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ヒーラーの手
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森の霧はすっかりと晴れ、ガストラの道案内もあるので迷わずにハイビビス達が待っている森の入口に出られるはずだった。
なのに一行は森にでた途端に砂浜に足を踏み入れていた。
「なんだこれ?違う場所に出ちまったのか?」
海が太陽を反射し光り輝いている。サリサは額に手を当てて遠くをみる仕草をしてみたが一面海が広がっているだけだった。
「おかしい。こんなことハザから聞いてない。森はどこから出ても町に繋がる道に出る魔法がかかってる」
ガストラが落ち着きなく周囲をキョロキョロと見回す。後ろを見ると森ではなく砂が一面に広がっている
「もしやカメリア様とサリサさんが聖樹を手に入れたため森の結界が解除され、本来通じる道にたどり着いたのでは?」
ツキカゲは両腕を組み、この不思議な現象について説明がつくように考えてみたが自信はなさそうだった。
「まさか?だってあたいら普通にしてただけだぞ」
「でも実際こうして外に出ておりますので……」
三人があれこれ話し合っている中、カメリアとサリサはあることに気づいた。
「もしかして、転移の魔法かもしれませんわ。ガストラさんが仰っていたじゃないですか。人間は森の外にでるようになっているって。私達は聖樹の若木を受け取るため森の中に留まれましたが、用事が終わったから外に出されてしまったのでしょう」
「まさか飛ばされる場所はランダムなのかよ?ガストラ、そうなのか?」
「お、おれも森の外に飛ばされた人間がどこに行くかは知らない。森の入り口だと思ってた。おれも初めて森の外に出たから」
「とにかく人を探すことを優先すべきかと思います。ここがどこか分かりませぬが誰かがいるはずです」
「そうだな。ツキカゲのいう通りだ。誰か見つけて、町か村の場所を教えてもらおうぜ」
四人は人を探して歩いているうちに港にたどり着いた。
***『港町・ラタトスク』
***
港には大きな帆船がたくさん並んでいた。
「へぇー!すげえなぁ!あたい、あんなにデカい船なんて初めて見たぞ!」
「私もですわ。子供の頃にお父様達と海に行ったことはありますが、あんなに大きな船は初めて見ました」
「これは……かなり大きな船ですね。客船でしょうか」
港には巨大な船が停泊していた。マストが六つもある。船乗りたちが忙しそうに積荷の整理をしている。
「なあ、兄ちゃん達!あたいら冒険者なんだ!この辺りのことまったく知らねーんだ!この近くに泊まれる場所とかねーか?」
「なんだ!ネーチャン、この辺りは商業都市って言われるくらい有名なんだぞ。ここを知らないとか田舎娘だな!しゃーねーな!ここのことはもう目をつぶっても歩けるから俺っちの地図やるよ」
彼らは突然現れ、質問してきたサリサ達に驚いていたが親切にこの港町の地図を譲ってくれた。
「この地図の赤丸のところが飯が旨くて安い宿だ!」
と言って、さらに宿の場所まで教えてくれた。
船乗りたちは一つ目のガストラのことも気にする様子がなかった。ここには様々な人種が集まり、モンスターを連れている人間も珍しくなかった。船に乗って他の大陸に移動する商人も多く集まる場所のため、とても賑やかな雰囲気に包まれている。
さっそく紹介された宿で部屋をとろうとした時に宿の主人が難しい顔をした。
「アンタ達、モンスターを連れているならテイマー証、もしくはテイマーギルドの会員証はあるかい?この町はモンスター連れは珍しくないが、その分、決まりが多くてね。宿ではテイマー証がないとモンスターと一緒に泊まれないんだよ」
「そ、そんなこと知りませんでしたわ!」
「おいおい!マジかよ!ツキカゲ、どうしよう……」
「……」
助けを求められてツキカゲもこれには困った。カメリアやサリサが自国の制度のことを知らないのに自分がこの国について知ることなどもっと少ないのだ。
「ガストラさん、申し訳ありませんが何か身分を証明するものは持っていますか?人間だと証明できればきっと……」
「持ってない。おれ、森の宝を持って帰って捕まったときを考えて証明書は何も持ってなかった」
八方塞がりになってしまった四人。困っている様子を見かねた宿の主人がこう言った。
「冒険者ギルドに行けばテイマー証明書を発行してくれるよ。ただモンスターに関する試験があるから一発合格は難しいかもしれない」
「試験を受けますわ!だってガストラさんは仲間ですもの」
「そうだ!三人いれば一人は合格できるはずだ!あたいも受けるぞ」
「わたしも微力ながら協力させていただきます」
