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☆★☆☆★☆
僕の働き先は人間の家。いや、正確には人間界に派遣された魔族と人間界との諍いを収めるため人間への淫魔身御供と言った方が正しいかも。
魔王様の部下によると
「よろしいですか。魔王様の臣下でもある魔族が人間界の一部を支配しているのですが、近年、人間との攻防で彼等の軍事力はかなり削がれてしまいました。それは向こうも同じことで和平交渉がもちかけられたんです。人間と魔族の共生などおかしいと思いでしょうが、異世界では前例が幾つかありましてね。それに習って和平同盟の整備を進めるとどうしても魔族と人間が仲良しアピールをする必要になります」
魔界や僕が知る人間界とは違う人間の異世界の話まででてきて僕は目が回りそうだけど頑張って話を聞いた。
「だから美しき淫魔の貴方は、人間に嫁ぎ人間達を骨抜きにしてください。つまり魔族側が優位の結婚をして和平を結んでいるとアピールするのです。そのためにあなたにはまず夫になる人間に抱かれてきてください。淫魔らしくあらゆる手段を投じて下僕へと堕とす男です。あとは次々に人間を手中に納めて魔界のために働く配下を増やしてください。名門淫魔の家の血筋で頑張ってくださいね」
そりゃ、僕は独特の魅力があるって言われるよ。ぽっちゃり少年体型と女の子のような童顔だから。
僕の見た目はラベンダーアッシュのサラサラロングヘアと同じ色の大きな目。この髪の色がお母様譲りで魔界でも珍しくて、お母様の元で働くお姉さま達が羨ましがってくれた。
さらに顔は子供の頃と変わらず女子みたい顔のままだ。呪いの力で思春期前に成長が止まってしまったから骨格は未熟な少年。しかもぽっちゃりというかおデブゆえに胸には脂肪がついて女性のように見える。とはいえお腹も出ているしお尻も脂肪たっぷりだ。
魔王様の愛人からは外れたけど魔王様の駒になるなんて……はぁ。
「お話は分かりましたし断るつもりはないんですけど……僕は男ですし、経験がない淫魔でいいんですか?」
「魔族は性別にこだわりませんし、人間側にも譲歩していただけねば和平は維持できないというのを知っていただけねばなりませんからね。その代わり、こちらは魔王様の側近となれる実力者であり、魔王様への忠誠を示すために汚れを遠ざけている淫魔を人間族との平和のために差し出すと伝えています」
それは嘘だ、とも言いにくいなぁ。魔王様への忠誠なんてあんまりないけどそんなこと言ったらやっぱり首が物理的に飛んじゃう。
「あなたは外見で魔王様の愛人候補で終わりましたが、魔王様をお支えするための教育を受けてきたいわゆるエリートの魔族。その知識を存分に活かし、人間界の政治を魔王様のために納めていってもいいのですよ?」
うぅ。確かに僕は勉強ばかりしてきた。魔王様の愛人になって常にお傍にいれるよう魔王様の盾となるための訓練も受けてきた。
お母様やお父様達は僕の意思を尊重してくれたけども教育係達やお姉様達は僕の呪いが解けたら魔王様の愛人になれるかもしれないって思っていたから他の子達より厳しい訓練も受けさせられた。
それが魔王様の愛人候補から外れた途端に今度は政治に使えそうだからってこんなことに……。
僕は目の前の悪魔の微笑みに逃げることもできず、ただ従うしかなかった。
☆★☆☆★☆
そして結婚式当日。結婚相手の情報として僕に教えられたのは40歳という年齢と仕事は魔法の研究者。闇属性の魔力持ちってこと。
この世界はすごく技術が発展していて写真や動画という姿を見れるものもあるのだけど結婚相手はそれが嫌いで僕は姿絵すら見たこと無い。
だからこの日が僕にとっても結婚相手の人間にとっても初の顔合わせ。
焦げ茶色の肩まで伸ばした髪に、光の宿らない煤けたような茶色の瞳。見下ろす鋭い目つきは悪魔も素足で逃げたくなるくらい怖い。
