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33 一石二鳥
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サンド・フラワー
人間をダメにする私の大きなクッションの中身。
必ず物にしてやると心で誓う。
憧れのアサシンであるサーシャと合流した日に聞いた話だ。
手触り最高のトワンティーレプスの毛皮で作ったクッションカバーを抱きしめた。
「娘っ子、ここに材木を置いてくれ」
「はい!」
「こっちにレンガを」
「はい!」
「おーい! 漆喰がたらねー」
「は~い!」
職人達からの要望ある物資を、ロイ印のウエストポーチから、ポイポイと出した。
「この瓦礫をのけてくれるか?」
「は~い!」
「あっちのも頼む」
「はいは~い!」
雪はチラチラと降ってはいるが、吹雪いていないだけ良いです。
あちこちにある瓦礫を、ロイ印のウエストポーチに入れて行く。
「って! これってゴミよね? ゴミ箱じゃないってーの」
物資を出して、不要物を入れるってどーよ?
「ほらほら娘っ子、ちゃっちゃと片付けろよ」
職人達が簡単に言うし。
でも職人のおっちゃん達はいかつくて怖い。
だから不本意ながらも瓦礫をロイ印のウエストポーチに入れた。
「どうしたの? 凄く嫌そうな顔をしているじゃない」
声をかけてくれたのは、プリースト見習いのシシリーだった。
「私のウエストポーチはゴミ箱じゃないよ」
ブツブツと言うと、シシリーは気の毒そうに私を見る。
「そうそう! 皆、魔力が上がって見習いから昇格しそうよ。私も魔力が上がったんだ」
「・・・・私って初日くらいしか、まともに治癒師見習いのお仕事をしていないかも?」
「かもじゃなくて、していないよね」
なんか・・
血の気が引いていった。
だって今回は治癒師見習いとして参加している。
なのに、初日くらいしか、それらしき事をしていない。
「まぁ、今出来る事をするって事ね」
シシリーはポンっと私の肩に手を置いて去った。
これはヤバいのではなかろうか?
私の予定では、ここでの活躍して、治癒師としてブロンズカードに上がる予定だった。
トワンティーレプスの討伐は、花丸ものだ。
だけどその後は裁縫に没頭してしまったし。
「うん! 瓦礫を片付けよう。あははぁ・・」
乾いた笑い。
これもまた大切な、私だけができるお仕事だと思う。
かなり私なりに頑張りゴミ回収をしていると、鼻ピアスのガイルとダニエルが、町の人と何やら困り顔で話し込んでいる。
「どうしたのですか?」
また魔獣かもしれないし、それなら討伐に参加しないとと、声をかけた。
「薪が足らないんだよ。」
「ミラーにもせかされてな」
困ったと鼻ピアスのガイルは言う。
材木はあるが、それは壊れた家屋の為だ。
この時期に薪がないのは凍える。
助かった命が凍死になりかねないよ。
「森に行ってもな・・」
「炭とかもたらねー」
「炭焼きが盛んな村々がやられたしな」
あぁ・・こんなところでもサングリーズルの被害が連鎖しているんだ。
「カーラ! 狩りに行こう」
元気よくノアが走って来る。
トワンティーレプスの毛皮で作った帽子がよく似合う。
「狩りもいいけど、薪不足なんだって」
「だったら壊れた家の材木を使ったら?」
「それだ!」
ノアの発想に大賛成です。
壊れた家の廃材処分にもなるし、皆が凍えずにすむ。
これは一石二鳥。
一つ石をなげたら、鳥が二羽ゲットってね。
そうとなれば、うってつけの人がいるではありませんか。
私はヘルヴォルを探した。
彼の肩の上で、可愛いウサギ耳が見える。
「カーラよ。そろそろスパイシーケルウスが恋しいのじゃが」
「中々いないよね。いたら必ずリズさんにあげるのにね」
「探しにいくのがよいぞ」
リズとお喋りはここまで。
「ヘルヴォルさん、武器は斧ですよね」
「・・・あぁ」
ジッとヘルヴォルの大きな斧を見た。
「では私と来てください」
「なんじゃ? スパイシーケルウスを探しに行く気になったのかえ?」
リズはどれだけ食欲があるのか?
