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死神はストーカー
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「目が覚めたか」
目を開けると、サラサラとした流れるような滝のように長い銀髪に、夜明け色の空を閉じ込めたような神秘的な青年がソファーの上でドーンと足を組みながら偉そうに座っている様子が飛び込んできた。
「ぎゃあああああアあああああああああああああああああああああああ!!」
何これ?
何のドッキリ?私は、死んだはずでしょう。何で、変な青年が私の前にいるの?
「あんた誰よ?」
「死神エルヴィオンだ」
そうか。
私は、やっぱり死んだのか。
周囲には360度に千以上のモニターと、大量の酒が置かれた黒い机が置いてある。ワイン、ウイスキー、ブランデー、ビール、ハイボール…………。
こいつ……酒を飲みながら、人間達の様子をドラマみたいに眺めていたのか!?人が苦しんでいるときに、のうのうとウイスキーを飲んでやがったのか!
どうやら死神というのは、非常に楽な仕事そうだ。そして、異様にむかつく人種でもありそうだ。
「何よ、ここは!?どう考えても、人が人生を終えた後に最初に連れていかれる空間ではないでしょう!!!」
「本来なら、あなたは彼に刺されて死ぬはずだった。そして、ここではないところに行っていたはずだ」
そうでしょうね。こんな酒だらけの空間に、普通は死んだ人間を最初に案内しないでしょうね!こんなところに案内されたら、私の人生は一体何だったのかという気分になるはずだわ。
「……感謝しろ。お前に興味を抱いた死神スキアがあなたにもう一度チャンスを与えた」
男は何故か私に対して怒っているようだ。
「どういうこと?」
「お前は、今の記憶を引き継いだまま一年前に戻れる」
「一年前……」
「結婚式の直前だ。それだけ巻き戻れば十分だろう。スキアに感謝しろ。俺には、あなたのようなクソ女にもう一回チャンスを与えたいといった彼の気持ちが理解できないが」
憎い敵でも見るように冷たい目をしながら、毒を吐くように忌々しそうにそう言われた。
「地震は一年後に起こるの?」
「ああ。それを変える方法はない」
「スキアってやつはどうしてここにいないの?」
少なくとも、ここで不機嫌そうにしている死神よりもずっと話がわかるいい人に違いない。
「彼は……いない」
「どうして?」
「死神が人間に干渉するときは、処罰を受ける」
だから、こいつは私に対しイライラしているような態度だったのか。
「そして、俺があなたのことを彼から頼まれている」
「つまり、あなたは、私の私生活を盗み見るストーカーになるってことね。この変態!」
「こっちだって、好きでやっているわけじゃねーよ」
酒臭い息で切れ気味にそう怒鳴られた。こいつ……本当に嫌な奴だ。スキアという奴の爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい。
「着替えやトイレは見ないでね。見たら、殺すから」
「俺は貧乳には興味がないので、安心しろ」
ああああああああああああああああああああ!!!
怒りのあまり血管がぶちぎれそうだ。
こんな奴、死神界から追放されて路頭にさまよえばいい!!人間の女にでも恋して、下僕みたいに仕える人生でも歩めばいい!!
「こっちだって、スキアに頼まれなかったら、あなたの人生に一ミリたりとも見たいと思わねーよ!!お前なんかの生活見るより、もっとおもしろい奴の生活を見ていたい」
このくそったれ。……視覚も聴覚もなくなればいいのにっ!!!
でも、ここにこれだけたくさんのモニターがあれば、一番おもしろい番組に目がいくのは当然だろう。その辺の凡人達のつまらない人生と比べられてたまるかっ。私のプライドに火がついた。
どんなに踏みにじられても、痛めつけられ否定されても、私だけは私のことを否定したくない。
誰に振られたって、誰に捨てられたって、自分こそが一番だって胸を張り続けたい。
私は、他の何物でも買えない価値がある。誰も私には勝てないって根拠のない自信を持ち続けたい。
自分だけは、バカみたいに自分が最高だって信じていたい。
「あなたは多くの物語を見てきたのね。だけど、私の物語が一番おもしろいって言わせてみせる」
どんな物語と比べられても、私が描ける物語は、私にしか描けない。
きっと、誰も見たことのない最高のエンディングにたどり着いて見せる。
エルヴィオンは、私の言葉を鼻で笑った。
「よくそんな根拠がもてるな」
「ええ。だって、私以上に魅力的なヒロインなんていないに決まっているから」
かつて私は、結婚相手に利用され裏切られた惨めな女だった。
だけど、私は自分の価値をバカみたいに信じている。
私は誰よりも魅力的だって、私だけがわかっている。私は、誰とも違う物語を歩んでいる。きっと、いつか最高のエンディングにたどり着くのだ。
「せいぜい、頑張れ」
「ええ、当然よ。あなたが見たことのないとびきりの物語を見せてあげる」
そして、私は、いつか、こいつに言ってやるのだ。私の勝ちだと。
「そろそろ時間だ。早く行けよ」
こいつ……私のことを追い出したがっている……。
こんちくしょう。でも、いい。私……今からやり直せるんだ。
緊張と、恐怖と……胸がはち切れそうなくらいの高揚感が押し寄せてくる。
いつも私は、ライリーに復讐したいと考えていた。その時が来るのが、楽しみでしょうがない。
「それでは、いってらっしゃい」
「ええ。行って来るわ」
エルヴィオンがパチンと指を鳴らした。
すると、すぐに光に包まれていく。
すさまじい風が押し寄せてくる。
「きゃあっ」
スカートがめくれあがり必死で押さえつける。
目すらも開けていられなくなり、ギュッと閉じる。
そして、空から落とされるようなふわっとした感覚がした後、薔薇の香りがし始めた。
目を開けると、サラサラとした流れるような滝のように長い銀髪に、夜明け色の空を閉じ込めたような神秘的な青年がソファーの上でドーンと足を組みながら偉そうに座っている様子が飛び込んできた。
「ぎゃあああああアあああああああああああああああああああああああ!!」
何これ?