それになによりも体格が僕と真逆。背が高くて細くて筋肉質。まるで狼のような人だ。
考え事をしていても続く悪魔と人間の政略結婚式。この世界には男性用ドレスはほとんどなくて女性用の既製品すら胸、腰、お尻のバランスが合うサイズを探すのに時間がかかり、お化粧はファンデとチークつけ過ぎ、口紅の色も真っ赤だし、僕の自慢のロングヘアも適当な仕上がりでがっかりだった。これなら化粧だけでも自分でしたほうが綺麗なんだけどな。
式場は街の体育館だから魔族に配慮されているといえばそうなんだろし悪魔との結婚式を執り行うのは神父や牧師、導師など神様関係の職の人ではないらしくスーツを来たちょび髭のおじさんだった。
「ネオヒューン国代表ロードリック・ヴァンヴァイドと悪魔族代表アレックスは人間族と悪魔族の平和と繁栄の模倣となる家族になると誓いますか」
脂汗を額ににじませながらおじさんが言う。。
「誓います」
「誓います」
うーん、なんか背中がムズムズしちゃう。エッチなことは遠ざけられたけど愛や平和って言葉はやっぱり苦手だ。
「では婚姻の証である指輪を新婦の指に新郎がはめてください」
美しい刺繍入りのスーツ姿の女性が恭しく指輪の箱を持ってきてくれた。この国では新郎から新婦にだけ指輪をつけてあげる。
なんでも昔、戦争後に貧しかった男性は彼女と結婚式ができなかったけど愛の証として自分の名前を彫った指輪を贈ったことから『婚姻の証』の定番になったらしい。僕につける指輪はプラチナ製で小さなダイヤモンドらしき宝石がついている。そして彼のロードリックという名前も彫られてた。
僕の指のサイズに合わせてあるらしく、左手の中指にはめてもらうとピッタリだった。
僕達の住む魔界では中指に指輪をつけられると力を封印される。だから、あ、この人、悪魔のこと知っているんだって思った。
これは夫婦内での順位は人間側が上だっていう宣戦布告なのかな。僕的には魔族も人間のこともあんまり興味がないし痛いことも怖いこともされないならどっちの立場が上でも良いんだけどね。
「続いて、新婦によるキスで永遠の愛を誓ってください。これは公衆の面前で夫婦となったことを誓うためのものですからね」
これは指輪をもらった彼女も貧しくて自分の身ひとつだけしかないから永遠の愛を誓って貧しかった男性にキスをしたかららしい。
「はい……」
僕は緊張しながら相手をみた。肩幅くらいに足を広げ、膝を曲げてそこに手をつき背を軽く丸めている。身長差に配慮してくれるのはありがたいけど、そんな姿勢だと顔が近すぎてますます怖く見えるよぉ。
僕は意を決して彼の頬に唇をつけた。柔らかくて意外と温かくてちょっと安心する。
「これで貴方は夫に永遠の愛を誓ったことになりました。お幸せにっ」
ちょび髭のおじさんもクライマックスで疲れが限界まできているのか声が引きつっている。
「は、い」
僕はそう返事をするので精一杯だった。
祝福の言葉に僕の夫になった人は俯いたまま「ありがとうございました」とお礼を言う。隣で不機嫌そうな彼の気持ちも分かるよ。おめでとうと言われても嬉しさなんてないもの。
結婚式が終わったあとは着替えをしてそのまま場所をこじんまりとしたレストランに移動して二次会になった。立食パーティー形式で、テーブルの上には美味しそうな料理が並んでいる。
僕は夫になったヴァンヴァイド様と腕を組んでお祝いの言葉を貰いながら会場を歩いて挨拶していく。ああ、美味しそうなご飯がすぐ近くにあるのに食べれないなんて……。
ご馳走を横目にニコニコ笑ってヴァンヴァイド様の会社の同僚達にもご挨拶。人よりもご馳走にしか興味がなくてほとんど聞き流していた。
ただ一人だけ、僕の背中がゾワリとして無視できない人間がいた。桃色のキレイな髪の女の子。彼女は人間の救世主、いわゆる聖女だ。彼女の周りは光に包まれていて眩しいくらいに輝いている。
周りには男女問わず集まっていて主役の僕達よりも彼女が真の主役状態だ。