まぁ、本来はどデカいサングリーズルと言う魔獣だからな。
人や家畜を襲わないでいてくれるだけありがたいよね。
広い場所を探す。
そこに、ゴミ箱化したロイ印のウエストポーチから、瓦礫の木材を取り出した。
ロイ印のウエストポーチ、初の分別出しだろう。
これは凄いです。
積み上げられたばらばらの大きさの材木だ。
「斧って木を切るのが本来の姿だと思います。ヘルヴォルさんの武器ですが、それで薪の大きさくらいにやっちゃってください」
「・・・・・。」
「お願いします。」
大事な武器で木材をカットしてくれって、やはり無茶苦茶言っているのは承知だ。
マジに彼の沈黙が恐ろしい。
「カーラよ、こやつの斧は神武器じゃぞ」
「この量だし、神武器ならばよけいに人の為に必要な事。薪がなければ、凍えるし、お料理だってできないのです」
頭を下げる。
「ヘルヴォルよ! 旨いのが作れないのはいやじゃ」
「・・・うむ。仕方ない」
大きな斧を見つめていた。
って食事は大事。
うん! 大事です。
ヘルヴォルもリズみたく食欲旺盛ですものね。
本来は大きな狼なのだから。
これで薪の問題は片付いた。
私のウエストポーチから、大量の木材は消える。
しか~し!
レンガやら生活道具やらも、たくさん残っている。
生活用品とかは、町の人の物だ。
必要な物や、思い出のあるものもあるだろう。
広場に行こう。
分別できるのならば、出せるかもしれないし。
「ミラーさん、薪は今、ヘルヴォルさんが用意しています。」
「良かったわ。今夜も温かな料理が作れる」
人って変われるんだな~と思った。
そりゃ、変われない人もいると思う。
だけど良い方に変われたら素敵な事だよね。
「ミラーさん、壊れた家の人って集めれるかな?」
「食事の時は、かなり来るわよ。この前のトワンティーレプスのバーベキューの時は、ほとんどの人が来たんじゃないかな」
「なるほど!」
でも残り少ないトワンティーレプスはロイ爺さんに、解体用のナイフと交換してもらいたいしな。
皆を集められるお料理。
勿論、私は作れないが、完成形は知っている。
この世界で食べたことのない物は、たくさんあるしね。
「ミラーさん、食料を見てもいいですか?」
「いいわよ。まだたくさんあるし、その内、他の街からの支援物資も来るはず」
空き家に置いている大量の食料。
寒いから冷蔵庫みたいだ。
「へぇ~こんなのもあるんだ」
手にしたのは乾燥させた昆布。
そこで色々な調味料を、嗅いだり、なめたりする。
「これなら、私にも出来る・・かもしれない」
強く言いたいが、マジに料理には自信がない。
だが、出来る物もあるのよ。
ミラーに、食材のカットやら、調理の用意を頼む。
そしてできるだけ皆が食べに来て欲しいと伝えた。
私はノアを探す。
彼女は、動かぬ的で矢の練習中だった。
彼女の矢は真ん中に当たる。
それが動く的に当たれば表情はもっとはれるだろうが、真ん中に当たっているのにため息をついていた。
「ノア、もし手が空いていたら手伝ってください」
「いいわよ~」
心良く了解してくれる。
私達は町の外に出た。
「何々?」
「ここに瓦礫の花壇を作りたいのです」
「瓦礫の花壇? この雪原に?」
「そこだよね」
真っ白な雪が降り積もっている。
「こんな時こそレグルスじゃない」
「レグルス?」
「一応仲間になったし」
「そうみたいだね~」
私の知らない間にリズがイエスと言ったらしい。
一応カード上、仲間登録はした。
アイアンカードの聖騎士様だ。
物好きな方だと思うわ。
でもさ、彼が仲間ならば、フォレスタの街にも、サハラーァ王国にだって行けちゃうんだよね。
「よし! レグルスを呼んで来よう」
「僕に何か?」
「はぁ!」
思わず飛び上がった。
いかんいかん!