何のドッキリ?私は、死んだはずでしょう。何で、変な青年が私の前にいるの?
「あんた誰よ?」
「死神エルヴィオンだ」
そうか。
私は、やっぱり死んだのか。
周囲には360度に千以上のモニターと、大量の酒が置かれた黒い机が置いてある。ワイン、ウイスキー、ブランデー、ビール、ハイボール…………。
こいつ……酒を飲みながら、人間達の様子をドラマみたいに眺めていたのか!?人が苦しんでいるときに、のうのうとウイスキーを飲んでやがったのか!
どうやら死神というのは、非常に楽な仕事そうだ。そして、異様にむかつく人種でもありそうだ。
「何よ、ここは!?どう考えても、人が人生を終えた後に最初に連れていかれる空間ではないでしょう!!!」
「本来なら、あなたは彼に刺されて死ぬはずだった。そして、ここではないところに行っていたはずだ」
そうでしょうね。こんな酒だらけの空間に、普通は死んだ人間を最初に案内しないでしょうね!こんなところに案内されたら、私の人生は一体何だったのかという気分になるはずだわ。
「……感謝しろ。お前に興味を抱いた死神スキアがあなたにもう一度チャンスを与えた」
男は何故か私に対して怒っているようだ。
「どういうこと?」
「お前は、今の記憶を引き継いだまま一年前に戻れる」
「一年前……」
「結婚式の直前だ。それだけ巻き戻れば十分だろう。スキアに感謝しろ。俺には、あなたのようなクソ女にもう一回チャンスを与えたいといった彼の気持ちが理解できないが」
憎い敵でも見るように冷たい目をしながら、毒を吐くように忌々しそうにそう言われた。
「地震は一年後に起こるの?」
「ああ。それを変える方法はない」
「スキアってやつはどうしてここにいないの?」
少なくとも、ここで不機嫌そうにしている死神よりもずっと話がわかるいい人に違いない。
「彼は……いない」
「どうして?」
「死神が人間に干渉するときは、処罰を受ける」
だから、こいつは私に対しイライラしているような態度だったのか。
「そして、俺があなたのことを彼から頼まれている」
「つまり、あなたは、私の私生活を盗み見るストーカーになるってことね。この変態!」
「こっちだって、好きでやっているわけじゃねーよ」
酒臭い息で切れ気味にそう怒鳴られた。こいつ……本当に嫌な奴だ。スキアという奴の爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい。
「着替えやトイレは見ないでね。見たら、殺すから」
「俺は貧乳には興味がないので、安心しろ」
ああああああああああああああああああああ!!!
怒りのあまり血管がぶちぎれそうだ。
こんな奴、死神界から追放されて路頭にさまよえばいい!!人間の女にでも恋して、下僕みたいに仕える人生でも歩めばいい!!
「こっちだって、スキアに頼まれなかったら、あなたの人生に一ミリたりとも見たいと思わねーよ!!お前なんかの生活見るより、もっとおもしろい奴の生活を見ていたい」
このくそったれ。……視覚も聴覚もなくなればいいのにっ!!!
でも、ここにこれだけたくさんのモニターがあれば、一番おもしろい番組に目がいくのは当然だろう。その辺の凡人達のつまらない人生と比べられてたまるかっ。私のプライドに火がついた。
どんなに踏みにじられても、痛めつけられ否定されても、私だけは私のことを否定したくない。
誰に振られたって、誰に捨てられたって、自分こそが一番だって胸を張り続けたい。
私は、他の何物でも買えない価値がある。誰も私には勝てないって根拠のない自信を持ち続けたい。
自分だけは、バカみたいに自分が最高だって信じていたい。
「あなたは多くの物語を見てきたのね。だけど、私の物語が一番おもしろいって言わせてみせる」
どんな物語と比べられても、私が描ける物語は、私にしか描けない。
きっと、誰も見たことのない最高のエンディングにたどり着いて見せる。
エルヴィオンは、私の言葉を鼻で笑った。
「よくそんな根拠がもてるな」
「ええ。だって、私以上に魅力的なヒロインなんていないに決まっているから」
かつて私は、結婚相手に利用され裏切られた惨めな女だった。
だけど、私は自分の価値をバカみたいに信じている。
私は誰よりも魅力的だって、私だけがわかっている。私は、誰とも違う物語を歩んでいる。きっと、いつか最高のエンディングにたどり着くのだ。
「せいぜい、頑張れ」
「ええ、当然よ。あなたが見たことのないとびきりの物語を見せてあげる」
そして、私は、いつか、こいつに言ってやるのだ。私の勝ちだと。
「そろそろ時間だ。早く行けよ」
こいつ……私のことを追い出したがっている……。
こんちくしょう。でも、いい。私……今からやり直せるんだ。
緊張と、恐怖と……胸がはち切れそうなくらいの高揚感が押し寄せてくる。
いつも私は、ライリーに復讐したいと考えていた。その時が来るのが、楽しみでしょうがない。
「それでは、いってらっしゃい」
「ええ。行って来るわ」
エルヴィオンがパチンと指を鳴らした。
すると、すぐに光に包まれていく。
すさまじい風が押し寄せてくる。
「きゃあっ」
スカートがめくれあがり必死で押さえつける。
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