魔族と人間の結婚に普通は来ないと思うんだけどこれも和平同盟のアピールのためかな? 聖女と魔族が談笑できる関係ですよってかんじの。
僕も魔王様の愛人候補として育てられてきたから人間界の知識はある。だから聖女のこともよく習ってる。普通、聖女は神様から「魔族から人間を守りなさい」と力を授けられ光属性の魔法を使えて魔族を目の敵にしている。気品があって高潔で清らかで可憐な少女と聞いていたけど目の前の子はちょっと傲慢な感じ。
「あなたがアレックスさんですか。私、フローラ・ローゼンバーグといいますわ。以後よろしくお願いします。……あら、そちらの方は?」
「ロードリック・ヴァンヴァイドです。アレックスの夫になります」
いつの間にか背後に立っていたヴァンヴァイド様が聖女に挨拶をした。僕は話すタイミングを失ってちょっと焦りながら口を開く。
「初めまして、フローラ様。私は魔界からやってきましたアレックスです。こちらこそどうぞ宜しくお願い致します」
僕は丁寧に頭を下げた。
「ふーん、本当に魔族の方が人間の花嫁になるんですのね。でも、人間と魔族が争うのはもう終わりにしてお互い助け合えるような関係を築けたら素敵ですね」
フローラはそう言って微笑んだ。
その笑顔はすごく綺麗。まあ、僕のお姉様達にはこれくらいの笑顔の持ち主はいっぱいいるから見慣れてるけどね。
「えぇ、僕もそう思います。ただ、今はまだお互いに憎しみ合っている部分もあると思います。しかし、いつかきっと分かりあえる日が来ると信じています」
僕はそう答えた。これは本音。人間と魔族が仲良くならなきゃ僕が結婚させられた意味がなくなっちゃうし。
「では、またいずれお会いしましょう」
聖女はそう言うと他の人に囲まれて会場のどこかへ行ってしまった。
僕はまたヴァンヴァイド様と腕を組んでニコニコしながら話を聞き流す作業に戻った。
僕の働き先は人間の家。いや、正確には人間界に派遣された魔族と人間界との諍いを収めるため人間への淫魔身御供と言った方が正しいかも。
魔王様の部下によると
「よろしいですか。魔王様の臣下でもある魔族が人間界の一部を支配しているのですが、近年、人間との攻防で彼等の軍事力はかなり削がれてしまいました。それは向こうも同じことで和平交渉がもちかけられたんです。人間と魔族の共生などおかしいと思いでしょうが、異世界では前例が幾つかありましてね。それに習って和平同盟の整備を進めるとどうしても魔族と人間が仲良しアピールをする必要になります」
魔界や僕が知る人間界とは違う人間の異世界の話まででてきて僕は目が回りそうだけど頑張って話を聞いた。
「だから美しき淫魔の貴方は、人間に嫁ぎ人間達を骨抜きにしてください。つまり魔族側が優位の結婚をして和平を結んでいるとアピールするのです。そのためにあなたにはまず夫になる人間に抱かれてきてください。淫魔らしくあらゆる手段を投じて下僕へと堕とす男です。あとは次々に人間を手中に納めて魔界のために働く配下を増やしてください。名門淫魔の家の血筋で頑張ってくださいね」
そりゃ、僕は独特の魅力があるって言われるよ。ぽっちゃり少年体型と女の子のような童顔だから。
僕の見た目はラベンダーアッシュのサラサラロングヘアと同じ色の大きな目。この髪の色がお母様譲りで魔界でも珍しくて、お母様の元で働くお姉さま達が羨ましがってくれた。
さらに顔は子供の頃と変わらず女子みたい顔のままだ。呪いの力で思春期前に成長が止まってしまったから骨格は未熟な少年。しかもぽっちゃりというかおデブゆえに胸には脂肪がついて女性のように見える。とはいえお腹も出ているしお尻も脂肪たっぷりだ。
魔王様の愛人からは外れたけど魔王様の駒になるなんて……はぁ。
「お話は分かりましたし断るつもりはないんですけど……僕は男ですし、経験がない淫魔でいいんですか?」