シグルーンが見ていたら、拳骨ものだ。
それくらい危機感なしの察知スキルも使っていなかったわ。
「ここの雪を一掃できる?」
「あ、はい。それならこの剣で」
何という便利な剣。
聞けば魔力ある剣。
魔剣だそうです。
光と炎の魔力を高め、魔物や魔獣を一掃する。
彼の剣も名前持ち。
私の鎖と同じだ。
彼は言った通りに雪をひと払いした。
そこにたくさんのレンガや漆喰や瓦の残骸をだした。
「これで花壇ですか?」
「はい。ある程度、小さく粉砕して、花壇の枠にしたらどうかな~って。」
「良いですね」
レグルスは笑顔で肯定してくれた。
「作っても雪で埋もれるわ」
「はい。種とか球根とか、この時期に植えるものがあったら、春には花が咲いたら良いのですが」
「お楽しみって感じ?」
「はい。皆さんビックリかもです」
種も球根もなければ、ただのミステリーサークルになるかもしれない。
「あの・・。僕に時間をくれませんか? 球根の手配を進めさせていただきます。」
「あ、はい。だったらそれまでに花壇の枠を作っても・・いけますか?」
雪で見えなくなったら困る。
「あ、はい。吹き飛ばさないで雪を溶かしてみますから。」
なんと器用なと尊敬の眼差しを向けると、レグルスは目をそらせる。
ジッと見過ぎたかも。
これまた失礼いたしました。
ドローシとレージングルで、廃材を粉砕だ。
「私っている?」
ノアは暇そう。
「ある程度の大きさのを運んで並べる。」
「なるほどね。形は?」
言われて悩む。
花壇なんて作った事はないです。
「丸いの? 四角? 」
「ここは町に入る道ですから、両脇に真っ直ぐに花壇を作るのはどうでしょう?」
レグルスが示す先に大木がある。
雪が邪魔だが、門から大木までの花壇か・・。
道幅は馬車が行き来する事を考えて、広くだね。
いいかも!
「じゃ、ここから真っ直ぐに置いて行けばいいんだね。かんた~ん!」
ノアはレンガくらいの大きさの瓦礫をホイホイと置いていく。
それはただ不格好な瓦礫を連ねただけだった。
う~ん・・。
何かイメージと違う。
しかしそれでも、一メートル幅の枠とは言えないが、出来る。
「ねぇ、今日はここまでにしない? お腹もすいたしさ」
これは中々ハードな作業だと思います。
でもやるからには完成はしたいと思うんだ。
「そうだね。ミラーの所に行かなきゃ。ありがとうノア。レグルスも」
レグルスも瓦礫粉砕を手伝ってくれたしね。
ミラーの所に行くと、大きな鍋に野菜やらお肉やらが、ぐつぐつと煮えている。
「言われた通りに昆布だし? で煮えているわ。この米? これはどうする?」
そう、私が失敗しない料理は、鍋!
それとおにぎりだ。
だが、ここに来て、炊飯器がない事に気付く。
当たり前にあるはずがない。
お粥しかできないよ。
お鍋でご飯を炊いたことがないのです。
大きな鍋は、味噌味だ。
具だくさんの味噌汁とも言えよう。
めんつゆもなければ、ポン酢もない。
調味料があっても、できません。
前世の私に文句を言いたいです。
母も祖母もいたのに。
料理を教えてもらう機会はあったのにさ。
「お粥にします。鶏がらスープで炊く。ショウガも入れます。」
「鶏がらスープで炊くのね」
「はい」
まぁ、ミラーがいるからできるでしょう。
ショウガの薄切りはまかして。
ナイフで、ショウガを薄く細く切る。
解体の応用だ。
「じゃ、いれますね」
「ええ、お願い」
丸ごと鶏をポイポイと鍋に入れたら、ミラーがぶっ飛んで来た。
「まって! 丸ごと? 鶏がらスープじゃなかった?」
「はい。鶏がらです。丸ごと入れたら、お肉も骨からもダシが出るよね?」
「・・・まぁ出るけどさ」
いけなかったのか?