こうして三人はテイマーとしての試験を受けることになった。
******
なのに一行は森にでた途端に砂浜に足を踏み入れていた。
「なんだこれ?違う場所に出ちまったのか?」
海が太陽を反射し光り輝いている。サリサは額に手を当てて遠くをみる仕草をしてみたが一面海が広がっているだけだった。
「おかしい。こんなことハザから聞いてない。森はどこから出ても町に繋がる道に出る魔法がかかってる」
ガストラが落ち着きなく周囲をキョロキョロと見回す。後ろを見ると森ではなく砂が一面に広がっている
「もしやカメリア様とサリサさんが聖樹を手に入れたため森の結界が解除され、本来通じる道にたどり着いたのでは?」
ツキカゲは両腕を組み、この不思議な現象について説明がつくように考えてみたが自信はなさそうだった。
「まさか?だってあたいら普通にしてただけだぞ」
「でも実際こうして外に出ておりますので……」
三人があれこれ話し合っている中、カメリアとサリサはあることに気づいた。
「もしかして、転移の魔法かもしれませんわ。ガストラさんが仰っていたじゃないですか。人間は森の外にでるようになっているって。私達は聖樹の若木を受け取るため森の中に留まれましたが、用事が終わったから外に出されてしまったのでしょう」
「まさか飛ばされる場所はランダムなのかよ?ガストラ、そうなのか?」
「お、おれも森の外に飛ばされた人間がどこに行くかは知らない。森の入り口だと思ってた。おれも初めて森の外に出たから」
「とにかく人を探すことを優先すべきかと思います。ここがどこか分かりませぬが誰かがいるはずです」
「そうだな。ツキカゲのいう通りだ。誰か見つけて、町か村の場所を教えてもらおうぜ」
四人は人を探して歩いているうちに港にたどり着いた。
***『港町・ラタトスク』
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港には大きな帆船がたくさん並んでいた。
「へぇー!すげえなぁ!あたい、あんなにデカい船なんて初めて見たぞ!」
「私もですわ。子供の頃にお父様達と海に行ったことはありますが、あんなに大きな船は初めて見ました」
「これは……かなり大きな船ですね。客船でしょうか」
港には巨大な船が停泊していた。マストが六つもある。船乗りたちが忙しそうに積荷の整理をしている。
「なあ、兄ちゃん達!あたいら冒険者なんだ!この辺りのことまったく知らねーんだ!この近くに泊まれる場所とかねーか?」
「なんだ!ネーチャン、この辺りは商業都市って言われるくらい有名なんだぞ。ここを知らないとか田舎娘だな!しゃーねーな!ここのことはもう目をつぶっても歩けるから俺っちの地図やるよ」
彼らは突然現れ、質問してきたサリサ達に驚いていたが親切にこの港町の地図を譲ってくれた。
「この地図の赤丸のところが飯が旨くて安い宿だ!」
と言って、さらに宿の場所まで教えてくれた。
船乗りたちは一つ目のガストラのことも気にする様子がなかった。ここには様々な人種が集まり、モンスターを連れている人間も珍しくなかった。船に乗って他の大陸に移動する商人も多く集まる場所のため、とても賑やかな雰囲気に包まれている。
さっそく紹介された宿で部屋をとろうとした時に宿の主人が難しい顔をした。
「アンタ達、モンスターを連れているならテイマー証、もしくはテイマーギルドの会員証はあるかい?この町はモンスター連れは珍しくないが、その分、決まりが多くてね。宿ではテイマー証がないとモンスターと一緒に泊まれないんだよ」
「そ、そんなこと知りませんでしたわ!」
「おいおい!マジかよ!ツキカゲ、どうしよう……」
「……」
助けを求められてツキカゲもこれには困った。カメリアやサリサが自国の制度のことを知らないのに自分がこの国について知ることなどもっと少ないのだ。
「ガストラさん、申し訳ありませんが何か身分を証明するものは持っていますか?人間だと証明できればきっと……」
「持ってない。おれ、森の宝を持って帰って捕まったときを考えて証明書は何も持ってなかった」
八方塞がりになってしまった四人。困っている様子を見かねた宿の主人がこう言った。
「冒険者ギルドに行けばテイマー証明書を発行してくれるよ。ただモンスターに関する試験があるから一発合格は難しいかもしれない」
「試験を受けますわ!だってガストラさんは仲間ですもの」
「そうだ!三人いれば一人は合格できるはずだ!あたいも受けるぞ」
「わたしも微力ながら協力させていただきます」
こうして三人はテイマーとしての試験を受けることになった。
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