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1章
Drip.3
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あんな別れ方をした為、藍介はこれまで会うことを躊躇っていた。しかし、『藍介さんのコーヒー……飲みたい』と言っていたことを聞くと、その要望に応えてやりたいと思った。それだけではない、酷い別れ方した事を謝りたい、そして『同性愛者』だと言うことをきちんと話したい……そう思って今日会うことを承諾し決意した。
「久しぶりだ、芹菜。具合は大丈夫なのかい?……一応、類から聞いている」
小柄な芹菜は、藍介の身長から25センチも差がある。なので、視線を合わせるため中腰になり話しかけ、唯一のソファ席へ誘導するように片手で導線を指し示しながらゆっくりとした足取りで歩き始めた。
「今日は調子がいいのよ。驚かせたわよね、ごめんなさい。」
「そうか。でも無理はしないように。あ、類から俺のコーヒーが飲みたいと言っていたときいた、何故だい?」
芹菜と類が席へ座るとオーダー表を取り出してペンで記入しながら、疑問に思っていた事を吐き出した。
「コレ見て。この頃、コーヒーを煎れる藍介さんはとても輝いてたわ。そして美味しかった」
芹菜は鞄から1枚の写真を取り出してテーブルへ置いた。そこに写ってたのは、芹菜と藍介、まだ小さい類の3ショットで、2人の手にはコーヒーが入ってるコップがあった。
「懐かしいね、ずっと持っていたのかい?」
「そうよ、だって私は……ううん、なんでもないわ。それより、早くくださらない?藍介さんのコーヒー」
ね?と、同意を求めるように類へ視線を送っていた。そして類も口角を上げ笑みを浮かべ「そうだね」と返事をしていた。他愛のない親子の会話が弾んできたところで、藍介はその場を離れてカウンター内へと入り準備を始めた。
準備の最中、カウンターまで2人の話し声と笑い声が聞こえてきた、この穏やかな光景がいつまでも続けばいいと願いながら、オーダーを受けた『藍介さんのコーヒー』という名のブレンドコーヒーを、少しずつハンドドリップしていった。店内にはコーヒー独特の香りが漂って、居合わす者の五感を刺激した。
「いい香りね」
芹菜はだいぶ深い香りになってきた頃、そろそろかとカウンターの方を見遣りながらポツリと呟いた。
「おじさんのコーヒーの美味しい匂いがする」
一緒に会話を楽しんでる類の絶賛する言葉も耳に入ってきて、一瞬胸がドキッと騒がしくなった。
程なくして、コーヒーが煎れ終わるとお盆にそれらを乗せ、サービスでシフォンケーキも一緒にのせ席まで運び、それぞれの前へ並べた。
「待たせたね、どうぞ召し上がれ」
藍介は、にこやかに微笑み、2人がコーヒーを堪能する姿を見ては嬉しそうに笑みを浮かべた。その後、言うことを聞かない双眼は類の姿ばかりを捉え、いつの間にか熱視線を送り、好きな類を前にして、大人らしからぬ興奮状態が出てしまわないよう、注意を払った。
コーヒーを提供してから1時間ほどが経過した頃、飲み終えて寛いでる様子を確認すれば、ソファ席へ歩み寄り、類の隣へと腰掛けた。
「類、芹菜……話がある。俺はな、俺は……実は同性愛者なんだよ。あの日酷い別れ方をした理由はソレなんだ」
「……」
「……?ん、いや……見ていれば誰でもわかる事だよ。あの頃から俺は気づいてた」
何の話かと思えば……と、もうとっくに知り得ている事を耳にしたので、二人の間が変に空いてる事に首輪傾げた。そんな少しスベる話もシトシトと降る雨が優しく包み込んでくれた。
「うそ……えっ、知っていたのかい?」
「まぁ、俺への愛情が他と違っていたし、なんか愛を感じてたよ……おじさんの『好き』はダダ漏れだった、そうだよね、母さん?」
「ふふ、そうね。いつから!?って少しショックだったのを覚えてるわ」