「最後に、身をほぐして骨を取る。どうかな?」
「はい! それでいきます。美味しそうですね」
「塩で味を調えるのはするわ。カーラがやるって言ったんだから自分でやってみたら。」
「はい!」
具だくさんの味噌汁は、成功といえる。
味噌を、といて入れるだけだし。
鶏のお粥は初挑戦さ。
米が大きな鍋の中で、丸ごとの鶏肉と踊っている。
焦げないようにだけ注意した。
そして、ミラーが鶏肉を取り出し、身をほぐす。
これが、熱いし、小さな骨を忘れずに取り除く作業に苦戦しました。
ショウガを入れると、それだけで出来たかのように思えるが、ミラーが塩や胡椒で味を調えてくれました。
いよいよ夕食の時間だ。
「カーラが作ったの? 大丈夫かな」
失礼だぞ! ノア。
「これは初めての味付けよの。まぁ、これはこれで、わらわはおかわりかの~」
もう既に二杯目のリズ。
「・・・あっさりだが、暖まる」
何気にこれまた二杯目のヘルヴォルです。
「僕も初めて食べる味付けですね」
領主様の息子さんも、ちゃっかり食べていた。
壊れた家の人々も、お味噌の味には、それぞれに感想をのべつつも、温かな具だくさんにほっこりした表情。
まぁ、成功だね。
懐かしい味噌の味に、私は、懐かしさで、二杯も食べてしまったわ。
鶏お粥は、これもあっさりしつつも、鶏のコクが旨味を出して、ショウガがなんとも良い。
ってミラーがちゃんと味を調えてくれたからだけどさ。
ただ、具だくさんの味噌汁と鶏のお粥は、お腹がちゃぷちゃぷになっちゃうね。
お腹も満たされて、暖まった所で、壊れた家の人々に明日の朝、もう一度ここに集まって欲しいとお願いします。
破壊された家にあった物を見て、必要な物を回収してもらう為だ。
「おねぇちゃん・・ぼくの宝物もあるかな?」
それは、レグルスのそばで泣いていた男の子だった。
「あったらいいね。明日の朝、明るくなってから探そうね」
「うん!」
男の子は母親と教会へ帰って行く。
早く家の修復が出来たらいいのに・・。
早起きして、広場へ行くと、既に人が集まりつつあった。
「母親が大事にしていたタペストリーがあったらいいけどな」
「夫の形見が何か残っていて欲しい」
そんな言葉が聞こえました。
ロイ印のウエストポーチから、分類して出していく。
家具や小物類。
衣服や生活道具など。
後は貴重品。
それはサーシャさんが来てから頼みます。
お金とか宝石類だから。
「おねぇちゃん! ありがとう」
昨夜の男の子の手には木の枝?
ブーメランのような物が握られている。
「大事な物が見つかったんだね」
同じ目線になるように、座り込むと、男の子の顔がぱぁ~とと輝くようだ。
「うん! これはね、お父さんが作ってくれた、ぼくの宝物」
お父さんはサングリーズルの被害で亡くなったそうだ。
男の子は宝物を取りに行く途中で、レグルスに助けられた。
ぽんぽんと男の子の頭をなでなでした。
「よかったね。」
「うん!」
思い出という大切なもの。
それは一人一人違う。
本当に大切な者は戻らないけど、せめて・・ね。
まぁ、これで私のウエストポーチもやっとスッキリですよ。
後はやりかけた瓦礫の花壇を完成あるのみかしら?
