されて気が重いわ。
メイに乱暴に髪の毛を梳かされながら、今日の私のやるべきことを頭の中で復習します。
「そもそも、アンタまだレオに好きだって伝えていないんでしょ? 論外ね。今日ちゃんと気持ちを伝えてこないと、部屋に鍵かけて閉め出すからね」
どうしてこの人は、こんな我が物顔で私のお部屋に入り浸っているのかしらね。でも、メイからもこうやって後押しをもらったことだし、いよいよ今日こそは絶対にレオ様に告白します!
膝下くらいまでのシンプルなワンピース。つばが広めな帽子にはグリーンのリボン。髪の毛はカールさせて、うなじは絶対に見せるべきだと主張するメイの言う通り、横に流してまとめます。
待ち合わせ場所は、よりによって王都中央広場の噴水前。『ムーンライトプリンセス』の王太子ルートの出会いイベントを起こすため、私とレオ様が早朝から集合したところです。
あの時はレオ様が、『ねみー』って言いながら登場しましたね。王太子オーラを隠せず、キラキラパウダーをふりまきながらガラ悪く現れたレオ様に、特注で作ったサングラスを手渡したのでした。
「コレット、お待たせ」
噴水の縁石に座る私の横から、肩にポンと手を置く人。もちろんレオ様です。
「おはようございます、レオ様。今日はどこに行きますか?」
「ちょっとコレットを太らせないといけないからな。もちろん食べ歩き。ドーナツ買うだろ?」
ヴォルタース邸で塔に閉じ込められてすっかり痩せてしまった私を心配して、今日は食べ歩きデートのようです。心配しなくても、あれ以来ランチは毎日大盛で食べているから、すっかり元通りの体なのですけどね。
さて、いよいよここから勝負が始まります。メイに言われた通りに、やりますよ。
★メイの指示その一
『手をつないで、上目遣いでレオ様を見上げる』
えっ……いきなり難易度高いですね。レオ様から手を差し出されたら、スッと私の手を乗せるだけでいいのですけれど。自らつかむのか。左手にする? それとも右手? あの動いている手をつかまえるのが、まず難しくない?
歩きながら前後に揺らされているレオ様の手を見ていたら、振り子みたいでちょっと目が回ってきました。
「……コレット? どうした? 気分が悪いのか?」
「はっ、そんなことはないです! 大丈夫です! ちょっとレオ様の左手に……」
「左手?」
「……サングラスを渡そうかなって思って! どうぞ! レオ様、目立つから!」
ああ、失敗してしまいました。上目遣いどころか、手をつなぐ時点で失敗よ。私が差し出したサングラスをレオ様がつけてくれます。うん、どこからどう見ても海外マフィアですね!
★メイの指示その二
『食事の時は、わざと口の横に食べ物をくっ付けておく』
なにこれ? なんのため? 今からドーナツ食べるんだけど、どうやったら口の横にドーナツを固定できるの? ドーナツの串を頬に刺すわけにもいかないし、とりあえずトッピングのクリームだけでも付けておこうかしら。せっかくお化粧してもらったのに汚すの、いやね。
クリームを付けた間抜けなお顔で、レオ様の方を向いてみます。
「何やってんだ? バカだな」
「……ですよね。私もそう思います」
レオ様の左手が伸びてきて、ハンカチで口を拭いてくれました。このシチュエーションはどこかで見覚えがある気もするのだけど、何かの儀式でしたっけ?
メイの指示って、本当にこれで合っているのかしら。攻略対象五人全員からフラれたメイよりも、一瞬でエリオット様を虜にしたリンゼイの意見を聞くべきだったわ。
次は、指示その三ね。えっと、メモはどこかしら。
★メイの指示その三
『背中を向けて、うなじを強調すべし』
なるほど。これなら簡単ね。ベンチに並んで座っているから好都合よ。少し背中を向けて、前かがみになった方がいいかしら。
「コレット……」
レオ様が気付いたわ! どう? 私のうなじ、見てくれた?