「魔族は性別にこだわりませんし、人間側にも譲歩していただけねば和平は維持できないというのを知っていただけねばなりませんからね。その代わり、こちらは魔王様の側近となれる実力者であり、魔王様への忠誠を示すために汚れを遠ざけている淫魔を人間族との平和のために差し出すと伝えています」
それは嘘だ、とも言いにくいなぁ。魔王様への忠誠なんてあんまりないけどそんなこと言ったらやっぱり首が物理的に飛んじゃう。
「あなたは外見で魔王様の愛人候補で終わりましたが、魔王様をお支えするための教育を受けてきたいわゆるエリートの魔族。その知識を存分に活かし、人間界の政治を魔王様のために納めていってもいいのですよ?」
うぅ。確かに僕は勉強ばかりしてきた。魔王様の愛人になって常にお傍にいれるよう魔王様の盾となるための訓練も受けてきた。
お母様やお父様達は僕の意思を尊重してくれたけども教育係達やお姉様達は僕の呪いが解けたら魔王様の愛人になれるかもしれないって思っていたから他の子達より厳しい訓練も受けさせられた。
それが魔王様の愛人候補から外れた途端に今度は政治に使えそうだからってこんなことに……。
僕は目の前の悪魔の微笑みに逃げることもできず、ただ従うしかなかった。
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そして結婚式当日。結婚相手の情報として僕に教えられたのは40歳という年齢と仕事は魔法の研究者。闇属性の魔力持ちってこと。
この世界はすごく技術が発展していて写真や動画という姿を見れるものもあるのだけど結婚相手はそれが嫌いで僕は姿絵すら見たこと無い。
だからこの日が僕にとっても結婚相手の人間にとっても初の顔合わせ。
焦げ茶色の肩まで伸ばした髪に、光の宿らない煤けたような茶色の瞳。見下ろす鋭い目つきは悪魔も素足で逃げたくなるくらい怖い。
それになによりも体格が僕と真逆。背が高くて細くて筋肉質。まるで狼のような人だ。
考え事をしていても続く悪魔と人間の政略結婚式。この世界には男性用ドレスはほとんどなくて女性用の既製品すら胸、腰、お尻のバランスが合うサイズを探すのに時間がかかり、お化粧はファンデとチークつけ過ぎ、口紅の色も真っ赤だし、僕の自慢のロングヘアも適当な仕上がりでがっかりだった。これなら化粧だけでも自分でしたほうが綺麗なんだけどな。
式場は街の体育館だから魔族に配慮されているといえばそうなんだろし悪魔との結婚式を執り行うのは神父や牧師、導師など神様関係の職の人ではないらしくスーツを来たちょび髭のおじさんだった。
「ネオヒューン国代表ロードリック・ヴァンヴァイドと悪魔族代表アレックスは人間族と悪魔族の平和と繁栄の模倣となる家族になると誓いますか」
脂汗を額ににじませながらおじさんが言う。。
「誓います」
「誓います」
うーん、なんか背中がムズムズしちゃう。エッチなことは遠ざけられたけど愛や平和って言葉はやっぱり苦手だ。
「では婚姻の証である指輪を新婦の指に新郎がはめてください」
美しい刺繍入りのスーツ姿の女性が恭しく指輪の箱を持ってきてくれた。この国では新郎から新婦にだけ指輪をつけてあげる。
なんでも昔、戦争後に貧しかった男性は彼女と結婚式ができなかったけど愛の証として自分の名前を彫った指輪を贈ったことから『婚姻の証』の定番になったらしい。僕につける指輪はプラチナ製で小さなダイヤモンドらしき宝石がついている。そして彼のロードリックという名前も彫られてた。
僕の指のサイズに合わせてあるらしく、左手の中指にはめてもらうとピッタリだった。
僕達の住む魔界では中指に指輪をつけられると力を封印される。だから、あ、この人、悪魔のこと知っているんだって思った。
これは夫婦内での順位は人間側が上だっていう宣戦布告なのかな。僕的には魔族も人間のこともあんまり興味がないし痛いことも怖いこともされないならどっちの立場が上でも良いんだけどね。