人間をダメにする私の大きなクッションの中身。
必ず物にしてやると心で誓う。
憧れのアサシンであるサーシャと合流した日に聞いた話だ。
手触り最高のトワンティーレプスの毛皮で作ったクッションカバーを抱きしめた。
「娘っ子、ここに材木を置いてくれ」
「はい!」
「こっちにレンガを」
「はい!」
「おーい! 漆喰がたらねー」
「は~い!」
職人達からの要望ある物資を、ロイ印のウエストポーチから、ポイポイと出した。
「この瓦礫をのけてくれるか?」
「は~い!」
「あっちのも頼む」
「はいは~い!」
雪はチラチラと降ってはいるが、吹雪いていないだけ良いです。
あちこちにある瓦礫を、ロイ印のウエストポーチに入れて行く。
「って! これってゴミよね? ゴミ箱じゃないってーの」
物資を出して、不要物を入れるってどーよ?
「ほらほら娘っ子、ちゃっちゃと片付けろよ」
職人達が簡単に言うし。
でも職人のおっちゃん達はいかつくて怖い。
だから不本意ながらも瓦礫をロイ印のウエストポーチに入れた。
「どうしたの? 凄く嫌そうな顔をしているじゃない」
声をかけてくれたのは、プリースト見習いのシシリーだった。
「私のウエストポーチはゴミ箱じゃないよ」
ブツブツと言うと、シシリーは気の毒そうに私を見る。
「そうそう! 皆、魔力が上がって見習いから昇格しそうよ。私も魔力が上がったんだ」
「・・・・私って初日くらいしか、まともに治癒師見習いのお仕事をしていないかも?」
「かもじゃなくて、していないよね」
なんか・・
血の気が引いていった。
だって今回は治癒師見習いとして参加している。
なのに、初日くらいしか、それらしき事をしていない。
「まぁ、今出来る事をするって事ね」
シシリーはポンっと私の肩に手を置いて去った。
これはヤバいのではなかろうか?
私の予定では、ここでの活躍して、治癒師としてブロンズカードに上がる予定だった。
トワンティーレプスの討伐は、花丸ものだ。
だけどその後は裁縫に没頭してしまったし。
「うん! 瓦礫を片付けよう。あははぁ・・」
乾いた笑い。
これもまた大切な、私だけができるお仕事だと思う。
かなり私なりに頑張りゴミ回収をしていると、鼻ピアスのガイルとダニエルが、町の人と何やら困り顔で話し込んでいる。
「どうしたのですか?」
また魔獣かもしれないし、それなら討伐に参加しないとと、声をかけた。
「薪が足らないんだよ。」
「ミラーにもせかされてな」
困ったと鼻ピアスのガイルは言う。
材木はあるが、それは壊れた家屋の為だ。
この時期に薪がないのは凍える。
助かった命が凍死になりかねないよ。
「森に行ってもな・・」
「炭とかもたらねー」
「炭焼きが盛んな村々がやられたしな」
あぁ・・こんなところでもサングリーズルの被害が連鎖しているんだ。
「カーラ! 狩りに行こう」
元気よくノアが走って来る。
トワンティーレプスの毛皮で作った帽子がよく似合う。
「狩りもいいけど、薪不足なんだって」
「だったら壊れた家の材木を使ったら?」
「それだ!」
ノアの発想に大賛成です。
壊れた家の廃材処分にもなるし、皆が凍えずにすむ。
これは一石二鳥。
一つ石をなげたら、鳥が二羽ゲットってね。
そうとなれば、うってつけの人がいるではありませんか。
私はヘルヴォルを探した。
彼の肩の上で、可愛いウサギ耳が見える。
「カーラよ。そろそろスパイシーケルウスが恋しいのじゃが」
「中々いないよね。いたら必ずリズさんにあげるのにね」
「探しにいくのがよいぞ」
リズとお喋りはここまで。
「ヘルヴォルさん、武器は斧ですよね」
「・・・あぁ」
ジッとヘルヴォルの大きな斧を見た。
「では私と来てください」
「なんじゃ? スパイシーケルウスを探しに行く気になったのかえ?」
リズはどれだけ食欲があるのか?