「はいはい、分かりました……」
最近は、毎朝の身支度をしながらメイからのお説教を受けるのが恒例です。意外と仕事のできるメイはいつも鬼のようなスピードで仕事をこなし、空いた時間でこうして私に色々と情報をインプットしてきたり、私のベッドやソファでゆっくりくつろいだりしています。
メリハリのある人生でうらやましいですね……。
「今日はお忍びでデートなんでしょう? いいじゃないの。チャンスだわ!」
「お忍びデートね……どうせレオ様は目立ってしまうから、お忍びにならないわ。メイも知っているでしょ」
「なーによ! 私がレオと街デートしたことあるからって、やきもちかしら? とにかくチャンスよ。レオがびっくりするくらい、どんどん迫っていかなくちゃ」
メイに言わせると、私はとんでもない奥手らしいです。
これではレオ様の方も押すに押せない。だからとにかく隙を作って、自分からレオ様に積極的に迫る。それがメイの作戦。久しぶりの二人の時間を楽しく過ごそうと思ったのに、こんなミッションまで課されて気が重いわ。
メイに乱暴に髪の毛を梳かされながら、今日の私のやるべきことを頭の中で復習します。
「そもそも、アンタまだレオに好きだって伝えていないんでしょ? 論外ね。今日ちゃんと気持ちを伝えてこないと、部屋に鍵かけて閉め出すからね」
どうしてこの人は、こんな我が物顔で私のお部屋に入り浸っているのかしらね。でも、メイからもこうやって後押しをもらったことだし、いよいよ今日こそは絶対にレオ様に告白します!
膝下くらいまでのシンプルなワンピース。つばが広めな帽子にはグリーンのリボン。髪の毛はカールさせて、うなじは絶対に見せるべきだと主張するメイの言う通り、横に流してまとめます。
待ち合わせ場所は、よりによって王都中央広場の噴水前。『ムーンライトプリンセス』の王太子ルートの出会いイベントを起こすため、私とレオ様が早朝から集合したところです。
あの時はレオ様が、『ねみー』って言いながら登場しましたね。王太子オーラを隠せず、キラキラパウダーをふりまきながらガラ悪く現れたレオ様に、特注で作ったサングラスを手渡したのでした。
「コレット、お待たせ」
噴水の縁石に座る私の横から、肩にポンと手を置く人。もちろんレオ様です。
「おはようございます、レオ様。今日はどこに行きますか?」
「ちょっとコレットを太らせないといけないからな。もちろん食べ歩き。ドーナツ買うだろ?」
ヴォルタース邸で塔に閉じ込められてすっかり痩せてしまった私を心配して、今日は食べ歩きデートのようです。心配しなくても、あれ以来ランチは毎日大盛で食べているから、すっかり元通りの体なのですけどね。
さて、いよいよここから勝負が始まります。メイに言われた通りに、やりますよ。
★メイの指示その一
『手をつないで、上目遣いでレオ様を見上げる』
えっ……いきなり難易度高いですね。レオ様から手を差し出されたら、スッと私の手を乗せるだけでいいのですけれど。自らつかむのか。左手にする? それとも右手? あの動いている手をつかまえるのが、まず難しくない?
歩きながら前後に揺らされているレオ様の手を見ていたら、振り子みたいでちょっと目が回ってきました。
「……コレット? どうした? 気分が悪いのか?」
「はっ、そんなことはないです! 大丈夫です! ちょっとレオ様の左手に……」
「左手?」
「……サングラスを渡そうかなって思って! どうぞ! レオ様、目立つから!」
ああ、失敗してしまいました。上目遣いどころか、手をつなぐ時点で失敗よ。私が差し出したサングラスをレオ様がつけてくれます。うん、どこからどう見ても海外マフィアですね!
★メイの指示その二
『食事の時は、わざと口の横に食べ物をくっ付けておく』
なにこれ? なんのため? 今からドーナツ食べるんだけど、どうやったら口の横にドーナツを固定できるの? ドーナツの串を頬に刺すわけにもいかないし、とりあえずトッピングのクリームだけでも付けておこうかしら。せっかくお化粧してもらったのに汚すの、いやね。
クリームを付けた間抜けなお顔で、レオ様の方を向いてみます。
「何やってんだ? バカだな」
「……ですよね。私もそう思います」
レオ様の左手が伸びてきて、ハンカチで口を拭いてくれました。このシチュエーションはどこかで見覚えがある気もするのだけど、何かの儀式でしたっけ?
メイの指示って、本当にこれで合っているのかしら。攻略対象五人全員からフラれたメイよりも、一瞬でエリオット様を虜にしたリンゼイの意見を聞くべきだったわ。
次は、指示その三ね。えっと、メモはどこかしら。
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なるほど。これなら簡単ね。ベンチに並んで座っているから好都合よ。少し背中を向けて、前かがみになった方がいいかしら。
「コレット……」
レオ様が気付いたわ! どう? 私のうなじ、見てくれた?
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