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10(ロードリック視点)

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柔らかく温かい二人だけの世界。

「ふにゅー、ふこー」

俺の隣で眠るアレックスは寝息を立てながら、時々口とほっぺを動かして夢の中で何かを食べていた。
キミのみる夢の中で食事を共にしている相手は俺だと嬉しい。

「アレックス、今日、キミを訪ねて来た者は本当に友達なのか」

自画自賛になるが、私は結界を張るのが得意だ。だから信頼されて呪われた道具達の呪いを薄めるために清浄の地に家を立てて呪われた道具の浄化を許されている。
並の悪魔なら敷地に足を踏み入れた途端に弾かれるはずだ。しかしそれを破って家に踏み込んだとなると相手は高位の悪魔。
魔王がアレックスを気遣い、派遣した者だろうか。
彼が起きている間に聞けば良いことなのだが、本当にただの友達なら俺の質問は彼を信じていないように思われるかもしれない。

そんな葛藤など知らないアレックスは夢でまた何かを食べているようで可愛い口を開けていた。
のんきな姿を見ていると腹立たしくも愛おしく、どんな反応を見せてくれるのかと口に指を差し込んでしまった。

ぬるりと動く舌が指に絡まり、食べ物かを確かめるかのように上下の歯に軽く挟まれた。
味わっているのかぬらぬらと舌が這うように動く。眉頭同士が引っ付きそうなほど眉間に皺が寄った。美味しくなかったようで俺の指は柔らかい舌で口の外に押し出された。

「ん……。ロードリック様……」

寝言で俺の名を呼ぶキミ。
夢の中でも俺と過ごす時間を作ってくれていると思うと気分が良い。

「キミに俺以外の者と過ごしてほしくないと言ったらどうする」

寝ているアレックスにそう問いかけても返事はない。ふにゃりと笑い、何かを食べるように口を動かしていた。

「……キミは俺の妻だ」

魔族なのに穏やかに尽くしてくれる。淫魔でありながら操を立ててくれる彼と結婚できた俺は世界一の果報者だろう。だが彼と過ごす時間が増えれば増えるほど誰にも渡したくないという感情が湧いてくるのだ。
彼が他の悪魔と親しくしていることが気に食わないし、人間の友達がいずれできるだろうと思うと嫉妬の炎が燃え上がる。
俺にとってアレックスは理想そのもので男の欲をぶつけたくても汚したくない。
今日は酒の力を借りずに抱き合うことができた。口づけもできた。だがその次に進むのが怖い。しかし進まなければ彼は淫魔の本能で誰かの下に組み敷かれ、取られてしまう妄執に取り憑かれてしまう。
大切にしたい。汚したい。愛し合いたい。

「この感情は私の身勝手な思いなのだろうか」

そっと彼を抱きしめると彼は寝ぼけているようで俺の胸に顔を埋めた。そしてまた寝息を立て始めたので俺は彼の額に口づけをして目を閉じた。

窓辺に飾っていた植物の浄化が予定より早く終わり、今日は二つほど呪われた物を持って帰っている。呪われた道具を盗まれないようにという名目で明日、目がさめたらもっと強い結界を貼ろう。
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