まぁ、本来はどデカいサングリーズルと言う魔獣だからな。
人や家畜を襲わないでいてくれるだけありがたいよね。
広い場所を探す。
そこに、ゴミ箱化したロイ印のウエストポーチから、瓦礫の木材を取り出した。
ロイ印のウエストポーチ、初の分別出しだろう。
これは凄いです。
積み上げられたばらばらの大きさの材木だ。
「斧って木を切るのが本来の姿だと思います。ヘルヴォルさんの武器ですが、それで薪の大きさくらいにやっちゃってください」
「・・・・・。」
「お願いします。」
大事な武器で木材をカットしてくれって、やはり無茶苦茶言っているのは承知だ。
マジに彼の沈黙が恐ろしい。
「カーラよ、こやつの斧は神武器じゃぞ」
「この量だし、神武器ならばよけいに人の為に必要な事。薪がなければ、凍えるし、お料理だってできないのです」
頭を下げる。
「ヘルヴォルよ! 旨いのが作れないのはいやじゃ」
「・・・うむ。仕方ない」
大きな斧を見つめていた。
って食事は大事。
うん! 大事です。
ヘルヴォルもリズみたく食欲旺盛ですものね。
本来は大きな狼なのだから。
これで薪の問題は片付いた。
私のウエストポーチから、大量の木材は消える。
しか~し!
レンガやら生活道具やらも、たくさん残っている。
生活用品とかは、町の人の物だ。
必要な物や、思い出のあるものもあるだろう。
広場に行こう。
分別できるのならば、出せるかもしれないし。
「ミラーさん、薪は今、ヘルヴォルさんが用意しています。」
「良かったわ。今夜も温かな料理が作れる」
人って変われるんだな~と思った。
そりゃ、変われない人もいると思う。
だけど良い方に変われたら素敵な事だよね。
「ミラーさん、壊れた家の人って集めれるかな?」
「食事の時は、かなり来るわよ。この前のトワンティーレプスのバーベキューの時は、ほとんどの人が来たんじゃないかな」
「なるほど!」
でも残り少ないトワンティーレプスはロイ爺さんに、解体用のナイフと交換してもらいたいしな。
皆を集められるお料理。
勿論、私は作れないが、完成形は知っている。
この世界で食べたことのない物は、たくさんあるしね。
「ミラーさん、食料を見てもいいですか?」
「いいわよ。まだたくさんあるし、その内、他の街からの支援物資も来るはず」
空き家に置いている大量の食料。
寒いから冷蔵庫みたいだ。
「へぇ~こんなのもあるんだ」
手にしたのは乾燥させた昆布。
そこで色々な調味料を、嗅いだり、なめたりする。
「これなら、私にも出来る・・かもしれない」
強く言いたいが、マジに料理には自信がない。
だが、出来る物もあるのよ。
ミラーに、食材のカットやら、調理の用意を頼む。
そしてできるだけ皆が食べに来て欲しいと伝えた。
私はノアを探す。
彼女は、動かぬ的で矢の練習中だった。
彼女の矢は真ん中に当たる。
それが動く的に当たれば表情はもっとはれるだろうが、真ん中に当たっているのにため息をついていた。
「ノア、もし手が空いていたら手伝ってください」
「いいわよ~」
心良く了解してくれる。
私達は町の外に出た。
「何々?」
「ここに瓦礫の花壇を作りたいのです」
「瓦礫の花壇? この雪原に?」
「そこだよね」
真っ白な雪が降り積もっている。
「こんな時こそレグルスじゃない」
「レグルス?」
「一応仲間になったし」
「そうみたいだね~」
私の知らない間にリズがイエスと言ったらしい。
一応カード上、仲間登録はした。
アイアンカードの聖騎士様だ。
物好きな方だと思うわ。
でもさ、彼が仲間ならば、フォレスタの街にも、サハラーァ王国にだって行けちゃうんだよね。
「よし! レグルスを呼んで来よう」
「僕に何か?」
「はぁ!」
思わず飛び上がった。
いかんいかん!