同性愛者だと思いきってカミングアウトしたつもりが、既に知られていたことで、これまでずっと悩んできたことだったためにスーッと気が抜けてしまった。
「それなら話が早い。もう1つ……あるのだよ。」
ついにこの時が来た…と胸ザワザワと落ち着きなく騒ぎだし、五月蝿く鳴り響く胸の音をかき消す勢いで伝えた。
『俺は類が……類が、……好きなんだよ!』
一瞬雨音しえも消えたように、室内には藍介の声だけが響いた。
「あはは、だからさっきダダ漏れだって、知ってるって言ったよ。おじさん天然?」
「ほんとよね。藍介さん、私は応援するわよ。」
さらに、類が好きだという告白に、類と芹那は視線を合わせてクスッと笑った。
告白するまで、どんな返事が帰ってくるのか、どんな雰囲気になるのかとても胸が張り裂けそうなほどドキドキした。
「えっ、あ……じゃあ……?」
「ん、おじさ……藍介さん、昔のことは消せないけど、俺も実は藍介さんのことずっと好きだったんだ。」
「る、類……っ!……あれ?いま…名前……っ!?」
類からの返事に思わず抱きしめてしまいそうになるのをグッと抑え、嬉しさから双眼に涙浮かべくしゃりと笑み零した。そのあと間を置き名前を呼んで貰えたことに対して追って感情が溢れてきた。
「落ち着いてよ藍介さん。さっきの返事、俺でよければ藍介さんの隣に居させて」
「あっ、んっ……あ、うっ…ありがとう」
いい歳した大人ではあるが、感情に素直で浮かべていた涙がポロポロと頬を伝い、鼻水も垂れぐしょぐしょな顔を晒した。それを見た類は「可愛いなぁ」と思いながら見つめ、ポケットからハンカチを取り出すとそのぐしょぐしょになった顔を優しくふきあげた。
「藍介さんの涙は綺麗だね。涙流すなら俺が拭う、悲しい涙は流させないよ。藍介さんをずっと笑顔で居させたい」
そう言い拭ったあと、髪、額、耳、鼻、頬、唇へと優しく口付けの雨を降らせた。そして、頬へ両手を添えると鼻先を擦り合わせた。
「る、い……?俺も類が笑顔で居られるよ、に2人で幸せに……すっ、…うっ」
「ん、二人三脚で……」
甘い雰囲気で2人の時間のように流れていく今がとても幸せだった。そんな2人を容認し見持っていた芹那はその甘い雰囲気も恍惚な表情で見遣りひとつ目標を心の中で誓った。
そのあと類は芹那を病院へ送り届けるから、と一旦珈琲店を後にした。
「久しぶりだ、芹菜。具合は大丈夫なのかい?……一応、類から聞いている」
小柄な芹菜は、藍介の身長から25センチも差がある。なので、視線を合わせるため中腰になり話しかけ、唯一のソファ席へ誘導するように片手で導線を指し示しながらゆっくりとした足取りで歩き始めた。
「今日は調子がいいのよ。驚かせたわよね、ごめんなさい。」
「そうか。でも無理はしないように。あ、類から俺のコーヒーが飲みたいと言っていたときいた、何故だい?」
芹菜と類が席へ座るとオーダー表を取り出してペンで記入しながら、疑問に思っていた事を吐き出した。
「コレ見て。この頃、コーヒーを煎れる藍介さんはとても輝いてたわ。そして美味しかった」
芹菜は鞄から1枚の写真を取り出してテーブルへ置いた。そこに写ってたのは、芹菜と藍介、まだ小さい類の3ショットで、2人の手にはコーヒーが入ってるコップがあった。
「懐かしいね、ずっと持っていたのかい?」
「そうよ、だって私は……ううん、なんでもないわ。それより、早くくださらない?藍介さんのコーヒー」
ね?と、同意を求めるように類へ視線を送っていた。そして類も口角を上げ笑みを浮かべ「そうだね」と返事をしていた。他愛のない親子の会話が弾んできたところで、藍介はその場を離れてカウンター内へと入り準備を始めた。
準備の最中、カウンターまで2人の話し声と笑い声が聞こえてきた、この穏やかな光景がいつまでも続けばいいと願いながら、オーダーを受けた『藍介さんのコーヒー』という名のブレンドコーヒーを、少しずつハンドドリップしていった。店内にはコーヒー独特の香りが漂って、居合わす者の五感を刺激した。
「いい香りね」