「続いて、新婦によるキスで永遠の愛を誓ってください。これは公衆の面前で夫婦となったことを誓うためのものですからね」
これは指輪をもらった彼女も貧しくて自分の身ひとつだけしかないから永遠の愛を誓って貧しかった男性にキスをしたかららしい。
「はい……」
僕は緊張しながら相手をみた。肩幅くらいに足を広げ、膝を曲げてそこに手をつき背を軽く丸めている。身長差に配慮してくれるのはありがたいけど、そんな姿勢だと顔が近すぎてますます怖く見えるよぉ。
僕は意を決して彼の頬に唇をつけた。柔らかくて意外と温かくてちょっと安心する。
「これで貴方は夫に永遠の愛を誓ったことになりました。お幸せにっ」
ちょび髭のおじさんもクライマックスで疲れが限界まできているのか声が引きつっている。
「は、い」
僕はそう返事をするので精一杯だった。
祝福の言葉に僕の夫になった人は俯いたまま「ありがとうございました」とお礼を言う。隣で不機嫌そうな彼の気持ちも分かるよ。おめでとうと言われても嬉しさなんてないもの。
結婚式が終わったあとは着替えをしてそのまま場所をこじんまりとしたレストランに移動して二次会になった。立食パーティー形式で、テーブルの上には美味しそうな料理が並んでいる。
僕は夫になったヴァンヴァイド様と腕を組んでお祝いの言葉を貰いながら会場を歩いて挨拶していく。ああ、美味しそうなご飯がすぐ近くにあるのに食べれないなんて……。
ご馳走を横目にニコニコ笑ってヴァンヴァイド様の会社の同僚達にもご挨拶。人よりもご馳走にしか興味がなくてほとんど聞き流していた。
ただ一人だけ、僕の背中がゾワリとして無視できない人間がいた。桃色のキレイな髪の女の子。彼女は人間の救世主、いわゆる聖女だ。彼女の周りは光に包まれていて眩しいくらいに輝いている。
周りには男女問わず集まっていて主役の僕達よりも彼女が真の主役状態だ。
魔族と人間の結婚に普通は来ないと思うんだけどこれも和平同盟のアピールのためかな? 聖女と魔族が談笑できる関係ですよってかんじの。
僕も魔王様の愛人候補として育てられてきたから人間界の知識はある。だから聖女のこともよく習ってる。普通、聖女は神様から「魔族から人間を守りなさい」と力を授けられ光属性の魔法を使えて魔族を目の敵にしている。気品があって高潔で清らかで可憐な少女と聞いていたけど目の前の子はちょっと傲慢な感じ。
「あなたがアレックスさんですか。私、フローラ・ローゼンバーグといいますわ。以後よろしくお願いします。……あら、そちらの方は?」
「ロードリック・ヴァンヴァイドです。アレックスの夫になります」
いつの間にか背後に立っていたヴァンヴァイド様が聖女に挨拶をした。僕は話すタイミングを失ってちょっと焦りながら口を開く。
「初めまして、フローラ様。私は魔界からやってきましたアレックスです。こちらこそどうぞ宜しくお願い致します」
僕は丁寧に頭を下げた。
「ふーん、本当に魔族の方が人間の花嫁になるんですのね。でも、人間と魔族が争うのはもう終わりにしてお互い助け合えるような関係を築けたら素敵ですね」
フローラはそう言って微笑んだ。
その笑顔はすごく綺麗。まあ、僕のお姉様達にはこれくらいの笑顔の持ち主はいっぱいいるから見慣れてるけどね。
「えぇ、僕もそう思います。ただ、今はまだお互いに憎しみ合っている部分もあると思います。しかし、いつかきっと分かりあえる日が来ると信じています」
僕はそう答えた。これは本音。人間と魔族が仲良くならなきゃ僕が結婚させられた意味がなくなっちゃうし。
「では、またいずれお会いしましょう」
聖女はそう言うと他の人に囲まれて会場のどこかへ行ってしまった。
僕はまたヴァンヴァイド様と腕を組んでニコニコしながら話を聞き流す作業に戻った。
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