シグルーンが見ていたら、拳骨ものだ。
それくらい危機感なしの察知スキルも使っていなかったわ。
「ここの雪を一掃できる?」
「あ、はい。それならこの剣で」
何という便利な剣。
聞けば魔力ある剣。
魔剣だそうです。
光と炎の魔力を高め、魔物や魔獣を一掃する。
彼の剣も名前持ち。
私の鎖と同じだ。
彼は言った通りに雪をひと払いした。
そこにたくさんのレンガや漆喰や瓦の残骸をだした。
「これで花壇ですか?」
「はい。ある程度、小さく粉砕して、花壇の枠にしたらどうかな~って。」
「良いですね」
レグルスは笑顔で肯定してくれた。
「作っても雪で埋もれるわ」
「はい。種とか球根とか、この時期に植えるものがあったら、春には花が咲いたら良いのですが」
「お楽しみって感じ?」
「はい。皆さんビックリかもです」
種も球根もなければ、ただのミステリーサークルになるかもしれない。
「あの・・。僕に時間をくれませんか? 球根の手配を進めさせていただきます。」
「あ、はい。だったらそれまでに花壇の枠を作っても・・いけますか?」
雪で見えなくなったら困る。
「あ、はい。吹き飛ばさないで雪を溶かしてみますから。」
なんと器用なと尊敬の眼差しを向けると、レグルスは目をそらせる。
ジッと見過ぎたかも。
これまた失礼いたしました。
ドローシとレージングルで、廃材を粉砕だ。
「私っている?」
ノアは暇そう。
「ある程度の大きさのを運んで並べる。」
「なるほどね。形は?」
言われて悩む。
花壇なんて作った事はないです。
「丸いの? 四角? 」
「ここは町に入る道ですから、両脇に真っ直ぐに花壇を作るのはどうでしょう?」
レグルスが示す先に大木がある。
雪が邪魔だが、門から大木までの花壇か・・。
道幅は馬車が行き来する事を考えて、広くだね。
いいかも!
「じゃ、ここから真っ直ぐに置いて行けばいいんだね。かんた~ん!」
ノアはレンガくらいの大きさの瓦礫をホイホイと置いていく。
それはただ不格好な瓦礫を連ねただけだった。
う~ん・・。
何かイメージと違う。
しかしそれでも、一メートル幅の枠とは言えないが、出来る。
「ねぇ、今日はここまでにしない? お腹もすいたしさ」
これは中々ハードな作業だと思います。
でもやるからには完成はしたいと思うんだ。
「そうだね。ミラーの所に行かなきゃ。ありがとうノア。レグルスも」
レグルスも瓦礫粉砕を手伝ってくれたしね。
ミラーの所に行くと、大きな鍋に野菜やらお肉やらが、ぐつぐつと煮えている。
「言われた通りに昆布だし? で煮えているわ。この米? これはどうする?」
そう、私が失敗しない料理は、鍋!
それとおにぎりだ。
だが、ここに来て、炊飯器がない事に気付く。
当たり前にあるはずがない。
お粥しかできないよ。
お鍋でご飯を炊いたことがないのです。
大きな鍋は、味噌味だ。
具だくさんの味噌汁とも言えよう。
めんつゆもなければ、ポン酢もない。
調味料があっても、できません。
前世の私に文句を言いたいです。
母も祖母もいたのに。
料理を教えてもらう機会はあったのにさ。
「お粥にします。鶏がらスープで炊く。ショウガも入れます。」
「鶏がらスープで炊くのね」
「はい」
まぁ、ミラーがいるからできるでしょう。
ショウガの薄切りはまかして。
ナイフで、ショウガを薄く細く切る。
解体の応用だ。
「じゃ、いれますね」
「ええ、お願い」
丸ごと鶏をポイポイと鍋に入れたら、ミラーがぶっ飛んで来た。
「まって! 丸ごと? 鶏がらスープじゃなかった?」
「はい。鶏がらです。丸ごと入れたら、お肉も骨からもダシが出るよね?」
「・・・まぁ出るけどさ」
いけなかったのか?