芹菜はだいぶ深い香りになってきた頃、そろそろかとカウンターの方を見遣りながらポツリと呟いた。
「おじさんのコーヒーの美味しい匂いがする」
一緒に会話を楽しんでる類の絶賛する言葉も耳に入ってきて、一瞬胸がドキッと騒がしくなった。
程なくして、コーヒーが煎れ終わるとお盆にそれらを乗せ、サービスでシフォンケーキも一緒にのせ席まで運び、それぞれの前へ並べた。
「待たせたね、どうぞ召し上がれ」
藍介は、にこやかに微笑み、2人がコーヒーを堪能する姿を見ては嬉しそうに笑みを浮かべた。その後、言うことを聞かない双眼は類の姿ばかりを捉え、いつの間にか熱視線を送り、好きな類を前にして、大人らしからぬ興奮状態が出てしまわないよう、注意を払った。
コーヒーを提供してから1時間ほどが経過した頃、飲み終えて寛いでる様子を確認すれば、ソファ席へ歩み寄り、類の隣へと腰掛けた。
「類、芹菜……話がある。俺はな、俺は……実は同性愛者なんだよ。あの日酷い別れ方をした理由はソレなんだ」
「……」
「……?ん、いや……見ていれば誰でもわかる事だよ。あの頃から俺は気づいてた」
何の話かと思えば……と、もうとっくに知り得ている事を耳にしたので、二人の間が変に空いてる事に首輪傾げた。そんな少しスベる話もシトシトと降る雨が優しく包み込んでくれた。
「うそ……えっ、知っていたのかい?」
「まぁ、俺への愛情が他と違っていたし、なんか愛を感じてたよ……おじさんの『好き』はダダ漏れだった、そうだよね、母さん?」
「ふふ、そうね。いつから!?って少しショックだったのを覚えてるわ」
同性愛者だと思いきってカミングアウトしたつもりが、既に知られていたことで、これまでずっと悩んできたことだったためにスーッと気が抜けてしまった。
「それなら話が早い。もう1つ……あるのだよ。」
ついにこの時が来た…と胸ザワザワと落ち着きなく騒ぎだし、五月蝿く鳴り響く胸の音をかき消す勢いで伝えた。
『俺は類が……類が、……好きなんだよ!』
一瞬雨音しえも消えたように、室内には藍介の声だけが響いた。
「あはは、だからさっきダダ漏れだって、知ってるって言ったよ。おじさん天然?」
「ほんとよね。藍介さん、私は応援するわよ。」
さらに、類が好きだという告白に、類と芹那は視線を合わせてクスッと笑った。
告白するまで、どんな返事が帰ってくるのか、どんな雰囲気になるのかとても胸が張り裂けそうなほどドキドキした。
「えっ、あ……じゃあ……?」
「ん、おじさ……藍介さん、昔のことは消せないけど、俺も実は藍介さんのことずっと好きだったんだ。」
「る、類……っ!……あれ?いま…名前……っ!?」
類からの返事に思わず抱きしめてしまいそうになるのをグッと抑え、嬉しさから双眼に涙浮かべくしゃりと笑み零した。そのあと間を置き名前を呼んで貰えたことに対して追って感情が溢れてきた。
「落ち着いてよ藍介さん。さっきの返事、俺でよければ藍介さんの隣に居させて」
「あっ、んっ……あ、うっ…ありがとう」
いい歳した大人ではあるが、感情に素直で浮かべていた涙がポロポロと頬を伝い、鼻水も垂れぐしょぐしょな顔を晒した。それを見た類は「可愛いなぁ」と思いながら見つめ、ポケットからハンカチを取り出すとそのぐしょぐしょになった顔を優しくふきあげた。
「藍介さんの涙は綺麗だね。涙流すなら俺が拭う、悲しい涙は流させないよ。藍介さんをずっと笑顔で居させたい」
そう言い拭ったあと、髪、額、耳、鼻、頬、唇へと優しく口付けの雨を降らせた。そして、頬へ両手を添えると鼻先を擦り合わせた。
「る、い……?俺も類が笑顔で居られるよ、に2人で幸せに……すっ、…うっ」
「ん、二人三脚で……」
甘い雰囲気で2人の時間のように流れていく今がとても幸せだった。そんな2人を容認し見持っていた芹那はその甘い雰囲気も恍惚な表情で見遣りひとつ目標を心の中で誓った。
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