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ヒロインよ、王太子ルートを選べ!~本編~
呪いのドレスと、殿下との仲直り?①
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『天災は忘れたころにやってくる』
先人の残した言葉は偉大です。今日の私は、この言葉を噛みしめています。まさに、天災は忘れたころにやってくるのです。
……呪いのドレスが届きました。
覚えている方いらっしゃいますか? そろそろ皆様忘れていた頃ですか?
入学前に殿下に連れられて採寸に行った、デビュタント用のドレスです。白のドレスに金色の刺繍を施し、合わせるアクセサリーはエメラルドグリーン。そう、まさに、レオナルド殿下の髪と瞳の色です。これを着ることで、ヤクザ……いえ、殿下に忠誠を誓う羽目になりませんでしょうか。不安です。
今年で十六歳、少し早めのデビュタント。
私コレット=リード、殿下の色に染まった、呪いのドレスをまとって参加いたします!
先日エリオット様にフラれ、婚約者であるレオナルド殿下と言い合いをし、私はふと思ったのです。一体私がやりたいことってなんだっけ、と。一度原点に戻ってみようと思って頭を整理したのです。
ヒロインに、王太子ルートを選択して欲しかったんじゃなかったっけ?
ところがどうでしょう。ここ最近のヒロイン・メイ様の横暴な振る舞いに嫌気がさし、これ見よがしに殿下に近づく彼女の姿に怒りすら覚えていました。これでは本末転倒です。
もう一度確認しましょう。メイ様には王太子ルートを選んでもらいたい! それが私の望みだったはず! だから、ヒロインと殿下が腕を組んで歩いていようが、王宮で一緒に暮らしていようが、私には関係ないの。だって、二人が結ばれたら万々歳なんですもの。
ドレスの試着を終えて一息ついていると、侍女が入って来て言いました。
「コレット様、王太子殿下がお見えです」
は? 王太子殿下が、お見えですって?
「……ごめんなさい。最近私、耳が仕事をしてくれないみたいなの。もう一度言って下さる?」
「えっと……王太子殿下が……コレット様にお会いになりたいといらっしゃっています」
ちょっと待ていっ! いつも何か用事がある時は昼でも夜でも好きな時に、私を王宮に呼び出していたのはどこのどいつだーい! しかも先日の大ゲンカの後で、どの面下げてきていらっしゃるのかしら。
「今日は会えないと伝えてちょうだ……」
「コレット! 階下にレオがいたから連れてきたぞ!」
ジェレミーお兄様が私の言葉を遮り、連れてきた殿下を部屋に引き入れてから、風のように去っていきました。お兄様、あなたの超・合理的な性格は尊敬しますが、もう少し人の感情の機微というものを学んでいただけませんか。そして侍女たち! こんな年頃の男女を残して、全員いなくならないで!
私の部屋に、私と殿下だけがポツンと残されました。
……殿下が手に持っているのは、鉢植え? なんなの? そんなにその鉢植えにこだわる理由って何? もしかしてその鉢植えも、ドレスと一緒で呪いの花が咲くの?
「コレット……」
ヤクザが口を開きます。声ちっさ!!
「殿下。急にどうなさったのですか? 私、きちんとお伝えできていませんでしたでしょうか。馬に蹴られてしまえと申し上げましたが」
精一杯の嫌味を言ったけど、殿下はいつもと様子が違います。怒るわけでもなく、ひるむわけでもなく。ただただ手に抱えた鉢植えを持って、ジリジリとこちらに近づいてきます。
なんだかこの光景、見覚えがありますね。なんだっけ……あ! バスケットボールの1on1です! なるほど、鉢植えを持ったまま突破したい殿下と、それを阻止したい私。お互いちょっと腰を落として、右に左に動けるようにしておくべきですね。さあ、来い! ファイッ!
「コレット。話したいことがあって来た。少し時間をもらってもいいだろうか」
あれ? 1on1やらないの? 落としたら割れちゃう分、バスケより鉢植えの方が緊迫感があっていいかなって思ったんですけど。っていうか、どんだけその鉢植えを私の部屋に置きたいねん!
「今日は、コレットと話したいことがいっぱいある」
だから殿下、声ちっさ!! 私はそんなに話したいことは無いのですが。ちょっと、ちょっと殿下! 近いです! 来ないで! やめてぇぇぇーっ!
