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扉をあけて
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「今日、来た先生って変わってるね。住み込みできた先生なんだって看護師さんが言ってたよ」
アンジュが寝るまでの間のおしゃべりは新しい医師のことだった。
「……へー。住み込みの。夜に腹が痛くなっても安心だな」
サリサがカメリアに向かって目配せしたが、彼女は気付かなかった。
夜中、眠っているカメリアをサリサが身体を揺さぶって起こした。カメリアはしょぼしょぼして眠たい目をこすりながら身体を起こした。
「カメリア、起きろよ。あの先生に会いに行くぞ」
「んん?それは明日にでも……」
「カメリアの護衛だったんだろ?普通、護衛の仕事が終わったら他の奴の護衛をするもんだ。あの先生の目的によってはあたいらの脱走を手伝ってくれるかもしれないぞ。まだ腹いたが続いてる奴もいるし、あたいらが腹が痛いから薬が欲しいって理由で夜中に先生の所に行くのは自然だろ?」
「あ」
カメリアは昼間のツキカゲの言葉を思い出した。確かに彼は夜を担当する医者だと言っていた。騒ぎをおこすなとも言っていた。細い希望の糸だがカメリアはそれを掴むことにした。
「行ってみましょう。私、お腹が痛くなってきましたから」
カメリアもベッドから抜け出し、サリサと部屋を抜け出して彼がいそうな診察室に向かった。
二人がノックしてドアを開けると、ツキカゲがいた。彼は白衣を脱いでシャツ姿だった。
「どうしましたか?」
「すみません。私、お腹が痛くて。痛み止めの薬を貰いたいなと思ってきたんですけど」
「分かりました。座ってお待ち下さい」
二人が話している間、サリサがドアの鍵をかけた。これで外からは鍵を持ってこなければ開ける事ができなくなった。だがツキカゲは無表情を崩さない。カメリアにとっては懐かしさを感じるほど変わっていなかった。
「あたいにも薬を頼むよ。先生さん」
「……」
「ツキカゲ、彼女は私の」
「今はヤマダでございます。カメリアさん、お薬を渡しますからゆっくりお休みください」
そう言って彼が薬をしまっているカバンから取り出したのは二通の手紙だった。サリサの方には白い紙を小さく折って包んだもの。
「なんだ?これ?」
サリサが紙を広げてみると中には茶色の粉が入っていた。
「胃薬です。馴染みがないでしょうが漢方という異国でよく使われる薬です」
サリサは指で摘んでそれを舐めてみると独特の香りと味がして顔をしかめた。
「まずい」
サリサは正直に言った。
「それではおやすみなさい」
そう言うとツキカゲは薬の入った紙包みをカメリアにも手渡して来た。
「お大事に」
二人は廊下に出て部屋に戻ろうとするがカメリアが立ち止まって振り返った。ドアを開けて見送るツキカゲが静かに立っていた。
「ツキカゲ、あなたは」
言いかけた言葉を遮って彼は「また明日」と言って診察室に入ってしまった。
アンジュが寝るまでの間のおしゃべりは新しい医師のことだった。
「……へー。住み込みの。夜に腹が痛くなっても安心だな」
サリサがカメリアに向かって目配せしたが、彼女は気付かなかった。
夜中、眠っているカメリアをサリサが身体を揺さぶって起こした。カメリアはしょぼしょぼして眠たい目をこすりながら身体を起こした。
「カメリア、起きろよ。あの先生に会いに行くぞ」
「んん?それは明日にでも……」
「カメリアの護衛だったんだろ?普通、護衛の仕事が終わったら他の奴の護衛をするもんだ。あの先生の目的によってはあたいらの脱走を手伝ってくれるかもしれないぞ。まだ腹いたが続いてる奴もいるし、あたいらが腹が痛いから薬が欲しいって理由で夜中に先生の所に行くのは自然だろ?」
「あ」
カメリアは昼間のツキカゲの言葉を思い出した。確かに彼は夜を担当する医者だと言っていた。騒ぎをおこすなとも言っていた。細い希望の糸だがカメリアはそれを掴むことにした。
「行ってみましょう。私、お腹が痛くなってきましたから」
カメリアもベッドから抜け出し、サリサと部屋を抜け出して彼がいそうな診察室に向かった。
二人がノックしてドアを開けると、ツキカゲがいた。彼は白衣を脱いでシャツ姿だった。
「どうしましたか?」
「すみません。私、お腹が痛くて。痛み止めの薬を貰いたいなと思ってきたんですけど」
「分かりました。座ってお待ち下さい」
二人が話している間、サリサがドアの鍵をかけた。これで外からは鍵を持ってこなければ開ける事ができなくなった。だがツキカゲは無表情を崩さない。カメリアにとっては懐かしさを感じるほど変わっていなかった。
「あたいにも薬を頼むよ。先生さん」
「……」
「ツキカゲ、彼女は私の」
「今はヤマダでございます。カメリアさん、お薬を渡しますからゆっくりお休みください」
そう言って彼が薬をしまっているカバンから取り出したのは二通の手紙だった。サリサの方には白い紙を小さく折って包んだもの。
「なんだ?これ?」
サリサが紙を広げてみると中には茶色の粉が入っていた。
「胃薬です。馴染みがないでしょうが漢方という異国でよく使われる薬です」
サリサは指で摘んでそれを舐めてみると独特の香りと味がして顔をしかめた。
「まずい」
サリサは正直に言った。
「それではおやすみなさい」
そう言うとツキカゲは薬の入った紙包みをカメリアにも手渡して来た。
「お大事に」
二人は廊下に出て部屋に戻ろうとするがカメリアが立ち止まって振り返った。ドアを開けて見送るツキカゲが静かに立っていた。
「ツキカゲ、あなたは」
言いかけた言葉を遮って彼は「また明日」と言って診察室に入ってしまった。
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