「最後に、身をほぐして骨を取る。どうかな?」
「はい! それでいきます。美味しそうですね」
「塩で味を調えるのはするわ。カーラがやるって言ったんだから自分でやってみたら。」
「はい!」
具だくさんの味噌汁は、成功といえる。
味噌を、といて入れるだけだし。
鶏のお粥は初挑戦さ。
米が大きな鍋の中で、丸ごとの鶏肉と踊っている。
焦げないようにだけ注意した。
そして、ミラーが鶏肉を取り出し、身をほぐす。
これが、熱いし、小さな骨を忘れずに取り除く作業に苦戦しました。
ショウガを入れると、それだけで出来たかのように思えるが、ミラーが塩や胡椒で味を調えてくれました。
いよいよ夕食の時間だ。
「カーラが作ったの? 大丈夫かな」
失礼だぞ! ノア。
「これは初めての味付けよの。まぁ、これはこれで、わらわはおかわりかの~」
もう既に二杯目のリズ。
「・・・あっさりだが、暖まる」
何気にこれまた二杯目のヘルヴォルです。
「僕も初めて食べる味付けですね」
領主様の息子さんも、ちゃっかり食べていた。
壊れた家の人々も、お味噌の味には、それぞれに感想をのべつつも、温かな具だくさんにほっこりした表情。
まぁ、成功だね。
懐かしい味噌の味に、私は、懐かしさで、二杯も食べてしまったわ。
鶏お粥は、これもあっさりしつつも、鶏のコクが旨味を出して、ショウガがなんとも良い。
ってミラーがちゃんと味を調えてくれたからだけどさ。
ただ、具だくさんの味噌汁と鶏のお粥は、お腹がちゃぷちゃぷになっちゃうね。
お腹も満たされて、暖まった所で、壊れた家の人々に明日の朝、もう一度ここに集まって欲しいとお願いします。
破壊された家にあった物を見て、必要な物を回収してもらう為だ。
「おねぇちゃん・・ぼくの宝物もあるかな?」
それは、レグルスのそばで泣いていた男の子だった。
「あったらいいね。明日の朝、明るくなってから探そうね」
「うん!」
男の子は母親と教会へ帰って行く。
早く家の修復が出来たらいいのに・・。
早起きして、広場へ行くと、既に人が集まりつつあった。
「母親が大事にしていたタペストリーがあったらいいけどな」
「夫の形見が何か残っていて欲しい」
そんな言葉が聞こえました。
ロイ印のウエストポーチから、分類して出していく。
家具や小物類。
衣服や生活道具など。
後は貴重品。
それはサーシャさんが来てから頼みます。
お金とか宝石類だから。
「おねぇちゃん! ありがとう」
昨夜の男の子の手には木の枝?
ブーメランのような物が握られている。
「大事な物が見つかったんだね」
同じ目線になるように、座り込むと、男の子の顔がぱぁ~とと輝くようだ。
「うん! これはね、お父さんが作ってくれた、ぼくの宝物」
お父さんはサングリーズルの被害で亡くなったそうだ。
男の子は宝物を取りに行く途中で、レグルスに助けられた。
ぽんぽんと男の子の頭をなでなでした。
「よかったね。」
「うん!」
思い出という大切なもの。
それは一人一人違う。
本当に大切な者は戻らないけど、せめて・・ね。
まぁ、これで私のウエストポーチもやっとスッキリですよ。
後はやりかけた瓦礫の花壇を完成あるのみかしら?
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