先人の残した言葉は偉大です。今日の私は、この言葉を噛みしめています。まさに、天災は忘れたころにやってくるのです。
……呪いのドレスが届きました。
覚えている方いらっしゃいますか? そろそろ皆様忘れていた頃ですか?
入学前に殿下に連れられて採寸に行った、デビュタント用のドレスです。白のドレスに金色の刺繍を施し、合わせるアクセサリーはエメラルドグリーン。そう、まさに、レオナルド殿下の髪と瞳の色です。これを着ることで、ヤクザ……いえ、殿下に忠誠を誓う羽目になりませんでしょうか。不安です。
今年で十六歳、少し早めのデビュタント。
私コレット=リード、殿下の色に染まった、呪いのドレスをまとって参加いたします!
先日エリオット様にフラれ、婚約者であるレオナルド殿下と言い合いをし、私はふと思ったのです。一体私がやりたいことってなんだっけ、と。一度原点に戻ってみようと思って頭を整理したのです。
ヒロインに、王太子ルートを選択して欲しかったんじゃなかったっけ?
ところがどうでしょう。ここ最近のヒロイン・メイ様の横暴な振る舞いに嫌気がさし、これ見よがしに殿下に近づく彼女の姿に怒りすら覚えていました。これでは本末転倒です。
もう一度確認しましょう。メイ様には王太子ルートを選んでもらいたい! それが私の望みだったはず! だから、ヒロインと殿下が腕を組んで歩いていようが、王宮で一緒に暮らしていようが、私には関係ないの。だって、二人が結ばれたら万々歳なんですもの。
ドレスの試着を終えて一息ついていると、侍女が入って来て言いました。
「コレット様、王太子殿下がお見えです」
は? 王太子殿下が、お見えですって?
「……ごめんなさい。最近私、耳が仕事をしてくれないみたいなの。もう一度言って下さる?」
「えっと……王太子殿下が……コレット様にお会いになりたいといらっしゃっています」
ちょっと待ていっ! いつも何か用事がある時は昼でも夜でも好きな時に、私を王宮に呼び出していたのはどこのどいつだーい! しかも先日の大ゲンカの後で、どの面下げてきていらっしゃるのかしら。
「今日は会えないと伝えてちょうだ……」
「コレット! 階下にレオがいたから連れてきたぞ!」
ジェレミーお兄様が私の言葉を遮り、連れてきた殿下を部屋に引き入れてから、風のように去っていきました。お兄様、あなたの超・合理的な性格は尊敬しますが、もう少し人の感情の機微というものを学んでいただけませんか。そして侍女たち! こんな年頃の男女を残して、全員いなくならないで!
私の部屋に、私と殿下だけがポツンと残されました。
……殿下が手に持っているのは、鉢植え? なんなの? そんなにその鉢植えにこだわる理由って何? もしかしてその鉢植えも、ドレスと一緒で呪いの花が咲くの?
「コレット……」
ヤクザが口を開きます。声ちっさ!!
「殿下。急にどうなさったのですか? 私、きちんとお伝えできていませんでしたでしょうか。馬に蹴られてしまえと申し上げましたが」
精一杯の嫌味を言ったけど、殿下はいつもと様子が違います。怒るわけでもなく、ひるむわけでもなく。ただただ手に抱えた鉢植えを持って、ジリジリとこちらに近づいてきます。
なんだかこの光景、見覚えがありますね。なんだっけ……あ! バスケットボールの1on1です! なるほど、鉢植えを持ったまま突破したい殿下と、それを阻止したい私。お互いちょっと腰を落として、右に左に動けるようにしておくべきですね。さあ、来い! ファイッ!
「コレット。話したいことがあって来た。少し時間をもらってもいいだろうか」
あれ? 1on1やらないの? 落としたら割れちゃう分、バスケより鉢植えの方が緊迫感があっていいかなって思ったんですけど。っていうか、どんだけその鉢植えを私の部屋に置きたいねん!
「今日は、コレットと話したいことがいっぱいある」
だから殿下、声ちっさ!! 私はそんなに話したいことは無いのですが。ちょっと、ちょっと殿下! 近いです! 来ないで! やめてぇぇぇーっ!
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